今回は剣山登場の話です。
ディレとのデュエルからおよそ1週間。
ディレは同じ学年ということで授業で見かけることはあっても、絡んでくることはない。しかし俺を見ると何かを決意したように俺を睨んだあと、その場を立ち去る。おそらくデッキを弄ってるんだろう。いつリベンジに来られても、今度はそこそこの強さのデッキで相手しよう。
「ディスク狩り?」
そんなことを思っていたある日の昼休み、明日香達と飯を食っていたら、ジュンコから『ディスク狩り』なる話を聞いた。
校舎近くの森を抜けたところに人工の川があり、そこにかかる橋でデュエルを挑まれ、負けるとデュエルディスクを取られるらしい。
「あくまで噂なんだけどね。イエローの生徒にやられたらしいの」
「ブルーの男子生徒はプライドが高いのが多いから、あまり話さないけどね」
雪乃も知っているらしく、ジュンコの話に補足した。
「で、それが?」
「十代達が行った備品倉庫って、その川の向こうよね?」
十代と丸藤はクロノスに捕まり予備のデュエルディスクを備品倉庫から運んでいる。手伝いを求められたが、『腹減った』と言って拒否した。
しかしそれで合点がいった。
アイツらが絡まれると予想してるのか。
「大丈夫だろ。アイツには【M・HERO】っていう自分だけが正義の集団があるし」
「【ダーク・ロウ】とかですね……」
「そうね……」
ももえと雪乃がゆまを見る。勝敗はともかく、使われたからな。
「だ、【ダーク・ロウ】は悪くないです!ヒーローは正義の味方なんですぅ!」
わずかに怯んだゆまが必死に抗議する。
冗談だとももえと雪乃が流したことで特に【M・HERO】について話が膨らむことはなかった。
「だが、予備のデュエルディスクを取り出さざるを得ないほどにやられてるとなると、結構な実力なのか?」
「そうね。やられたっていう人数はわからないけど、噂になるくらいの実力はあるはずよ」
「…………」
進級して早々ということは1年か。2年3年でそういうことする奴はいない……と思いたい。
女子陣が話す中、俺は『ディスク狩り』をしている奴とデュエルしようかどうか悩んでた。
「龍斗が挑むに1票」
「アタシも」
「私もですわ」
「お兄ちゃんなら挑むと思います!」
「全員一致みたいね」
☆
翌日の放課後。
昨日の昼休み以降十代と会うことがなく、『ディスク狩り』にあったのか気になったためレッド寮へ。
久し振りに思えるレッド寮は、半分ほどが万丈目の家で経営している工事業者による改修工事により見えなくなっていた。
ともかく十代の部屋のドアをノックしてみると、
「誰ザウルス?」
変な語尾で、日焼けした肌と鍛えられた体、さらにドレッドヘア、制服も改造制服というどこから突っ込めばいいのかわからない男子が出てきた。制服はラー・イエローだ。
「……この部屋の住人、遊城十代の友人の宮田龍斗だ。お前は?」
ドレッドヘアの男子は俺の名前を聞いた途端、俺を指差した。
「あ、アンタが宮田龍斗ザウルス!?I2社、KCのテスターの!」
「…………たしかにそうだが、お前は?」
語尾に突っ込むのはあとにして名前を尋ねる。
「俺としたことが名乗ってないドン。俺はティラノ剣山!十代のアニキの弟分ザウルス!」
右手の親指で自分を指差して自己紹介するティラノ剣山という男子。
ティラノ剣山……十代の弟分……?あー、いた……ような気がする。デッキの中身は欠片も覚えてないが。
「ティラノ剣山……ね。で?なんでラー・イエローの生徒がレッド寮に?」
「十代のアニキの下で、カリスマを磨くためザウルス!」
カリスマ?…………アイツ、変なのに絡まれてるな。とりあえず、話を転がしても良いことはなさそうと判断して『そうか。頑張れよ』と言って話を終える。
「そういう宮田先輩こそ、オベリスク・ブルーの……生徒が……」
「ん?」
急にティラノ剣山……長いな……剣山でいいか。剣山は言葉が途切れ途切れになってきた。
「な、なんで宮田先輩はオベリスク・ブルーザウルス!?宮田先輩は中等部の生徒だったドン!?」
急に肩を掴まれ揺すられる。痛い、明日香にやられたときと同じくらい肩が痛い。
「落ち着け。俺は高等部編入組だ。レッドからイエロー、ブルーへと上がっただけだ」
首がガクンガクンと揺れながらも答えると、剣山は納得したのか『す、すまなかったドン』と自分のしたことに気付いて謝った。
「えっと……宮田先輩は十代のアニキに何か用ザウルス?」
「ああ、昨日友人に『ディスク狩り』っていう奴の話を聞いてな。昨日アイツと……アイツと同じ部屋の丸藤が会ってる可能性があってな。その確認をと」
剣山は話を聞くと『いや〜』と自分の後頭部を掻いて照れ臭そうに言った。
「その『ディスク狩り』、俺のことだドン」
「…………」
照れてんじゃねぇよ。内心突っ込んで思考を切り替える。
何故コイツが十代のことをアニキと慕うか。
昨日のことを考えると、おそらく十代とデュエルして、剣山の心境に変化があって十代のことを慕うようになった。ってところか。
「…………とにかく、十代が無事そうならいい。邪魔したな」
「待つドン!」
踵を返したところで、剣山に待ったをかけられた。
「ここで会ったのも何かの縁。宮田先輩、アンタにデュエルを挑むザウルス!」
懐からデッキを取り出し、俺に突き出す剣山。
「…………まぁ、いいけど」
レッド寮前で互いに距離を取る。
剣山はレッド寮を背後に、俺はその反対側に。
「行くドン!」
「「デュエル!」」
宮田龍斗
LP4000
VS
ティラノ剣山
LP4000
「俺の先攻か。俺はモンスターをセットし、永続魔法【進化の代償】を発動!」
「し、進化ザウルス!?」
剣山が『進化』という単語に反応した。
別に珍しい単語でもないと思うが……まぁいいや。
「このカードは1ターンに1度、【エヴォルド】モンスターの効果でモンスターを特殊召喚した場合、フィールドのカード1枚を破壊できる!」
「【エヴォルド】……先輩のデッキは【エヴォルド】モンスターが中心のデッキザウルス?」
「どうかな?オマケ程度に入れたカードかもしれないぞ?カードを2枚セットして、ターンエンド!」
宮田龍斗
LP4000
モンスター
裏守備1枚
魔・罠
【進化の代償】
伏せ2枚
手札1枚
「どんなモンスターが相手でも、俺は恐れないドン!俺のターンザウルス!ドロー!【セイバーザウルス】を召喚!」
【セイバーザウルス】
攻撃表示
ATK1900/DEF500
赤いトリケラトプスが現れる。
コイツのデッキは【恐竜族】か?
「バトルザウルス!【セイバーザウルス】で攻撃!」
地響きとともに【セイバーザウルス】が猛進し、緑色の体とDNAの二重螺旋の模様を尻尾に持った小さなトカゲ、【エヴォルド・ウェストロ】を跳ね飛ばした。しかし、何事も無かったかのように俺の前に戻ってきた。
「【エヴォルド・ウェストロ】のリバース効果!デッキから【エヴォルダー】モンスターを特殊召喚できる!【エヴォルダー・ケラト】を特殊召喚!」
【エヴォルダー・ケラト】
攻撃表示
ATK1900/DEF1400
黄色と黒の体と【ウェストロ】と同じDNAの二重螺旋の尻尾、鼻先に小さな角を持った恐竜が現れた。
「え、【エヴォルダー】?【エヴォルド】と違うモンスターザウルス?」
「【エヴォルド】は【エヴォルダー】モンスターに進化するって設定らしい」
「せ、設定って、はっきり言うドン……」
疑問に答えてやったのに、呆れたような声を出しやがった。
「……まぁいいや。【エヴォルダー・ケラト】は【エヴォルド】モンスターの効果で特殊召喚されたとき、攻撃力か200ポイントアップする!」
【エヴォルダー・ケラト】
ATK1900→ATK2100
「【セイバーザウルス】の攻撃力を上回ったドン!いや、それよりも……」
剣山は呟きながら【進化の代償】を見る。
「【進化の代償】の効果!と言いたいんだけどな。ダメージステップ中には効果が使えないんだ」
「そ、そうなのかザウルス?助かったドン……」
ホッと胸をなでおろす剣山。
わかりやすいというか、なんというか……
「安心するのはいいが、ターンを進めてくれないか?」
「あっ、そうだったザウルス!カードを2枚伏せて、ターンエンドだドン!」
ティラノ剣山
LP4000
モンスター
【セイバーザウルス】:攻
ATK1900
魔・罠
伏せ2枚
手札3枚
「俺のターン」
「あ、いた。お兄ちゃーん!」
デッキに手をかけたところで、背後からゆまの声が。振り返ってみるとゆまと明日香、ももえ、ジュンコ、雪乃、十代、丸藤といったいつものメンバーがゾロゾロとやってきていた。
「なんでデュエルしてるの?」
「昨日聞いた『ディスク狩り』について十代に聞きに来たらこうなった」
「ん〜?よくわかんないよ」
首を傾げるゆまの頭を撫でながら、『とにかく、偶々こうなっただけだ』と言うと今度は理解したらしい。というか理解出来なかったらゆまの頭を心配してた。
「お兄ちゃん、頑張ってね!」
「ああ」
ゆまは俺と剣山のデュエルが良く見える位置に移動している十代達のところに合流し、そこからまた声援を送ってくれた。
「すまない。俺のターンだな、ドロー!魔法カード【強制進化】!俺のフィールドの【エヴォルド】モンスター、【エヴォルド・ウェストロ】をリリースして発動!デッキから【エヴォルダー】モンスターを特殊召喚する!【エヴォルダー・ディプロドクス】を特殊召喚!」
【エヴォルダー・ディプロドクス】
攻撃表示
ATK1600/DEF800
紫の皮膚とDNAの二重螺旋模様の尻尾の首長竜が現れる。
「【進化の代償】の効果でリバースカードを破壊する!」
【進化の代償】からDNAの二重螺旋で作られた円が広がり、剣山のリバースカード、【化石発掘】を破壊した。
「そして【強制進化】の効果で特殊召喚されたモンスターは、【エヴォルド】モンスターの効果で特殊召喚された扱いとなる。よって【エヴォルダー・ディプロドクス】の効果!【エヴォルド】モンスターの効果で特殊召喚されたとき、相手フィールドの魔法・罠を破壊する!」
【ディプロドクス】が尻尾を振り上げ、リバースカードを叩き割る。
「【ミラー・フォース】が……!」
「バトル!【ケラト】で【セイバーザウルス】を攻撃!」
【ケラト】が猛烈な速度で【セイバーザウルス】の横に走っていき、首元を噛みちぎった。
「っ……!流石にやるドン……」
ティラノ剣山
LP4000→3800
「【ケラト】の効果!【エヴォルド】モンスターの効果で特殊召喚されたこのモンスターが、相手モンスターを戦闘で破壊した場合、デッキから【エヴォルド】モンスターを手札に加える!【エヴォルド・ラゴスクス】を手札に!」
宮田龍斗
手札1枚→2枚
「そして【エヴォルダー・ディプロドクス】でダイレクトアタック!」
【ディプロドクス】が剣山の傍に尻尾を振り下ろす。
「ぅあっ!」
ティラノ剣山
LP3800→2200
「メイン2。【エヴォルド・ラゴスクス】を召喚!」
【エヴォルド・ラゴスクス】
攻撃表示
ATK1200/DEF500
体の表面が緑、裏が黄色のトカゲが現れる。
「【ラゴスクス】の効果発動!召喚に成功したとき、デッキから【エヴォルダー】モンスターを墓地に送る!【エヴォルダー・エリアス】を墓地に送る。そして罠カード【進化の特異点】!俺の墓地の【エヴォルド】モンスター、【エヴォルド・ウェストロ】と【エヴォルダー】モンスター、【エヴォルダー・エリアス】を選択して発動!エクストラデッキから【エヴォルカイザー】モンスターを特殊召喚し、選択したモンスターをそのモンスターのORUにする!」
「墓地のモンスターでエクシーズ召喚ザウルス!?」
剣山が驚いているが、エクシーズ召喚じゃないんだよな。蘇生制限に引っかかるし。
「……まぁ、あとで言えばいいや。太古の時代の遺伝子が、予期せぬ来訪者を拒絶する!現れろランク6!【エヴォルカイザー・ソルデ】!」
【エヴォルカイザー・ソルデ】
攻撃表示
ATK2600/DEF1000
全身が青い細身の竜が上空から静かに降りてきた。
剣山は【ソルデ】の姿を呆然と見ている。
「これが【エヴォルド】モンスターの進化の終着点の1つだ。爬虫類族から恐竜族を経て、ドラゴン族になった」
「恐竜さんが、ドラゴンに……」
「そして、これも進化の形だ。俺はレベル4の【エヴォルダー・ケラト】と【エヴォルダー・ディプロドクス】でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!太古の時代の遺伝子が、裁きを下す竜となる!エクシーズ召喚!裁けランク4!【エヴォルカイザー・ラギア】!」
【エヴォルカイザー・ラギア】
攻撃表示
ATK2400/DEF2000
緑とも青とも言える色を白に滲ませた3対6枚の翼を持った竜が現れる。
「ターンエンド!」
宮田龍斗
LP4000
モンスター
【エヴォルカイザー・ソルデ】:攻
ATK2600
【エヴォルカイザー・ラギア】:攻
ATK2400
【エヴォルド・ラゴスクス】:攻
ATK1200
魔・罠
【進化の代償】
伏せ1枚
手札1枚
「俺のターンザウルス!ドロー!」
剣山はドローしたカードを手札に加えると、俺のモンスターを見据えた。
「【始祖鳥アーキオーニス】を召喚!」
【始祖鳥アーキオーニス】
攻撃表示
ATK300/DEF1300
青い体毛と黄色い羽を持った鳥型モンスターが現れる。
「さらに魔法カード【超進化薬・改】!【アーキオーニス】をいけに……リリースして発ドン!」
まだマスタールールでの言い回しに慣れてないのか、『生贄』と言いかけた剣山。
「このカードは、自分フィールドの鳥獣族モンスターをリリースして発動し、手札の恐竜族モンスター1体を特殊召喚するザウルス!現れろ!【
【究極恐獣】
攻撃表示
ATK3000/DEF2200
金の角を生やした黒い恐竜が現れる。まぁ、すぐいなくなるけどな。
「【エヴォルカイザー・ソルデ】の効果発動!相手がモンスターの特殊召喚に成功したときORUを1つ使い、そのモンスターを破壊する!」
「なっ!?ここにきてそんな効果アリザウルス!?」
批難ともとれる剣山の声を無視して、【ソルデ】の全身が青白く光り、【究極恐獣】を粒子にした。
「この布陣にどう挑むのか楽しみだったけどな。【ラギア】はORUを2つ使うことで魔法・罠の発動、モンスターの召喚・特殊召喚を無効にできるし」
「そ、それじゃあ先輩は、俺が【アーキオーニス】を召喚することを止めることもできたドン!?」
「そういうことになるな。だが決して嘗めているわけじゃない。結果的に残ったその手札を警戒した結果、【アーキオーニス】の召喚は通しても問題無いと判断しただけだ」
セットしてあるのは【砂塵のバリアーダスト・フォースー】ってのもあるしな。
剣山は手札を数秒見たあと、肩を落としてターンを終えた。
ティラノ剣山
LP2200
モンスター
無
魔・罠
無
手札1枚
「まだシンクロやエクシーズ、ペンデュラムが浸透してない現状で、えげつない布陣を用意したわね」
「か、【カリ・ユガ】を使えば倒せますよ!」
明日香が冷静に言う中、ジュンコがやけにピンポイントなこと言っていた。だがそれは【ソルデ】対策なだけで【ラギア】対策にはなってない。そう思っていたらももえが同じことをジュンコに言っていた。
「ぅぅ〜…………お兄ちゃん!これはどうしたら良いの!?」
ゆまは頭を抱えて必死に対策を考えていたが、ギブアップしていた。
というか今聞くな。
「あとで教えてやるから待ってろ。俺のターン、ドロー!このままバトル!【エヴォルカイザー・ラギア】でダイレクトアタック!」
【ラギア】が6枚の翼で風を起こした。風による攻撃らしい。炎属性なのに。それ言ったら十代の【フレイムウィングマン】も風属性なのに炎で攻撃するが……
「ぐわぁぁぁぁ!!」
ティラノ剣山
LP2200→-200
☆
「剣山君はどっか行ってなよ!」
「丸藤先輩が行けばいいドン!」
ゆま達女子陣が剣山と軽い挨拶を済ませ、俺達はゆま達に先程の俺が敷いた布陣の突破策を教えていた。教えるといっても、たった1枚のカードで済むわけだが。ちなみに丸藤と剣山は何かいがみ合っている。
「【ペンギン・ソルジャー】をセットして攻撃されるのを待つ。攻撃されたらリバース効果で【ラギア】も【ソルデ】も除去できる」
「ぺ、【ペンギン・ソルジャー】……」
「そんなカードに負けるのね……」
【ペンギン・ソルジャー】の存在を忘れていたジュンコは片頰をヒクヒクとさせ、雪乃は少し感心していた。
「あくまで『この布陣のままなら』ってだけなんだけどな。さっきの状況でまた【強制進化】されたら除去されて終わりだし。というか、シンクロとエクシーズはその殆どがバウンスに弱いから」
テスター仲間とゆまに言いながらデッキを片付け、まだいがみ合っている丸藤と剣山を見る。
あいつら仲悪いなぁ……
次回は翔がイエローに行くことになった話です。
相手のデッキが原型を留めてないですが……