パワーインフレ世界の一般人   作:愛黒猫

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少し短くなってしまいましたが、投稿です!


悪魔と契約

夕暮れ時。太陽が赤く染まる、夜と昼の境目。

運動部も練習をやめて帰宅し始めるそんな時間に、誠はオカルト研究部を訪れた。

 

しかし、ドアの前に立ち改めて思う。扉に張られた無数の札。わけのわからん魔法陣。何語か見当もつかない文字。

とてもじゃないが年頃の男女が遅くまで残っているような場所じゃないな。遅くまで残った男女がいるのに、ロマンのかけらもない。

 

―――まぁ、この中にいるのは人間じゃないけどね。

 

一つ深呼吸する。

これから関わろうとしているのは未知の物語だ。現実を鼻で笑うようなファンタジー。そう考えただけで、心臓が激しく動いた。血が全身を高速でかめぐり、体が熱く高揚する。早く見たいと心が疼く。

 

逸る気持ちを何とか抑えながら、誠はオカルト部のドアを開けた。

 

「こんちは~!差し入れもってきうわっ!?」

 

「・・・遅いです先輩」

 

ドアの目の前に小猫が両手を此方に伸ばした状態でスタンバイしていた。

小さくて気づかなかったよ・・・。

 

「・・・何か不愉快なこと考えてません?」

 

「いや別に?」

 

どうして俺の後輩は総じてカンがよろしいんだろうね。

 

「えっ!?誠先輩?」

 

「ようイッセー。入部おめでとサン」

 

「あ、ありがとうございます?」

 

「なんで疑問形なんだよ・・・」

 

けどまぁ、こんな時間に訪問者が来たらそりゃ戸惑うか。まだ入部したばっかで勝手もわからんだろうし。

 

そんなことを考えていると、今度は金髪の男が挨拶してきた。

 

「こんにちは、誠さん」

 

「・・・誰だっけ?」

 

「木場です!木場祐斗!このやり取り何回目ですか?というか何回するつもりなんですか!?」

 

来るたびに、してるからねこの会話。そして勿論俺が満足するまでである。そしてそれは当分来ない。

 

「すまん、すまん。馬場だったな。ジャイアント馬場だった」

 

「僕はプロレスラーじゃないですよ!?馬場じゃなくて木場ですよ!」

 

「間違えた、ジャイアント木場か」

 

「ジャイアント馬場から離れてください!というかどんな間違いですか?」

 

「すまん、あまりにお前が似ていたもので・・・」

 

「似てるんですか僕!?」

 

「おう、そっくりだぞ。ほら、目が2つ合あって、鼻もあるだろ?」

 

「全人類馬場さん!?」

 

「はぁ?何言ってるんだ木場。頭大丈夫か?」

 

「なんでこんな時だけ正確に名前言うんですか・・・。」

 

面白いから。

 

「・・・ジャイアント木場先輩。・・・ぷっ」

 

「小猫ちゃん!?」

 

どうやら小猫はお気に召したらしい。どうでもいいけど、日頃無表情な子が笑うとギャップもあってたいへん可愛らしいと思います。

 

・・・ところでなんでまだ俺の方に両手伸ばしてるの?

 

「木場、俺お前のことイケメンだからって憎んでたけど、今ならお前に心から同情できるよ・・・」

 

「イッセー君・・・」

 

イッセーが木場の肩に手をやり慰めの言葉をかける。同情の言葉に感激したのか木場は感動したように瞳を潤ませていた。

 

・・・ふむ。

 

その様子を携帯で激写する。

 

「さて、腐女子にいくらで売れるかな?」

 

「「やめてください!!」」

 

クラスの腐女子に取引を持ち掛けようとしたが、あと一歩のところで携帯を奪われてしまった。・・・無念。

 

「誠、あんまりこの子たちで遊ばないでちょうだい・・・」

 

「なんだ、グレモリー。いつ部屋に入ってきたんだ?」

 

「最初からいたわよ!?」

 

「冗談だ。・・・そんなことより小猫はなんで俺に両手向けてるの?」

 

さっきから気になってたけど、無言のまんま両手だけこっちに向けられるのは怖いんだよ。小猫がやると可愛らしいけど。

 

「さぁ?あなたが来る少し前からドアの前で構えていたわ」

 

何それ怖い・・・。

 

「・・・お菓子のにおいがしました」

 

「俺=お菓子なのか・・・」

 

「・・・先輩は必ず差し入れを持ってきてくれます。・・・だから好きです」

 

「その好きは全然喜べない好きだな」

 

嬉しいけどさ。

 

姫島が全員分の紅茶をテーブルに並べてくれた。俺も作ってきたマカロンを全員に配る。

 

「相変わらず女子力高いわね・・・。悔しいけどおいしいし」

 

「ほんとですわね・・・」

 

2名ほど何とも言えない表情で食べているが、他のメンバーの顔を見る限り好評のようだ。

特に小猫。俺の隣でおいしそうにマカロンを頬張っている。

 

思わず頭を撫でてしまう。

 

「・・・にゃぁ」

 

何だろう。一瞬小猫の頭に猫耳が見えた気がする。

 

「ところで誠。こんな遅くに何の用があったの?」

 

グレモリーが不思議そうに聞いてきた。

気づけば空はもう黒く染まっている。残っている生徒は恐らくオカルト部のメンバーくらいだろう。

 

夜の校舎。昼とは違う闇の世界。怪しげな雰囲気を醸し出し、歩み寄るものの足を止めてしまうような不気味さが、そこにあった。

 

―――そろそろ頃合いか。

 

鞄から一枚の紙を取り出す。

それを見た瞬間一斉に変わるみんなの顔色の変化を楽しみながら悠然と構え、言い放った。

 

「単なる暇つぶしだ。面白い娯楽を提供してくれよ悪魔さん?」

 

―――あなたの願いを叶えます。

どこぞのCMのような軽い謳い文句が、この張りつめたような空間に漂った。

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