やはり鋼鉄の浮遊城での奉仕部活動はまちがっている。 作:普通のオタク
現在の章を1章としまして、アリア編(2章)との幕間に書くつもりだったものです
結城明日奈はお嬢様である
愛想笑いを振りまきながら、寄ってくる人の相手を済ます。
これまでの人生で何度行ったことだろう。
私……結城明日奈は、世間一般で言うところのお嬢様、あるいはエリートに該当するのだろう。
父、結城彰三は総合電子機器メーカー<レクト>のCEO……つまり、現在の生活に欠かせないあれこれ全てに携わっている人物だ。その娘である私が、お嬢様に該当しない理由がない。
その名、立場に恥居ないようにと立ち振舞は常に意識してきたし、親から決められたレールを歩き、期待に応え続けるのも当たり前になっている。
この先の人生も、きっとそうなるのだろうと、確信を持って言うこともできる。
けれど、明確に一つだけ。そのレールの上で嫌悪感を抱くものが存在する。
それこそ、今現在参加しているような『パーティー』というやつだ。
要は懇意にしている会社、親族との交流会。これからもよろしくお願いします、されます。そういった挨拶の場。
そして、私にはまだ早いが、許嫁候補の人間との対面の場でもある。
そう。要するに、ここで私に擦り寄ってくる男というのは私ではなく、結城家の財産や権力が目当ての連中。
今のレールを歩めば、ここで顔を合わせる相手の誰かと私は将来的に結婚することになるだろう。
別にそれは構わない。そういうものだと分かっている。けれど、私にはまだ早い。それくらいの良識を相手にも求めるのは間違っているだろうか。
「……はぁ」
一通り、挨拶に来る男連中への対処を終え、一息つく。
だが、文字通り一息ついたなら、即座に気持ちを切り替える。
今度はこちらが挨拶回りに出なければならないのだ。
親についていくだけだとしても、みっともない姿は見せられない。
私は気を引き締め、愛想笑いを浮かべる。
崩さず、しっかり作れていることを確認してから、親からの来なさい、というアイコンタクトを受け取った。
× × ×
私が特に嫌っている人物が、この手の催しに必ず二人出席している。
一人は、父の腹心の息子だという男。須郷伸之。
人当たりの良い作り笑顔をしているが、その表情の下は欲望に滾っている。
私に言い寄ってくる男たちの中でも、特に嫌いな相手ということができる。もちろん、親には言えないので内心での感情でしか無いけれど。
もう一人は、<レクト>の支社や工場。関係する建物の建築を任せている千葉の大手建築会社……雪ノ下建設の長女、雪ノ下陽乃。
何を考えてるのか一切悟らせない笑顔はこの手の催しで鍛えられたのだろうけれど、私とは密度が違う。
嫌い、というのは適切ではないかもしれない。
私は怖い……いや。恐いのだ。
いつか、自分が『ああ』なるのかもしれないというのを見せつけられているようで。
そんな彼女を、恐いと思っても嫌いに思えない。そこまで完璧に自分を隠す姿が、恐ろしくて仕方がない。
そんな彼女の居るところに足を運ぶかと思うと、自然と足取りは重くなるものだ。
無作法ながら、手汗をスカートを握ることで拭き取って、邂逅に備える。
親が親で話している間、彼女と話すのは私だ。少しの間、世間話に興じていればいい。
たったそれだけのことを一大決心したみたいに思っている自分に思わず失笑する。
そう。
そんなことを考えていたから、きっと気が付かなかった。
いつも、あの人を目当てに集まっている男が全くと言っていいほど居ないことに。
そこに居たのは、私の知っている暖かな仮面を被った女性ではなく、愛想も浮かべずに、どことなく所在なさ気に佇む同年代くらいの相手だった。
キリが悪いのではなく、ここで区切りです
剣クエスト、想定してなかったから本当に掻いてて進まないし筆が乗らない(泣き言