佳奈多アフター~It's a Wonderful Cross Life~ side Kanata 作:月の海
なにも諦めたわけじゃない。
気長に待つことを覚えた結果だった。
基本的に私は彼の望むようにするだけだ。
学校を見てみたいと言われれば連れていくし、一人にしてほしいと言われれば彼と別行動もとる。
深夜、彼が帰ってくる。
食事の支度をする私に何故そんなに尽くしてくれるのかと訊いてきた。
その問いに対して私は当然のように答えるのだ。
貴方を愛しているからだと。
花畑での一件から一夜明けて。
智代さんは脱走を試みた。
河南子が唯一監視のつかないトイレの小窓から逃げたのだった。
しかし、河南子が智代さんの財布を抜いていたため失敗に終わった。
財布を返せと河南子を脅す智代さんの迫力は今までにないものだった。
あれが荒れていた頃の智代さんの片鱗なのだろうか。
結果的にその財布が岡崎さんに渡ったことで事なきを得た。
私は甘い。
昨日まだだだをこねるならもういうことはないと思っていたくせに、とぼとぼ去っていく智代さんの姿は痛々しさに手を差し伸べたくなる。
だが、一番そう思っているはずの岡崎さんが耐えている以上、私に出来ることはただ見守ることだけだった。
次の日。
河「あー、雪だぁ」
話をしていると河南子が、窓の外の変化に気付き惚けたように呟いた。
朋「雪か…?」
ちょうど目を覚ました岡崎さんがぼんやりとした瞳のまま尋ねた。
佳「そうみたいね」
河「今日も作業すんの?」
朋「もちろん」
本来なら中止にした方がいいのかもしれないが、小降りだ。
それにあまり悠長に構えている時間もない。
この程度の雪なら強行軍しても問題ないだろう。
そんな思いから中止は言いださなかった。
ちらちらと雪の降る中、ゴミ山を漁り蛍光灯に繋げる配線を探した。
来ヶ谷さんと岡崎さんの共通見解として、このゴミ山はなにかしらの施設の廃材で、それなら施設を作り上げている部品のほとんどがここにあるはずとのことだった。
しかし、ケーブルを見つけては岡崎さんを呼び確認するもなかなかお目当てのものは見つからない。
見つからないのかもと思い始めた矢先「おい!これだ!あったぞっ!」と岡崎さんの喜びを隠しきれない声が聞こえた。
朋「誰か手伝ってくれ!」
細心の注意を払い、ゴミ山を登って岡崎さんの元へ向かった。
同じくして理樹も辿り着く。
理「どうしたの?」
朋「なんか引っかかってるみたいなんだ」
そう言って岡崎さんがコードを引っ張るが確かにピンと伸びるだけで取り出せる様子がない。
朋「俺が引っ張ってるからどうなってるか見てくれないか?」
理「わかったよ」
そう言うと理樹はその先を覗きこもうとした。
理樹が手をかけるとそこにあった鉄くずが、がしゃりと音を立てて動いた。
そのせいでコードに引っかかっていたなにかも動いたのだろう、コードがするすると引っ張られ岡崎さんが体勢を崩した。
まるでスローモーションを見ているような錯覚に陥った。
ゆっくり仰け反るように何もありはしない虚空へ岡崎さんは私達から離れていく。
私はその場から動けず黙って見ているだけだ。
だが、理樹は岡崎さんに手を伸ばした。
手を掴む。
引っぱる。
もどってくる。
それにはんぴれいするように。
どぐっ!!
りきがおちた。