現在勤めている会社を退職し、再就職が決定したので引き継ぎや申請書類などに追われ遅くなってしまい申し訳ありません。
今後、新生活に慣れるまでの間また更新が遅くなるやもしれませんが、何とぞよろしくお願いします。
魔戒騎士…暁光牙と悪魔、グレモリー眷属が出会う数時間前。
夜になっても人で賑わう駒王町の繁華街に、一人の男が立っていた。
肩まで伸ばした銀髪を後ろで纏め、黒い修道服にも似た魔法衣を纏った男の顔は整っており、横を通り過ぎる人々はその端正な顔立ちに思わず振り返る程だ。
「此処が東の管轄か…」
地方都市とは思えぬ人のにぎわいに視線を巡らせながら、男が呟く。
その表情は感嘆に彩られており、故郷の田舎とは違う日本の建物の並びを興味深く眺めていた。
『でも、気をつけなさいよ?此処は中でも悪魔…グレモリーが管理する土地。あまり暴れると変に目を付けられるわ』
「解ってるよ、アルバ」
しかし、そんな男を現実に引き戻すように男の耳に…彼の胸元に提げられたロザリオから声が響く。
それに苦笑しながら男は答える。
端から見れば男が独り言を言っている様にしか見えない。
だが、それを訝しむ様子も無く人々が彼の横を通り過ぎるのは、彼の魔法衣の裏地に施された認識阻害の術式故だろう。
小さく息を吐き、気を引き締めた様に視線を鋭くすると、男…●●●●は賑わう雑踏の中へと消えていった。
-devil SIDE-
「…はぁ」
駒王学園の旧校舎にあるオカルト研究部の部室で私、リアス・グレモリーは溜息を吐いていた。
全ては昨日…イッセーに悪魔の駒が持つ特性を教える為にはぐれ悪魔…バイサーを討伐しに行った筈だったのに。
私たちが出会ったのは、謎の騎士だった。
バイサーらしき悪魔と圧倒する体術や剣の腕。
それに…彼が見せた黄金の鎧。
恐らく、彼が持つ
そう…まるで、何処かで彼が纏っていた黄金の鎧について聞いた覚えがあるような、そんな錯覚。
「…このまま考えても埒が明かないわね」
本当ならば、魔王である兄に管理を任された私たちで解決しなければならない問題なのだけど…問題は、それだけでは無かった。
彼から事情を聞く為に多少手荒になった時…彼を庇った人物。
それが、現在指名手配になっているSS級のはぐれ悪魔、黒歌だったのだ。
彼女が何故人間と一緒に行動しているかは解らないけど、指名手配されているSS級のはぐれ悪魔が絡むとなれば、私たちだけで解決出来るものではない。
小さく溜息を吐きながら通信用の魔法陣が書かれた紙を取り出すと、私は魔力を通し紙に語りかけた。
「…お兄様ですか?リアスです」
通信の相手は私の兄であり、現四大魔王の一人…サーゼクス・ルシファーだ。
『リアスか、人間界はどうだい?』
「えぇ、それなんですが…」
通信用の魔法陣から落ち着いた男性…兄の声が聞こえると、私は事のあらましを説明した。
『…それは、本当なんだね?』
「はい。確かにあれは黒歌でした」
全てを話した後、サーゼクス様は何やら考えるような間を空けた後、私へと話しかけてきた。
途中、『まさか彼…いや、血族の者か?』と呟いているのが耳に入ったけど、私には何の事か理解出来なかった。
『…解った、今度グレイフィアを其方へ向かわせよう。リアスとソーナ君達はこの件にはあまり関わらない様に頼むよ』
「…はい」
その後、サーゼクス様の言葉に何処か釈然としない返事を返し、私は通信を終えた。
言葉の端から感じる事が出来たが、彼は何かを知っているのかも知れない。
けれど、それを話してくれないのが少し歯痒かった。
「…これからどうなるのかしら」
窓の外から覗く星空を眺め、私は小さく呟いた。
-kouga SIDE-
「まったく、まさかグレモリーに出会うなんて光牙はツいてないにゃん」
暁邸に戻って早々、黒歌は溜息を吐きながら俺を見た。
確かに…まさか町を管理する悪魔に出会すとは思わなかった。
「そうだな…俺だけならともかく、黒歌の事まで…」
小さく溜息を吐きながら、俺は黒歌を見つめる。
いくら閑岱で修行を受け、守りし者となっても、悪魔の中では黒歌は未だお尋ね者である事に変わりない。
この事が原因で追っ手が掛かってしまっても無理は無いのだ。
「私の事は気にしないでいいにゃ。私は魔戒法師として…守りし者として、白音や人々を守るだけ」
そう言って柔らかく微笑む黒歌を見て、俺は拳を握りしめた。
「…解った。だったら、何も言わないよ」
黒歌がそういうのなら、俺から言う事は何も無かった。
ただ…もし悪魔が、再び黒歌を狙い襲ってくるのなら。
その時は…俺が黒歌を守るだけだ。
-other SIDE-
「神よ…罪深い私をお許しください」
暗い部屋の中、一人の男の声が木霊した。
短く切り揃えた金髪に黒い修道服を纏った男は、紅く濡れた手を組み、神に祈りを捧げる。
側に横たわるのは、腹部を裂かれ、床面に腸をぶち撒けた女性の死体。
彼女は、何処にでも居る普通の女性だった。
教徒ではなかったが、ボランティアで来ては孤児院の子供達に優しく接してくれる…笑顔の奇麗な女性だった。
だが…男は見てしまった。
女性が悪魔と契約する、その瞬間を。
悪魔は人を堕落させる、滅すべき存在。
そのような存在と契約を交わす女性に、男の箍は外れた。
異教徒と罵り…幾度となく神に祈りを捧げ、子供達を抱きしめたその手で、女性を殺めてしまった。
「我らが父よ、この穢れた者の魂を清め、御身の元へと導きたまえ」
それは、純粋すぎる信仰心。
もはや、狂信とも呼べる心からの行動だった。
穢れた魂は、死を以て救済し、父なる神に清めてもらうべき。
男はそれこそが正しいと信じ込んでいた。
そんな時だ。
『我が子よ』
暗い室内に、低い声が響いた。
「っ…誰だ?!」
『畏れるな、我が子よ。お前の願いは我が元へ届いた』
突如聞こえた声に男は身構えるが、再び声が響いた時…男の顔は、歓喜に歪んだ。
「あなたは…まさか、神なのですか?」
『そうだ、我が子よ…。お前に我が使徒となる力を授ける、その力で穢れた魂を清めていくのだ』
闇の中に響く声に、男の顔は狂喜に歪む。
信仰する神が自分を見てくれるだけではなく、使いとしての力を授けてくれる事への悦びに。
その後ろ…床に横たわる女性の影から黒い闇が這い出て、己の元へ歩み寄る事にさえ気付かず…。
-??? SIDE-
東の番犬所に辿り着いた俺…●●●●は今、神官であるエィナに謁見していた。
「貴方が異国の管轄から来た魔戒騎士ですね」
「はい、●●●●と言います」
エィナの言葉に小さく一礼すると、彼女は俺を見て口を開いた。
「本来、異国から騎士を招く事は無いのですが…この管轄が棲む地。くれぐれも気をつけて使命を全うしてください」
昨夜アルバにも同じ事を言われたよ、と内心苦笑していると、エィナは紅い封筒を取り出し俺へと差し出してきた。
「来て早々ですが、貴方にはこの指令に行って頂きます」
それを受け取りライターで魔導火を灯すと紅い封筒…指令書が燃え、代わりに空中に魔導文字が浮かび上がる。
『狂える信心に潜む闇あり、直ちに討滅すべし』
狂える信心…東の管轄で始めての指令がまさか狂信者相手とは…。
「まぁ、やるだけだよな」
小さく呟くと俺はエィナに一礼し、番犬所から出た。
『それにしても、どうするの?』
「ホラーの探知はアルバに任せるとして…忘れてないか?ここは日本だぜ」
町中を歩いているさなか、不意にかけられたアルバの質問に不敵に笑いながら答える。
そう…此処は日本だ。
日本は仏教と神道という古来からの信仰がある地。更に言えば信心深い人間が少ない国らしい。
そんな国に狂信者、といえば答えは一つ。
「この管轄にある教会を調べれば、自ずとホラーに辿り着く筈だ」
-horror SIDE-
人もまばらになった夜、マンションの一室で、一人の男が小さく呟いていた。
手にしているのは幾何学的な模様の書かれた一枚の紙。
そこには『あなたの願いを叶えます』と書かれている。
それは、人間界で悪魔が人間に召喚される為に配っている簡易の魔方陣だ。
しばらく呟いていた時、部屋の呼び鈴が鳴らされた。
自身の作業が中断された事に内心苛立ちながらも男が玄関に行き扉を開けると…其処には、一人の男が立っていた。
「こんばんは…悪魔と契約を結ぼうとする愚かな人の子よ」
黒い服…修道服と呼ばれるそれを纏う金髪の男は、和やかな笑顔を浮かべて男を見た。
一見すれば、何処にでもいるような宗教の勧誘にでも見えるだろう姿。
だが…声を掛けられた男は、目の前に立つ神父に途轍もない寒気を感じた。
心臓を鷲掴みにされるような…そう、生物的本能による恐怖を。
『なんだか解らないが、目の前に立つ男は危険だ』と脳が警鐘を鳴らすが、思いに反して身体が言う事を聞いてくれない。
「、ぁ…」
男の口から出てくるのは、喉から絞り出したような小さな声。
しかし、それを意に介さず、神父は一歩、また一歩と男へと歩いていく。
「我らが父は仰った。罪深き命を我が前に捧げよと」
神父の身体が軋む音と共に変貌を遂げ始める。
メキメキと背中が盛り上がり、皮膚を、修道服を突き破って何本もの小さな十字架が生え。
身に纏っていた修道服そのものも、次第に皮膚のような生物的なものへと変わっていく。
顔面の皮膚は溶けたようにグズグズと地面に落ち、皮の剥がれた顔面が曝け出された。
男は自分の目が信じられなかった。
普通の神父だった男が、異形の怪物へと変貌を遂げてしまったのだ。
「さすれば魂は救われ、父の寵愛を授かると…!」
恐怖で逃げる事すら叶わない男が最期に見た光景
それは…怪物に成り果てた男が鋭い十字架のような形となった右腕を振り下ろす瞬間だった。
-devil side-
「はぁ、はぁ…」
俺、兵藤一誠は深夜の町内を自転車で走っていた。
何故かというと…俺は遂に悪魔として契約を取るようになったからだ。
だけど…とても重要な問題が発覚したのだ。
悪魔は普通、契約したい人間の元へは魔方陣を使って移動する。
しかし…俺の魔力というのがとても低く、転移する為の魔力がないらしい。
その為、俺は悪魔史上初、契約者の元へ自転車で移動しているのだ。
「ここか…」
学校から自転車を漕いで20分掛けて辿り着いたのは、一棟のマンションだった。
ゆっくりと階段を上がり、目的の部屋の前に到着した俺は呼び鈴を押した。
「すみませーん、グレモリーの悪魔ですけどー」
我ながら、どんな挨拶なんだと思う。
思わず恥ずかしさから顔が赤くなりそうになるのを堪え、俺は住人が出てくるのを待った。
でも…何分待っても扉が開く事はない。
(居ないのかな…)
そう思った時だ。
俺は、部屋のドアが微かに開いている事に気付いた。
「鍵がかかってない…?」
ゆっくりと扉を開けて中に入ると、部屋の中は電気も点いていなく真っ暗だった。
「すみませーん…誰かいますかー…?」
ゆっくりと声を掛けながら部屋の中を歩いていく。
恐る恐るリビングへと入った時だった。
ピチャ…。
何か水のような物を踏んだ感触と同時に、違和感を感じた。
足にまとわりつく滑り気と生暖かさ。
それを感じながら真っ暗なリビングへと視線を向けると…。
「!なんだよ…これ…」
腹を裂かれ、内蔵を露にした人間の死体が転がっていた。
「っうぶ…」
むせ返るような鉄の匂いと死体を目の当たりにした事から吐き気が込み上げるのを必死に堪える。
「おや、これはこれは…運命とはこの事でしょうか?」
必死に吐き気を押さえる俺の耳に水に足を踏み入れるような音と共に男の声が聞こえた。
振り返った先に居るのは、黒い服を着た金髪の男だ。
だけど…悪魔になって夜目が利く様になった俺にはハッキリと見えた。
男の右手を濡らす、紅い血が。
「アンタが…やったのか…?」
「えぇ。彼は愚かにも悪魔と契約を結ぼうとしたので、私が父の元へと彼を送りました」
フラつきながらの俺への問いかけに、男はニィ…と顔を歪める。
狂気を帯びた笑顔を浮かべた男は、ゆっくりと俺の方へと歩いてきて
「悪魔が此処に来るとは思いませんでしたが…これも父の思し召しでしょう」
右腕を異形のものへと変え、俺の右足に突き刺した。
「っづぁ…ッ?!」
突如として右足に襲いかかる鋭い痛みと焼けるような熱感に思わず声を上げる。
でも、その声すら男にとっては自分の喜びを高める物なのだろう。
「いい声ですねぇ…我らを誑かし、父に反する愚かな悪魔に相応しい惨めな声です」
そう言うと、男はあろう事か鋭い刃と化した右腕をより深く突き刺し、グリグリと肉を抉ってくる。
血が噴き出し、身体を悪寒と恐怖が襲う中、俺は男を睨みつけた。
「ふざけるなよ…アンタが誰かは知らないけど、人を殺して悦ぶヤツなんて居ない…!」
「…悪魔の分際で私に説教ですか?」
俺の言葉に男は狂笑を止めると、異形となった右腕を引き抜き、俺の腹を蹴り飛ばす。
「ッゲホ…ッ!?」
「穢らわしい悪魔が…父なる神に選ばれた私ニ随分と偉イ口を…!」
腹部を襲う鈍痛と右足の激痛に意識が朦朧とする俺を見て、男はワナワナと身体を震わせる。
それと同時に、男の身体は次第に姿を変えていった。
纏っていた黒い服は布ではなく、生物の皮膚に似たものへ変わるのと同時に体中から小さな十字架が生え。
顔面と左腕は肉が落ち、まるで腐敗した死体のようなものへと変わった。
それは、まるで…廃工場で見た、あの化物に似た異形の姿だった。
「穢らワシイ悪魔め、私が貴方ヲ父ノ元へト送りましョう!」
異形の怪物となった男が右腕を振り上げた瞬間を見て、俺は死を意識した。
咄嗟に目を瞑り、襲い来るであろう死を覚悟した瞬間…男の右腕は俺に振り下ろされる事は無かった。
代わりに耳に届いたのは、金属音。
「そこまでだぜ、穢らわしいホラーさんよ」
続いて聞こえてきた声に、閉じていた目を開いた俺が見たものは…。
怪物となった男の右腕を剣で受け止める、黒いコートを着た銀髪の男の姿だった。
-??? SIDE-
アルバによる探知の結果、一件のマンションに辿り着いた俺は、強い邪気を感じてある一室へと迷う事無く突入した。
其処で目にしたのは、ホラーに殺されたであろう男の死体と、今まさに殺されようとしている同年代の少年の姿だった。
「そこまでだぜ、穢らわしいホラーさんよ」
一足で素早く少年とホラーの間へ身体を滑り込ませた俺は、十字架型の刃と化したホラーの右腕を魔戒剣で受け止め、鋭い眼光で睨みつける。
「おや、誰カは知りマセンが、神聖ナ勤めの邪魔ヲシナイで戴きたイ…!」
「はっ、人間を殺すことの何処が神聖なお勤めなのかねぇ…!」
邪気を纏わり付かせた右腕に力を込めるホラー…グロリアの一撃を弾き返し、その腹へと蹴りを叩き込みながら軽口を叩くと、俺は改めて少年を見た。
茶色がかった黒髪に茶色い瞳、と東洋人特有の特徴をした少年の姿はどう見たって普通の人間にしか見えない。
だが。
『この子…悪魔だよ』
「…そうか」
アルバが少年から感じる独特の気配から、その正体を割り出した。
その言葉に小さく返答すると、俺は再びグロリアへ向き合い、刃の腹へ左手を這わせ構えを取る。
「何故だ…何故、貴様ハ悪魔の味方をスル?!」
「知らねぇよ、そんな事。俺はただ…ホラーが誰かを襲おうとするのを止め、狩るだけだからな」
俺の様子に激昂し、体中から小さな十字架を飛ばしてくるグロリアの攻撃を弾き、少年を守りながら俺は眼光をより鋭い物へと変える。
コイツの言動から解った事だが…どうやらグロリアは、憑依したホラーが宿主の狂気とも呼べるほどの信仰心に引っ張られている。
この手のホラーは倒しやすいが…同時に面倒でもある。
『コイツが変な事をする前に、終わらせなきゃ!』
「あぁ…!」
最後の十字架を弾き終える勢いをそのままに、俺は剣で八の字を描き…自分自身を挟む様に左右の空間を斬り裂く。
斬り裂かれた空間は円形の光を放ち、魔界へと繋がる門となり。
そして…俺の身体は白銀の鎧に包まれた。
西洋の甲冑にも似た鎧は月光のように白銀に輝き。
狼を模した兜は目の前の
手にした十字架を模した
邪悪なる
其の名は。
『ハァッ!』
鎧を纏った俺は、グロリアへと突貫し…マンションの窓をぶち破り、ヤツと共に空中へと踊り出る。
「っ、オのレえェぇぇェェェエぇェェ!」
7Fの高さから落下する中、グロリアは怒りを露に背中から翼を生やし、俺に向かって襲いかかってくる。
その姿を兜に隠された瞳で睨み、閃刃剣を構えると、俺は…ベランダの壁を足場に跳躍し、間合いを一気に詰め、刃に蒼い炎を纏わせた。
一閃。
グロリアと俺の影が、満月を背景に交差する。
「っ…何故、父ニ選ばれタ…私ガ…!」
重力に従いアスファルトの地面へ落下する中、俺の剣により両断され、身体が燃え逝くグロリアの言葉が耳に届いた。
「…たとえ信心深くても、人を殺したアンタに神様は手を差し伸べねぇよ。せいぜい死神か…陰我に惹かれたホラーだけだ」
ヤツの耳に、俺の言葉が届くかは解らない。
だが…俺は、ホラーに憑かれた哀れな男に小さく呟き、着地と同時に鎧を解除した。
-kouga SIDE-
黒歌の妹が仕えているグレモリーとの出会いから数日後の朝、俺と黒歌は暁邸でゲートの封印に向かう準備を行っていた。
互いがそれぞれ得物の点検をしている最中、珍しく呼び鈴の音が邸宅に響き渡る。
「…誰かにゃ?」
「俺が行こう」
魔導筆を手に怪訝な表情を浮かべる黒歌に小さく笑うと、俺は剣を机に置いて玄関へと向かった。
扉を開けた先に居たのは、一人の男。
肩まで伸びているであろう銀髪を後ろで結び、首からは十字架を掛けている。
一見すれば、宗教に関わる人間とも見えるが…纏っている気迫は俺と同じ魔戒騎士のものだった。
「初めまして、黄金騎士…暁光牙」
男は流暢な日本語を喋って俺へと右手を差し出してくる。
「俺はフリード・セルゼン。東の神官、エィナ様の命で貴方と共にこの管轄を担当する事になりました」
そういって男…フリードは俺と、その後ろで固まっている黒歌を見て小さく笑った。
ジャンヌ、アガタ、マルガリタ。
聖女ってのは逸話や伝説が付き物だ。
勿論、それと同時に非業の死ってのもな。
次回『聖女』
その光、黒い翼に奪わせるな!
ホラーファイル No.4
グロリア
狂信とも呼べる信仰心の深さ故に悪魔と契約した人間を殺してしまった神父に憑依したホラー。
本来ならばその魂を喰らい人間を襲うつもりだったが、男の狂信がホラーの意思を凌駕した為、無作為に悪魔と契約した人間や悪魔を襲い喰らわずに殺すだけの化物となった。
十字架状の刃を持つ右腕と全身から生えた十字架が特徴であり、それ以外は腐敗した骸に似た外見をしている。
右腕での近距離戦、全身から十字架を飛ばす事で遠距離戦と行えるが上記の背景上、十全な力を発揮する事は出来なかった。