昼、ここ数日十代のドローパンの引きが悪いらしい。アカデミアが飼育している黄金の鶏が1日1つだけ生むという黄金のタマゴを使ったタマゴパンを20回連続で当てたという十代だが、1週間と数日、タマゴパンが当たらない日が続いているらしいのだ。個人的には定番の焼きそばパンでもいいと思うんだが…………
「……………………ドロー!」
十代はドローパンの袋を観察し、勢いよくパンを取る。すかさず袋を開けパンを食べる。
「うぁっ!甘栗パンだ……」
「これで10回連続ハズレッス」
俺も1つ食べてみよう。
あむ…………具無しパン…………。
「十代でもダメとはね……」
入り口からの良く聞く声に振り向くとそこにはやはり明日香がいた。その手にはドローパンが2つ。どれも食べかけだ。どっちか食い切ってから食えよ。
「おっ、明日香もタマゴパン狙ってるのか?」
「なっ!ち、違うわよ!私はドローの練習を!」
食べかけのパン2つ持って、顔を赤くしている時点で説得力無いぞ。ってかドローの練習ってなんだ。お前【ドゥローレン】で永続罠使い回して殴るだけだろ…………あと【ブリューナク】で吹き飛ばしたり。
「ゴメンね〜……その中にタマゴパンは入ってないんだよ」
トメさん(以前は名前も知らなかったが十代が教えてくれた。何故十代は名前を知っているんだ?)が申し訳なさそうな表情で現れた。トメさんが言うには、タマゴパンだけが盗まれているらしい。丸藤は凄い引きの強さとか言ってるが、それって窃盗だぞ。金払って…………ドローパン代忘れてた。レジ端末に行って代金を支払っている間に十代達は夜に張り込むことを決定したらしい。頑張れ。夢の中で応援してるぞ。
☆
「なんでお前は異性の部屋に当たり前のように入ってきて堂々拉致するんだ?」
「こうでもしないと来ないでしょ」
眠いんだけど。
風呂も入って10時間くらい寝ようかと思っていた矢先、明日香がやってきて拉致られた。因みに着替える時間もくれなかったのでパジャマだ。ついでにアタッシュケースごとデッキを(明日香が)持ってきている。
「【トライデント・ドラギオン】で3連続攻撃」
「えっ、ちょっ!何それ!?」
何ってただの【ドラグニティ】だけども。暇なので明日香相手にデュエル。たまたま【大嵐】を引けたのでそこから【トライデント・ドラギオン】のロマン砲を撃って以前プレミでパーフェクトされた怨みを晴らすことに成功した。十代は隣で丸藤、前田とババ抜きしてる。おい、デュエルしろよ。デッキを片付けていると、トメさんが夜食におにぎりを持ってきてくれた。
幾つかある具をドローパンのように引き当てるゲームをする十代に巻き込まれ、たらこを引き当てたりと楽しく夜食を摂ることができた。
☆
待機している休憩室の灯りを消し、ドローパンを盗む奴が来るのをひたすら待つ。十代達レッド寮組はテーブルの下。明日香はロッカーの中。トメさんは机の下とそれぞれ隠れている。俺はすぐ動けるようにドアの近くに待機だ。そしてシャッターから何か音がした。全員がドアにへばりつく。見るとシャッターをこじ開ける人影が。アレって電動だよな……影はドローパンの籠に一直線に向かいドローパンを1つ取る。その瞬間にドアを開け、灯りを点け奴のもとへ行く。奴は上半身裸でボロボロのハーフパンツ……いや、制服か?を着ていて、『アーアアー!』と叫ぶと籠に乗りシャッターを突き破る。…………修繕費を請求しないとな……はぁ……
全員で追うと奴は森の奥に向かっていて、蔦をターザンのように伝って逃走していた。
「先回りするぞ!こっちだ!」
…………いや、このまま追う。十代達を無視して1人ターザンすることを決意した。俺はそこまで足が速くないからこのまま追ったほうが速いというのが主な理由だ。体格差からしても、奴の体重を耐えられるほどの丈夫さなら俺の体重にも耐えられるはずだし。しかしそれでも切れるんじゃないかと不安に思いつつ、なんとか奴に追い縋り十代達と合流。合流した場所はそばに滝のある山の中腹だ。奴はその滝を駆け上がる…………流石にアレは無理だ。
「大山君!」
「龍斗、お前あんな特技があったのか!?」
「……もうあんなことしたくない」
凄ぇ怖かった。
奴はトメさんが叫んだ大山なる名前に反応した。すると奴は手を滑らせ滝を真っ逆様に落ちていった……大丈夫か?しかし奴はすぐに上がってきてトメさんに挨拶していた。知り合いらしい。トメさん曰く、奴の名は大山平。オベリスク・ブルーの生徒だったが1年前に行方不明になったらしい。なんでも、よくドローパンを買うんだが例のタマゴパンを1度も手に入れられなかったらしい。更に大山が言うには筆記ではトップの成績だったが、実践では相手の場にサイコショッカーがいる状況で罠カードを引く等圧倒的に引きが悪かったらしい。ドロー力を磨くために山に籠って、ドローパンを使って実践していたと…………
「別にドローがデュエルの全てじゃないだろ」
「何!?」
「ドローがダメならサーチカードを使えばいい。ドロー回数を増やすカードだっていい。ドローフェイズの1回に頼る必要はないだろう」
寧ろデッキ改善以外の方法を教えていただきたい。プレイングなんて経験でどうとでもなるだろうし、ドローなんてようは運だ。運は改善のしようがない。
「1年も山籠りして得たのがドローパンでタマゴパンをゲット……非効率的だし、何より無駄だ」
「き、貴様ぁ……俺の修行が無駄だと……!」
「1年もやってそれに気付かないとは……その1年でアンタの同期は先に進んでいる。そして、DMも先へ進んだ。アンタの行為が無駄じゃないと言うのなら、見せてみろよ」
明日香からアタッシュケースを回収してデュエルディスクを出す。
大山もどこかから持ってきたデュエルディスクを構えた。マジで何処から持ってきた?
「「デュエル!」」
宮田龍斗
LP4000
VS
大山平
LP4000
「先攻はもらう。ドロー!【ダーク・グレファー】を召喚!」
【ダーク・グレファー】
攻撃表示
ATK1700/DEF1600
「【ダーク・グレファー】の効果発動!1ターンに1度、手札の闇属性モンスターを捨て、デッキから闇属性モンスターを墓地に送る!手札から【インフェルニティ・ビートル】を捨て、デッキから【インフェルニティ・ネクロマンサー】を墓地に送る!」
今回使うデッキは【インフェルニティ】。ワンショットはやろうと思えばできる程度の構築だ。たしかこのデッキ使ってるキャラが『満足』がどうのと言ってたな。
「カードを1枚セットしてターンエンド。さぁ、満足させてくれよ」
宮田龍斗
LP4000
モンスター
【ダーク・グレファー】:攻
ATK1700
魔・罠
伏せ1枚
手札3枚
「修行の成果を見せてやる!俺のターン、ドロー!カードを1枚伏せ、【ドローラー】を召喚!」
【ドローラー】
攻撃表示
ATK?/DEF?
現れたのは石でできた巨大なローラーを付けた像。
「【ドローラー】は召喚に成功したときに手札をデッキの一番下に戻し、戻した枚数1枚につき500ポイントの攻撃力と守備力になる!俺は手札を4枚戻す!」
【ドローラー】
ATK?/DEF?→ATK2000/DEF2000
手札0……か。
「バトルだ!【ドローラー】で【ダーク・グレファー】を攻撃!ローラー・プレス!」
【ドローラー】はとりつけたローラーで【ダーク・グレファー】を潰した。酷い交通事故を見た。
宮田龍斗
LP4000→3700
「【ドローラー】が攻撃表示モンスターを破壊したとき、破壊されたモンスターはデッキの一番下に戻る!」
【死者蘇生】が使えないと……【グレファー】はそのまま放置する気満々だが……
「ターンエンド!」
大山平
LP4000
モンスター
【ドローラー】:攻
ATK2000
魔・罠
伏せ1枚
手札0枚
「いきなり攻撃力2000のモンスターか」
「厄介といえば厄介だけど、龍斗なら気にしないわね」
「で、どっちが勝ってるの?」
「「「「………………」」」」
ギャラリーが好き勝手言ってるがトメさん、なんでこの学校の購買で働いてるんだ?
「……ドロー!……手札のレベル5以上の闇属性……【インフェルニティ・デストロイヤー】を捨て、【ダーク・グレファー】を特殊召喚!」
【ダーク・グレファー】
攻撃表示
ATK1700/DEF1600
「2枚目の【ダーク・グレファー】!?」
「効果発動!手札の【インフェルニティ・ガーディアン】を捨て、デッキから【インフェルニティ・デーモン】を墓地に送る」
あと1枚か。
「龍斗君、さっきから手札捨ててばっかり……」
「攻撃力2000のモンスター相手に手札減らしてどうするつもりなんだよ」
このデッキは手札いらないからな。捨てたりしないといけないんだ。
「【ダーク・グレファー】をリリースして【インフェルニティ・デストロイヤー】をアドバンス召喚!」
【インフェルニティ・デストロイヤー】
攻撃表示
ATK2300/DEF1000
「り、リリース?アドバンス召喚?」
大山は初めて聞いた単語なのか『?』マークを浮かべている。
明日香に目線を送ると軽〜く解説してくれた。直後の笑顔が怖い。
「バトル!【インフェルニティ・デストロイヤー】で【ドローラー】を攻撃!」
【インフェルニティ・デストロイヤー】が【ドローラー】を殴り破壊。なんかシンプルだな。
「くっ……!【ドローラー】をこうも容易く!」
大山平
LP4000→3700
「【インフェルニティ・デストロイヤー】の効果発動!手札0で相手モンスターを戦闘で破壊し墓地へ送ったとき、相手プレイヤーに1600ポイントのダメージを与える!」
「な、なんだと!?」
「龍斗はこのために自分から手札を捨てていたのか!」
【インフェルニティ・デストロイヤー】の目から赤いビームが大山に向けて放たれる。攻撃より派手だ。
大山平
LP3700→2100
「ターンエンド」
「…………エンドフェイズに永続罠【奇跡のドロー!】を発動!ドローフェイズの前にカード名を宣言する!当たれば相手に、外れたら俺に1000ポイントのダメージを与える!」
デッキトップのカード名を当てるか。ドローに拘るな……丸藤や前田は当てられるわけがないとか言ってるが、それってフラグなんじゃ……
宮田龍斗
モンスター
【インフェルニティ・デストロイヤー】:攻
ATK2300
魔・罠
伏せ1枚
手札満足
「…………」
大山はデッキトップに指を置き瞑想を始めた。カード名を当てる気満々だな。
「…………ドローカードは、【カードローン】!」
ドローしたカードをこちらに見せる…………暗くてよく見えない……
「ちょっと待て。確認しにいく」
駆け足で近寄って確認。……たしかに【カードローン】だ。
「確認した」
確認終了と同時にデュエルディスクから軽い衝撃がきた。
宮田龍斗
LP3700→2700
再び駆け足で元の位置へ。
「【カードローン】発動!カードをドローして相手は1000ポイントのライフを回復し、俺は1000ポイントのダメージを受ける!この効果で引いたカードはエンドフェイズにデッキに戻しシャッフルする!」
宮田龍斗
LP2700→3700
大山平
LP2100→1100
「【ドローボウ】発動!俺はカード名を宣言して、相手は1枚ドローする!ドローしたカードが宣言したカードなら相手の手札とフィールドのカード全てをデッキに戻す!」
俺のデッキトップを当てる?知らないカードばかりなのに?まぁ、知ってるカードもあるし、問題無いか。
「……………【死者蘇生】だ!」
大山の宣言に合わせてドローする。
宮田龍斗
手札満足→不満足
「……ほう。大したものだな」
引いたカードは【死者蘇生】だった。
効果により手札とフィールドのカード全てをデッキに戻す。
「ターンエンド!」
大山平
LP1100
モンスター
無
魔・罠
【奇跡のドロー!】
手札0枚
「手札もフィールドも0か」
「だけど相手ライフは1100。モンスターカードを引ければ大ダメージよ」
「で、どっちが勝ったんだい?」
「「「「「………………」」」」」
「まだ」
丸藤が2文字で解説した。本当にトメさん、なんでこの学校で働いてるんだ?
「俺のターン、ドロー!……【インフェルニティ・ミラージュ】を召喚!」
【インフェルニティ・ミラージュ】
攻撃表示
ATK0/DEF0
「攻撃力0……ドローの神に見捨てられたな!」
「いや、むしろその神とやらは俺に微笑んだ」
一瞬あの自称神が脳裏をよぎったが脳内でバックドロップしてやった。
「見せてやるよ。このデッキの、ハンドレスコンボ!」
そんな名前だったよな……?
「ハンドレスコンボ!?」
「【インフェルニティ・ミラージュ】の効果発動!俺の手札が0の場合、このモンスターをリリースして墓地の【インフェルニティ】モンスター2体を特殊召喚する!来い!チューナーモンスター【インフェルニティ・ビートル】!【インフェルニティ・デーモン】!」
【インフェルニティ・ビートル】
攻撃表示
ATK1200/DEF0
【インフェルニティ・デーモン】
攻撃表示
ATK1800/DEF1200
「チューナー……モンスター……?」
「【インフェルニティ・デーモン】の効果発動!特殊召喚に成功したとき、デッキから【インフェルニティ】カードを手札に加えることができる!【インフェルニティ・ガン】を手札に加えてセット!そして【インフェルニティ・ビートル】の効果発動!手札が0の場合、このモンスターをリリースしてデッキから【インフェルニティ・ビートル】を2体まで特殊召喚する!2体特殊召喚!」
【インフェルニティ・ビートル】×2
攻撃表示
ATK1200/DEF0
「レベル4の【インフェルニティ・デーモン】にレベル2の【インフェルニティ・ビートル】をチューニング!
戦場を駆け抜けろ大地の騎士!その槍で全てを貫け!シンクロ召喚!現れろ!レベル6!【大地の騎士 ガイアナイト】!」
【大地の騎士 ガイアナイト】
攻撃表示
ATK2600/DEF800
「し、シンクロ召喚!?なんだこれは!?」
「これが、DMの進化の1つだ。レベル6の【ガイアナイト】にレベル2の【インフェルニティ・ビートル】をチューニング!死者と生者、零にて交わりし時、永劫の檻より魔の龍は放たれる!シンクロ召喚!来い!レベル8!【インフェルニティ・デス・ドラゴン】!」
【インフェルニティ・デス・ドラゴン】
攻撃表示
ATK3000/DEF2400
「こ、攻撃力3000!?【青眼の白龍】と同じ攻撃力だと!?」
「リバースカード【インフェルニティ・ガン】!手札0の場合、このカードを墓地に送り、墓地の【インフェルニティ】モンスター2体を特殊召喚する!蘇れ【インフェルニティ・ビートル】!【インフェルニティ・デストロイヤー】!」
【インフェルニティ・ビートル】
攻撃表示
ATK1200/DEF0
【インフェルニティ・デストロイヤー】
攻撃表示
ATK2300/DEF1000
「レベル6の【インフェルニティ・デストロイヤー】にレベル2の【インフェルニティ・ビートル】をチューニング!地獄と天国の狭間、煉獄より姿を現せ!シンクロ召喚!出でよ!レベル8!【煉獄龍 オーガ・ドラグーン】!」
【煉獄龍 オーガ・ドラグーン】
攻撃表示
ATK3000/DEF3000
「攻撃力3000のモンスターが2体……それも1ターンで……これがハンドレスコンボ……!」
「バトル!【インフェルニティ・デス・ドラゴン】、【オーガ・ドラグーン】でダイレクトアタック!」
【インフェルニティ・デス・ドラゴン】と【オーガ・ドラグーン】がブレスを放ち大山のライフを削る。
「ぅわぁぁぁぁあ!!」
大山平
LP1100→-4900
「負けた……俺は……まだドローを極めてなかったのか……」
…………ドローを極めるってなんだ?十代達を見ると十代とトメさん以外はわからないといった仕草をしていた。
そして十代は大山のところへ。
「なぁ、お前スゲーな!ドローカードを当てるなんてさ!」
「ぇ…………」
大山は十代を目を丸くして見ている。
「今度は俺と勝負しようぜ!どっちがタマゴパンをドローできるか勝負だ!」
いや十代、デュエルしろよ。
翌日、大山は復学して再びオベリスク・ブルーの生徒となった。そして早速十代の挑戦を受けドローパンによる勝負を……
「当たった〜!」
2人がドローパンを選別していると聞き覚えのある声、そしてこの状況で1番聞きたくない内容が聞こえた。
声のした方を見ると明日香がタマゴパンを嬉しそうに掲げていた。
…………勝負はまた明日だな。
セーブ……トリシューラ使わなかった。
やりすぎ……別にシンクロしなくても良かった。
です。
本当は【インフェルニティ】はテニス部部長相手に使おうと思ってました。
【インフェルニティ・ゼロ】でライフ0でも生きてるZE!ってやろうと思ったんですが、【サービスエース】の効果からすると発動できないパターンあるんじゃね?と思い【アロマージ】に変更した次第。
次回はVS遊戯デッキ!の話がポロっと出てくるだけで本当はVS翔です。