佳奈多アフター~It's a Wonderful Cross Life~ side Kanata   作:月の海

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バスターズのメンバーは今でもちょくちょく遊びに来る。

単純に近くに住んでいることもあるが、やはり彼のことが気がかりなのだろう。

今は皆社会人だし、全員が揃うことこそないものの1ヶ月一度も顔を合わせないということはない頻度で会っている。

髪が伸びていたり、綺麗になっていて、会う度に昔のままの彼はどぎまぎしていた。

それにちょっとムッとすることもあるけれど。

彼の築いてきた絆の強さに胸が温かくなるのを感じた。


時を刻む村 5

理「ん………」

 

理樹が目を覚ました。

 

佳「理樹っ!」

 

安堵からの涙で理樹の姿がにじんで見える。

 

管「具合はどう?あ、傷口は開かないと思うけど触らない方がいいわよ」

 

頭の包帯に触れようとする理樹を止める。

 

理「僕、どうしたんだっけ?」

 

朋「俺を庇ってゴミ山から落ちて、頭を打ったんだ」

 

目を伏せ気味に岡崎さんが答えた。

 

負い目を感じているんだろう。

 

理「そっか…ごめんね」

 

だが、謝ったのは理樹だった。

 

理「真人なら簡単に引き上げたんだろうけど、僕じゃこうしないと助けられなかった。そのせいで岡崎さんに責任感じさせちゃって」

 

朋「俺の方こそ不注意だった。本当にすまん」

 

理「いやいや、僕の方が」

 

朋「いや、俺の方が」

 

佳「はいはい、その辺にしておきなさい。ループしてるわよ」

 

理「佳奈多もごめん。その足、僕のせいだよね?」

 

理樹の目は私の足に向いていた。

 

理樹が落ちて、一度頭が真っ白になったがすぐに我に返った私はゴミ山を駆け降りた。

 

その時に引っかけて切ってしまったようだった。

 

理樹の治療後、私の怪我も診てもらった。

 

佳「まったく、そういうとこは聡いんだから…これは名誉の負傷だからいいのよ」

 

腕の傷痕に比べればなんてことない。

 

理「…ありがとう」

 

理樹も察してかそれ以上は言わなかった。

 

唯「葉留佳君達にも感謝するんだな」

 

理「葉留佳さん?」

 

管「後ろよ」

 

佳「ゆっくりね」

 

理樹が頭を回転させる。

 

その先には丸くなって寝ている葉留佳と河南子がいた。

 

服は泥だらけだし、髪も溶けた雪で濡れている。

 

佳「理樹が落ちた後すぐこの子達が来て、誰か呼んでくるって雪の中走り回ってくれたのよ」

 

管「すごかったわよ。しばらく経ったら、ほとんどが集まってた。誰もが、はるちゃん達には敵わないな、って顔してね」

 

理「…そっか。葉留佳さん達にもちゃんとお礼言わないとね」

 

葉「…ん」

 

葉留佳の瞼がぴくりと動いた。

 

理「あ、起きた?」

 

葉留佳は理樹の姿を確認すると跳ね起きた。

 

理「ありがと…ぐふっ!」

 

いきなり腕をクロスした状態で理樹の腹にめがけてダイブした。

 

智「こら、葉留佳っ」

 

葉「心配かけるなっ!」

 

本気の怒声だった。

 

だが、すぐにいつもの調子に戻った。

 

葉「お姉ちゃんも、皆も、私も、理樹君のこと大切に思ってるんだから、驚かせないでくださいヨ…」

 

理「ごめん、もう大丈夫だから」

 

理樹はそう言って葉留佳の頭を撫でた。

 

その後、目覚めた河南子から思いっきり蹴られていたのは言うまでもない。

 

 

 

雪が止んだ後、皆で一緒に表へ出た。

 

この中で理樹だけがあのことを知らない。

 

皆、理樹の驚く顔を想像して意地の悪い笑顔をしていた。

 

廃屋の近くまで来ると喧騒が聞こえてきた。

 

葉留佳と河南子はそれを聞くと走って行った。

 

河「なにしてんのさ、早くおいでよ」

 

葉「早く早くー」

 

急かす二人に理樹は首を傾げた。

 

理「なにがあるの?」

 

朋「行けばわかる」

 

佳「二人とも落ち着きなさい。理樹は病み上がりなんだから」

 

理樹の問いには誰も答えない。

 

二人に追いつき、その角を曲がる。

 

理樹は大きく目を見開き、その様子に皆満悦の笑みを浮かべた。

 

 

 

木材を加工する男性。

 

畳を干している女性。

 

屋根に上がって修繕している人もいた。

 

理樹達がもってきた黒板は綺麗に鉋がかけられて、新しい木目が日の光を浴びて輝いていた。

 

皆が思い思いの作業を真剣にやってくれていた。

 

それは昨日までは考えられなかった光景だった。

 

葉「みんなありがとー」

 

葉留佳の呼びかけに全員が手を止め、私達を囲んだ。

 

口々に、よかったな、大丈夫かと声をかけられ理樹は困惑気味だった。

 

不審な態度や敵意はもう微塵も残っていない。

 

作業を手伝うと村の人に言われたと時、岡崎さんは後ろめたそうにしていた。

 

ここに迷惑をかけると思っていたからだろう。

 

でも、皆、三島さんの子供が来ることを聞いて協力してくれようとしていた。

 

はるちゃん達を見てたら子供もいいかな、って笑って言いながら。

 

この時、私は気付いた。

 

岡崎さんはこの村に希望を作りたいと言っていたが、既に私達はこの村に、未来を指し示す希望を持ち込んでしまっていたということを。

 

 

 

有「村が変わってゆく…」

 

三島さんは窓に手を当てて、ぼんやりと廃屋の方を眺めていた。

 

有「あなたのその力は何?信念?」

 

こちらに向き直さず窓に映る岡崎さんに問いかける。

 

朋「恥ずかしいから言わない」

 

有「みんながあなたのように強ければいいのだけれど」

 

朋「弱ければ、そいつの周りにいる人が助けてくれる。俺はあんたの周りにはいないけど」

 

窓の外で、三島さんに気付いた村の人が手を振って呼んでいた。

 

朋「ほら、ここにはいるじゃん。俺達はともの味方だからさ、俺達はあんたにとっては、疫病神みたいなもんかもしれない。多分どこへ逃げようと、追っかけて、こんな風にしてしまう。ともが望み続ける限り…それは迷惑か?」

 

有「…………」

 

長い沈黙の後、窓に映る三島さんの唇が震えた。

 

朋「ん…?」

 

有「…ありがとう」

 

朋「よかった。ともにはたくさん、ちゅーしてやってくれ。他の人にしてもらわなくても済むくらいな」

 

有「…はい」

 

私達は三島さんの部屋を後にした。

 

唯「格好良かったぞ、お姉さん惚れてしまいそうだ」

 

朋「悪いが智代一筋なんでな」

 

智代さんの前で臆面もなく言う二人。

 

唯「はっはっは、フラれてしまったか。では、傷心の私は作業に戻るとしよう」

 

来ヶ谷さんは颯爽と去っていった。

 

朋「智代」

 

智「…………」

 

いつもなら照れたりなにかしらあるはずの智代さんは先程のやりとりを聞いても無反応だった。

 

朋「これで残ったのは、おまえのわがままだけだ。今はとものことをみんなが迎え入れようとしている。智代、お前はどう考えてるんだ」

 

智「…………」

 

結局智代さんは黙ったままだった。




岡崎さんはカレンダーがないのであまり気にかけていなかったらしいが、明日から仕事だったらしい。

仕事場に電話し、休暇の延長を頼むと意外とあっさり許可が下りた。

唯「案外簡単に許可が出たものだな」

朋「親方には感謝してもし足りないな」

岡崎さんに引き続いて電話していた理樹が戻ってくる。

佳「どうだった?」

理「頑張ってこい、むしろやりきるまで帰って来るんじゃねぇ、だって」

朋「どこで働いてるんだ?」

理「パン屋だよ。古河パンっていうところ」

朋「へぇ、今度行ってみるか」

理「秋生さんと気が合いそうな気がするよ」
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