久しぶりの投稿です!
今日起きたことを振り返ってみよう。未だに混乱から抜け出させずにいる頭を振り払って考える。
まず学校に行った。これはいつも通り。その後も変わったことは何もなく授業も終わり、放課後オカルト部に行ったところで騒動に関わった。堕天使やいかれ神父にモブ神父。色々あったが最後にはイッセーがきちんとかたを付け、それを見届けた後帰宅。
うん。ここまでは良し。問題は帰宅後だ。
目の前には混乱の原因とわかってないのか、(いや、間違いなく理解しているはずだ)素知らぬ顔で珈琲を飲んでいる。緊箍児らしきものを付けたもう一人の男は興味もないのか、居間で勝手にテレビを見ている。勿論お呼びしたわけでもなく、それどころか知り合いですらない。
だがそんな傍若無人な振る舞いをするメンバーの中で、何故か着物の女性だけが所在なさげに佇んでいた。これほどの美人の知り合いはなかなかいないし、いたとしても必ず覚えているはずなので、知らないということはこちらも向こう側の人間な筈だ。
いや、頭からネコミミみたいなのが生えてるから人間じゃないんだろうが。
とにかくその女性は、白髪男の側でもなく、かといって俺の側でもない、ちょうどその中間地点で俯いていた。
・・・だがその対応も、俺が帰ってきたにも関わらず未だに姿を見せない黒猫のことを考えると何となく、予想がついた。
それに二人の男も、俺がこうやって真正面に座っても自分が有利であると知っているがゆえに出せる余裕が感じられる。相手は間違いなく人外だろう。
「・・・はぁ」
思わず小さくため息を漏らす。
いい加減堕天使やら悪魔やらで超常現象摩訶不思議にも慣れてきたが、まさかいきなり家に現れるとはさすがの誠も予想外だった。それも疲れて眠ろうとした矢先のこと。少し気を悪くするのも当然だ。
だがそれを見た白髪男は初めて表情を変え、少し意外といったように話しかけてきた。
「意外だな。聞いた限りじゃ普通の人間の君は取り乱すだろうと踏んでいたのだが」
「これでも悪魔やら堕天使やらにこの一週間振り回されてきたからね。それで、この家に悪魔と妖怪が何の用?」
そう返すと白髪男は今度こそ大きく表情を動かした。テレビを見ていた男も此方を向いている。
「・・・びっくりだな。なぜ俺たちが悪魔と妖怪だと?そしてそれがわかっているなら君はすぐに逃げ出すべきだったんじゃないのか?」
「まず一つ目の質問に対してだが、猫又と孫悟空の子孫?みたいな奴は見たまんま。悪魔については正直はったりだったんだがその様子じゃ当たりのようだね。そして第二の質問については少々意地が悪いといわせて貰おうかな。俺だって一応敵との力の差くらいわかるし、逃がすつもりもなかっただろう?」
そう。こいつらは殺そうと思えばすぐに殺せるだけの力を持っている。下手な手は自分の首を絞めることは目に見えていた。そんな奴らが人間一人取り逃がすとはとても思えない。
「その通りだ。わざわざ姿を見せて逃がしたとあっては、無理言って説得したアーサーに申し訳が立たないからな。まぁ、敵に知られた方が面白くなりそうだし、むしろ俺としては歓迎すべきことなんだが」
本当に残念そうに言う白髪男。敵というのはグレモリー、ってだけじゃないな。どうもこいつは相当な戦闘狂の様だし、恐らくは悪魔すべてのことだろう。もしかしたらすべてを敵にまわすつもりなのかもしれない。・・・なんとなくまとめ役なのだろう、アーサーという人物に同情してしまった。
「でもこんなこと君に言ってもしょうがないな。そんなことより、ここに俺たちが来たのは・・・、いや、先に自己紹介の方が先か」
「そうだね。そうして貰えるとこちらとしても助かるかな」
名前がわかるだけでも状況の判断は格段にしやすくなる。それに名前を呼べないというのは不便だしね。
そういうと目の前の男は仕切りなおすように足を組み直し、こちらを真正面から見据えた。
「ではまずは俺から。俺の名はヴァーリー。ご察しの通り、悪魔だ」
ヴァーリと名乗った男の流れに乗り、テレビを見ていた男と佇んでいた女性も名を名乗る。
「おれっちは美候。かの西遊記に出てくる孫悟空の末裔だぜ。つかなんでばれたんだ?」
「・・・私は黒歌。猫又にゃ。」
やはり三者全員人外。こっちはただの人間だっていうのに・・・。というか美候、ばれた理由を聞いてなかったらしい。
「そうか、じゃあ俺も自己紹介した方がいいのかな?どうせ調べてあるんだろうけど」
「必要ない。君のことは調べ上げてある。ここ最近のことから昔のことまでね。君がどういった人間であるかも把握している」
「・・・調べたのはアーサーだけどな」
ヴァーリの言葉に美候がボソッと付け加える。やはりアーサーという人物、苦労してそうだ。またも心の中で見知らぬ男の平穏を祈った。
「そんなことはどうでもいいんだ。俺たちがここに来たのは仲間を連れ戻しに来ただけなんだからな」
ヴァーリは何でもないようにここへ来た理由を口にした。その言葉に黒歌は大きく肩を震わせる。
(やっぱりか・・・)
思わず声に出さずに愚痴る。同時に体の中の熱が一斉に引いていくのを感じた。
ここまでくれば馬鹿でもわかる。この家には生命体など俺を除いたら一匹しかいないのだから。
「ここまでくれば察しの良い君のことだ。連れ戻しに来た俺たちの仲間が誰か、なんて言わずともわかっているんじゃないか?」
正直な話、この美少女があの黒猫だったということに未だ脳が追い付いていない。女性の好みでいえばドストライクな容姿をしている子に、飼っていた猫が変身したなんてことが許されるのはライトノベルや漫画くらいだ。現実に起こったなんて言われたら、まずは精神科医に相談すべし。
だが話の流れから言って、そうであることに間違いはないし、またそうでなくては話が進まない。
「・・・黒歌だったけ?その子は家で一緒に住んでた黒猫で、君たちが連れ戻しに来た仲間なんだろう?でもそれだと俺に正体を明かした理由にならない」
誠の問いかけにヴァーリは、今まで斜めに向けていた体を此方に真っ直ぐに向け、幾分か真剣みを帯びた声で返した。
「話が早くて助かる。実は使い魔を出せば済むような話をせずに俺たちがわざわざここに来た理由は2つあるんだ。一つは仲間を匿ってくれた君に直接礼を言うのが筋だと思ったからだ」
今言った言葉に嘘はない、そう信じられるだけの仲間への想いが籠った言葉だった。
しかし、ヴァーリはそこまで言うと少し表情を曇らせた。此方を見る視線も先程とは違い、観察するような視線に切り替えている。
「だがそれだけの理由ではアーサーは人間に姿を見せることなど了承しなかったろうな。俺たちがここに来た理由の大部分は二つ目の方なんだ。そしてそれは俺たちがここに留まり、正体を明かした理由でもある」
黒歌をちらりと見る。この女性がどっちつかずの位置にいる理由がヴァーリーたちが直接来た理由。
「黒歌は君たちのもとに戻らなかった。多分そういうことだろう?」
途端に顔を赤くして顔を伏せる黒歌。誠に考えが読まれたことが恥ずかしかったのか。それともその選択をした自分に対して恥じているのか、第三者からは分かるはずもなかった。
誠の言葉にヴァーリは心底わからないという感情が込められた声音で返事を返した。
「・・・その通りだ。おまけに君に正体をばらさないで欲しいとまで言う。残念ながらこうやって話し合う以上、正体をばらすことは必須だったので却下したがな。君が魔術師なら洗脳の類を心配するんだが、そうではないし、黒歌は仙術の使い手だそんな隙を与えないだろう。まったく、こんな状況も黒歌も初めてだ。君には心当たりはないか?」
愚痴るように言うヴァーリ。後ろにいる美候も相槌を打つように頷いているから、おおむね同感なんだろう。
「・・・はぁ」
知らず知らずにため息が漏れた。
理由はなんとなくわかっている。だって自惚れでないなら黒歌と俺が考えていることと全く同じなんだから。
だがそれを分かてても、言葉にできない。確信に近い答えなのに口に出せない。
だって、それは何気ない願いで。
きっと、誰だって考えることで。
だけど、言葉にするのは難しい。
――――ただ、傍にいたい。
たったそれだけのこと。
今まで一緒にいたのは、独りの寂しさを知った者同士が傷の舐めあいをしただけだったのかもしれない。
それでも。
――――この関係が長く続くように願っただけの話なんだ。
だけどそれを正直に話す度胸なんて持っていないし、話したところで理解されるとも限らない。それにこれは誠と黒歌の問題であり、他人の入ってきていい領域の話でもない。
だから、言葉にするとしたら・・・
「・・・・・・離れたくないって思ったからじゃないの?・・・親しくなったものほど別れは辛いって言うし」
こんな当たり障りのない、正解でも、間違いでもない言葉で濁した。
・・・それでも、俺の耳は黒歌に負けないくらい赤くなっているんだろけど。
ヴァーリは首を傾げた。
「そんなものなのか、黒歌?」
「・・・そうにゃ。多分、そういうことなのかにゃ」
半分自分に言い聞かせるように言う黒歌。その首筋は先程よりも綺麗な赤に染まっていた。
黒歌の返事に得心したのかヴァーリーは大きく頷いた。
「そうか。なら話は簡単だ。誠、禍の団に入らないか?」
「カオスブリゲード?」
なにその厨二全開なチーム名。
突然な勧誘に目を白黒させる。だが俺には意味が分からなかったが、どうやら残り二人は違ったらしい。驚いたように抗議の声を上げた。
「なっ!?正気か!?」
「ヴァーリ!誠は巻き込まないでって言ったでしょ!」
「落ち着け二人とも。誠は頭の回転が速い。どこまで使えるかわからないが参謀役としては十分だろう。それに黒歌。これはお前の我儘のせいでもあるんだぞ」
「うぅ・・・」
黒歌は自覚があるのかいとも簡単に抑え込まれてしまった。だが美候はそうでもないらしい。
「でもよぉ、こいつが使えるか使えないかは別にして、アーサーや英雄派の奴らは黙っちゃいないぜぃ?」
「アーサーには俺から伝えるさ。正直な話、作戦などをアーサー一人に任せるのは気が引けるんだ。俺たちはあまり後先考えるタイプではないからな」
「それはそうだけどもよぉ・・・」
未だに納得いかない部分があるのか、ちらちらとこちらを見てくる美候。というか一番納得いってないのは俺なので、まずは説明してほしい。
「カオスブリゲードって何なんだ?」
「簡単に言えば・・・そうだな、テロリストといったところか」
「オッケー、断る」
「・・・なぜだ?」
「むしろなんで今の説明で入ると思ったのか説明してよ・・・」
さっきから思ってたけどこいつ常識ないのな。
「質問を変えるよ。何を目的とした集団なんだ?」
「俺たちは強い奴と闘えればいいんだが、禍の団は別の目的がある。だがさすがにそれを教えるわけにはいかないな」
そうだろうね。流石にまだ味方になったわけでもない奴にベラベラ喋ることではない。
「まぁ、そんな警戒しなくてもいい。非人道的なことをしようって組織でもないし、もとよりするつもりも無い。俺がここに入ったのは、俺の目標を達成するには一番の場所だっただけだからな」
「・・・ふぅん。なら俺は何をすればいいの?」
「出来ればアーサーと一緒に作戦を練ってほしいとこだが、無理ならここをアジトとして貸してくれるだけでも構わない。君はあくまで黒歌の我儘なわけだし、他の禍の団のメンバーに教えるつもりも無い。ゆっくり考えてくれて構わないよ」
ヴァーリはそういうと、とっくに冷めたであろうコーヒーに口をつけた。
条件をまとめると、名前と場所を提供してくれればいいということ。よくある詐欺のような条件だなと思ってしまうのは仕方ないと思う。
だが同時に気にすることも考えることもない、とも思う。なぜなら―――
「入るよ。面白そうだしね」
―――どんな理屈をこねようと、結局のところ東雲誠は読者主義な人間なのだから。
どんな時でも面白い方を選ぶだけだ。
その答えにヴァーリは満足げに、美候は不満げに、そして黒歌は少しだけ嬉しげに見えた。
「では、東雲誠。君を禍の団に歓迎するよ」
誠は思う。この選択に少しだけ、気にすることがあるとしたら。
ちらりと、覗き見るように黒歌の方を見る。・・・ばっちり目が合った。
互いに誤魔化すように慌てて目を逸らす。
気にするところがあるとすれば、それは少しだけ、ほんの少しだけ、面白い以外の理由が混ざっていることで。
そしてそれが何なんのか、正体がわからないということ。
でもわかろうとは思わない。多分、これは理屈ではわかっても理解はできないものだから。
環境は劇的に変わった。一緒に住んでいた猫は美少女になったし、テロリストに加盟した。この家もヴァーリーたち限定とはいえ、アジトとして使用することにもなった。
それでも、黒猫が、黒歌がいることに変わりないのなら、自分でもわからないこの理由も理解できる気がした。
――――東雲誠の物語は否応なく変化しつつも面白く進んでいく。
「・・・あっ、禍の団のこと他人に喋ったら消されるから気を付けろよ」
ただ何でもないことを忘れていたといったヴァーリに、やっぱり入らなきゃよかったかな…などと、脱退できない悪質詐欺に引っかかってしまったような気分に、少しだけ後悔する誠だった。
最後にその後誠の作った遅めの晩御飯に、満場一致で誠の役職は料理長に決まったとだけ言っておこう。
ようやく原作の一巻分が終わりました!
読んでくださった皆さんに感謝を!
小猫はヒロイン候補が多かったので準ヒロインとしてやっていこうと思います。