佳奈多アフター~It's a Wonderful Cross Life~ side Kanata 作:月の海
ともはいろいろあって疲れたんだろう、すぐに寝てしまった。
朋「俺がいない間にそんなことになってたんだな」
河「大変だったんだね」
佳「まぁその分絆は深まったんじゃないかしら?……パパと河南子以外は」
葉「そうですね、たぶん私達にもちゅーしてくれるくらいには深まったと思いますよ……パパとカナ以外は」
理「あれだけ懐いてくれると照れくさいね……パパと河南子は分からないかもしれないけど」
鷹「だそうだよ、河南子と兄…もといパパ?」
朋「ホントに悪かったよ、だが俺の言い分を聞けば納得してもらえるはずだ」
智「なにをしていたんだ?」
朋「ともの母親と会ってきた」
全「「!!」」
朋「お前達もとものアパートは見たんだろ」
佳「えぇ、もう引っ越したって聞いたけど」
朋「俺もそれ聞いて駄目かと思ったんだが、とりあえず幼稚園に行ってともの母親が映ってる写真もらってきたんだ」
鷹「それは盲点だったね。でもどうやって見つけたの?」
朋「ただお前達の家の前で待ち続けた。とものことが気になればきっと現れると思ったからな」
理「途方もない話だね」
朋「あぁ、でも来たんだ」
葉「それでそれで?」
朋「とりあえずともと一度だけ会ってもらう約束をしてきた。定期的に写真を送るのが条件」
智「……説得はしたのか?」
朋「取りつく島もなかった」
智「身勝手すぎる!縁を切ったんじゃないのか…」
朋「声のボリュームを落とせ、ともが起きるぞ」
智「そんな親とはもう会わせない方がいい。ともが傷つくだけだ」
朋「決めるのはともだ」
智「お前はともが傷つくのが分かってて会わせるっていうのか」
朋「あぁそうだ。そしてひとつ言っておくぞ、ともの傷を勝手にお前が決めるな」
智「だが…」
佳「岡崎さんの言う通りよ。それにともが母親に会いたがっていたのは貴女ももう見たでしょう?」
智「……私はどうしてればいい?」
佳「黙って耐えなさい」
私は一番難しいことを強いた。
智「……うん…わかった、たえる…」
この日はこれで解散となった。
ともは母親と会うことを望んだらしい。
お隣に行くと支度していた。
佳「行くのね」
智「……あぁ」
やはり智代さんは気が進まないらしい。
智「佳奈多、一緒に来てくれないか?それでもし私が暴走しそうになったら止めてほしい」
佳「もちろん、ここまで来て置いていかないでよ。最後まで面倒見るわ」
それから間もなくして全員の支度が整った。
朋「鷹文、河南子、留守番よろしく」
河「ほいほい」
鷹「頑張ってきてよ」
智「うん…いこう」
と「うんっ」
智代さんはともの手を引いた。
これから待つ辛さを知らないその小さな手を。
待ち合わせの場所はともが住んでいたアパートの隣の公園にしたそうだ。
予定の時間より早く着いたためベンチに座って待つ。
智代さんは何度も時計を確認しそわそわと落ち着きがない。
佳「少しは落ち着きなさい」
智「わかってはいるんだが…」
朋「来たぞ」
岡崎さんの視線の先に女性が現れる。
その人は私達の前まで来ると深くお辞儀した。
確かに岡崎さんのもらってきた写真に写っていた人だった。
と「ママーっ!」
ともは母親に向かって走り出そうとするが智代さんが手を繋いだままでいるのでそれが出来ない。
理「智代さん、手を」
理樹にそう促されてようやく智代さんはその手を離した。
ともは母親に駆け寄り腰のあたりに抱きついた。
その時のともの顔は安心しきったいい笑顔だった。
そして、それは私達には向けられたことのないほどの笑顔だった。
震える智代さんの手を今度は私が掴む。
母親も優しい笑顔で受け止め、手袋を外し娘の頭を撫でる。
なぜそんな笑顔で娘を手放すことができるんだろう。
私は憤りと諦観が混ざったような感情でその母娘を見つめていた。
母親「とも」
母親がともに諭すように話しかけた。
母「私はあなたに人並みの幸せも与えられなかった。ごめんね、とも。あなたのこれからの幸せを…祈ってます」
…え?
母親はそれだけ言うと笑みを残して背中を向ける。
そのまま遠ざかっていく母親の後ろ姿をともは呆然と見ていた。
母親を抱いていた手は上げられたまま宙に浮いている。
すぐそばでざっ、と土を蹴る音がした。
私の手を振りほどいて智代さんが駆けていた。
ともの体を抱き、宙に浮いたままの手を握り締めた。
智「もう、終わったんだ…とものつらいこと、全部終わったから…これからは楽しいことだけが待ってるから」
両方背を向けているので表情は読み取れない。
智「私と過ごす毎日が待ってるから…絶対それは楽しいから…な、とも…だから…もう安心しろ…」
理樹も岡崎さんもその様子を黙って見守っていた。
智「不安なことなんて何もない…後は全部楽しいから…な、とも…」
今終わったんだ。
―親子の生活が。
そして始まるんだ。
新しい生活が。
理「あ……雪」
空を見上げると雪の粒が私の頬にとまり溶けていった。
この冬初めての雪だった。
初雪がこの悲しい思い出も白く染め上げればいい。
智代さんとともを見て、柄にもなくそんなことを考えていた。