今日は学校初日ということで授業も簡単なISについてのことを触れていた。
お昼休みになると、一夏君はポニーテールの女の子に連れていかれたので、仕方なく一人で昼食をとるために食堂へと行こうと腰を上げたら声を掛けられた。
「ちょっといーい?」
「ん?君は確か……布仏さんですよね?」
初対面の対相手にも失礼がないようにと敬語で聞く。
「うんそーだよー。そういう君はたかみー」
「た、たかみー?」
「うん、高見だからたかみー」
何がどうなったら僕の名前はたかみーというゆるキャラみたいな名前になるのだろう。
「えっと、それで何かな?」
「お昼ご飯 今から食べに行くの?」
「うん。そのつもりだよ」
「じゃあ、私が案内してあげるー。お礼はお話聞かせてー」
「お話?」
「うん。ここに来る前のお話」
「……」
「あ、もしかして話辛いー?なら、無理して「大丈夫だよ」
此処に来る前、つまり束姉との生活の事だがそれを言わずに中学時代のことを言えばいい。
「じゃ、案内してくれるかな?」
「うん、こっちだよー」
ゆっくりと歩く布仏さんの後を追う僕。なんか外から見るとすごい絵面だな。
「ここがー食堂ー。基本的にはあっちで食券を買ってから商品を頂いて、そこのテーブルで食べるの」
「基本的には?」
「うん、普段は食堂で食べるのー。でも時間がないときやお外で食べたいなーって時には食堂の奥にある購買でパンを買うって感じかな?」
「……なるほど。ありがとう」
「いえいえー。じゃ、早速注文しにいこー」
「うん」
彼女の後を再び付いて行く。
空いてる席を見つけて布仏さんと向かい合って座る。あまり交流のない女性と向かい合って食事をするのは初めての経験だ。
基本的に今まで食事を取ってきたのは中学までの同級生か、一夏君や束姉、それに冬姉ぐらいだ。
「ではいただきます」「いただきます」
食事の挨拶をして手を付ける。
今日頼んだのは日替わり定食だ。今日は生姜焼きをメインとして置かれている。味付けも申し分なく美味しく食べていく。
「えっと、それで僕の中学時代だけど何を聞きたいの?」
「んー、私はね、ちょっと特殊な環境で育ったからあんまり普通の学生ってのを知らないの。だって、今の時代は女尊男卑でしょ?」
「じゃあ中学生活でいいかな?」
「うん、お願い」
彼女のお願いなので覚えている限りのことを話す。
中学時代は一夏君に彼の親友であり僕の親友でもある五反田弾君、それに中国から留学生として訪れていた凰鈴音ちゃんと共に行動していた。
毎日4人でバカ騒ぎをしていた。まぁ、あくまでも常識の範囲内だけど。
たとえば、一緒に市民プールに行ったことがある。その時は人がいっぱいだったので遊ぶのが大変だったけど、4人で穴場を見つけてはしゃいだりしたのは今でも覚えている。
とにかく、僕の中学時代は彼らがいなくては成り立たなかっただろう。
それに一夏君同様、彼らも僕の中にいる祐兄の存在を知っている。話したのではなく、彼らから聞かれたのだ。
『今のお前は空じゃないな。誰だ』と。その一言は僕の中では凄く嬉しかった。僕という人間をよく見ない限り分からないだろう。
口調は変わるが表に出てきたときの祐兄は僕の真似をする。おかげでバレた時は焦ったけど、それ以降より仲が深まったって感じだ。
僕は祐兄のことを除いて話をした。
「こんな感じかな?僕の中学時代は」
「ふむふむ。何だか楽しそーだね」
「うん、楽しかったよ。弾君とは今でも連絡取り合ってるし、鈴ちゃんとは鈴ちゃんが国に帰ってもメールでのやり取りもしてるし」
「ほえー、いいなー」
「そう?」
「うん!そこまで仲が良いってのは羨ましい。私にも家族同然の友達はいるけど、たかみーの友人のような対等な友人ってのは少ないから」
「……なら、僕がなるよ。その対等な友人ってのに」
「ほんと?」
「うん、それに布仏さんは良い人だし」
「???」
「僕の話をしっかりと聞いてくれたからさ。よほど興味を持ってくれたのかなーって」
「うん、とっても楽しかったよー」
布仏さんは腕をぶんぶんと振る。周りに迷惑が掛かってないのがある意味凄い。
「あ、ならさー、たかみーも私のことは布仏さん何て堅苦しい感じじゃなくて本音で良いよー」
「なら本音さんって呼ばせてもらう」
「おっけー」
おしゃべりに夢中で時間が無くなってきたので二人で急いで食事を再開する。
午後は簡単なオリエンテーリングが行われた。主に、ISを借りる時や、訓練場の使用許可の取り方等。
様々なことを教えてもらった。
放課後になると僕と一夏君は山田先生に呼び出された。
「先生、俺たちに用事って?」
「えっとですね、お二人のこれから生活する部屋の事で呼び出させてもらいました」
「なるほど。では、部屋割りは?」
「……大変申し訳ないのですが、とある事情で二人は別々の部屋になります。もちろんその部屋には先に生活している人がいるので、その人と仲良くしてください」
「とある事情って?」
「すみません、それに関しては私の口からは」
「分かりました。では、部屋番号は?」
「あ、こちらです。織斑君は1025室で、高見君はその奥に行ったところの1040室ですね。こちらが鍵となりますので失くさないように」
「有難う御座います。それで、僕たちの荷物は?」
「荷物なら先ほど、部屋に運び込まれました。お二人とも準備してあったようなので運ぶのが楽だったと業者さんから言われました」
「あはは一夏君、言わないと全然荷物準備しなかったもんね」
「空のおかげだな」
先生に頭を下げ、二人で職員室を後にする。
「じゃあ、俺はここのようだ」
「ん、僕はまだ奥のようだから。何かあったら連絡頂戴ね」
「ああ」
一夏君と別れ自分の部屋前までやってきた。
「えーっと、ここが1040室で間違いはないな」
扉に標識として『1040室』と書かれているので間違いはないだろう。
コンコン
同室者が分からない以上ノックをする。
『はーい』
中からは女性の声が聞こえた。
「えっと、今日からこの部屋で生活するようにと言われた高見です。入ってよろしいでしょうか」
『ええ、大丈夫よ』
鍵を開け、中へと入る。
中にいた女性は、ショートカットで綺麗な水色の髪の毛を持っている方だった。
「えっと……失礼ですがどちら様でしょうか。これからの生活を考えてお互いのことを知った方がと思い」
「……」
僕が話すと目の前の女性は肩をプルプルと震わせる。もしかして僕、失礼なことをしたのだろうか。
……初対面の女性に名を訪ねるのってNG?
「……僕はどうすれば……」
「……あはははは」
遂に堪えるのが無理だったのか声に出して笑い始めた。
「もしかして僕、失礼なことしました?」
「ははは、はぁーはぁー。んっ、大丈夫よ。ただ、私にそういう質問をしてきたのは君がはじめてなもんで」
「???」
「私は更識楯無。これでも一応ここの生徒会長を務めているわ」
「……え?」
生徒会長?生徒会長ってあの?僕の記憶が正しければIS学園の生徒会長ってイコールでIS学園最強じゃなかったっけ?
「君は高見空君だよね?」
「あっ、はい」
「これからよろしくね?」
「此方こそよろしくお願いします」
それから彼女とはこの部屋で生活するにあたってのルールを決めた。
朝は先に起きた方がシャワーを使うと決め、着替えは洗面所のみでと決める。
ある程度決め終わったら、僕は荷解きを始める。
「ねぇ、空君。それ何?」
彼女は僕の荷物を入れている段ボールの中のものを指した。
因みに彼女が僕のことを空君と呼んでいるのは『これから一緒に生活するんだからお互いのことは名前で呼び合いましょ』と言ってたからだ。
「これですか?これはとある親切な人が作ってくれた機械です。僕ぐらいしか使用者でしょうが」
とある親切な人とは束姉だ。相手がたとえどんなお偉いさんでも僕と束姉の関係をいう訳にはいかない。なので親切な人としておいた。
「へぇー、何に使う物なの?」
「あまり詳しくは言えませんが、簡単に言えば他人とコミュニケーションを取る時に使用するものだと」
僕の中にいる祐兄の声を他人にも聞かせることが出来る機械。
IS学園では一夏君と話すときか、僕が祐兄と声を出し合って話すときしか使用することはないだろう。
そういえば、今日一日祐兄が話しかけてこないと思ったらまだ寝ているらしい。
「コミュニケーションに道具???」
彼女はこの道具について色々と考えているようだ。祐兄の事と制作者以外の事ならバレてもいいので、彼女に手渡す。
「思って以上に軽い」
「よく言われます」
「これをコミュニケーションにか……今使えるの?」
「いえ、今は使えないですね。色々と事情があって」
主に祐兄が起きてないこと。
「そっか。じゃ、使える時になったら教えてよ、興味わいたし」
「ええ、いいですよ。でも、基本的に使用することはないですが」
祐兄と声を出して話したかったら僕の右手にはめている指輪に触れながらすればいい。小型化もしてあるので持ち運びやすさと便利さを考えれば此方で事が足りる。
「よし、こんなものかな」
僕自身、あまり荷物を持ってきてなかったので早く終わらすことが出来た。
それにもし何か足りなかったら土日に取りに行けばいい。
「夕飯どうします?」
「んー、この時間だと食堂は混んでるわね」
今は時間にして焼く7時半。同じような考えで食事を取りに来た学生でいっぱいのようだ。
「なら、僕が作りましょうか?先ほど冷蔵庫を見たら食材があるようですし」
「あら?料理できるの?」
「ええ、趣味なもんで」
「じゃあ、お願い♪」
笑顔で言われたので頷いておく。照れたのは内緒だ。
「すみません、遅くなりました」
米をたく時間を含めて予定よりも少し遅くなってしまった。
「大丈夫よ。それにしても美味しそうね」
「あはは、お口に合うと良いんですが」
二人して挨拶をして食事に手を付ける。
今日の晩御飯は冷蔵庫にあったもので作った有り合わせなものだ。
「あー、美味しかった」
食後のお茶をしてたら彼女から良い評価を頂けた。
「お口にあったようで何よりです」
「うむ、大儀であった」
「何ですかそれ」
二人してふざけた話で盛り上がってしまい、気付いたらそろそろ就寝時間だ。
「私、先にシャワー借りるわね」
「ええ、どうぞ」
「覗いちゃだめよ?」
「覗きませんって」
「なら、いいけど」
人で遊ぶのは止して欲しい。なれていない生活で意外と緊張しているのだ。
僕が明日の準備をしようかと思ったときに祐兄が起きたようだ。
『おはよ、空』
「祐兄今起きたの?」
『ああ、今日は初日だろ?迷惑を掛けたら不味いと思ってな。今日は一日寝てることにしてたんだ』
「気を遣わなくてもいいのに」
楯無さんがシャワー室に入っているので声を潜めて、会話する。
本来なら心の中で会話すればいいのだが、今は知っている人と話せることに安堵してその事がすっかりと頭から抜けていた。
「今起きたってことは暫くは起きてるんだよね?」
『ああ、そのつもりだが』
「じゃあさ、明日は祐兄が体を使ってよ。僕はちょっと緊張のしっぱなしで疲れちゃった」
『構わないが、大丈夫なのか?』
「大丈夫だよ。祐兄の事は誰にも話してないし、弾君たちみたいに気づいた人もいない」
『分かった。ま、もう10年以上もお前の真似をしてるんだ。簡単にはボロを出さないように気を付けるよ』
「うん、明日はよろしくね」
ちょうど僕らの会話が終わったと同時にシャワー室から楯無さんが出てきたので指輪から手を離した。
「次、いいわよ?」
「はい、じゃあお借りしますね」
シャワーで簡単に汗を流して、今日は寝ることにした。
今回は簡単に同居者までの事を書きました。
感想や誤字脱字報告等お待ちしております。
しっかし、キャラがブレブレ 一体何時になったら落ち着くんだろ?
今回の一番のキャラ崩壊者はのほほんさんでした。