午後の授業は一般科目だった。
IS学園ではISに関する知識だけでなく、一般科目も勉強しなければならない。つまり勉強の量が多いということだ。
一般科目なら大丈夫だろうと隣に目を向けたが、相変わらずオーバーヒートしていた。
こいつは何か胸を張ってできる科目はないのだろうか。
隣の一夏のオーバーヒートの様子にクラスメイトが慌てたりしたがそれ以外は特に目立ったことはなかった。
放課後になると私は織斑先生のもとへと向かうことにした。
職員室に入り、まずは頭を下げる。
「織斑先生はいらっしゃますか」
近くを通った人に聞くといるらしいので案内してもらった。
「どうした高見。私に用と聞いたが」
「ええ、先生にお願いがありまして」
「何だ?言ってみろ」
「今から代表者決定戦に向けての特訓がしたいので実技棟の一部屋を貸していただけないでしょうか。その申請書がほしくて来ました」
IS学園には大きく分けて4つの建物が存在する。
今私がいるほとんどの生徒が日中を此処で過ごす本館 多くの教室があり用途は沢山ある。
他には今借りたいといった実技棟 ISを自由に操作することが出来る部屋が幾つもあるが事前に申請を出さなければいけない。
しかも別申請で専用機もち以外の人はISも借りなければいけないので此処を本当の意味で使用できる人は数少ない。
他にはISの修理や改造をする場所である技術棟 此方にいる生徒は専用機持ちか、IS開発に関わりたい人ばかりだ。
最後に生徒や先生が寝泊まりする寮。
この4つにわけることが出来る。
「ふむ、ならばこの紙に名前を掛け。そしたらそれを持って実技棟に行け。後の事は向こうがしてくれるだろう」
「わかりました」
受け取った紙に名前を書く。
「ちょっと待ってくれ高見」
職員室を後にしようとしたところを止められた。
「何でしょうか先生」
「少し個人的な話がある。ちょっとの間だけ時間をくれ」
「分かりました。じゃあ屋上で話しましょうか」
屋上は放課後でも解放されているので話す場所には最適だ。
「それで何でしょうか千冬さん」
屋上には誰もいなかったので生徒と先生の関係ではなく、家族の会話へと変わる。
「その実技棟への申請書なんだが、今日は祐樹一人でも構わないが明日以降は一夏を連れて行ってくれないか?」
「何故でしょう?私たちは兄弟も当然です、しかしそれは試合とは関係がないと思うのですが」
「そうだがな、やはり心配なのだ。当日に届くのだが、ISに触れないでいると碌なことが起こらない気がしてな」
「……」
「私の方から申請は出しておく。勿論、一夏にISを慣れてもらうために打鉄も用意しておく」
「分かりました、別に断る理由はないですからね。それに空なら一夏とも特訓したいと言うでしょうし」
「言うだろうな、あいつはそういう奴だ。そうだ、今朝の電話の事なんだが」
「束さんですか?」
「ああ、元気にしてたか?私が最後にあいつと会ったのは一か月も前でな、少し心配なのだ」
「元気でしたよ。昨日も見送りの際に連絡くれなきゃ泣いちゃうっていう事が出来るぐらいには」
「そうか」
千冬さんはブリュンヒルデと言われているが、一人の女性だ。
自分の親しい人物の事を心配するのも当たり前だ。
「じゃあ、私いや僕は行きますね」
「ああ、分かった。怪我するなよ」
「勿論です」
屋上を離れ実技棟へと向かう。
実技棟に入り、入ったらすぐにある受付に先ほど名前を書いた紙を渡した。すると一つの鍵を渡された。
これが私が特訓することが出来る場所の鍵なのだろう。礼を言うとエレベーターへ乗る。
鍵には504室と書かれていたのでエレベーターで移動する方が早い。
5階で降りるとすぐ近くに目的の部屋があった。
鍵を通し、中へと入る。
「よし、ここでならコイツを使っても大丈夫だろう」
ちゃんと鍵もかけたので誰かが入ってくることはない。なので、束さん特性の会話機能を備えた指輪を指にはめた。
「空、起きてるか」
「うん、起きてるよ」
「今からISの特訓をする。私が指示を出すからお前が操作しろ。姫もサポートを頼む」
『任されました』
私たちのISのコアには人格がある。束さんが言うにはすべてのコアに人格が備わっているのだが、コアと会話できる人は私たちぐらいらしい。
姫というのは、私たちの専用機の名前である〈神姫〉から一文字取っただけのシンプルな感じだ。
名前は私がつけた。
姫は束さんから貰ったもので、最初はただの指輪を貰ったのかと思っていたんだよな。そしたらISだと知らされて二人で驚いたものだ。
「じゃあ、起動するね。姫ちゃん頼んだよ」
空は姫ちゃんと呼び私は姫と呼び捨て。性格の差が表れている。
一瞬あたりがまぶしい光に包まれたが、光が消えた後にはISを纏った姿の空だけが残った。
神姫の特殊能力として≪換装≫というのがある。その名前の通りで3つのパターンに装備を変更することが出来るのだ。
今纏っているのは中距離タイプであるヴァルキリーモードだ。
他には遠距離タイプであるアルテミスモード 近距離タイプであるペルセウスモードがある。
どれも名前を付けたのは束さんで私は恥ずかしいと感じている。
ヴァルキリーモードは片手に剣をもう片方には楯を装備している姿だ。剣は銃と持ち替えが可能で戦闘の状況に応じてチェンジができる。なので中距離タイプとされている。
剣の名前はダインスレイフという名前で青色の刃を持つ片手剣だ。
楯の名前はアイギスシールド 本来であれば最強の楯なのだが、名前だけ取ってきたようなものなので防げる限界がある。しかし、かなりの攻撃をかなりの回数防ぐごとができる素晴らしい楯だ。
銃の名前はまだ付けていない。それもその筈、私たちの生活には銃というのが日常的に意識してこなかったので名前も考えることが出来なかった。いずれ付けようとは思っているがな。
「じゃあ、まずは低空飛行からだな」
「分かった」
『サポートは私がするので鳥が低く飛んでいるイメージをしてください』
私の指示に従う空と、イメージをしやすいように噛み砕いて説明してくれる姫。
初めてというわけではないが、空はそれなりに飛べている方だ。多分、私が『空』を好きだと言っていたので、イメージが出来ていたのだろう。
「じゃあ、次は武器の早出しだな。多分それが一番重要になってくると思う。遅いと相手に攻撃のスキを与えてしまうからな」
『武器に関しては私が幾らか補えますが、基本的には空さんの想像力ですね』
「うーん、自分の手に武器があるっていうイメージでいいんだよね」
『はい、それで問題はないと思います』
「わかった、やってみる」
最初は出てくるまで時間がかかったが、後半では早めに出てくるようになった。
「ま、こんな感じで今日は終わりだな。疲れただろ?」
「うん、普段から武器を出すイメージを持っていた方がいいって分かったよ。後は祐兄に任せるね」
「ああ、任された」
身体の主導権が再び私に戻る。空は疲れたようなので寝てしまったようだ。
「じゃあ、姫。私も一度飛んでみようかと思う。サポート頼むぞ」
『はい』
空へ飛ぶイメージは昔から幾度なくしてきたので簡単にできる。気が付いた時には宙を飛んでいた。
「やはり飛ぶというものは良いものだな。それなりに年をくったが楽しいものだ」
空が寝ているので普段では絶対に口に出さないであろう、年齢の事を口にした。
空は私の事を兄と慕っているので20を超えた人だとは思ってないだろうからな。
飛ぶのも満足したので、鍵を返して今日は部屋へと戻ることにした。
ヴァルキリーモードについてのイメージとして某機動戦士の種の主人公機を想像していただければ分かりやすいはず……タブンネ
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4/25日 誤字訂正しました。