パワーインフレ世界の一般人   作:愛黒猫

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物語介入

入学から2年。留年するなんてへまもせず、俺は最上級生となった。まあ、学年主席が留年するなんて冗談でも笑えないか。

 

しかし、いよいよ受験が見えてきたこともあり、クラスの雰囲気も切羽詰まってきたような気がする。

 

休み時間も自習する人が増え、鬼気迫るような表情するクラスメイト達から、なんとなく読書し辛い空気が漂っていた。

 

まあ、構わず読むのだか。

 

「あなた、よくこの空気で本読む気になれるわね。少しは周りに気を使ったほうがいいんじゃないの?」

 

隣の席のグレモリーが話しかけてきた。

 

そう言うグレモリーも一切勉強せず、姫島と話してたじゃないか…と、思ったりしないこともないが指摘するのも面倒なので適当に返事を返す。

 

「良いんだよ。受験は戦争なんだ。他者を如何様に蹴落とすかの勝負で、他者を出し抜くかの勝負だ。それに、人が読書してるってだけで集中力が無くなるような奴は、どこでやっても同じように集中できないよ」

 

寧ろ、読書が他人の集中の妨げになるなら、それは勉強の妨げであり、受験から他者を、ライバルを蹴落とすことにほかならない。だとしたら俺も、戦略的に受験生らしい行為をしているということになる。

 

「他人を蹴落とすことのどこが受験生なのよ…」

 

しかし俺の考えはグレモリーの常識から大きくズレていたらしい。

俺の回答でグレモリーは頭を抱え、

 

「あらあら、随分と過激な思想ですわね」

 

姫島が口に手を当て、上品に笑う。

 

入学式にグレモリーと出会ってからこれまでの二年間、腐れ縁のように続いてきた友人関係。誠の自由奔放さにグレモリーが文句を言いつつも、何だかんだで途切れることなく続く関係を考えると、なかなかどうして二人のの相性はいいのかもしれない。

いつの間にか、グレモリーについて来る姫島とも友人と言える仲になっていた。

 

恋愛感情こそないが、それなりの信頼関係を築いてきたのだから居心地の良さを感じるのも当然だろう。

 

人は長く持った物に愛着を感じるものだが、それ以前に、苦手なら最初から持つ気さえおきないのだから。

 

「まあ、冗談はおいといて、だ。俺らみたいにあまり受験勉強が必要ないグループだと暇でしょうがないんだ。静かにしてるだけでも感謝してほしいね」

 

いや、本当にね。退屈は人間の天敵なんだ。あんまり退屈過ぎて鬱憤が溜まってどうにかなりそうだ。

 

すると、姫島が思い出したように手を打った。

 

「そういえば、確か一個下の学年の男の子に彼女ができたと噂になっていましたわ。それ程珍しくない事でしょうに、まるであり得ないことのように話されていたのが印象的でした」

 

「確かにそれは妙ね。彼氏彼女なんて高校生なら当たり前でしょうに」

 

彼氏がいないグレモリーが言ってもね・・・。

 

 

「そうでもない。グレモリー、君に彼氏ができたらそれこそ噂じゃすまないと思うよ?要はどんな人物に恋人ができたかだよ」

 

芸能人の恋愛がテレビで報道されるようなものだ。

 

「なる程ね。朱乃その子の名前は?」

 

グレモリーが朱乃に訪ねると朱乃は少し間を空けて答えた。

「確か…三馬鹿の一人、と言われていましたわ」

 

……まさかイッセーか?

 

グレモリーは何か気がついたのか俺の方を向いた。

 

「誠。確かあなたが可愛がってる後輩にそう呼ばれている人がいなかったかしら?」

 

「あぁ、いるよ。だが可愛がってはない。面倒を見てるだけだ」

 

ほっとくと犯罪まがいのことやるからね、あいつら。

まあ、慕われているから悪い気はしない。特にイッセーはスケベなだけで根は純粋だからね。スケベだけど。

 

と、そこまで考えていたらチャイムがなった。

 

「あらあら、授業が始まりますわ。その三馬鹿君たちが気になりますが仕方ないですわね」

 

「そうだな、この授業が終われば昼飯だ。そのときにでも噂の真相を確かめてくるよ」

 

「なら、この噂はあなたに…。なに、朱乃?」

 

グレモリーが話を切り上げようとしたが、姫島がグレモリーを止めた。

 

姫島はグレモリーにだけ聞こえるように手を口に当てて話す。

 

「そのことで、実は…………堕天………が……」

 

なにを言っているのか聞こえないが、姫島が話すにつれ、グレモリーの顔が真剣身を帯びる。

 

「…そう。なら、最低限注意する必要がありそうね」

 

話し終わったのかグレモリーは真面目な表情のまま、俺の方を向く。

 

「誠。やっぱりこの噂は私たちが調べるわ。あなたは関わらないでちょうだい」

 

「なんだか分からんがそうして欲しいならそうしよう。」

 

急な方向転換に驚くが、特にこだわりがあるわけでもないので了承した。

 

「ごめんなさいね。お詫びといっては何だけど、今度部室のお茶を新しく仕入れておくから飲みにきてちょうだい」

 

「それはいい。和菓子を作って持っていこう」

 

姫島の淹れたお茶はうまいからな。

 

「小猫ちゃんが喜びそうですわね」

 

「期待しとくよう、言っといてくれ。今回のはかなりの自信作だ」

 

これまで何度かオカルト部室を訪れたが、偶々作っていったお菓子を出したところ、子猫ちゃんがいたく気に入ったらしい。それ以来ちょくちょく部長であるグレモリーに俺に作って貰うよう頼んでいる。

 

俺自身、美味しそうに食べてくれる子猫ちゃんを気に入っているので出来るだけかなえてあげたいと思う。

 

そこで教室のドアがあき、先生が入ってきた。

 

「ほら、授業を始めるぞ~!席に着け。」

 

「ここまでですわね。それではまたあとで」

 

そういって姫島は自分の席に戻っていった。

 

皆が座り静かになったところて先生が教壇に立ち、号令をかける。

 

「起立!気をつけ!礼!」

 

「お願いします」

 

 

 

また、平凡に授業が始まる。

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