少なくとも次回まで、こうした回想話になりそうです。
どこかで巻きに入らないと、ずるずる続きそうなので気をつけたいですね……。
数学教師の野太い声を聞きながら、俄に俺の前に景色が形作られてきた。
机の茶色、開かれた白いままのノートと教科書、虚しく転がるシャーペン……。
顔を上げれば、もう既に教師は出席簿を携え、帰途についていた。
「――やっちまった」
ボンヤリとした後で、いつもの虚脱感が襲いかかってくる。
毎度のことながら、自業自得だった。
居眠りをしない日なんて無いも同然な日常生活だし……。
「……」
ん?
俺が額を両手で押さえて俯いていると、隣から視線を感じた。
とはいえチラチラと落ち着きのなさそうなものだ。
指の隙間から、こちらもちょいと窺ってみる。
「――あ」
目と目が合ってしまった。
驚いたようでいてちょっと慌てたような彼女の目と、指の隙間から挙動不審に観ていた俺の目が。
観念した俺は手を外すと、身体を起こす。
「……え、えっと」
何故かいきなり、彼女は焦り始めた。
見られることに慣れていないと見える。
まあ転校初日といい、授業で当てられた時の慌てようといい、さもありなんだけどさ。
「どうかした……久世橋さん?」
相手が慌てていると、こっち側としては落ち着くものだ。
自然と軽く笑いながら、俺は彼女に問うた。
お陰で今のところ、コミュニケーションに支障は生じていない。
「――あ」
そんな俺の様子に安心してくれたのだろうか。出来れば、そう思いたい。
慌てふためいた様子が少し収まったように見えた。
そして彼女は目を落とし、綺麗に書かれたノートを見つめる――
「……そ、そっか」
居心地が悪くなったのは俺の方だった。
そうしながら久世橋さんは、俺の方へとまた視線をチラチラと向け始める。
真面目で内気な彼女は、その実――
「……あ、明日、絶対に返すから」
「う、うん……」
――気が利きすぎて、恩に着るこっちが困るくらいだった。
オズオズと差し出されるノート。
それを出来る限り丁重に受け取り、鞄へとゆっくりと入れる俺。
「わ、悪いな。普段から、こんなで……」
「だ、大丈夫、だから」
こんなに落ち着かない会話を交わすのは大変だと思う。
我ながらそう思うし、相手の女子も間違いなく感じてることだろう。
久世橋さんが転校してきてから、一週間ほど経過した。
俺はというと、そんな彼女に対し、何だか複雑な気分を抱いていた。
そもそも俺が彼女のことが気になったのは、失礼ながら友達らしき相手が見られなかったからだった。
というわけで席替えで隣になったというきっかけを使って、話しかけてみたのだ。
第一声が「さっきの授業のノートを……」という頼み事というのは、何とも情けなかった。
いや「情けなかった」じゃない。現在進行形の「情けない」だ――
「……誰かの役に立てるなら、それで」
そう独りごちる久世橋さんは、俺の方を見ていない。
軽く見遣ると彼女は恥ずかしそうではあるものの、どこか真剣そうだった。
呟きは聞かれたくないだろう。俺は気づかない振りをする。
「一条ー、ちょっといいか?」
久世橋さんから視線を逸らした俺の耳に、聞き慣れた声が飛び込んでくる。
顔を見なくても分かる。小学校の頃からの付き合いの男子だ。
「ん、何だ?」
「いや、ちょっと……トイレ行かね?」
「そうだな、そうするか」
コイツがトイレに人を誘うことは珍しくない。
俺が席を立つと、こっちを見た久世橋さんと目が合う。
ビクッとする彼女。ちょっと目を開いてしまう俺。そんな俺たちを見る友達――
「で、一条? 転校生と仲良くなれたか?」
廊下に出て歩きながら、隣からニヤけ顔に聞かれた。
「仲良く」という言葉は色々と厄介だ。
浅くも深くも、どんな意味にも捉えられるのだから。
「ん。ノートを貸し借りするくらいには……」
「え? お前、貸したことあるのか?」
隣から疑問符を浮かべた友達の声がした。
失礼な。俺だってたまには――
「ま、まあ……この前、久世橋さんが欠席した時、ちょっと」
「へぇぇ……」
嘘っぽく聞こえたかもしれないけど、嘘じゃない。
この前、体調不良とかで休んだ彼女に、ノートを貸したのは本当だ。
「いつもの恩返し」と言った時の彼女の、何とも言えなそうな赤らんだ表情は忘れられない――
ああ、なるほど。今、気づいた。
俺たちの会話らしい会話は――
(ノートの貸し借りくらいの時くらいしか……)
何てこった。
「コミュニケーションに支障は生じていない」なんて、当たり前の話だ。
仲良しだなんて有り得ない。
何とも薄い関係ということを、俺はここで実感してしまった――
――――
「……久世橋先生も、転校生だったデスカ」
簡単に話し終わると、まるで私やアリスみたいデス、と何だか面白そうに九条さんは独りごちた。
しかしまあ、この子みたいに陽気な生徒なら、すぐに打ち解けられたんだろうなぁ……。
「カレンも最初、苦労してたよなぁ」
何てことを考えてたら、意外なセリフが飛び出した。
左隣で、猪熊さんは感慨深げな表情を浮かべている。
「いやさ……カレンのクラスの人たち、遠慮しちゃってて」
「私、頑張ったデス! もっと仲良くして下さい、って言ったデス」
そう言って胸を張ってみせる九条さんの表情は、とても明るいものだった。
暗さなど微塵も感じさせない。
「……そうだよな。言葉にしないと伝わらないことってあるよなぁ」
そう言って、俺は水を喉に通す。
飲み込んだ時、微かに胸に残る冷たい感触。
あの頃のことを話して、思い出していたせいだろう。
……廊下で、俺がクッシーとの関係について思った時の寂しさを思い出してしまう。
「でさ、センセ? クッシーちゃんとは、それからどうなったの?」
コップをテーブルに置くと、猪熊さんが嬉々として問いかけてくる。
クッシーちゃんというのが、彼女の中での呼び名と相成ったそうだ。
ほら。今日俺が見せた「隙」のせいで、クッシーの学校での立ち位置がまた一歩近づいた。
――いじられキャラに。
「何だか聞いてるト……仲悪くないみたいデスけど、仲良しってわけでもなかったデス?」
両腕で頬杖をつきながら、九条さんは天井を見ていた。
ボンヤリと考えているのだろう。
「仲良し」と言えるラインのようなものでも……。
「うーん……まあ、ちょっと思うことはあるけど」
猪熊さんは、何だか疑問そうだった。
「ちょっと思うこと」が何なのか、俺には分かるような気がする。
それを感じて少し照れそうになると、
「いや――実は、綾も転校生だったんだけどさ」
「小路さんが?」
懐かしそうに笑う猪熊さんに、俺は視線を向ける。
「うん……それで私やしのの後ろを、ちょこちょこ付いてきてたんだ」
あの頃の綾、面白かったなぁ、とクスクスと笑い続ける猪熊さん。
そうしながら、チラッと俺に意味深な視線を向けることも忘れない。
……やっぱり、そういうことだよな。
「珍しいんじゃない? センセとクッシーちゃんみたいな関係って」
案の定、からかわれることになるらしい。
猪熊さんたちと小路さん、そして、俺とクッシー。
違いなんて、あからさますぎる――
「一条先生と久世橋先生、異性ナノニ……」
九条さんもそこではたと気がついたらしい。
右隣から俺を見つめているのが感じられた。
「うんうん」と、そんな九条さんに同調する猪熊さんのおかげで、俺は再び水を口に含む。
今度の冷たさは、ちょっと感じた火照りを抑えるのに一役買ってくれた。
「……まあ、色々とタイミングが良かったんだか悪かったんだか」
思い返すと、おかしな話だと思う。
猪熊さんに言われるまでもなく、俺も漠然と感じていた。
何だかチグハグで照れくさい関係だよなぁ、なんて……。
「悪かった? 良かったんじゃないかな、結局」
猪熊さんは相変わらずニヤニヤと笑っているけど、その目元はどこか優しげだった。
「だってさ。おかげでセンセとクッシーちゃんは一緒に担任やってるわけで」
「一条先生のおかげで、久世橋先生に近づきやすくなりマシタ!」
そう言って、二人の生徒は笑う。
一方は嬉しそうに、もう一方はちょっとからかいのトーンを混ぜながら。
(……ま、そうか)
この子たちが喜ぶのなら、久世橋先生も本望だろう。
……ですよね、久世橋先生? いや、そうと言ってほしいです。ごめんなさい。
「でもさ。それだけの関係なら――今日まで付き合いあったわけじゃないでしょ?」
ひとしきり笑った後で、猪熊さんは俺に聞いてきた。
しかしまあ、物怖じしない子だ。
自分のクラス担任でもない異性の教師に、ここまでズバズバと――
「そうデス、それにしては一条先生と久世橋先生は仲良しさんデス」
――まあ、このハーフの子も負けてないんだけどさ。
ビシバシと、俺の琴線に触れるどころか、思い切った調子で弾き倒そうとしてくるんだから。
……ムードメーカーが二人もいると賑やかで話しやすい一方で、押され気味になることも増えるなぁ。
「……まあ、そうだな。最初は、そんな感じだったんだ」
チラッとカウンターの裏を見る。
店主らしき人が、麺の水切りをしているのが分かった。
(……もうすぐ出来そうなのに)
勝手に動き始める口は、どういうわけなのだろう?
あの頃のことを思い出したことと、生徒に聞かれたこと。
両方の意味合いがあるのかもしれない、なんて勝手に自己分析してしまう。
――――
「あ、丁度良かったわ、久世橋さん」
そんな日々が少しばかり続いた、ある日のこと。
俺が廊下から教室に戻ろうとしていると、階段付近に佇む二人の姿が見えた。
久世橋さんと担任教師だ。周囲に人影はない。
俺の方からは、久世橋さんの顔が見える。
「な、なんですか先生?」
相変わらずモジモジした様子で、彼女は先生に応じる。
「あなた、委員会……まだ入ってなかったわよね?」
「い、委員会……ですか」
何となく見ていると、そんなフレーズが聞こえてきた。
委員会……ああ、そういえば。
(俺も一応……保健委員だったな)
とはいえ、仕事なんて殆どない。
いや、体育で怪我をしたヤツを保健室に連れて行くのが役目だけど。
……それは詰まるところ、授業をちょっとばかりサボれる口実にもなるわけで。
むしろ「仕事」というより「休憩」ですらある――
「何かの委員には属してもらいたいかな、って。決まりみたいなものだし」
「……そ、そうですか」
「というわけで」
そこで一旦言葉を区切ると担任教師は事も無げに、
「文化祭実行委員、というのはどうかな?」
「……え?」
瞬間、久世橋さんの全身が真っ白になった、ように見えた。
それくらいに度肝を抜かれた、といった反応だった。
「せ、先生っ? そ、それは、ちょ、ちょっと……」
その後で、アワアワとしながら久世橋さんは先生に詰め寄る。
見てるこっちが可哀想に思うくらいに赤く、ちょっとばかり目が光ったようにも見える。
当たり前だけど、決して期待していた時に光るときのそれではない。
彼女は、涙ぐんでいた……。
「でも……もう、他の委員会は定員になっちゃってて。実行委員だけは、まだ空いちゃってるのよ」
対する先生は、ちょっとばかり困った様子だった。
眉を下げた、おっとりとした先生の顔つきが想像できる。
俺たちのクラスは、何故か実行委員が決まっていなかった。
男女一人ずつ、ということになっていたらしい。
図らずも、このクラスは忙しいヤツが多かった。
やれ部活だ、やれ地元の空手クラブだ、やれピアノ教室、塾――
というわけで「文化祭は興味あるけど、あまり暇がなくて」という生徒が多かった。
先生が今日切り出したのは、もうすぐ文化祭実行委員会の初顔合わせがあるからだろう。
大方の学校の例に漏れず、うちの文化祭も十月とかその辺の秋頃に行われる。
学校によってまちまちではあるけど、春の時期から準備を少しずつ進めるというのは早い方だと思う。
後で聞いたら「生徒の自主性うんぬんかんぬん」というもっともらしい理由が――いや、まあそれはいいや。
「で、でも……無理、です」
「うーん――でも、他の女の子は、みんな決まっちゃってるしねぇ」
身体まで震えていそうに見える久世橋さんと、頬に手をやる先生。
お互いに、困ってそうだった。その度合いは、勿論違うけど。
「……あ」
ん?
そんな緊張の中、声がした。
恥ずかしがり屋の割には、よく通る声が。
ノート絡みのコミュニケーションで、聞き馴染みのある声が――
「……あ」
俺も、間の抜けた声が出てしまった。
いつの間にか、少しずつ近づいてしまっていたらしい。
そのため、久世橋さんもまた、俺に気づいた。
「あら……一条くん?」
その声にあてられて、先生も振り向いた。
思った通り、お困りの様子だった。眉を下げて、ほんの少し強張って……。
久世橋さんほどでないにせよ、先生も担任という手前、大変なんだろう――
「――ふむ」
なんてことを思って、油断してたのかもしれない。
そんな先生の表情は一瞬の後、何やら嬉しそうなものに変わる。
「あれ?」と思うのも束の間、
「ねえ、一条くんって保健委員だったわよね?」
「え? ……あ、そうです」
頭を掻きながら、間の抜けた返事をする俺。
それに対し「それじゃお仕事は、あまりない……」と呟く先生。
そして、何とも言えないほどに不安そうな久世橋さん――
「それに、一条くんと久世橋さんはお隣同士――」
「い、いや、あの……先生?」
俺もまた、不安そうな予感を一気に覚えた。
チラッと先生から視線を逸したら、空中で久世橋さんのそれとドッキングする。
「!?」とお互いが照れくささに目を逸らした瞬間、
「……そうね。一条くん、久世橋さん」
コホン、と先生は一息つく。
俺がハラハラ、久世橋さんがドキドキとしていると、果たして彼女は――
「二人で文化祭実行委員、ということで。いいかな?」
――――
「とんこつ三丁、おまちっ!」
「大将、ありがとございマス!」
「うひゃー、うまそう」
テーブルの脇から、何とも食欲をそそられる匂いがした。
ラーメンの器が三つ――これは、なかなか……。
「いただきます!」
「いただきマス!」
「……それじゃ俺も、いただきます」
思い切り顔を綻ばせる二人に挟まれたまま、俺も彼女たちに倣って割り箸を割った。
モワモワと浮かぶ湯気の心地よさが、これまたたまらない。これぞ、ラーメンの醍醐味――
「……そっか、クッシーちゃんとセンセは」
「文化祭――スクールフェスティバル、デスネ」
フーフーと麺を冷まし、チュルチュルと口に運びながら二人は呟くように言った。
それがあまりにも自然な動作だったため「ああ、さっきの話か」と気づくのに少しかかってしまった。
「文化祭実行委員会――まあ、文実か――が無かったら、俺たちは」
「一緒にいなかった?」
「一緒じゃなかったデス?」
息の合いっぷりまでピッタリだった。
箸でつまんだ麺が、スルッと落ちてしまう。
……ちょっとした動揺が、麺類の場合は命取りだ。
「ま、まあ、確かにそうなんだけど……」
気を取り直して、俺は近くの七味を手にとった。
それをふりかけることで、ちょっと時間を稼ぐ算段だ。
「何にせよ、話を聞いてると……クッシーちゃんって」
「可愛いデスッ」
そう言いながら微笑む二人組を見遣ると、何だか本当に嬉しそうだった。
……先生、良かったですね。生徒に愛されてますよ、先生には見えないでしょうけど。
だから、怒らないでほしいかなと……いや、ごめんなさい、ホント。
「で、文実に入って……」
「お二人は、どうなったデスカ?」
「――まだ、終われないのか」
二人にそう言われて、俺はラーメンに少し目を落としてしまった。
スープの奥深さを見ていると、不思議と気分が落ち着く、ような……。
「……」
「ん?」
そうしていると、視線を感じた。
九条さんが俺の視線を、自分の目で追っているようだった。
見つめる先にあるものは――
「――ナルト?」
「……ハイ」
「そっか」
「ハイ」
真剣な表情だった。
おそらく、俺やクッシーの前で、こんな表情を見せたことはない。
……食べ物が絡むと、こうも本気になるのか。
「……欲しい?」
「そ、そんなハシタナイ」
いや、そこでいきなりその言葉はおかしいだろう。
と思ったけど、何だかそれすらも照れ隠しのようだった。
頭に手をやって、顔を綻ばせる九条さん。
「――あげるよ」
「い、いいんデスカ?」
「タイミングが良かったな、特別だ」
箸でナルトを取って、九条さんの器に入れてあげた。
「ワァ……」と目を輝かせた後に「ありがとございマスッ」と嬉しそうに言う。
――後で言い回されないことを願うばかりだ。他の生徒にまで大挙されたら、俺の財布が……。
「ねぇ、センセ? カレンにナルトあげたならさぁ……」
「猪熊さん、さすがに焼き豚は無理だからな?」
「ちぇー……」
譲れない一線というものもある。
そのことを伝えたら期待していた猪熊さんは、ちょっとばかり口を尖らせた。
ちょっとだけ失望した様子で、自分の器へと戻ろうとする彼女に、
「まあ、いいや。それ以外の具なら」
「……マジ?」
「マジ」
今日、ここにいる猪熊さんは、もうしょうがない。
その手前、九条さんだけ特別扱いというのも、何かアレだ。
……俺は甘すぎるのかもしれない。
「それじゃ――その、卵を」
「……う」
痛いところを突かれた。
卵と来たか……うーん、一本取られたのかもしれない。
「……焼き豚以外って、言っちゃったしな」
「ありがとね、センセ」
卵を摘んで、名残惜しく思いながら俺は彼女の器に入れた。
その時の猪熊さんのホクホク顔ときたら――はぁ。
「しかしまあ、一条先生は太っ腹デス」
嬉しそうに食べ続けながら、九条さんが声を掛けてきた。
「何というか……甘――い、いや、優しいよね、センセは」
自分の言葉を、即座に訂正する猪熊さんもいた。
なるほど、取り繕うのはちょっと苦手らしい。
そのままからかった調子で居続けた方が、もしかしたら相手側には――それは置いといて。
「……俺が優しかったら、あの人はもっと――」
「へ?」
「ハイ?」
つい呟いてしまうと、二人の視線はキョトンとした様子に変わる。
「つい」と言っても、何だかどこかで話したかったのかもしれない。
その優しさ、その包容力――そんな人がいると、何だか自分のことのように自慢したくなるものだと何となく思う。
「なになに? 何か話したそうだね、センセ?」
「一条先生、言いたいことでもあるんデスカ? スッキリしていいんデスよ?」
二人の視線が一気に集まり、俺の顔で一つになったのが分かる。
その好奇心が行き着く所も、おそらく同じだろう。
……「あの人」が誰なのか、何となく見当がついていたりするのかもしれない。
「そういえば廊下で会った時、仲良さそうだったよね」
「私も、久世橋先生と一条先生の三人で一緒にいる所、見マシタ」
二人は食べる手を休めて、俺への言葉を止めない。
ある意味で、俺たちの利害とやらは一致しているのかもしれなかった。
そこで一息ついてから、俺は言う。
「俺と久世橋先生は、その初顔合わせで――」
あの人の話をする時、どうしてもどこかでかしこまってしまうのは……何故なのか。
――よろしくね、二人ともっ! 一緒にがんばろうね!――
初めて会った時の明るさ、優しさ、頼りがい……その全てをきっと、俺もクッシーも忘れられないだろうし、忘れるつもりもない。
だからきっと……
「烏丸さくら先輩――二人の知ってる烏丸先生に、初めて会ったんだ」
このSSでメインヒロインは久世橋先生。
サブヒロインではない、もう一人のヒロインは、烏丸先生というイメージです。
しかしラーメン屋の話を描写してると、こんな時間なのに食べに……ダメだ、こらえないと。
次回、烏丸先生との出会いです。