衝動のままに決闘する   作:アルス@大罪

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日常って難しい……


海馬ランド デュエル無し

俺は無力だ。昨日の夜にそう痛感した。結局、ゆまと藤原の2人に押し切られ、3人一緒に寝かされた。

2人があっさり寝たのに対し、俺は両腕にゆまと藤原がしがみついたことによって身動きが取れない状況で、さらには2人の寝息がすぐ傍で聞こえてまったく眠れない状況が長時間続いた。

だからーーー

 

「…………」

「くっ…………」

 

宮田龍斗

LP4000

モンスター

【ダイガスタ・エメラル】:攻

ATK1800

【No.17 リバイス・ドラゴン】:攻

ATK2500

魔・罠

伏せ1枚(【強烈なはたき落とし】)

手札1枚

 

VS

 

藤原雪乃

LP4000

モンスター

魔・罠

手札0枚

 

朝っぱらから藤原にデュエルを挑み、【ゼンマイハンデス〜やるならドローカードさえも〜】を使ってしまった。後悔も反省も無い。ちょっとした満足感、達成感ならある。

 

「…………私のターン、ドロー!」

「カウンター罠【強烈なはたき落とし】。そのカードも捨ててもらう」

「くっ……!好きにしなさい……」

 

そう言いながら【トリック・クラウン】を捨てる藤原。たとえ【トリック・クラウン】が来ても、墓地に【サウザンド・ブレード】がいないから怖くない。藤原は諦めたようにターンを終えたので、このままトドメを刺した。

 

「よし、満足した!」

「……そう。良かったわねじゃあーーー」

 

藤原が何か言おうとしていたが、言いきる前に着替えに行き、そのまま部屋を出る。

明日香達と合流し、着替えを終えたゆま、藤原とともにレストランで軽い朝食を摂る。円形のテーブルに座り、俺の右にはゆま。左に藤原。正面に明日香。俺から見て明日香の右側、つまりゆまと明日香の間には枕田が座り、ももえは明日香の左側だ。

 

「お兄ちゃん、最初は何から行く?」

 

ゆまは朝食のパンを食べながら、どこから持ってきたのか、海馬ランドのパンフレットを広げて見せてくる。

 

「ゆま。時間はまだあるんだから、後でいいだろ」

「ぁ……えへへ」

 

誤魔化すように笑うゆま。

 

「楽しみだから、待ちきれないんだもん」

「貸し切りだから、周り放題だもんね。アタシも気持ちはわかるわ」

 

ゆまに枕田が同意する。昨日思いっきりガッツポーズとってたもんな。明日香も楽しみなのか、チラチラとゆまが持っているパンフレットを見ている。

ゆまと枕田は、アレに乗りたいだのコレが楽しみだのと盛り上がって食事どころではない。『食べろ』と言うと、大人しく食べるのだが、すぐに話しだす。

一口の量の差か、俺だけ早く食べ終わったので、最終手段に移行することにした。

俺が使っていたフォークでゆまのミニトマトを取る。

 

「ゆま」

「ふぇ?」

 

振り返ったゆまの口元にミニトマトを向ける。

 

「口開けろ」

「…………ふぇ!?」

 

最終手段。それは、『自分で食べないなら俺が食べさせる』だ。ももえがキャーキャー言いだしそうな状況なのだが、ゆまの朝食を終わらせるためにはこれが最善だ。

 

「えっと、その、お、お兄ちゃん!?」

「龍斗さんがゆまさんに、あ、あ、あーんを……!」

「…………」

 

ももえは両手を頬に当ててこちらを凝視し、藤原の無言の視線が突き刺さる。枕田は目を丸くして固まり、明日香は黙々と朝食を胃袋に収めていく。そしてゆまが顔を真っ赤にして混乱している間に、明日香は残り少ない朝食を終え、俺を射殺さんばかりの視線を寄越す。

 

「ゆま、混乱してないで早くしろ」

「え、えっと……えっと……」

 

ゆまは左右を見て狼狽える。ここで止めてもダメか。ということでゆっくりとミニトマトを近づける。

 

「んぐ」

 

やがてミニトマトがゆまの唇に触れた。ゆまは口を開け、ミニトマトに匹敵するのではと思えるほど顔を赤くしたままミニトマトを咀嚼する。

 

「次いくぞ」

「ま、待って!自分で食べる!食べるから!」

 

そう言って顔を真っ赤にしたまま食事を再開した。

枕田も明日香に言われて慌てて食事を再開。

 

「龍斗」

「ん?」

 

藤原に呼ばれて振り返ると、こちらを向いて、目を閉じて口を小さく開けている藤原がいた。

 

「……何してるんだ?」

「私も食べさせて」

「は?」

 

なんで俺が藤原に飯を食べさせなきゃならない?それに残り少しだろ。それくらい自分で食え。

 

「ゆまにしたんだから、私にもしてくれたっていいじゃない」

 

突っ込む間もなく、理由になってない理由を語る藤原。

ももえから『ドロ沼』とか『三角関係』とか不吉な言葉が途切れ途切れに聞こえる。勝手にゆまと藤原と俺の関係を発展させないでもらいたい。

 

「ゆまは全然食べないから、無理矢理食わせただけだ」

「つまり、私も食べなければ良いわけね」

「従兄妹間なら、あの絵面になってもさほど問題無いと判断しただけだ。究極的に言ってしまえば他人のお前にやると、知らない人が見たら勘違いするだろ」

「私は勘違いされてもいいけど?」

 

意味深な笑みを浮かべる藤原に、思わず絶句してしまった。対照的にももえがテンション上がりすぎて椅子から落ちていたが、構ってられない。

ゆまと枕田からはチラチラと視線が来る。

明日香はゆまから預かったパンフレットを見るフリをして俺を睨みつける。

 

「……俺が嫌だからやらない。ゆま、部屋にいるから、終わったら呼んでくれ」

 

ゆまがもの凄い勢いで首を縦に振るのを見ながら席を立つ。1人で部屋に戻り、着替え等の荷物の整理をして時間を潰していると、ゆまがやってきた。

 

「お兄ちゃん、食べ終わったよ!」

「そうか。じゃあ行くか」

「うん!」

 

さっきの出来事が尾を引いているのか、微妙に顔を赤くしたままだが笑顔で頷くゆま。

明日香達と再度合流すると、ゆまと枕田が『早く行こう』と急かす。『慌てなくても海馬ランドは逃げない』と言いつつも、少し駆け足で海馬ランド内へ。

 

「ぉおー!お客さんが誰もいない!」

「これが貸し切りの景色……!」

 

駆け足で先行した枕田とゆまの微妙な感動の仕方に呆れにも似た感情を抱きつつ、『貸し切りの景色』とやらを後ろから見る。

スタッフ以外の人が誰もいない景色は、少し寂しさを感じる。待ち時間を気にしなくて良いんだけど。

 

「アイツら元気だな」

「良いんじゃないですか?楽しそうで」

 

ポツリと呟いた俺に、ももえが返す。まぁ、楽しそうなのは良いんだけどな。駆けていくゆまと枕田についていくと、ゆまがあるアトラクションの前で振り返り、アトラクションを指差した。

 

「お兄ちゃん、コレ!コレに乗ろう!」

 

指差したアトラクションは『ネオ・ブルーアイズコースター』。この1年の間に開発したらしい【青眼】の頭をモチーフにした『ブルーアイズコースター』の改良版。【真青眼の究極竜】をモチーフにしたコースターに乗り、前作より高低差、長さを大幅パワーアップさせたコースを猛スピードで進む絶叫マシンだ。

 

「明日香さんも、ももえも早く!」

 

枕田に催促された明日香は仕方ないと言いたげな顔で、ももえは落ち着いた様子で枕田の元に歩いて行った。

 

「龍斗は行かないの?」

 

少し後ろからついてきていた藤原に声をかけられた。

 

「行くぞ。ただ……」

「ただ、何?」

「初っ端から絶叫マシンって、ゆまが大丈夫なのか心配なだけだ」

 

それだけ呟いて『ネオ・ブルーアイズコースター』に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆「うぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

「龍斗、大丈夫?」

「ゆま〜、生きてる〜?」

「ふわぁ〜う〜……」

 

恐るべし『ネオ・ブルーアイズ』……360°ターンや垂直落下、連続カーブ等で体をめちゃくちゃに振られすぎて気持ち悪い。ゆまも同じらしく、『ネオ・ブルーアイズコースター』近くのベンチで枕田の膝を枕にして横になって目を回している。

俺はその隣のベンチに座り、天を仰いでいる。

俺の隣では、藤原がゆっくりとハンカチを団扇代わりにして扇いでくれている。

 

「無理せず横になったら?」

「…………」

 

返事をしようものなら、今朝のサラダや目玉焼き達が口から出ていく気がして口を開く気にならない。

というか明日香達が無事なのがムカつく。俺の方が早く飯を食い終えたのに。

返答しないのをどんな解釈をしたのか、藤原に無理矢理横にさせられ、藤原の顔と女性特有の膨らみを同時に拝む構図になった。所謂膝枕か。

 

「…………」

「顔を青くしながら睨まれても怖くないわよ」

 

『何のつもりだ』という意味を込めて睨んでみたが、藤原はのれんに腕押しといった様子で効果が無い。

それどころか頭を撫でてきやがった。

普段なら屈辱がやってくるが、それ を上回る気持ち悪さで動く気にならない。

 

「龍斗が抵抗しない……?もしかして……」

 

明日香が何か勘付いたのか、藤原と代わるように頭を撫でてきた。

 

「やっぱり、気持ち悪くて腕を動かす気にならないのね!なら、今までお預けくらってた分、思いっきり撫で回させてもらうわ!」

 

嬉々とした表情で俺の頭をワシャワシャと撫でる。やめろ明日香。頭が……揺れる……

 

「あ、明日香さんズルい!アタシも撫でたい!」

 

隣のベンチから枕田の声がするが、それよりも気持ち悪い……揺れる……視界が揺れる……

 

「明日香。龍斗の顔色が酷いことになってるわ」

「きっと頭を撫でられてるからよ。もう少しで終わらせるわ」

 

数分後、満足したのか明日香が手を離した。ギリギリ……本当にギリギリで吐かなかった。

思わぬ攻撃から十数分後、『今度はもう少しゆっくりしたやつを』ということでやってきたのは、一定時間で内部構造が変わる中、規定時間内に『宝物』と称する物を探し、ゴールを目指す『迷宮壁ーラビリンス・ウォールー』。

内部構造が毎回変化するので、何度でも楽しめるのが魅力らしい。

 

「絶対クリアするわよ!」

 

右拳を握りしめ、クリア目指して燃える枕田。

 

「複数人で行動するんだから、作戦を立てないと……」

 

枕田と同調し、ガチで攻略しようとしている明日香。

 

「が、頑張りましょう!」

 

『ネオ・ブルーアイズ』の洗礼から復活し、意気込むゆま。

 

「ゆまさん。あまり無理しないでください」

 

ゆまの傍にいて、少し心配そうなももえ。そして……

 

「……あ、あんまり走ったりしないでくれよ……」

「龍斗、やっぱりもう少し休んだ方が」

 

若干気持ち悪さが残る俺と、俺を支える藤原。最初は肩を貸してもらっていたが、アトラクション前で藤原に寄りかかる構図に。

そんな俺を見かねたのか、枕田がこちらを向いた。

 

「情けないわね。本当にアタシ達のテスターの先輩なの?」

 

文句は明日香にも言ってほしい。アイツが俺の頭を乱暴に撫でなければもう少しマシだったのだから。

しかし、そんなことを言う気にもならず、藤原に支えてもらいながらアトラクションに向かった。

 

「制限時間は1時間、内部構造が変化する際ーーー」

 

スタッフの女性が枕田達に説明している間、その場に座り込み、調子を少しでも戻そうと瞑想する。ゆっくりと息を吸って、ゆっくりと息を吐く。

瞑想と数回の深呼吸のおかげか、なんとか調子が戻ってきた。

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

目を開けると、ゆまが心配そうに俺を見ていた。『もう大丈夫だ』と言ってゆまの頭を軽く撫でて立ち上がる。

 

「龍斗、復活したわね?じゃあ行くわよ!」

 

なんか枕田がリーダーのようになってたが、別にいいかと思い、何も言わずに枕田についていった。

迷宮に入り、分かれ道を右に左に、ときには間違いと判断して戻って迷宮を進む。

迷宮に入って15分程経った頃、突如ウーッという警報音のような音が鳴った。

 

「なんだ?」

「内部構造が変わるのよ」

 

枕田が周囲の床を見る。見てみると、俺と藤原、ももえのグループ、ゆま、明日香、枕田のグループと分けるような位置に赤いラインが光っている。

それを確認した直後、床から周囲の壁と同質の物がゆっくりとせり上がって、俺達を分断した。

 

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」

 

壁の向こうからゆまの声と壁を叩く音が聞こえる。

しかしすぐにゆまの声も、壁を叩く音も聞こえなくなり、代わりに枕田の声が聞こえてきた。

 

「お互いに宝物を目指すわよ!その方が合流しやすいはず!」

「……了解した。ゆま、明日香と枕田のいうこと、ちゃんと聞くんだぞ」

「わ、わかってるよぉ!」

 

ゆまが勝手にどこか行かないように釘を刺しておいて、宝物を目指す。ももえが携帯を使って、枕田と連絡しながら宝物がありそうな所を目指すことおよそ30分。

 

「龍斗さん。ジュンコさん達が宝物を見つけたようです」

 

どうやら合流する前に見つけたらしい。直後、再び警報音が鳴った。

 

「2人ともこっちへ」

 

藤原とももえの2人と距離を詰め、分断されないようにする。しかし、いつまで経っても壁は現れない。

 

「…………ここは変化しないみたいだな」

「そのようですわね」

「…………行くか」

 

枕田達と合流するつもりでゴールへ向かう。若干時間が無いので早足で。右に曲がり、戻って左に曲がり、迷宮を進むこと約10分。ももえに声をかけられた。

 

「龍斗さん、タイムアップだそうです」

「タイムアップ?」

「時間切れってことよ」

 

いつの間にか俺の右腕に絡んでいた藤原に、『意味はわかってる』と突っ込んでおく。時間設定あったんだな。

そう思っていると、近くの壁が床に埋まっていき、一直線の道が出来た。どうやら時間切れになるとこうなる仕様らしい。

 

「くーやーしーいー!」

 

迷宮を出ると、枕田がこう言いながらジタバタと暴れていた。

ゆまより元気かもしれない。

 

「あ、お兄ちゃ……って雪乃さんズルい!私も!」

 

移動中も決して俺から離れなかった雪乃を見つけると、ゆまは対抗するように俺の左腕にしがみついた。

 

「藤原、ゆま、暑いんだけど」

「良いじゃない。こんなイイ思いできるんだから」

 

藤原がそう言いながら右腕を強く抱きしめ、柔らかい感触を押し付ける。

それを見たゆまが必死な表情でさらに強くしがみつく。

 

「…………ゆま、痛い」

「あ、ご、ごめんね」

 

謝りながらパッと腕から離れる。

しかし、すぐにくっついてきた。藤原を離さない限りずっとこのままなのか……面倒な。

 

「両手に花でいい気分ね」

 

ゆまと藤原を離そうとすると、明日香の声が。背中が薄ら寒くなった。恐る恐る明日香を見てみると、妙に良い笑顔で俺を見ていた。枕田とももえが冷や汗をかきながら、ジリジリと下がっていく。

 

「あ、明日香もお兄ちゃんに抱きつきますか?」

 

屈託の無い笑顔で明日香に切り込むゆま。やめろ。そんなことしたら俺の腕が潰される。明日香は『遠慮する』とだけ言って次のアトラクションへ。

次に行くのは、ももえリクエストのホラーハウス『リビングデッドの呼び声』。

【おろかな埋葬】に描かれる墓をモチーフにした乗り物に2人で乗り、現れるアンデットモンスター達を【仕込みマシンガン】を模した銃で撃っていくアトラクションらしい。

2人までしか乗れないので、カードを使ってペアを決める。このアトラクションをリクエストしたももえがデッキを取り出し、カードを6枚抜く。適当にシャッフルして俺達の前に裏向きで出した。

 

「同じカードの人がペアでよろしいですね?」

 

ももえ以外の全員が頷き、カードを手に取る。

一斉に自分のカードを確認する。

俺が引いたカードは【ナチュル・ビースト】だ。

 

「お兄ちゃん、何を引いたの?」

 

何を期待しているのか、目を輝かせたゆまが俺が引いたカードを覗いてくる。

何も言わずにカードを見せると……

 

「【ナチュル・パルキオン】じゃない……」

 

あからさまにがっくりと肩を落とした。一瞬だが、ゆまの頭に垂れた犬耳が見えた。

 

「ゆまと私がペアみたいね」

 

【パルキオン】に反応したのか、明日香がやってきて、ゆまとペアになった。俺とペアになるのは枕田とももえ、藤原のうちの誰かになるんだが、枕田とももえが談笑していることから、俺とペアになるのは藤原なのだろう。

 

「藤原」

「っ!な、何かしら?」

「…………お前が引いたのはコレか?」

 

顔色が悪いように見えるが、とりあえずと藤原のカードを確認するために俺が引いたカードを見せる。

 

「え、ええ……そうよ……」

 

俯きながらカードを渡してくる。

 

「顔色悪いが、大丈夫か?」

「だ、大丈夫よ。ありがとう……」

 

聞いておいてなんだが、とてもそうは見えない。しかし、本人が大丈夫と言うのだから、無理に追求もできない。

『あまり無理はするな』とだけ伝えてカードをももえに返す。

アトラクションに突入する順番は、必死の形相で一番手を希望した藤原と俺のペア。続いてゆまと明日香のペア。最後に枕田とももえのペアとなった。

 

「それでは、いってらっしゃーい!」

 

【おろ埋】型の乗り物に藤原が俺の右隣になる形で乗り、スタッフの女性とゆま達に見送られた。

 

「…………」

「藤原、本当に大丈夫か?」

 

いざ始まると、藤原は顔を青くして俺の右腕にギュッとしがみつき、目を閉じて震えだした。

無理に追求できないと思っていても、つい心配してしまうほどに。

藤原が返事をする前に、前方から【13人目の埋葬者】がやってきた。

 

『カタカタカタカタ』

「ひっ!」

「…………」

 

骨をカタカタと鳴らしながらやってくる【13人目の埋葬者】。

藤原の短い悲鳴を聞きながら、特に恐怖も無く乗り物に設置されていた【仕込みマシンガン】っぽい銃を撃つ。反動も無く、音だけが響く中、【13人目の埋葬者】は砕け散った。

 

「…………怖いのか?」

 

チラッと藤原に視線を向けながら聞いてみる。

 

「そ、そそそそんにゃ訳ないじゃーーー」

『ァァァァ…………』

「ひぅっ……!」

 

出てきた【リボーン・ゾンビ】に怯んだ藤原の代わりに銃を連射する。4発撃って3発外したが、4発目で首を吹き飛ばした。

 

「…………怖いんだな?」

「…………!!」

 

確信を持って聞き直すと、藤原は観念したのか何も言わず、必死に首を縦に振ることで答えられた。だから顔色が悪かったのか。

 

「…………このアトラクションが終わるまで耳塞いでろ。終わったら肩でも叩いて教えるから」

「…………!!」

 

何かに掴まってないとダメなのか、首を横に振った。

…………はぁ。

半ば無理矢理右腕を解放させて、藤原の頭を俺の胸に抱く形にする。

右手で藤原の右耳を、俺の体で左耳を塞いだ状態だ。

 

「辛いだろうけど、我慢しろよ」

「…………」

「っ!?」

 

掴まるにしても服だけになると思っていたが、思いっきり爪が刺さってる。

痛みに耐えながら左手に持った銃一丁だけでアトラクションに挑む。

【二人三脚ゾンビ】、【ファイヤー・デビル】、あとは……【死者の腕】だったか?デュエルアカデミアでの授業で出てきたアンデット族通常モンスターが多く出てきたが、迷わず撃ち抜く。3発に2発外すが……。

最後は【マーダーサーカス・ゾンビ】、【鎧武者ゾンビ】、【ドラゴン・ゾンビ】が撃っても撃っても復活するステージだったが、しばらくすると勝手にゴールにたどり着いた。

アレはなんだったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーという訳だ」

「雪乃さんズルいです!お兄ちゃんにあんなに抱きついて!」

 

藤原が俺に抱きついていたのを、後ろからゆまに見られていたらしく、藤原がゆまにポカポカと肩を叩かれている。しかしダメージは無いようで、苦笑しながら『ごめんなさいね』と謝っている。

俺も明日香と枕田とももえに何故あんなことになったのかと説明を要求され、面倒ながらも説明することに。

 

「雪乃って怖い物が苦手だったのね……」

 

明日香が申し訳無さそうに、雪乃に視線を向ける。

 

「らしい。アイツのことを考えると、その手のアトラクションはやめたほうがいいな」

「あとは絶叫系ね。アンタがダウンするし」

 

枕田が嫌味ったらしい表情で俺を見る。アレは『ネオ・ブルーアイズ』がおかしいだけだ。もしくはお前ら。

 

「となると、海馬ランドのアトラクションの1つ、『激流葬』に行けませんね。絶叫系ですし」

 

『激流葬』。流木を模したコースターに乗って水が流れるコースを進む絶叫系アトラクションだ。ラストは高所から高速で落ちて大量の水を被るので着替えが必須らしい。

このことがあるので、枕田がももえに『着替え持ってきて無い』と突っ込んだ。

しかし、その手のアトラクションはレインコートのような防水用具を用意されるのでは?と指摘したことで『激流葬』に挑むことに。

コースターに乗る前に、やはりレインコートを渡され、3人1組で最前列とその後ろに乗る。

ゆまと藤原を両隣に、前から2番目に乗る。

 

「わくわく!」

 

右隣に座るゆまは今の気持ちを口にしながら、笑顔で前を見る。

左隣の藤原は前に座るももえと写真がどうのと話している。

俺の前に座る明日香と、その右隣の枕田はゆまの頭を撫でている。ゆまは何も気にしていないというか、撫でられている事実が眼中に無いようだ。

アトラクションが始まり、ゆったりと川を模したコースを進む。

コースは全体的に薄暗く、周囲に用意された灯りと、その近くで展開される2人の男女のデュエル……のような何かしか見えない。いや、デュエルはしてるんだが、セリフ長いし、召喚するのが聞いたことないモンスターばかりだしで道中を楽しみ辛い。

 

「ふにゃっ!」

 

【落とし穴】系の罠がポンポンと発動し、その度に大小の差はあるが、カクンとコースターが落下する。そして同時に右隣から妙な悲鳴が聞こえる。

デュエルが大詰めといったところで、コースターが数メートル上昇し、デュエルしている女性の方が動いた。

 

「これで終わりよ!【激流葬】!」

 

瞬間ーーー

 

「「「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!」」」

「ぷひゃあぁぁぁ!!」

 

コースターが急降下し、前方や左隣から悲鳴のような歓声が、そして右隣から変な声が海馬ランドに木霊した。

降下先には大量の水があり、コースターが水溜まりに突入。レインコート等無意味とばかりに俺達を濡らした。

 

「ぶるぶるぶる!」

 

ゆま、首を回して水を飛ばすな。

アトラクションが終わり、ゆま達が『激流葬』内の受付のようなところで何かしたあと、昼食は移動しながら食べられる軽食で済ませ、次々とアトラクションに挑む。藤原のことを考慮して、ホラー系アトラクション以外の全てを制覇し、お土産を購入。大分増えた荷物を持って帰宅した。




次回は夏休みといえば、海!プール!ということで水着回(笑)です。
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