佳奈多アフター~It's a Wonderful Cross Life~ side Kanata   作:月の海

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佳「必要なものは全部持った?」

念のために二人に確認をとる。

葉「ばっちりですヨ」

理「うん」

佳「それじゃあ行きましょうか」

食材の詰まったビニール袋を持ち、アパートから出発した。


深夜の告白

今日は12月31日、大晦日。

 

今年も皆で集まって年越しパーティーをしようという話になったのだが、人数の都合上、私達のアパートではあまりに狭いので小毬さんの伝手で広いスペースのある施設を貸してもらったのだった。

 

日頃のボランティアの賜物だ。

 

日が沈み始めた頃、私達は目的地である施設に到着した。

 

扉を開けると既にたくさんの靴が並んでいた。

 

大分揃ってきているらしい。

 

靴を脱いでスリッパに履き替え、皆がいるであろう部屋に進んでいく。

 

するとちょうどタイミングよく棗先輩が出てきた。

 

理「あ、恭介」

 

恭「お?お前ら今来たのか?」

 

佳「えぇ、遅れましたか?」

 

恭「いや、そんなことはない。まだ全員そろってないしな」

 

葉「恭介さん、これ、どこに持っていけばいいですカ?」

 

恭「そうだな、おーい、こまりー」

 

小『はーい』

 

とたとたという足音の後、小毬さんがひょっこり顔を出した。

 

小「どうかしました―あ、理樹君、はるちゃん、かなちゃんいらっしゃ~い」

 

恭「三枝達が食いもん持ってきてくれたから置き場所案内してやってくれ」

 

小「はーい、じゃあ三人ともこっちに来て~」

 

小毬さんのところに行くと奏さんと名雪ちゃん、そして名雪ちゃんに似た女の人の姿があった。

 

佳「二人とももう来てたのね」

 

奏「えぇ」

 

名「あゆちゃんが落ち着かなかったので」

 

理「そちらの方はもしかして名雪ちゃんのお姉さんですか?」

 

?「あら、お世辞がお上手ですね。名雪の母の水瀬秋子です。娘がお世話になっています」

 

理「えぇ!?」

 

理樹の気持ちは分かる。

 

早苗さんといい秋子さんといい見た目年齢が若過ぎだと思う。

 

葉「お料理中ですカ?」

 

小「そうだよ~、秋子さんすごい手際よくて、奏ちゃんも名雪ちゃんもすっごく上手なんだ~」

 

名「小毬さんほどじゃないですよ」

 

小「あ、持ってきたものはそこに置いておいて。皆は向こうの部屋にいるよ~」

 

皆が持ち寄ったであろう食材が既にたくさん置いてあった。

 

佳「それじゃあ私も手伝うわ」

 

小「ありがと~」

 

理「僕も何か手伝った方がいいかな?」

 

佳「男子厨房に入らず、よ。皆と部屋で待ってて」

 

理「わかった。何かあったら呼んでね」

 

葉「お姉ちゃんファイト!」

 

理樹と葉留佳は皆と合流しに厨房から出ていった。

 

というか、葉留佳は少しは理樹を見習ってほしい。

 

佳「えっと、何から始めればいいかしら?」

 

小「それじゃ~―」

 

 

それから五人での料理が始まった。

 

なにぶん人数が多いため一品作るだけでもなかなかの苦労だった。

 

岡崎さん達、古河さん一家が来てからは智代さんと早苗さん、渚さんが加わり、こちらはこちらで楽しくやらせてもらった。

 

秋子さんと早苗さんはやはり場数が違うので私達と比べて技術もスピードも格段に上だった。

 

なかなかこういった機会は得られないので二人にアドバイスをもらいながら着々と料理を作っていった。

 

ちょっとしたお料理教室だった。

 

 

秋「おまたせしました、皆さん」

 

秋子さんを筆頭に次々と料理を運んでいく。

 

その出来栄えに男性陣は思わずおぉっ、と感嘆の声を漏らしていた。

 

一通り準備し終わると棗先輩だけが皆を一望できる位置に立った。

 

恭「今日は皆よく集まってくれた!一部ここで初めて会う奴がいるかもしれんが親睦を深めていってくれ。そもそも俺達リトルバスターズは―」

 

秋生「長ぇよ!乾杯!!」

 

皆「「「「「かんぱーいっ!」」」」」

 

棗先輩のしばらく続きそうだった乾杯の音頭を秋生さんがぶった切り皆何事もなかったかのように話に花を咲かせながら食事を始めた。

 

少し寂しそうにしていた棗先輩だったが理樹と小毬さんに慰められて復活したらしい。

 

 

 

秋子「パン屋をなさってるんですか。今度買いに行かせていただきますね。その時は私の作ったジャムを持っていきますね」

 

祐&名&あ「「「!?」」」

 

早「是非いらしてください。自家製のジャムですか、とても楽しみです」

 

秋生「ジャムパンとして売り出すのもありかもしんねぇな」

 

秋子「あらあら、ではますます腕によりをかけて作りますね」

 

祐「普通のジャムの方…だよな?」

 

名「う~ん、お母さんあのジャムも好きだからわかんない」

 

あ「普通のジャムなことを祈るしかないね」

 

 

 

恭「そういやお前彼女今日は一緒じゃないのか?」

 

日「あ、えーっと、その…」

 

朋「恭介、触れてやるなよ」

 

恭「すまん、配慮が足りなかった。そのうちいいことあるさ」

 

日「いや、別れてねぇからな!?変な気の使い方すんなよ!?」

 

朋「今日は目一杯飲んで忘れちまえ」

 

日「信じろおおぉぉーー!!」

 

 

 

直井「音無さん、これおいしいですよ」

 

奏「結弦、これも食べて」

 

結「あ、あぁ」

 

唯「あっはっはっは、モテモテじゃないか」

 

直「これもどうですか?」

 

奏「はい、結弦」

 

結「もう勘弁してくれ…」

 

 

 

河「うわ、また肉ばっか食べてんじゃん」

 

真「俺の筋肉が肉を食らえと囁くんだよ」

 

謙「想像するとなかなか気持ちの悪い光景だな」

 

鷹「ダメだよ兄ちゃん、良い筋肉を作るためにはバランスよく栄養摂取しないと」

 

真「なん…だと…」

 

鷹「野菜も食べれば兄ちゃんの筋肉も一つ上の高みに近づく、これ正論ね」

 

真「筋肉のため…うおぉぉー!食うぜぇー!超食うぜえぇー!」

 

謙「肉だけじゃなく野菜料理もすごい勢いで減りだしたな」

 

鷹「兄ちゃんの筋肉フェチを甘く見てたよ…」

 

 

 

ゆり「取り分けるからお皿渡してくれるかしら?」

 

ク「ありがとうございます」

 

小「ゆりちゃんありがと~」

 

ゆ「なんか妹みたいでどうしてもかまいたくなるのよね…」

 

美「妹萌えですか」

 

ゆ「ち、違うわよ!…たぶん。ほら、どうぞ」

 

美「百合おねえちゃーん」

 

ゆ「…なんかニュアンス違わないかしら?」

 

 

 

 

 

あらかた食べ終わるとボードゲームやカードゲームをして時を過ごした。

 

時計を見るともう30分ほどで今年も終わる。

 

夜風に当たりたくなり退席した。

 

12月の深夜の空気は思っていた以上に冷たく、長居しないうちに戻ろうと思わせるには十分だった。

 

理「二木さん、どうかしたの?」

 

佳「少し外の空気が吸いたくなっただけよ。理樹はどうして?」

 

理「ちょっと二木さんが気になって。後話がしたかったから」

 

佳「話?」

 

理「うん、二人っきりでこうして話し合う機会ってなかなかないからさ」

 

佳「じゃああそこのベンチに座って話しましょうか」

 

ベンチに座ると私は理樹に寄り添うようにした。

 

理「ち、近いって」

 

佳「いいじゃない、昔はもっとべったりしてたわよ?」

 

理「そ、そうなんだ?」

 

佳「えぇ」

 

理「ねぇ、か、佳奈多」

 

佳「!?」

 

照れくさそうに少しどもりながら理樹が私の名前を呼んだ。

 

理「手術受けたいと思うんだ」

 

佳「え…?」

 

今、なんて…

 

理「昨日先生から聞いたんだ。僕の記憶は手術で取り戻せるかもしれないって」

 

昨日は別行動していたが、どうやら病院に行っていたらしい。

 

佳「でも、成功率は50%を下回るのよ!?」

 

理「うんそれも聞いた。失敗すれば…最悪死ぬってことも」

 

佳「ならどうして!?」

 

理「佳奈多さんのことが好きだから」

 

佳「え?」

 

理「この一週間佳奈多さんと一緒に過ごして、佳奈多さんのことがまた好きになったんだ。だから手を引かれるだけじゃなくてちゃんと隣に並んで歩きたいんだ」

 

…………

 

理「身勝手なことを言ってると思う。でも、これが紛れもない僕の気持ちだから」

 

理樹はそこまで言うとポケットから指輪を取り出した。

 

婚約指輪に比べたらおもちゃのようなものだ。

 

理「今の僕にはこれが精一杯」

 

まるであの誕生日の再現のようで。

 

「でも、記憶が戻ったら働いていつかちゃんとした指輪を贈るよ」

 

もう失くしてしまったはずの時間で。

 

理「二木佳奈多さん」

 

だから、私は―

 

理「僕と結婚してください」

 

佳「はいっ…!」

 

その先を願ってしまったのでした。

 

佳「本当に…いつまで待たせるのよ…最低ね…最低…」

 

理「ごめんね」

 

佳「うぅ…」

 

理樹の胸の中で私は泣き続けた。

 

理「あ…雪」

 

ちらちらと小降りの雪が降り始める。

 

頬に触れる雪の冷たさが熱くなった頬にはちょうどよかった。

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