パワーインフレ世界の一般人   作:愛黒猫

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小説初投稿です!



始まりの物語

目のまえを一枚の桜の花びらがあいていた教室の窓から入り込み、東雲誠の前を通り過ぎた。

通り過ぎて行った花びらに目を向けると、真新しい高校の制服に身を包んだ学生たちがややぎこちなさを感じさせながらも、グループに分かれ話しているのが目に入る。

 

その光景に誠は暗鬱したような感情に襲われた。

 

誰もかれもが相手に気を使っている。相手に気に入られるように、仲間外れにされないように必死になって自分の居場所を探している姿は、なんとも言えず滑稽に思えたからだ。

 

 

春は出会いと別れの象徴の季節。学生にとっては、卒業と入学の季節といった感じかもしれない。しかし言葉は違えど、今までの環境に別れを告げ、まったく新しい環境に期待に胸ふくらませることに違いはないだろう。

 

それはいい。変わろうとすること、変わる事はとても尊いことだ。

 

だが変わる事と流されることは違う。周りがしたから自分も、などと自分の意思から外れて変わる事に意味なんてない。

 

そんな物語など読む気もしない。

人は自分勝手に生きるから、たとえ無様であろうと自分を突き通そうとするからこそ、面白い。

 

それなのに人は主張を恥ずかしいことだと言い、控えめこそ美徳だとすら言う。

 

自分の中の正解が人にとっての正解だなんて、そんな子供じみた考えは持っていないが、それでも人が自分を誤魔化して生きるのは間違っているのだと思う。

 

 

そんなクラスメイト達から目を離し、誠はため息を一つつきつつ、読みかけの本を取り出した。

 

誠にとって現実も空想もたいして変わらない。どちらにせよ、物語であることに変わりない。自分の人生がどうなるか、そんなことはどうでもいい。自分以外の誰かが紡ぐ物語にしか興味はないのだから。

 

突然、目の前に影が差し、手元から明かりを奪った。いざ小説を読もうとした瞬間の出来事。あまり間の悪さに思わず苦笑した。

 

そんな誠の気持ちなど露知らず、影を作った主は話しかけてきた。

 

「何の本を読んでいるのかしら?」

 

文句の一つでも言ってやろうと顔を上げると、目の前に眩むような美しい紅が広がった。

日本人離れした体型。初対面なので笑顔はみたことないが、この少女が笑えばどんな男も恋に落ちるのだろうと思える顔立ち。

 

文句なしで美少女と称せる少女がいた。

 

「ねぇ、聞いてるの?」

 

「あぁ、悪かった。ちゃんと聞いてるよ」

 

どうやら間を空けすぎて無視されたと思ったらしい。

 

「そうなの?なら、あなたが何を読んでるのか教えて頂戴」

 

育ちのせいだろうか。話し方が高圧的とまでは言わないが、命令口調で頼んできたとこを考えると良いところのお嬢様なのかもしれない。

 

しかし、人にものを頼むのにそんな言い方はないだろうに。こんな様子では友達を作るのにも苦労しそうだ。

 

あ、だから隣の俺に話しかけてきたのか。

 

だが生憎とこちらに友達を作るつもりは全く無い。なので今後同じように話しかけられても困ることを考えると、最初にドン引きさせるようなこと言っとけばいいか。

 

突き放してもしつこく話してくる奴はいるし、悪評を流されて行動しづらくなっても困る。変な人がいる。その程度の認識を植え付けられればいい。

 

そういえば、学校のクラスってそういうやつが必ず1人はいるよな。なんでなんだろ?そういうやつに進んでなろうとしてる俺が言うのもなんだけど。

 

セクハラまがいのこと言ってからかっとけばいいか。

 

「人前ではとても口にできないような本だよ。彼氏もいない乙女な君にはまだ早いね」

 

読んでるのは犯罪ミステリー小説だ。グロテスクな描写が描かれているので一応嘘ではない。

ちなみに彼氏なしは、人へものを頼む時の彼女のコミュニケーション能力から推測した勝手な邪推だ。

 

紅少女は目に見えて狼狽した。

 

「あ、あなた!学園でなんてものよんでるの!?」

 

・・・見事な狼狽っぷりですこと。

 

「なんだ、そんなにこの本が気になるの?しょうがない。少し内容を教えてあげよう」

 

「結構よ!!」

 

「そう言わずに聞いてみ?将来役立つよ」

 

「私たち、初対面よね!?セクハラ?セクハラなの!?」

 

紅少女は髪だけでなく顔まて赤くなってしまった。罪悪感を感じないこともないが、ここで切り上げてもただ変態のレッテルを押されるだけなので、最後の締めを言うとしよう。

 

「やれやれ、犯罪ミステリー小説を怖がるなんてお子様だね」

 

「……ぇっ、犯罪ミステリー?」

 

「犯罪ミステリー」

 

「………………………………」

 

紅少女が凄い目で睨みつけてきた。おぉ、怖い怖い。

ここまでやればさすがに今後かかわろうとは思わないだろう。悪いが友達作りならほかを当たってくれ。

 

だが紅少女の返事は予想を大きく裏切った。

 

「……はぁ、いいわ。あなたは何の小説か断言したわけではないしね」

 

・・・えっ、許すの?この子あほなの?馬鹿なの?

 

口に出すと面倒になるので言わないが、心の中ですごい勢いで罵倒してしまった。それほど驚いたのだ。普通なら苦笑いでも浮かべて、曖昧な返事でそそくさとどこか行くとこだよ?

 

なんというか、変わってるなこいつ。

 

—――面白い。

興味がわいた。いや、読者主義のカンだろうか。こいつと居れば面白い物語が読める、そんな気がした。

 

退屈だと思っていたこの高校生活。どうやら捨てたものじゃないらしい。

 

「そうかい、それはありがたい。これから長ければ3年間一緒なんだ。仲良くやりたい」

 

「原因作った本人でしょ、あなた…。それで、あなたの名前は?今度はふざけたことはなしでね」

 

「わかってるよ。俺の名前は東雲誠。本が大好きな、ただの一般人だ」

 

「私はリアス。リアス・グレモリーよ」

 

 

 

 

このふざけた会話が今後の人生に大きな影響を、いや、誠の物語に影響を与える最初のきっかけだった。

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ!せっかくだし、あだなをつけよう。そうだな…。その胸、でかいからスイッチみたいだな…。よし!あんたのあだ名はスイッチ姫だ!!」

 

「凄いセクハラだし、そのあだ名には何故か寒気を覚えたわ…。というかネーミグセンス悪いわね」

 

いや、なぜかこのあだ名をつけなければいけない。そんな気がしたんだが・・・。

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