佳奈多アフター~It's a Wonderful Cross Life~ side Kanata 作:月の海
あの誕生日の日から一週間。
婚約したからといって特に私達に変化はない。
……と思っていたのはどうやら私達だけだったようだ。
それは今朝のこと。
今日は珍しく三人揃っての朝食だった。
佳「はい理樹、あ~ん」
理樹は同じようにあ~んと口を開け私のとった卵焼きを食べた。
佳「どう?」
理「今日もおいしいよ」
佳「よかった」
理「お返しに、はい、あ~ん」
佳「あ~ん」
葉「…………」
私達の様子をジト目で見ている葉留佳に声をかけた。
佳「どうしたの?箸止まってるみたいだけど」
もしかしてどこか具合悪いのかしら?
葉「どうしたの?…じゃないですよこんのバカップル!!」
理「葉留佳さん!?」
葉「いくらなんでもイチャイチャし過ぎですヨ!何があったかはお姉ちゃんの左手の薬指につけてる指輪を見れば大体わかるけど、流石に私がいる時くらい遠慮してくださいヨ!」
理「いやまぁ―」佳「だって―」
理&佳「「葉留佳(さん)だし」」
葉「何その共通見解!?」
私として理樹と以心伝心できたみたいでちょっと嬉しかった。
理樹もそうだったようで見つめ合うと互いに少し顔が赤くなった。
その様子を見て諦めたように葉留佳が溜め息をついた。
葉「もういいッス……」
葉「というわけでバイトをしようと思うのですよ」
佳「どういうわけよ?」
唐突な決意表明に溜め息をつく。
葉「いや~そろそろニートも卒業しないと」
…自覚あったのね。
葉「てことで外出て探してきます!」
佳「ちょっと葉留佳!?」
止める間もなく葉留佳は出掛けて行った。
まぁそうそうバイトなんて見つかるものじゃないだろうし、放っておけば勝手に帰ってくるだろう。
今日は近くのスーパーで特売の日なので安く仕入れた食材でご馳走を作ろう。
理樹、喜んでくれるかな?
私は足取り軽くスーパーに向かった。
スーパーから帰って来ると隣の部屋の前で考え込んでいる女性がいた。
カチューシャで留められている綺麗な銀の長髪が印象的だった。
?「困ったな、一旦帰るか?いや、少し待てば………」
佳「どうかしたんですか?」
声をかけると少し驚いた後、恥ずかしそうに答えた。
?「合鍵を家に忘れてきて入れないんだ。たぶんもう少しすれば家主も戻ってくると思うんだが…」
既にかなり寒くなってきているこの時期に外で待つのは応えるだろう。
佳「よかったらこちらで待ちませんか?」
?「え、しかし…いいのか?」
佳「えぇ」
?「ありがとう、助かる。あぁ自己紹介が遅れたな、坂上智代だ」
佳「二木佳奈多よ」
互いに自己紹介をした後、私は坂上さんを連れて部屋に入った。
佳「緑茶でいいかしら?」
智「あぁ、お構いなく」
遠慮がちな坂上さんにクドおすすめのお茶を出した。
佳「粗茶ですが」
智「部屋にあげてもらっただけでも十分ありがたいのにお茶まで出してもらって本当にすまないな」
佳「気にしなくていいのよ坂上さん」
智「私のことは智代でいい」
佳「じゃあ私も佳奈多でいいわ」
つい先程あったばかりだというのに名前で呼び合うまでになったことが少し可笑しくて私達は笑いあった。
佳「お隣の岡崎さんとはどういう関係なの?やっぱり恋人?」
智「そうだ」
智代さんはそれが誇らしいことと言わんばかりに胸を張って答えた。
智「佳奈多はここで三人で暮らしてるんだよな?」
佳「えぇ、妹とか、彼氏の三人で暮らしてるわ」
智「妹?ネームプレートには三つ苗字があったが?」
佳「それはね―」
私は大まかにこれまでの経緯を説明した。
この話は初対面の人にする話ではなかったがこうして話してしまったのは智代さんの雰囲気によるものかもしれないと思った。
佳「―というわけで今に至るわ」
これまで真剣なまなざしで聞いていた智代さんは話が終わると優しく微笑んだ。
智「頑張ったな」
佳「えぇ」
智「今は幸せか?」
佳「とっても」
智「そうか」
しんみりとした空気が流れた。
佳「そっちの話も聞きたいわ」
智「私の?まぁいいが面白い話でもないぞ?」
佳「こっちだけ話すなんて不公平じゃない」
智「わかった。私が朋也と出会ったのは―」
話し込んでるうちにすっかり遅くなってしまった。
智「そろそろお暇しよう、朋也もとっくに帰って来てるだろう」
佳「もうそんな時間なのね」
智「また今度ここに来てもいいだろうか?」
佳「友達だもの、いつでも来て」
智「それじゃあまた」
佳「またね」
再会の約束をし智代さんは帰っていった。
まぁお隣だけど。
理「ただいま」
入れ替わりに理樹が帰ってきた。
佳「お帰りなさい」
理「ご機嫌だね、何かあったの?」
佳「実は―」
ちなみに
葉留佳はバイトを見つけることが出来なかったようだ。
葉「なんかこう、これだってのがないんですよ。まぁ気長に探しますヨ」
三枝葉留佳、ニート街道まっしぐらである。