佳奈多アフター~It's a Wonderful Cross Life~ side Kanata 作:月の海
いっそのこと、完全に私のことを忘れてくれていればよかったのに。
彼に呼ばれる度、切なさが込み上げてくる。
名前呼びから苗字呼びに戻ってしまっているから。
どういうことか分かっていない彼に私は告げる。
私は貴方の彼女なのだと―
その日はもうバスの最終便が出てしまったということで泊めてもらうことになった。
その代わりに料理の手伝いをする。
自給自足のため食材は野菜だけだった。
寝床は一部屋しか開いていないらしく、男女一緒だった。
それでもこの季節に野宿するよりは遥かにマシだった。
歩き疲れもあったのか布団に入るとそう時間も経たないうちに眠りに落ちた。
皆も似たようなものだったのか私が寝付く前に寝息が聞こえてきていたが、智代さんの寝息は聞こえてこなかった。
次の日は各々自主行動ということになり、私は智代さんのそばについていた。
来ヶ谷さんの言うまでもなく、智代さんは重苦しい顔をしたまま何をするわけでもなくじっとしていた。
時折、はっ、とするがまたすぐ浮かない顔に戻る。
ただそれだけを繰り返して一日が終わった。
夜、岡崎さんが散歩と称して外に出ていこうとした。
昨日遅くまで起きていた分のツケが回って来たのか智代さんは一番に眠ってしまっていた。
葉留佳も遊び疲れてか寝てしまっている。
河南子も含め、私達は一緒について行くことにした。
朋「どうかしたのか?」
河「いや、暗い顔してるからさ」
朋「そうか?」
河「そのまま、どっかから飛び降りかねないな」
朋「するかよ…」
山道を、ただぶらぶらと歩き続ける。
皆の姿が月明かりに照らされていた。
河「うわー、すごい星空」
河南子の感嘆の声に一斉に空を見上げた。
理「確かにウチの近くで見るよりもケタ違いにすごいね」
唯「小毬君がこの空を見たら喜ぶだろうな」
河「あー、ともにも見せてあげたかったなー」
…鷹文君には?
河「こんなにも星が綺麗なんだからさ…元気、出しなよ、ね」
朋「…あぁ、そうだな」
河南子なりに慰めていたのね。
私達はゴミの山に辿り着いていた。
岡崎さんは昼間ここに来ていたらしい。
朋「でも、結局何も出来そうにないけどな」
岡崎さんが苦笑混じりに言う。
河「ともがここに暮らせるようにすればいいんじゃないの?」
佳「それが出来ないから困っているんでしょう」
河「部屋も余ってたじゃないですか」
理「学校もないしね」
河「だったら作ればいいんじゃないですか?」
朋「何を?」
河「学校」
さも当然のように言う河南子。
朋「お前なぁ…」
そこまで言って岡崎さんは口をつぐんだ。
河「あたしが何?どうせ、馬鹿だろ、とか言うんだろ?」
朋「いや、これでも見直してるんだぞ。お前はさ…馬鹿の中の馬鹿だよ」
まるで褒めているかのように暴言を吐いた。
そのため河南子は少しの間きょとんとしていたが言葉を飲み込むと、岡崎さんを睨みハイキックを繰り出した。
どぐしっ!
河南子はそのまま帰っていった。
唯「何か妙案でも思いついたようだな」
平然と話を続けようとする。
朋「…あぁ」
起き上がりながら土を払う。
朋「河南子の言う通りだ。ないなら作ればいい」
全「「は?」」
朋「材料ならここにいくらでもある」
ゴミ山を指して言う。
朋「俺はこの村に学校を作りたい。それがこの村の希望になるはずだ」
理「勝手にそんなことしていいのかな」
朋「もちろん管理人に許可はとる。どうだ?」
私達は互いに顔を見合わせる。
もう気持ちは決まっていた。
佳「まったく、河南子のこと馬鹿呼ばわりしておいてそれを実現しようなんて大法螺吹きもいいところだわ」
唯「だからこそ面白い」
理「僕達でよかったら力になるよ」
朋「物好きな奴らだ……ありがとな」
岡崎さんの目に強い意志が宿ったように見えた。
朋「それじゃあ明日から行動開始な」
私達は私達にできることをしよう。
とものために。