佳奈多アフター~It's a Wonderful Cross Life~ side Kanata 作:月の海
いつもの様に私達のところに来た智代さんだったが相談の内容はいつも通りとはいかなかった。
佳「何故?」
智「わからない。ただ花火の音がする度出掛けて行っては怪我して帰って来るんだ」
ここ数日花火が上がっていたのは知っている。
季節はずれなので酔狂な人がいるものだと印象に残っていた。
智「その度河南子にやられたと言うが河南子はそんなことをする子じゃないからな」
佳「それでも岡崎さんはわざわざ河南子のせいだってことにしたんでしょ?察してあげてもいいんじゃない?」
岡崎さんだって智代さんが嘘だってわかっていることを承知の上でやっているのだろう。
智「あぁ、だから私から直接朋也から聞き出そうとは思ってない。だから頼みに来たんだ。」
佳「何を?」
智「佳奈多が限界だと思ったとき、朋也を止めてくれ」
日も暮れた頃、一発の花火が打ち上げられた。
それから間もなく隣から誰かが出て行った。
おそらく岡崎さんだ。
佳「それじゃあ行くわよ」
理「うん」恭「ああ」真「おう」謙「わかった」唯「うむ」
それぞれが返事をする。
喧嘩しに行っている以上それに介入するにもそれなりの武力が必要になるのでこのメンバーでの行動になった。
真「にしても何であいつ喧嘩なんかしてんだ?どうせやるなら俺とやりゃいいのによ」
唯「戦闘狂の真人少年とは違うタイプだからぜいぜい何かを守るためといったところだろう」
恭「熱いじゃないか!護るための戦い、いい響きだ」
理「また漫画の影響かな」
謙「たぶんそうだろう」
テンションの上がっている棗先輩を見て、溜め息気味の理樹と宮沢。
唯「どうやら目的地に着いたらしい」
辿り着いたのは雪合戦したあの河原だった。
岡崎さんはそこにいた男達と一言二言交わすとたくさんいた中の一人と土手から降りていった。
恭「ここからじゃ見えないな」
佳「この際土手まで上がりましょう」
男達から少し離れたところから土手に上がるとファイティングポーズをとる岡崎さんが見て取れた。
見ている私達に気付いた人がこちらに近づいてくる。
男「アンタ達、野次馬なら帰んな」
恭「あそこで戦ってる奴の知り合いだ」
男「アンタらもか」
佳「もって?」
男「そこにアンタらと同じくアイツの応援に来てる奴がいるぜ」
男が指差すその先にいたのは河南子だった。
野次馬でないことがわかった男は戦いを見に戻った。
私達はとりあえず河南子のところに行った。
河「あ、ちっす」
佳「何をしているの?」
河「観戦っすよ、愛の戦士の」
視線の先には岡崎さん。
河「先輩に任しとけば瞬殺なのに意地張って頑張ってるんだよ、俺が一人でやらなきゃって」
唯「馬鹿だな」
河「まぁ多分今日で終わるよ。相手あの人より滅茶苦茶強いし」
気付けば岡崎さんが仰向けに倒れていた。
佳「ちょっ!?」
河「あぁ大丈夫、あれくらいじゃあの人すぐ起きるから」
河南子の言葉通り、岡崎さんはすぐさま起き上がり構える。
恭「…………」
理樹を含め棗先輩達は何も言わずに戦いを黙って見続けていた。
何度かダウンしふらふらになりながらも岡崎さんは戦いを止めようとしない。
佳「もう止めた方が」
河「そろそろヤバいな」
河南子もだんだんと焦りの表情を見せた。
河「おい、もうやめとけ」
河南子が遂に制止の言葉をかけた。
朋「やめられない。俺があいつらを守らないと」
岡崎さんは止める気はないらしかった。
男「そろそろ終いだ」
対戦相手の男が岡崎さんの腹に拳を放った。
朋「かはっ――!!」
河「まずいっ!」
相手は今の一撃で動けなくなっている岡崎さんの頭部に大振りのパンチを繰り出そうとした。
見ていられなくなり思わず目を閉じた。
ザッと誰かが走り出す音がした。
間もなくして鈍い音が響く。
それと同時に集まっていた男達の怒声が聞こえた。
開いた目に映ったのは岡崎さんと相手の間で倒れている理樹だった。
佳「理樹ッ!!」
駆け寄ろうとしたが棗先輩に止められた。
恭「真人、謙吾」
真「おう」謙「あぁ」
短く返事する二人は怒り心頭といった様子だ。
宮沢は理樹の方へ駆け寄り、無事を確かめると抱きかかえてこちらに帰ってきた。
佳「理樹はッ!?」
謙「目立った外傷はない。気絶しているだけだと思う」
佳「…よかった…」
とりあえず怪我らしい怪我がなかったのは幸いだ。
私は緊張の糸が切れたようにその場にへたり込んでしまった。
朋「おい、お前何やって―」
岡崎さんの声に顔を上げると井ノ原が対戦相手と岡崎さんの間に立ち構えていた。
男「どういうつもりだ?」
真「選手交代だ。お前の相手はこの俺だ」
男「手加減はなしだ」
井ノ原の体躯を見て鍛えていることが分かったのだろう、先程までとは明らかに威力の違うであろうストレートを放った。
井ノ原はそれを避けようともせず腹に直撃する。
真「仲間に手をあげる奴ぁ―」
両手を組み、振り上げる。
真「この俺が許さねぇッ!!」
振り下ろされたハンドハンマーは男の頭にクリティカルヒットし、それきり動かなくなった。
真「次はどいつだ!」
井ノ原が土手を睨みつけると一人の男が現れた。
真「お前か」
男「いや、こいつを回収しに来ただけだ」
真人の足元でのびている男を指差しながら言う。
男「すまなかったな、庇いに来たとはいえ無関係の奴をまきこんじまった。このタイマンは今日で終わりにする」
井ノ原に向かって頭を下げた。
真「あいつらはそれで納得すんのか」
男「しなくてもさせるさ」
男は倒れている人の腕を取りそのまま引きずって行った。
そして「そこの気絶してる兄さんが起きたら俺の代わりに謝っといてくれ」とだけ言い残し、土手にいた残りのメンバーも引き連れていなくなった。
残っているのは私達だけ。
恭「真人、思いきりやれ」
井ノ原に指示を出していたが何のことか分からなかった。
真「言われなくてもやる」
井ノ原は岡崎さんの目の前に立ち―
ドゴッ!!
岡崎さんの頬を力一杯殴った。
朋「ッてぇな!!何しやがる!!」
恭「分からないのか?なら謙吾、次はお前にまかせる」
謙「まかされた」
今度は宮沢が岡崎さんの前に立つ。
謙「歯、食いしばれ」
言い終わるのが早いか遅いか宮沢が拳骨で井ノ原が殴った方と反対の頬を殴る。
恭「朋也、お前は一人で抱えすぎだ。何もかも一人でこなそうとするのは傲慢だ」
朋「それでも俺がやらなけりゃ」
唯「それで理樹くんは傷付いたのだよ」
言いながらアッパーをきめる来ヶ谷さん。
岡崎さんは星空を眺めるように仰向けに倒れたまま動かなくなった。
朋「……ならどうすりゃ良かったんだ?」
恭「簡単だ、俺達に相談しろ。そうすりゃ全力でお前の力になってやるぜ」
朋「じゃあ次からそうする」
恭「そうしろ」
朋「さっそく頼みがあるんだが」
恭「なんだ?」
朋「起こしてくれ、動けん。雪に寝そべってるからすげぇ寒い」
恭「いい薬だ。しばらくそうしてろ」
朋「…そうだな。少しこうしてから帰る」
恭「じゃあ俺達は帰るぞ。理樹を連れてかないとならないしな」
朋「あぁ」
誰か残った方がいいのではないかと思ったが来ヶ谷さんに止められた。
「男には情けをかけてはいけない時がある。それが今だ」そうだ。
男のプライドというやつかしら?
よく分からないけど。
私達は岡崎さんを残し家に帰った。
岡崎さんが戻って来たのはそれから二時間も経った後だった。
今回のオチというか、後日談。
智代さんの家で待機していると岡崎さんが帰ってきた。
両頬を腫れあがらせて。
おろおろする智代さんに岡崎さんは井ノ原を指差して言った。
朋「こいつにやられた」
そこで察した宮沢がそれに乗った。
謙「確かに岡崎の頬はこいつが殴ったな」
それを聞き、智代さんは目を細めた。
智「真人、理由があってのことだろうが一発だけ許してくれ」
真「へ?」
バチィィィンッ!!
智代さんが平手打ちをすると乾いた音が響き渡り井ノ原は動かなくなった。
全「「………………」」
智代さんを岡崎さん関係で怒らせてはいけないわね。