佳奈多アフター~It's a Wonderful Cross Life~ side Kanata   作:月の海

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消灯時間が過ぎても私はそこにいさせてもらっていた。

最早いつものことなので誰も気に留めることはない。

ベッドの隣が私の特等席だった。

月明かりに照らされて彼の姿が浮かび上がっていた。

同居し始めた頃よりも髪の伸びた彼は、その中性的な容姿から女性にも見える。

しかも、割と美人な部類に入るんじゃないかと思う。

彼女としては少し複雑なのだけれど。

そんなふざけた感傷ができるくらいの時間が経っていた。


母をたずねて約何里? 前編

朋「ともの母親を探したい、手伝ってくれ」

 

岡崎さんがそう言って協力を頼みに来たのはあのデートからそう間の空かない内のことだった。

 

今日は棗先輩と神北さん、それに来ヶ谷さんと西園さんがウチに来ていた。

 

なんでもあのデートの日、岡崎さん達は写真を送る件でともの母親と会っていたらしい。

 

その上で何故ともの母親がともを手放すに至ったのか知りたいと思ったらしい。

 

佳「当てはあるのかしら?」

 

朋「いや、まだ何も。ここ数日図書館から借りた本で書体について調べたけど何も掴めなかった」

 

理「書体?」

 

朋「手がかりという手がかりはともの母親から届いた手紙だけなんだがそれが今時珍しく筆で書かれてたんだ。それで調べてみた」

 

岡崎さんは懐から封筒を取り出し手紙を私達に見せた。

 

恭「確かに筆書きだな」

 

棗先輩が見たままを言う。

 

ふむ、と来ヶ谷さんが何かに気付いたような反応を見せた。

 

小「ゆいちゃん、何かわかったの?」

 

唯「あぁ、そしてゆいちゃんはやめてくれ…」

 

いつもの様に冷や汗をかきながら続けた。

 

唯「この紙は恐らく雁皮紙だろう」

 

朋「雁皮紙?」

 

葉「なんですかそれ?」

 

美「ジンチョウゲ科の植物である雁皮から作られる和紙のことです」

 

唯「流石博識だな。補足するとこの紙が作られているところはあまり多くはない。この辺りの近くであれば…」

 

来ヶ谷さんが言った地名をメモすると急いで隣の部屋に戻っていった。

 

私達も後を追っていくと鷹文君の喜びの声が出迎えた。

 

鷹「やった!1件のヒット!完全に絞れたよっ」

 

皆でパソコンの画面を覗きこむと地方紙のニュースが載っていた。

 

朋「ここにいるんだな…」

 

唯「おそらくな」

 

智「ただいまー」と「ただいまー」

 

ちょうど智代さんとともが帰ってきたようだった。

 

智「皆集まってどうしたんだ?」

 

朋「見つかったんだ」

 

ともがいるので何をかは伏せて言ったが智代さんにはちゃんと通じたらしい。

 

智「とも、私はちょっとお隣に行ってくるが絵本を読んで待っててくれ」

 

と「うん、わかったー」

 

ともが絵本を読み始めるのを確認してから私達は目配せして部屋を出た。

 

 

智「みんな、ありがとう」

 

智代さんはそう私達を労った。

 

朋「しかし辿り着くだけでも、大変そうな場所だな…」

 

恭「仕事は大丈夫か?」

 

朋「有給を使うさ」

 

恭「そうか…そうだな」

 

鷹「ともの面倒は僕らがみてるよ」

 

朋「ああ、よろしく」

 

河「待って」

 

話が決まりそうになったところで河南子が割り込んだ。

 

河「鷹文は、お留守番。あたしはミステリーツアー参加で。あたし、戦力になるよ」

 

朋「いや、戦わないから」

 

河「相手はあれですよ、洗脳された村の住民たちですよ。禍々しい神とか祀ってますよ。展開的には、一度はみんな縛られて、監禁されますよ」

 

智「こら、勝手に住民を悪者にするな」

 

智代さんから指導が入った。

 

河「でも精神が弱い人だったんでしょ?すがるものが必要だったはずだよ。閉鎖された山中、宗教的なものを感じずにはいられません」

 

智「ただ単に身を寄せられる知り合いがいるだけかもしれないじゃないか」

 

河「じゃあ、どうしてともを連れていかなかったの?」

 

ともがいなかったから隠さずに言った。

 

智「それは…その人の身勝手だ…」

 

河「住民は悪く言ったら怒るのに、その人のことは悪く言うんですね、先輩は」

 

佳「今のは私もどうかと思うわ」

 

智「いや、今のはなしだ…口がすべった…」

 

流石に智代さんも悪いと思ったのかばつが悪そうにしていた。

 

智「そうだな…」

 

腕を組み変えて、思い直したように言う。

 

智「河南子の言う通りかもしれない。何かをそこで盲信しているのかもしれない」

 

いや、それはない。

 

智「目覚めればきっと…」

 

そこまで言うと智代さんは押し黙った。

 

もし仮にそうなればともと別れなくてはいけないことが分かっているからだろう。

 

智「…………」

 

河「ほら、あんたたちだけじゃ、こんな風に辛気臭くなるっしょ?もー仕方ないなー、あたしが行って、盛り上げてあげるよ」

 

朋「いや、盛り上がる必要ないから」

 

鷹「いいよ、河南子。一緒に行ってきなよ」

 

朋「いや、お前が決めるなよ。全然良くないよ」

 

河「まぁ、連れてけ。実はあたしキーパーソンなんだ」

 

朋「いや、キーパーソンはそんなこと言わないから」

 

鷹「いいよ、河南子。お前がやりたいようにやれよ」

 

さっきから鷹文君がひたすら河南子をついて行かせようとしている。

 

朋「だから、お前が決めるなよ、なに爽やかに言ってんだよ」

 

河「わがまま言うなああぁぁーーーーーっ!」

 

朋「いや、お前だろ」

 

河「……ごめん、連れてってください」

 

朋「お前、プライド無いのな」

 

恭「どうするんだ?」

 

朋「はぁ…河南子も連れていく」

 

河「見たか、鷹文、ばーか、鷹文、ばーーーか」

 

鷹「なんで僕がくそみそに言われてるのかよくわかんないけど、まぁ、留守番は僕に任せておいてよ」

 

確かに河南子がいれば、重い空気は払われるだろう。

 

朋「それで、お前達はどうする?」

 

岡崎さんは私達に聞いてきた。

 

佳「もしいいならついて行きたいわ。乗りかかった船だもの」

 

智「もちろん構わないぞ」

 

葉「私も行きますヨ」

 

理「恭介は?」

 

恭「すまないが俺は就活があるから行くことは出来ない」

 

理「そう…」

 

残念そうにする理樹。

 

ちょっと嫉妬しちゃうわね。

 

小「私も老人ホームのボランティアがあるから、ごめんね」

 

唯「私は同行しよう」

 

美「私は留守番の方でお手伝いさせていただきます」

 

恭「とりあえず残りのメンバーにも、とものことを気にかけるよう話しておこう」

 

智「すまない、私達の問題なのに」

 

佳「何を今更言ってるのよ」

 

恭「そういう時は言うことが違うな」

 

智「…ありがとう」

 

こうして岡崎さん、智代さん、河南子、私、理樹、葉留佳、来ヶ谷さんがともの母親を探しに行くことになった。

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