そして安定の誰だコイツ状態
教室に入ると本音が駆け寄ってきた。
「おはよー、たかみー」
「うん、おはよう本音さん」
「朝はおりむーたちと一緒なんだね」
「うん、一夏君とは付き合いが長いし、ここでは唯一の男友達だしね」
ないとは思うが一夏と空の中が悪くなると大変だ。お互いがお互いのこの世界での唯一の男友達なのだから。
「今日、お昼ご飯一緒に食べない?まだまだ、たかみーの事知りたいし」
「構わないよ。それに僕としても早めにこの状況になれたいしね」
周りに目をやると私や一夏に相変わらず好奇の視線が向けられていた。
空という人間をある程度の人に知らせないと、この視線は消えないだろう。何故なら、好奇の視線とは知らない物に対して向けるものだから。
それに本音はこの中でも上位の方に入るぐらい普通の女の子だ。
今の時代を表している『女尊男卑』 その思想に染まってないというのは会話がしやすい。
「えへへー、決まりだよー?破ったら怒っちゃうからー」
そんなぽわぽわした感じに怒っちゃうよーと言われても何もすごさを感じない。
むしろ癒されるぐらいだ。
「破らないよ、本音さんに悪いからね」
「たかみーは優しいねー」
「そうかな?」
「絶対そうだよー」
と癒されていると教室の扉が開いた。千冬さんが入ってくる、その後をおって副担任である山田先生も入ってきた。
「朝のHRを始める。席につけ」
皆が次々と椅子に座り始める。本当に千冬さんの一言はこのクラスにおいて神のお告げみたいだ。
「今日からの授業はペースが速いからしっかりと付いてきてくれよ。それぐらいだ。号令!」
今日から本格的な授業が始まるらしい。
昨日は簡単な内容だったからね。幾らか知識があるとはいえ私と空、それに一夏はまだまだ知らないことが多すぎる。
今のうちに今日のやる範囲を見ておかなければ。そう決意すると鞄から教科書とノートを取り出した。
「なぁ、空」
「ん?どうしたの」
「今日の昼飯何にする?」
「君は朝から昼の事を考えているの?」
「いや、考えてみろよ。俺に限っては昨日の夜に千冬姉に教科書を貰ったんだぜ?それで知識詰められていると思うか?」
「無理だね。てか、早めに渡されていて結果がこれだし」
「その通りだ。だから、もう昼の事を考えるしかないかなって」
「……」
少し憐れむものを見るような目で一夏の顔を見る。
「な、何だよ!?悪いか!?」
「一夏君らしいなって思っただけだよ」
彼にそういうと手元で開いてある教科書に目をやった。
授業は滞りなく進み、隣で一夏が何度もオーバーヒートを起こしそうになったぐらいで特に問題はなかった。
さて、時間はお昼休み。本音と約束をしたので一緒に食堂へと向かう。
「あっ、昨日は食堂だったから今日は購買で買って外で食べない?」
「いいね。僕は賛成だよ」
あまりこのIS学園を詳しく案内されたわけじゃないから施設の場所などを知りたい。
「じゃあ、早速購買だー」
「おー」
彼女の後について購買でパンと飲み物を購入した。
え?お金だって?IS学園は日本だけでなく世界各国の候補生や未来の卵を育てる機関なので、基本的には入学前に必要な金は振り込まれているので唯で購入することが出来る。
最も、私と空、一夏は無理やり政府に学園に入らされた形なのでお金は請求されなかった。その代りの情報提供なのだろう。私たちのデータは一度束さんを経由するのだが。
IS学園の中庭をとでも呼ぶべき場所に出ると、そこには先客者が沢山いた。同じようなことを考える人は多いということだ。
「ここらへんでいいかな」
二人でゆっくりと出来そうな場所があったので、そこに腰を下ろした。
「此処は風が気持ちいいね」
「だねー」
二人してお昼ご飯をゆっくりと食べる。
「さて、今日は僕の何が聞きたいの?昨日は中学の事をお話ししたけど」
「んー、差支えなければ中学よりも前かなー?」
「中学よりも前……じゃあさ、とある男の話にしようか」
「とある男の話?」
「うん、ネットでこないだ見つけて面白かったからさ。ただ、僕の話ではないけど」
「んー、たかみーが面白いと思ったなら聞くよ。どんな話ー?」
「えーっとね」
私は彼女に話始めた。
男は昔から空が好きだった。嫌なことも好きなことも全てを忘れてボーっと見ているほどだ。
そんな男にも夢があった。それはパイロットになること。自分の好きな空を制限が幾らかあるとはいえ、自由に飛べるのだ。
その夢を見つけてから男は猛勉強をした。当然、今まで勉強に目もむけていなかったので全然頭に内容が入らない。
学校の先生に分からないことを次々と質問し、遂には質問王とクラスの人間に呼ばれるほどになってしまったが、男は夢の為に勉強をし続けた。
そんな男のもとに一つの手紙が届いた。それは先生が男が頑張っているのを知っていたため、飛行機に関する式典が開かれるので行ってきたらどうだという内容だった。
男は親を説得し、式典を見に行った。飛行機自体に憧れはなかったが自分が空へ飛ぶのに必要なもの 翼と感じるようになった。
それからというものの、勉強を必死につづけやっとの思いで念願の訓練生になれた。
でも、その訓練というのは厳しかった。毎朝太陽が昇るよりも先に起きてランニングに筋トレ さらには非常事態を予測しての訓練。
全てが厳しいもので何度投げ出そうと思ったかは分からない。でも、夢のために必要なものだと言い聞かせ、かつて苦手だった勉強と同じように必死に頑張った。
そんなある日、訓練生から正規パイロットへなれるという試験が彼のもとへとやってきた。
男は早速受けることにした。そこには自分以外の訓練生が多くいた。でも、皆と協力し自分の力を試験官に見せつけた。
そんな時だった、近くにあった燃料保管庫に火が付いたという知らせが入ってきた。皆が大騒ぎする中、男は燃料庫へ応援へと向かっていた試験管と一緒に向かった。
そこで彼がみたものは……
「っていう感じで男は死んでしまったらしいんだ」
「……面白いっていうか可哀想な話だったね」
「そう……かな」
「それで、その話からたかみーは何を感じたの?」
「んーと……空の凄さかな」
「空の凄さ?」
「男が今までの生活を180度変えるほどの影響力を持っている空。それに、夢を追い続けるっていうのが大変だということを僕は感じたよ」
以前この話を空に話したら、そう言われたので空の言葉として伝える。
「……何かに必死になることって凄い事じゃない?」
「凄い事?」
「だって、自分を変えてまで必死になるってことはどうしてもパイロットになりたかったんでしょ?それに私は夢を追いかける姿は尊敬されることはあっても笑われるようなものではないと思うな。だからたかみーもその話は面白い話ではなく夢を追う必死な話って思おうよ」
「分かった」
少し説教をされてしまったが問題はない。
その男は夢半ばで倒れてしまったのだから一度倒れると再び立ち上がるのには時間がかかる。
「たかみーにも夢はあるの?」
「僕の夢……かぁ」
空に一度も聞いたことがない話。
空は迷惑をなるべくかけないようにしてきたから、明確な夢はないだろう。今度尋ねてみるのもいいかもしれないな。
「今はないかな。本音さんは?」
「私ー?私は……見つかってないかな?」
「見つからない?」
「うん。夢を追う姿に憧れる事はあっても、そうなりたいって思ったことがないの。だから今は夢を探している最中」
「早く見つかるといいね」
「たかみーも、でしょ?今はないなら一緒に探そ?」
「うん、探そう。一人よりも二人。そっちの方が楽しそうだ」
「だよねー」
お昼時間が残りわずかったとなったので彼女と一緒に教室へと戻ることにした。
余談だが、話に夢中になりすぎてご飯を全部食べ終えてなかった。
今回も今回とてのほほんさんが普通の喋り方ばかりでした。
私の表現力じゃ彼女のふんわり具合を出すのが難しい
扱いが多分、作中1番なのでこれからも登場回数が多いであろうのほほんさん。
これじゃあメインヒロインのようではないか()