佳奈多アフター~It's a Wonderful Cross Life~ side Kanata   作:月の海

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恋とニートと誕生日 前編

初めの頃は、慣れるまでただただこそばゆい気持ちでいっぱいだった。

 

隣の部屋の理樹の寝息を感じてなかなか寝付けないこともあった。

 

葉留佳は全く気にかけていないようだったけど―

 

ようやく慣れてきた今、3ヶ月の時が流れていた。

 

敷地に立っていた銀杏の木の葉もすっかり緑色から黄色へ移り変わって秋を感じさせてくれている。

 

理「じゃあ、行ってくるよ」

 

理樹が少し早めの手袋をつけて玄関に立った。

 

同棲が始まってすぐに理樹はバイトを始めた。

 

当面のお金は私達の両親が工面してくれると言っていたのだが、甘えてばかりでは悪いと働き始めたのだった。

 

私も働こうかと切り出してみたが今まで頑張ってきたんだからとやんわりと断られてしまった。

 

その分家事を任されたのでそちらを頑張ろうと思う。

 

佳「いってらっしゃい、頑張ってね」

 

軽くキスをし、理樹を見送った。

 

理樹の出掛けて行った後を少しばかり見つめ、小さく溜め息をついた。

 

日めくりカレンダーが示すのは10月13日―

 

―私達の誕生日だった。

 

理樹はこのことを知らない。

 

自分が言っていないのだから知らないのは当然だ。

 

それでも恋人には祝ってもらいたいという矛盾した感情を抱いていた。

 

prrrrrr

 

思索にふけっていると不意に家の電話が鳴った。

 

佳「もしもし、二木と三枝と直枝ですが」

 

晶『おう俺だ、つかその挨拶はどうなんだ』

 

佳「事実ですから。突然どうしたの?」

 

晶『どうしたもなにも誕生日だろ?おめでとさん』

 

佳「覚えててくれたんだ…」

 

晶『大事な娘の誕生日だからな』

 

佳「…ありがとう」

 

思いがけない祝いの言葉に温かい気持ちになった。

 

晶『片割れにも祝いを言いたいんだが』

 

佳「無理ね、まだ寝てるわ」

 

晶『そうか、まったくいらないトコは似やがって』

 

佳「えぇ、その通りだわ」

 

晶『手厳しいな』

 

電話越しに苦笑いしているのが分かる。

 

晶『そういや小僧はお前達が誕生日って知ってんのか?』

 

佳「知らないと思うわ」

 

晶『ったくあの甲斐性無しめ』

 

佳「私が言わなかったんだもの仕方ないわ」

 

晶『いいのか?』

 

佳「えぇ」

 

晶『ならいいけどよ。そろそろ仕事に行くからあいつにもおめでとうって言っといてくれ』

 

佳「わかったわ」

 

晶『じゃあな』

 

ツーツーツー

 

電話が切れてから私はもう一度溜め息をついた。

 

もし今日が誕生日だと打ち明ければ理樹は心から祝ってくれるだろう。

 

でも、どうしても催促しているような気がして話すことが出来なかった。

 

 

 

 

 

いつまでも気にしているわけにもいかない。

 

私は私のすべきことしなければならない。

 

気持ちを切り替えて私は寝室の襖を開けた。

 

佳「葉留佳、いつまで寝てるの!起きなさい!」

 

布団の山になった部分を揺すった。

 

そう、目下最重要事項はこの子。

 

私の妹、三枝葉留佳。

 

最初は働くようなことを言っていたこの子は、3ヶ月経った今見事にニートと化してしまっていた。

 

葉「ん~後一時間~」

 

もぞもぞと動く葉留佳を思わずずっと見ていそうになったが我に返って布団を剥ぎ取った。

 

佳「お皿洗いたいから早く食べちゃって」

 

葉「ふぁ~い」

 

葉留佳は目をこすりながらたどたどしい足取りで洗面所に向かっていった。

 

……大丈夫かしらこの子。




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