寄生獣 on the Magic World   作:なまびーる

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第2話、行きます!
短いですが、どうぞお付き合い下さい。感想、評価お待ちしております。


第2話

 

「ヒ、ヒ、ヒィぃぃぃ…」

 

事故現場から慌てて逃げ帰った慎一は、誰もいない、まだ少し散らかった部屋の中で自刃の右腕を凝視していた。

情けない声を隠そうともせず、心底怯えきっている。

 

「…ぼ、僕の…み、右手にッ…誰かいるの…!?」

 

側から見ればそれは少年が鬼気迫った形相で右手に話しかけているという異様な光景。

あの時…事故の時、自分は確かに見た。

自分の右手が、車のバンパーを穿ち、片腕だけで止めて見せたことを。

もしそうじゃなくとも異常だ。

あの状況で自分が助かる訳ない、にも関わらず、今こうして無傷でいられるのは常識では考えられない。

その常識を覆すのは、僅かながら考えうる原因として、この右手以外にあり得なかった。

 

ーーー確かめてみるか。

 

不意にそう思った。

ではどうやって? また車にぶつかるのはあまりにもリスキーだ。ならば。

 

無言で台所に向かう慎一。取り出したのは、小さな果物ナイフ。

これとてしくじれば大怪我どころではない話なのだが、今、慎一を突き動かしていたのは一刻も早く原因を知って安心したいという恐怖感と、子供特有の持つ好奇心であった。

故に普段から一人暮らし同然の慎一が人並み以上に持っている理性が、麻痺している。

 

「や、やるぞ…」

 

が、やっぱりそれでも怖いものは怖かった。

当たり前だ、小さいとはいえ、自分に鋭利な刃物を突き立てるのだ。

だが、慎一は同時に直感する、恐らく、右手は自分が本気でやらないと動いてはくれない。

もう既に右手のそれを認め始めていることに気づかず、慎一は絶叫しながらナイフを振り下ろした。

 

と、次の瞬間。

 

グニュン、と右手が歪んだ。

ナイフが右手に突き刺さる瞬間、右手の親指に当たるところと、人差し指が不自然な方向に曲がり、ナイフの刃を受け止める。

そして軽くクイっとはね退けると、折れた刃がクルクルと回転し、弧を描きながら天井に突き刺さった。

 

「…」

 

驚きのあまり、声が出なかったのは言うまでもない。

そして、親指と人差し指の間の手の甲が裂ける。

 

「ギィヤァァアアアアッ!?」

 

叫びながら慌てて逃げようとするが、相手は自分の右手だ、逃げ場がない。

 

そして、自分の右手がこんなことになっているにも関わらず、右手の感覚がない、という事も、慎一の恐怖を加速させた。

 

 

右手にできたその裂け目からは血が一滴も垂れていなかった。

慎一は気づく、それが口であることに。

裂け目に寄られた、膿んだような膨らみは唇のように見え、裂け目中には、不規則ながらも歯のようなものが見えた。

 

「ヒ…ぎ…?」

慌てていたために足を絡ませ、その場で尻餅をつく慎一。

最早、悲鳴をあげることもままならず慎一はソレを凝視した。

口のような何かに加えて、指が原型であるであろう突起の頂点に二つの目玉がカタツムリのように現れても、何も驚きもしなかった。

 

「シン…イチ…」

 

「え…?」

 

喋った。

唇のようなものが動き、言葉を発した。

 

「シン…イチ…オハ、ヨウ。 オレ、ワタシ、コトバ、マダ、トチュウ…」

カチカチと、奥歯が鳴った。

 

「オシエテ、シンイチ。」

 

これが、孤独な平凡少年と、その右手にやってきた、奇妙な寄生生物との出会いであった。

 

 

 

 

 

 

 

かくして、この右手に寄生した寄生生物…ミギー(シンイチが名付けた)との、奇妙な共同生活が始まった。

 

次の日の翌朝。

 

「…朝になったら、こんな変な夢終わると思ったのになぁ…」

 

シンイチは、ベッドの上で惚けた様に呟き、絶賛現実逃避の真っ最中であった。

その右手は、肘から関節がないかのような伸び、その先には、奇妙な生物、ミギーが、シンイチの部屋の本を勝手に読み漁っていた。

 

「…ねぇ。」

 

「ん? 何だね?」

 

シンイチが声をかけると普通に返ってきた。

ハァ、と深くため息をつき、尋ねる。

 

「…君は、宇宙人なの? 僕の右手はどうなってるの?」

 

やれやれ、といった様子でミギーは振り向き答えた。

 

「質問は一つずつにしてほしいな。まぁ、時間は余っているが…

まず、一つ目の質問から答えると、"わからない"。」

 

「え?」

 

「目覚めた瞬間、私は君の右手にいた。そして、"脳を奪えなくて"残念だ…というのが、初めての感情だった。 で、君の右手の事だがね。」

 

「う、うん…」

 

取り敢えず"脳を奪えなくて"という物騒な言葉は置いておいて、一番気になっていることに、思わず身を乗り出して聞く。

 

「食っちまった。」

 

そのあっさりとした回答に、シンイチは一旦思考を停止させた。

食われた…? という事は、この右肩から出ているコレは…?

 

「ああ、それ私の身体だ。 君の右手の余った素材のな。」

 

あまりにも現実離れしすぎて話にならない、因みにシンイチは左利きだ。

 

「ああ、心配するな。 君の1日の生活は一度拝見した。 言われなくとも、この家の外では、大人しくしておくよ。動かせるようにもしておこう。」

 

「あ、当たり前だよ!?」

 

こんなもの、他人どころか母親にも見せられない。

それに、誰がいつ寄生していいと言った? 許可もとってなくしかも挙句に右手を食ったと?

 

「まぁ、君の言いたいことは分かる…分かるから、落ち着きたまえ。心拍数が上がってる。

私は君の養分で生きてる、つまりは君が死んだら私も死ぬ、そういう事だ。」

 

だから体は大事にしてくれ、と付け加えられた。

まぁなんとも小憎たらしい生物だ。シンイチの持っている本から言葉を覚えたものだから、言葉使いだけは丁寧なくせして、ソレっぽい振る舞いも様になっているから腹も立つ。

が、少なくともこいつは生まれたての赤ん坊なのだ。

 

 

 

朝のリビング、ミギーは次々とシンイチに問い尋ねていた。

 

「シンイチ、コレはなんだ?」

 

「新聞。」

 

「これは?」

 

「テレビ…と、そこにあるの、ミギーとって。」

 

「ほらよ。」

 

思いの外共同生活が成り立っていると思える会話な続く中、シンイチは黙々と朝の食事を始める。

食事には使わない右手の小指だけでミギーはテレビと新聞を物珍しいように見ている。

 

「ふむふむ…キミたちニンゲンは、こうやって社会の状況を知るのか…」

 

そう言えば、外国の言葉や文化を知るには、地元の新聞を読むのが一番だ…と、昔祖父に教えられたことがあった。

興味深々に読み耽っているミギーに若干興味を持ったシンイチは、食事をかきこむとミギーの隣に座る。

 

そうそう、こうやって、わからない言葉を教えてくれたっけ…

 

そう思い出し、シンイチは、今日の休日1日をミギーの教育に費やすことを決めた。

 

何故だかはわからないが、どうにも妙な気分になった。昔の自分を見ているような、懐かしくも切ない気分。

 

ミギーは突然隣に座ったシンイチに何の違和感もなく呟いた。

 

「…お。 コレは昨日の私達の事件だな。 成る程、ただの事故扱いにされたか。」

 

 

 

 

 

 

 

「魔道生物?」

 

ここは、閑静な住宅街の、一軒の民家。

そこで中に浮く奇妙な窓に映し出された映像と会話している、一人の栗色の髪の少女。

 

『うん。 管理局の保護区から抜け出しちゃって、そっちに転移したんだって。

ヒトを襲うことがあるらしい子だから、一刻も早くの捜索を。って。』

 

すると、その生物の写真が転送されてきた。

栗色の髪の少女…高町なのはは、肌を泡立たせた。

何せ、その生物は一見ヘビと植物の芽を混ぜて虫の要素を取り入れたやや気色の悪いものであったからである。

こんな生物が人を襲うなんて考えたくもない。

 

『なのはちゃん、大丈夫?』

 

通信相手のエイミィが、なのはを心配して尋ねた。

 

「あ、ハイ…大丈夫です! その子を探せばいいんですよね!」

 

『でも、それだけじゃないっぽいんだよね〜』

 

「え?」

 

エイミィが、気まずそうに絶対内緒だよ、と一言付け加えた後、言った。

 

それがなのはを、この一連の騒動に巻き込むことになるとは知らずに。

 

 




ミギーの口調難しいなぁ…(´・_・`)
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