佳奈多アフター~It's a Wonderful Cross Life~ side Kanata   作:月の海

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狭い病室に人が集まっていた。

あんな潔い別れ方をしていながら私達はまた施設に戻っていた。

管理人は忘れものでもしたの?と笑っていたが、理樹の様子を見てすぐに部屋を手配してくれた。

佳「すみません」

管「いいのよ、とりあえずタクシー呼んだから病院で検査してもらいましょう」

次第に理樹の瞼が開いた。

理「あれ…?ここは…?」

葉「目、覚めた?」

理「葉留佳さん?」

理樹はまだ状況がよく分からないようだった。

理「それに二木さんも」

佳「え…?」

唯「む…」

いち早く変化に気が付いたのは私と来ヶ谷さんだった。

今、理樹は私を名字で呼んだ。

少し戸惑っていると来ヶ谷さんがすかさず理樹に訊ねた。

唯「理樹君、昨日は何をしていた?」

智「何を言って―」

朋「智代」

意味が分からず訊ねようとした智代さんを岡崎さんが制した。

本来、この質問はここで学校を作っていたことを指す問いだ。

だが、理樹の答えはその期待を裏切った。

理「昨日?修学旅行から帰って来たじゃない」

佳「来ヶ谷さん、もしかして…」

唯「あぁ理樹君は―」


―――記憶喪失だ。


悠久円環のアンファング

管理人の呼んでくれたタクシーで病院へ向かう間に、理樹に大体の経緯を説明した。

 

理「とりあえず、この半年くらいの僕の記憶がないことはわかったよ」

 

そう、まだ半年だ。

 

このくらいならそんなに支障はないだろう。

 

私達と出会うよりも前に戻っていたらもっと大変だったろう。

 

理「それでその二木さん?」

 

佳「なにかしら?」

 

理「その、ホントに僕達って付き合ってたの?イメージ出来ないんだけど」

 

理樹が寮会の手伝いを始めたのは修学旅行事件から少ししてからのことだからあの頃の私しか知らないため、無理もない。

 

佳「えぇ、付き合ってたわ」

 

葉「見事なバカップルでしたヨ」

 

理「そ、そうなんだ」

 

佳「これは理樹がくれたものよ」

 

私は左手の薬指にはめられた婚約指輪を見せた。

 

理「それを僕が?」

 

佳「私達の誕生日にくれたのよ」

 

理「ごめん、やっぱり記憶にない」

 

唯「まぁそう焦ることはない。一時的なものかもしれないからな」

 

謝る理樹を来ヶ谷さんがフォローした。

 

唯「着いたぞ」

 

話をしているうちに病院に着いていた。

 

 

 

 

 

結論から言うと記憶喪失は治療できなかった。

 

正確に言えば、手を出せなかったそうだ。

 

記憶喪失の原因は脳に出来た腫瘍らしい。

 

それが新しい記憶を司る海馬に影響を及ぼし、ここ最近の記憶を消してしまっているという。

 

手術すれば治る可能性が高いという言葉は私達を安堵させた。

 

それだけならどれだけよかっただろう…

 

その次に語られた二つの事実は私達を打ちのめした。

 

一つは「手術の成功率は50%にも満たない」ということ。

 

そして二つ目は「手術が失敗した場合、理樹は死ぬ」ということだった。

 

しかし、それはあくまで手術をした場合であり、自然に治ることも考えられ、少なくとも腫瘍自体によって死ぬことはないらしい。

 

それだけは救いだった。

 

とりあえず、理樹は検査入院という形で入院することになった。

 

先生に一礼して診察室を後にした。

 

佳「理樹にはさっきの話は伝えないでおきましょ」

 

唯「…そうだな。無為に不安を煽ることもないだろう」

 

葉「岡崎さん?」

 

岡崎さんは長椅子に座ったまま、頭を抱えて俯いていた。

 

朋「俺のせいだ…俺があの時…」

 

佳「そんなこと―」

 

唯「あぁ、そうだな。君の代わりに理樹君は記憶を失った」

 

そんなことないと言う前に来ヶ谷さんが辛辣な言葉をかけた。

 

唯「そうして自己満足な悔恨の情に浸っていて理樹君の記憶が戻るならいつまでもそうしているといい」

 

朋「…………」

 

唯「君はそうして立ち止まっているのか?智代君に強さを強いた君がそうして俯いたままでいるのか?」

 

朋「……佳奈多」

 

顔を上げ私の名前を呼んだ岡崎さんの目には強い意志が宿っていた。

 

佳「何?」

 

朋「俺はお前の大切な奴に取り返しのつかないことをした。謝って済むとは思ってない」

 

佳「…………」

 

朋「だから、せめて、俺にできることがあれば何でも言ってくれ。力になる」

 

智「私も、佳奈多達には世話になりっぱなしだ。恩返しがしたい」

 

…………

 

佳「………貴方達が」

 

朋「え?」

 

佳「貴方達が嫌な人達だったら、逆恨みだったとしても憎むことが出来たのに…」

 

智「…………」

 

佳「隣人として、友人として、これからもよろしくお願いするわ」

 

智「佳奈多っ」

 

智代さんが泣きながら私に抱きついた。

 

佳「まったく、貴女が泣いてどうするのよ?」

 

智「佳奈多が泣かないからだっ」

 

佳「……私だっ……て……」

 

智代さんからもらってしまったのか、私も自然と泣いてしまっていた。

 

私達はしばらく互いを抱きしめながら泣いた。

 

来ヶ谷さんだけがその様子を微笑みながら眺めていた。




珍しくあとがきです。

初めに、ここまで読んでいただいている皆様、本当にありがとうございます。

普段、まえがきの枠もあとがきの枠も演出のために使っていることが多いのでこうしてまともなあとがきを書くのは初めてですね。

とりあえず言わなきゃいけないこととして、

「更新遅れてすみません」

後5日ほどでネット環境がない状態になるのでオンラインゲーにやりおさめと言わんばかりにはまってしまいまして…

面白いんですよね、ガンダムオンライン。

※個人の感想です。

それで謝らなくてはいけないのが先述したようにネット環境がなくなるため、投稿間隔が伸びる可能性があります。

ご了承下さい。

今回ひさしぶりに智アフ遵守の文章からオリジナルの文章に戻ってきたわけですが久しぶりに書くとなかなか難しい…

他の作者様達はすげぇなぁと思う今日この頃です。

最後になりますが、これからもご愛読いただければ幸いです。

では。


追伸

訂正箇所、感想等お待ちしています。
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