寄生獣 on the Magic World   作:なまびーる

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凄い、1日に二回も投稿できたぞー。


第3話

 

 

学校の登校道、人通りの少ない路地で、少年、小泉慎一はしきりに自分の右手に向かって何かを語りかけている。

別に、彼は別段人とかけ離れて変わっている、というわけではなく、いや、身体的に考えてみればそうであるかっもしれない。

 

彼の右腕…右の肩口から指先までは、ミギーと呼ばれる寄生生物なのだ。

 

「い、いいか…? きょうは絶対なんか変なことをするんじゃないぞ?」

 

「分かっているさ、君こそ、変なことで私の正体を周囲に察せられるなよ?」

 

「バレたら…?」

 

シャキン、と何かが首筋に当てつけられた。

それは、刃だった。包丁なんて目じゃないくらいに鋭く、鋭利な三日月状の刃物をミギーは出していた。

 

「ヒ ッ…ど、どこから出したんだよそんなもん?」

 

なるべく声を上げないように問い尋ねるシンイチ。

 

「私の体の一部さ。 同時に、武器でもある。」

 

ミギーはつまならそうに言った。

 

 

 

 

 

 

「…で、あるからにしてー…よし、ここをやって見ろ。小泉。」

 

「え、あ、ハイ。」

 

午後簿授業中、算数の時間、シンイチは担任にさされ立ち上がる。

担任の目からは、『どうせできねーだろコイツ』臭がムンムンとたちこめており、周囲からは嫌な視線を受ける。

 

蔑みの視線だ。

 

そんな事は言われなくてもわかる、そして案の定シンイチにはさされた問題の意味がわからなかった。

教科書を持ったまま頭が真っ白になる、嗚呼、また今日も特別に宿題が出される…

担任が痺れを切らし、もういい、と口が開こうとした瞬間、シンイチの右手が勝手に動いた。

 

「ぇ?」

 

ミギーだ。教科書裏で人差し指を動かしテキストの部分を指差す。

ここを使え、ということだろうか。

小説でよくやる速読をしてみる。

 

すると、問題の意味がわかった。脳に電流が走ったように刺激が届き、計算を始める。

この間、恐らく一秒にも満たなかったその瞬間に、シンイチは答えを弾き出した。

 

「7/8です。」

 

ざわ…とまではいかないが、シンイチ以外の誰もが、目を見開いた。

まさか ダメイチ が、授業での質問にこたえられるなんて…

全くもって酷い話だが、それほどのことであったのだ。

一瞬惚けていた担任ではあったが、すぐ取り直し頷いた。

 

「あ、ぁぁ…正解だ。よくやったな。 座っていいぞ。」

 

言われて席に着いた。

周囲からの視線は相変わらずであったが、何か気味の悪いものを見るような視線に切り替わっていた。

決して気分のいいものではない、が、少なくともクラスと担任の

鼻を透かしてやった事に対して、シンイチは満足した。

 

…ありがと、ミギー。

 

小さく、それこそ誰にも聞こえないような声で言うと、ミギーはブルリ

と震えた。

気にするな、であろうか。いや、彼(彼女?)の事だから、もっと嫌味じみたことかもしれないが。

この教室に置いて、シンイチと真に利害が一致しているのはミギーだけであった。

 

 

「…今日は助かったよ、ありがとう、ミギー。」

 

「いいや、戯れ程度に付き合ってやっただけさ。」

 

やっぱりだ、ミギーはあんなことコレッポッチも気にしていない。

逆に、少し不機嫌だ。

 

「全くもって無意味な時間だ。 どうしてこんなものに挙って通うのか、理解に苦しむ。」

 

1日半で家の書物という書物を読破してしまったミギーには、この時間が退屈で退屈で仕方がなかったらしい。

 

「学校っていうのは、そう言うものなんだよ。みんな勉強の意味なんて本当に理解しているような人、少ないんじゃないかな。」

 

すると、ミギーにしては珍しく感情的に、意外そうな声で言ってきた。

 

「君は知っているのか?」

 

まさか、とシンイチは頭を振った。

 

「僕なんて…君も聞いたでしょ? ダメイチ、って。 算数の授業だって、君が指差してくれなきゃ、全然分からなかったし…」

 

そう言って、ミギーと目をそらすように顔を伏せる。

駄目だ、ダメイチ、その言葉を口にすると、弱気になる。

普段聴いているだけで大分応えるのに、自分で言うともっと辛くなる。

 

(ミギー、どう思ってるかな…こんな奴が自分に言葉を教えているなんて知ったら…)

 

だが、そんなシンイチの思いに反して、ミギーは意外な方向へ話を持っていった。

 

「そうかな。」

 

「え?」

 

「逆に考えるんだ、私が『指をさしただけで』君は自分でやってのけたじゃないか。

それに、あの教師は初めから君ができるとは思っていなかった、つまりは、教え切れている自信がない、という事だ。

まあ確かに、君は他者に比べて脆弱な個体だといわざるを得ないが。」

 

ガクッとコケるシンイチ。後半の内容は聴かなかったことにしておこう。

「所詮、あんな物は唯の暗号じゃないか。それが出来てどうやって生きて行ける?」

 

シンイチはうーん、と唸る。

そういえば、きちんと勉強する意味を考えた事はなかった。

 

「えっ…と、将来役に立つから? いや、でももっとその前に受験で必要だから? でも、それじゃ君の言う事の答えにならないなぁ…」

 

しばらく、うーん、うーんと唸り、苦し紛れに答えを出した。

 

「立派な大人になるために必要、だから…?」

 

シンイチはミギーの目を見た。一昨日見た時と変わらない、どこか非生物然とした目であった。

しばらくミギーは沈黙した後。

 

「では立派な大人とは?」

 

シンイチは答えられなかった。

 

 

 

 

 

 

立派な大人って、なんだろう?

僕はミギーにそう尋ねられてから、ずっとその事を考えていた。

大人、道を歩けば沢山いる、身長の大きくなった人間のこと。

いや、そうではないかもしれない。だって、テレビでは僕よりずっと大きい、大人よりも大きい男の子が紹介されてたこともある。

じゃあ、大人ってなんだろう?

20歳を過ぎた人達のこと? でも立派ってなんだろう?

威張らない大人? 誰かの役に立つ大人? 人を助けることができる大人?

優しい大人? 頭がいい大人?

 

それらがみんな立派、っていう一言で済ませられるの?

 

わからない、僕は今年で10歳、今まで歩いてきた人生の中で、大人になった、とか、成長した、っていう実感はあまり沸かない。

母さんは天涯孤独だから、親戚もいないし、僕がちっちゃい頃におじいちゃんもおばあちゃんも天国へ行ってしまっている。

だから、大きくなったね、と言われずに育ってきたのは言うまでもない。

 

じゃあ、今一番言える事って。母さんは立派な大人。これであってる。

朝から晩まで働いて、僕のご飯もきちんと作ってくれる。それなのに、いつも寂しい思いをさせてごめんね、といつも謝ってくるのだ。

と、僕が考え事にふけっていると、不意にミギーが反応した。

 

「…シンイチ、物思いふけっているようで済まないが、仲間だ。」

 

「え?」

 

そして僕は、ここで初めて、『あんな思い』をしたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「…直線距離五十メートル、近いな。 行くぞ。」

 

ミギーが言った。

 

「え?…行くってどこに」

 

「決まっているだろ、仲間の元へだ。」

 

「や、ヤダよ!?」

 

ミギーの一言に頭を振って走り出そうとするシンイチ、が、ミギーは電柱に文字通り絡みつき、シンイチをどうしてもそちらへ向かわせたいようだ。

 

「行くぞ。」

 

「や…ヤダよ。だ、だって、これから向かう先の奴っていうのはつまり、脳を奪われた奴ってことなんだろう?」

 

「まあそうだろうな。」

 

「絶対ヤダ!」

 

つまりは、自身が片足突っ込みかけている化け物擬ではなく、正真正銘の化物であるということ。

 

「行くぞ。もしかすると、君と私を切り離すヒントが見つかるかも知れない。」

 

「え、本当⁉︎」

 

「もしかするとと言っただろう。それにな、私は私のことをもっと知らなければならない、ならば、行くより他ないだろう。勿論君もな。」

 

グ…と息詰まる。確かに、行ってみて似たような境遇の人間であったら確かに対策を講じれるかも知れない。全ては仮定の話だが、何もせずに逃げるよりは、利益の可能性はある。

 

「…行ってみてダメだったら、すぐに逃げるよ?」

 

「ああ、分かっている。私とて命は惜しい。」

 

シンイチは、ミギーの言う通りに道順を走っていった。

 

 

 

 

 

 

「…この辺? レイジングハート?」

『ハイ。 エイミィさんから頂いた探査システムは、確かにここ付近に反応を示しています。』

昼下がりの海鳴市、なのはは隣町にまで来ていた。

普段小学校に通う時にバスで通るくらいしかこの辺に来たことのないなのはは、迷路の様な

住宅街をキョロキョロと見渡しながらそちらへと向かっていた。

手には愛機レイジングハート、バリアジャケットを纏って実に目立つ格好であるが、人払いの魔法をかけているので人気は無い。

あまり得意ではない走り込みをしながら、足元によく注意して探す。

飛んで探せれば楽なのだが、生憎と対象は小さな生物、それに探査システムも急拵えなので、細かい位置特定ができないため、足で探すほかなかったのだ。

 

「ふぅ、ふぅ…もう少し、ちゃんと走っておくんだった…!」

 

なのはの細い脚は住宅街の道路に軽やかなリズムを打った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…止まれ。」

 

ミギーに案内されのは、ゴミ箱の置いてある路地の行き止まり。

そこに、野良犬が一匹、何かを貪っていた。

 

「…ここ? でも、何もいないよ?」

 

「いるじゃないか、目の前に。」

 

「え…ヒギッ?!」

 

よく見れば、その野良犬はいつもシンイチを狙って追いかけ回している個体だ。

だが、シンイチが悲鳴を漏らしていたのは、そちらでは無い。

その野良犬が貪っていたソレ…見たとき一瞬こそは、ただの生ゴミかと思っていたそれは、

 

「う、わああぁぁぁ…」

 

同じ野良犬、いや、野良犬だったモノ、肉塊であった。

 

目を背ける。これ以上見ていたら気分が悪くなりそうだった。

 

すると、野良犬はこちらに振り向き、振り向きざまにこう’’喋った’’。

 

『オマエ…ナカマカ…?』

 

「ああ、そうだ」

 

ミギーが答える。

右手と野良犬が会話する。

そんなシュールな光景に驚きを通り越して絶句するシンイチ。

 

『オマエも、シッパイ、カ…?』

 

「どうもそうらしいな。」

 

『おれ、モ、シッパイ、した…』

 

ギョロ。

 

白濁とした瞳が、シンイチを射抜いた。

同時にシンイチが抱いたのは、生理的悪寒。

蛇に睨まれたカエルというのは、こういうことなのだろう、シンイチは漠然と理解してしまった。

そしてそれ、が言ったのと、ミギーが叫んだのは同時であった。

 

『ノットッタセイブツニ、フマンガアル…!』

 

「逃げろ!」

 

反射的に、シンイチは逃げ出した。

走るのは得意ではない、というか、苦手であるシンイチにとっては酷な話だが

 

 

逃げるのは意外に得意だったりする。

 

 

当たり前だ、毎日のように追いかけ回されていたら、当然足腰も丈夫になる。

みるみるうちに距離を離したシンイチは、公園に転がり込んだ。

 

「ぜはっ、ぜはーっ。 こ、ここまできたらどう?」

 

「いや、ダメだ。あれを見ろ。」

 

ミギーが指差す先、上空に。

 

「ゲェェエエッ!?」

 

コウモリのような羽を生やした犬が滑空していた。

いや、正確には頭の部分が裂け、謎の超スプラッタなグロテスクな顔面になり、ミギーに何処と無く(と言ってもまだミギーの方が可愛いが)似ている生物が、両手を翼に変えて飛んでいた。

 

「あ、あんなこともできるの!?」

 

「みたいだな。」

 

さも他人事のようにつぶやいたミギー。

 

「ど、どうするの!? アレじゃどこいっても追いつかれ「大丈夫だ。」…え?」

 

いつ間にか、ミギーは両手を鎌へと姿を変えていた。

そして、右手の(右手に寄生していて右手というのは変だが)鉤爪で、何かをつかんでいた。

それは紅く脈打っていて、赤い液体が滴っている。

 

ピシャッ

 

ミギーはそれを何のためらいもなく握り潰した。

 

「心臓を引っこ抜いた。」

 

何の感慨もなく、ただ無機質にそう言うと同時に、ドシャリ、と音が鳴った。

 

駆け寄ると、頭から先が無くなった、ただの野良犬の屍体があった。

 

「勉強不足だ。あんなに自分の弱点をさらけ出しながら、しかもわざわざ狙い易い空中に行ってくれるとは。」

 

シンイチはこの時初めて、この右手に住む生物を怖いと感じた。

 

 

 

 

 

「確か…向こう…!」

 

なのはは走っていた。

レイジングハートが警報を鳴らしたかと思えば、空に羽を広げる犬がいるではないか。

そしてその犬が落下した地点へと走っていた。

 

そこは公園で、一人の少年が公園の手洗い場で手を洗っていた。

 

そして、そのすぐそばには…

 

「ぁっ…!?」

 

首から上のない、先ほどの犬がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ミギーさん強すぎでは…(´・_・`)
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