佳奈多アフター~It's a Wonderful Cross Life~ side Kanata 作:月の海
あれから時々智代さんがウチに来るようになった。
どこのスーパーが安いとかの情報交換をしたり、それぞれの得意な料理を教えあったり、彼氏の惚気話をしあったり―
一部所帯じみてる感じは否めないが、私にとっては有意義な時間だった。
かくいう今日も智代さんはウチに来ている。
ただいつもと違うのは智代さんが何やら思いきりヘコんでいることだった。
佳「はい、お茶」
智「ありがとう」
佳「それで?どうしたのよ?」
智「それが……」
ピンポーン
智代さんが話し始めようとしたところにチャイムが鳴った。
ク「どなたかいらっしゃいますか~?」
どうやら来たのはクドリャフカらしい。
佳「いいかしら?」
智「私のことは気にしないでくれ」
扉を開けるとそこにいたのは声の主クドリャフカと―
―来ヶ谷さん。
即座に扉を閉めにかかったが来ヶ谷さんに素早く足を挟まれ防がれた。
唯「ひどいじゃないか」
佳「いえ、今来客中ですので」
唯「そう邪険にすることもあるまい?現にそのお客様は気にしなくていいと言っていたではないか」
どれだけ耳いいのよ!!
佳「いや、でも」
ク「駄目なんですか…?(´・ω・`)」
しょんぼり俯くクドリャフカの様子に罪悪感を刺激された。
佳「……はぁ、わかったわよ。あがりなさい」
ク「おじゃまします」唯「邪魔するよ」
来ヶ谷さん、自分一人じゃ入れてもらえないの分かっててクドリャフカを連れてきたわね。
智「佳奈多、私は帰るとするよ」
佳「そう?ごめんなさいね」
智「いや、いいんだ」
立ち上がり、帰ろうとする智代さんを来ヶ谷さんが制した。
唯「まぁ待ちたまえ、どうやら落ち込んでいるようだな。状況から察するに佳奈多君に話しに来たのだろう?私達にも相談してみてはいかがかな?」
智「しかし」
ク「悩みがある時は誰かに話すのが一番なのです。よろしければ話してください」
智「佳奈多、いい友達に恵まれてるな」
佳「えぇ」
智代さんはクドリャフカの頭を撫でた。
ク「わ~ふ~」
目を細めてそれを受け入れるその様子はまるで主人に撫でられて喜ぶ子犬のようだった。
智「じゃあ聞いてもらおうかな」
智「―というわけなんだ」
三人「…………」
内容としては岡崎さんとイチャイチャしているところを弟の鷹文君に見られてしまったというものだった。
クドリャフカと来ヶ谷さんは互いに顔を見合わせて苦笑いを浮かべるだけで智代さんの話に答える様子がなかったのでまずは私が率直な意見を述べた。
佳「何か問題なの?」
智「え?だってその…恥ずかしいじゃないか、そんな姿を弟に見せるなんて」
唯「智代君、残念だが佳奈多君にその相談をするのは無駄だぞ?」
智「?なぜだ?」
唯「君も佳奈多君の惚気話は聞いたことあるだろう?」
智「まぁあるが?」
ク「それの大半は部屋に妹の葉留佳さんがいる時の話だと思います」
智「な!?」
ク「だから共感は得られないと思います」
唯「妹好きも相まって感覚がマヒしてるからな」
智「佳奈多が初めて遠く感じる…」
佳「?」
何故か智代さんに遠い目で見られた。
智「いや、もう深くは考えないようにしよう…」
唯「うむ、それがいい」
よく分からないが解決したらしかった。
唯「それにしてもあの不良達から恐れられた君がこんな恋する乙女だったとは、事実は小説より奇なりと言ったところかな」
智代さんの身体がビクッと反応した。
智「知っていたのか?」
私は以前岡崎さんとの馴れ初めを聞いた時に聞いていたけれど来ヶ谷さんが知っているとは思わなかった。
唯「噂程度にはな。こんなナイスバディ―をしていると馬鹿が寄って来るんだが、そいつらを粉砕した時に聞いたのだ」
ク「ないすばでぃー……」
クドリャフカがナイスバディ―に反応してヘコんでいた。
唯「馬鹿げた話であったし、信じてはいなかったんだが君を見て確信した」
元々勘の鋭い人だ、おそらく来ヶ谷さんの中で何か感じるものがあったんだろう。
智「確かにその噂は私のことを言ったものだろう。今でもたまにそういった輩から喧嘩を仕掛けられることもある」
唯「だろうな。一度貼られたレッテルはそう撤回できるものじゃない」
どこかトゲのある言い方に違和感を感じた。
佳「どうしたんですか」
唯「佳奈多君に危害が及ぶ可能性を考えたか?」
佳&智「!!」
寒気がするほどの冷たい視線だった。
唯「智代君は確かに強いのだろう、しかし佳奈多君はそうではない。嗜む程度に剣道をやったことがあるだけの、いわゆる普通の女の子だ」
佳「来ヶ谷さん!」
唯「君は黙っていろ、私は今智代君と話をしている」
気圧されてそれ以上何も言えなかった。
唯「相手は
智「それは…」
そんなの絶対に出来っこない。
智代さんが俯くのを見て嘆息し、今度は私の方を見る。
唯「次に佳奈多君」
佳「……はい」
唯「君は智代君から既に聞き及んでいたはずだ、一度も考えたことはなかったか?」
佳「ありませんでした」
唯「甘いっ!!」
空気が震えた気がした。
唯「君の危険はそのまま葉留佳君、理樹君にも及ぶことだってある!」
佳「………すみません」
私の謝罪と共に沈黙がこの場を支配―
―しなかった。
唯「よし、じゃあ王様ゲームでもするか」
三人「………え?」
唯「どうした?あぁ準備なら任せろ」
佳「あ、あの来ヶ谷さん?」
唯「ん?」
本当に何もなかったかのようだった。
佳「いや、ん?って…」
唯「なんだ?今の話を聞いて絶交でもする気になったか?」
智「―――っ!!」
絶交と聞いて智代さんは身体を強張らせた。
佳「いえ、それはないですけど」
唯「智代君は?」
智「私は、佳奈多がよければ友達でいさせてほしい」
佳「もちろんいいに決まってるじゃない」
智「佳奈多…ありがとう」
唯「うむ、何も問題ないな」
佳「縁を切れって言ってるのかと思ったんだけど」
唯「別に佳奈多君の交友関係に口を出したりはしない、ただ私の言った危険が全くないわけじゃないからな。少し忠告したまでのことだ」
佳「もう少しやり方を考えてください」
唯「はっはっは、しかしいい薬になっただろう?まぁ人気のない道は通らない、その程度の危機感があれば問題ないだろうがな
智「貴女には敵いそうにないな」
佳「えぇ」
唯「私など所詮は独り者、立派な
思わず私達は顔を真っ赤にした。
唯「いいものも見れたしそろそろ寮に帰るとしよう。クドリャフカ君はどうする?」
ク「私も帰ります」
唯「では智代君、佳奈多君のことをそこで理樹君と立ち聞きしている彼氏君の次くらいによろしく頼んだぞ」
理&朋「!!」
智「あぁ、まかされた」
唯「では、また会おう」
そう言い残して来ヶ谷さん達は去っていった。
智「佳奈多、すまない。私は迷惑をかけてしまうかもしれない」
佳「それはお互い様よ。気にしないで、友達じゃないの。それよりもまずやることがあるわ」
智「そうだな」
佳「理樹っ!!」智「朋也っ!!」
理&朋「……はい」
隙を見て逃げ出そうとしていた二人だったが、名前を呼ばれ観念したようだ。
二人まとめてのお説教が始まった。