畜生先生ポチま!   作:お話下手
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明日菜とポチ

 【1995年】

 

 「オハヨー。 今日は先生から皆さんに、新しいサティスファクションメンバーをご紹介したいと思います」

 

 教室に入ってきたのは両眼の色がそれぞれ違う、鈴の音が鳴る髪留めをしたツインテールの女の子。 無表情で顔立ちが非常に整っているせいか、人形のようなイメージを持たれる。

 

 「……」

 

 ポチが黒板に子供達へわかりやすいよう、平仮名で“かぐらざか・あすな”と書いた。 みんな仲良くしてねーっと、自己紹介を済ませたが転校生は何も喋ることはない。

 

 「ちょっとアナタ、なんですのその態度と目つき。 ポチ先生に全て任せるなんて転校生のくせに生意気じゃないですこと?」

 

 先陣を立ったのは突然の転校生にも怯まないクラスの委員長、雪広あやか。 

 

 「あ、あやかちゃん? 俺は大丈夫よ? だから仲良くして? ほらデュエッ! すぐさま仲直り出来る秘密の呪文だから唱えて」

 

 「なんですの、それ…」

 

 相変わらず訳のわからないことばかり言う自分の担任に困惑、彼女が明日菜から目を反らしている時、小さく何かを呟いた。

 

 「アナタ、今何かおっしゃいました?」

 

 「────」

 

 「は?」

 

 「良い子ぶってんじゃない。 ガキ」

 

 「がっ!?」

 

 ブチぃ! 切れちゃいけない何かがキレた音が教室に響く。

 

 「な、なんですってぇ! ガキはどちらですの! このチビ!」

 

 「それがガキって言ってんのよ、バカ」

 

 キャットファイトォ! レディィィ、ゴオオオ!

 取っ組み合いの喧嘩が始まった、周りの子供達は囃し立てるだけで誰も止めようとしない。

 

 「おいいいいい!? 仲良くしろおおお!? 君ら出会って三分後喧嘩とかどんなカップラーメンだよ! ほら、喧嘩は止めて! 呪文を唱えて! デュエッ! デュエッ! デュエエエエ!」

 

 『ポチうるさい!』

 

 「ひぃ!」

 

 「ポチいいいいい! 貴様また、私の羊羮食べたなあああ!」

 

 混沌とした教室に更に乱入したのは飼い主のエヴァンジェリン。 犬歯を剥き出しにしてドアをぶち破ってきた。

 

 「エヴァンジェリン!? 丁度良かった! 助けて、この二人止めて! やっぱり俺が先生なんて無理だったんだ!」

 

 「はぁ? …全く、しょうがないな。 貸しだぞ」

 

 これがこの四人が一緒に顔を合わせた始めての日である。 初日から最悪だった。

 

 「ええい、大人しくしろ! おい貴様! 障壁をナチュラルに壊すんじゃない、ゴリラか! そしてポチいいい! 逃げるなあああ!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 【2003年】

 

 「殺殺殺殺殺」

 

 「……」

 

 ポチに案内される形で2─Aに向かうネギ。 自分よりも大きな背中からは、どす黒い怨念のようなものが滲み出ている。

 囁く呪詛の言葉は少年の胃をキリキリ痛めた。

 

 「さぁ、ネギ君。 着いたよ」

 

 しかし、一度振り替えれば満面の笑み。 晴れ晴れとした笑顔に戸惑いながらもネギは教室のドアに手をかける。

 

 「…む、ドアが少し開いている?」

 

 ポチだけはすぐに気づいた。 典型的に仕掛けられる悪戯、ドアに挟んだ黒板消しの存在に。

 くっ、先に向かった明日菜ちゃん達からネギ君のことを聞いて誰かが仕掛けたな…! ネギ君の低い身長では気付いていないみたいだし、これに引っ掛かってしまえば爆笑、間違いなくクラスと馴染んでしまう!

 んなことさせるかよー! その悪戯にはポチが受けてやるぜー!

 クラスの人気者は俺だー!

 

 「ネギ君、退くんだ!」

 

 「え…」

 

 無理矢理引っ張って俺の頭で黒板消しの直撃を喰らう。 わぷ。

 

 「イヤー、マイッタナー、ヒッカカッタナー」

 

 「“とあ”さん、今、わざとですよね。 なにがしたいんですか…」

 

 へへ…! これで可愛らしいドジッ子ポチの誕生だぜ……って何かに躓いた!?

 苦笑いのフリをしながら一歩踏み出すと、更に仕掛けられていたロープに躓いて転げ回っていく。

 

 「ぐお…! い、いやー参ったなー引っ掛かったなー」

 

 「ちょっとポチ! せっかくボクが仕掛けたのに無駄にして!」

 

 上から怒鳴り付けるのは、チビッ子双子の姉、鳴滝風香ちゃん。 あらあらパンツ見えてる。

 …つか、あれ? 期待していたのとは違う?

 ポチ的にはやだもー、ポチってばお茶目さん! ってな感じになるのを期待していたんだけど。

 皆さん、空気読めよ…みたいな雰囲気が。 うう、ポチ虐めが酷い、動物保護団体に訴えてやる!

 

 「あの、“とあ”さん? そろそろ退いてくれませんか、僕の自己紹介が出来ないんですけど。 ていうか退いて」

 

 ネギ君黒いな!? 出逢って初日で敬語止めてるよ!

 当然、ポチとは違い一気に人気者へなったネギ。 その、あまりに楽しく女の子達に遊ばれている様子を見て、駄目犬は更に嫉妬の炎を燃やした。

 

 「呪呪呪呪呪」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 「ネギ君の授業、どう?」

 

 「まぁ、ありじゃないか」

 

 お昼。 屋上でエヴァンジェリンと一緒に茶々丸が作ってくれた弁当を広げるポチ。

 因みに茶々丸自身はハカセと超ちゃんからメンテナンスを受けているようだ。 今度、ポチの“式”もメンテナンスしてもらおうかな、色々秘密が知れそうだし。

 それにしても、エヴァンジェリンが人を褒めるなんて珍しい。 俺なんてずっと一緒にいるのに2年くらい前しか褒めていない……いや、あれは褒められてないな。

 更に3年前のやつは……これは褒められたとは言えないし、あれ? 結局一度も褒められたことなくね?

 ペットなのに扱い酷くね? ストライキや、ストライキ!

 

 「十才にしてあの秀才ぶりは中々ない。 まだまだフォローは必要だろうがな」

 

 背が低いから黒板に届かなかったり、子供だから可愛がられたり、どちらもどうしようもないものだ。 だが、やはりそれでも勉学を教える教師としては上手いの一言、生真面目な性格もあり向いていると言える。

 

 「みんな、基本的真面目に受けていたしね」

 

 「お前みたいにならないから安心したんだろう、千雨は泣いて喜んでいたぞ」

 

 ずっと普通の授業を受けたかった彼女にしては、子供先生でどうなるか不安でいっぱいだった。 ポチのうろ覚えで語る適当なクトゥルー神話や因果律について、論破と同時に投げつけられる千雨のツッコミは暫く見れなくなりそうだ。

 

 「それにナギ・スプリングフィールドの息子が来てくれたのは、私にとってかなりの朗報だ」

 

 「え、もしかして…」

 

 「ああ、ぼーやの血を吸えばこの呪いから解放される! ハハハ!」

 

 「なにー!? ズルイぞ、ひとりだけ!」

 

 薄情な飼い主には髪の毛クシャクシャしてやる! このこの!

 

 「ええい! 止めろ! もう私は修学旅行から置いてきぼりにされたくないんだよ!」

 

 それは此方の台詞! 俺だってここから出て秋葉原に行きたいんだ!

 大の大人同士、みっともない取っ組み合いが始まる。 体格ではポチが勝るが、最弱でも強いエヴァンジェリンの合気術はそのハンデを埋めるには充分すぎた。

 9:1でポチがボコボコにされてる。

 

 「ぐぬぬ、エヴァンジェリンだけおいしい思いをさせるか!」

 

 「器が小さいな! ペットなら飼い主の望みを叶えてやるのは本望だろう!」

 

 「残念でしたあああ! ポチに世の中のルールは通用しませえええん!」

 

 「安心しろ! 例えお前が因果に縛られない存在だとしても、私のルールがお前のルールだ!」

 

 「厨病め! 一々格好いいんだよ!」

 

 「当然だ! 私は悪の魔法使いだからな!」

 

 「へー、エヴァちゃんって魔法使いだったんだ」

 

 「ふははは! 今更気づいたか、って────え?」

 

 喧嘩に夢中だったせいか、組み合っていた二人の横には神楽坂明日菜がほほう、といった表情で座り込んでいた…が、全く気付いていなかった。 突然のことに涙目になりながら抱き合い、叫び声をあげるエヴァンジェリンとポチ。

 

 『ぎゃあああああ!?』

 

 「あれ、なんかデジャヴ…」

 

 明日菜ちゃんが首を傾げているけど、そんな場合じゃない!

 

 「大変だよ、エヴァンジェリン! このままじゃオコジョにされちゃうよ! 俺、飼い主がオコジョなんて嫌だよ!」

 

 「おい! 何故私だけがオコジョにされるように言うんだ!?」

 

 「あ、やっぱりオコジョにされちゃうんだ。 ネギの言ってた通りね…」

 

 明日菜が呟いている間に、懐からシリンダーに詰め込まれた魔法薬を取り出すエヴァンジェリン。 焦りで手が震え、目が逝っちゃってるが、記憶を消すなんぞ封印状態だとしても楽勝だろう。

 

 「よ、よーし…。 動くなよ、神楽坂明日菜。 ちょっと頭がパーになるがなに、貴様は元々パーだからな安心しろ、ククク…!」

 

 明日菜ちゃん逃げてえええええ! 超逃げてえええええ!

 

 「パーって何!? 怖いんだけど! え、ちょっと待っ…!」

 

 「記憶よ消えろ!」

 

 その時、不思議なことが起こった! 完璧だったはずのエヴァンジェリンの魔法、何故か不発に終り、明日菜ちゃんの洋服下着を全て消し去ってしまったのである!

 色々見えた。 てか全部見えた、パ〇パンだった。

 

 「こ、これは…すまん」

 

 エヴァンジェリン自身も目の前の光景に混乱しているのか、目を丸くしながらも思わず素で謝ってしまう。 どうしてこうなった。

 

 「え、エヴァちゃんの……バカぁーーー!」

 

 顔を真っ赤にして号泣。 エヴァンジェリンの物理障壁をアッサリと破壊するチョップが彼女の頭頂部に直撃する。

 

 「がくっ」

 

 おいいいいい!? 最強と呼ばれるエヴァンジェリンの障壁破壊するとかどんな威力だよ!

 明日菜ちゃんは次元将ガイオウか!? しかしながら、うーむ。

 素晴らしい肉体美ですな、でも思ったとおり少し細すぎるからもうちょっと太った方が良いよ。 今のところパーフェクトは古ちゃんだから。

 

 「何はともあれ、眼福」

 

 良いもの見せていただきました、ご馳走さまですッ!

 

 「アンタも死ねーーー!」

 

 「ありがとうございますッ!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 目を覚ますとエヴァンジェリンの家にいた。 家主は明日菜ちゃんと一緒にお茶を飲んでいるらしく、比較的和んでいる。

 真新しい制服を身につけている明日菜ちゃんだが、どうやらエヴァンジェリンが用意してあげたようだ。 下着も弁償したが、彼女の派手な趣味のせいで合わなかったためか受け取らなかったらしい。

 …つまりノーパンか、ゴクリ。 やべ、睨まれた。

 茶々丸ちゃんは主の制服を明日に備えてアイロンがけ、俺達を連れ帰ったのもこの娘らしい。 ホント頼りになるわぁ。

 

 「にしても、ネギ君の魔法がバレるなんて。 しかも明日菜ちゃんに…」

 

 「本屋ちゃんを助けるとこを偶然見てね」

 

 うーむ、まさか初日にバレるとは思わなかったけど、こればっかりは仕方ないや。 明日菜ちゃんだし、この娘は昔から義理堅いから言いふらしたりする心配はまずないだろう。

 ネギ君から魔法使いの存在を知った彼女は、ネギ君の亡くなった父親と俺の話しも聞いたみたいで、更に茶々丸ちゃんから屋上の情報を手に入れ向かったらエヴァンジェリンと俺が喧嘩している場面に出くわしたようだ。 わざわざ何しにきたの?

 

 「なんて言ったらわからないけど…。 ネギが、アンタは記憶喪失で父親の話しを聞けなかったって、それで本当か聞こうと思ったし。 アンタが記憶喪失ってのに驚いたから聞きたいってのもあったし、魔法関係だったってのも驚いて……とにかく色々聞きたかったの!」

 

 「大丈夫、言いたいことはわかるよ」

 

 説明が上手く出来ないというか、まだ結構混乱しているんだよね。

 

 「確かに俺は記憶喪失だよ。 昔の話しを聞いても魔法関係者だったのは間違いないみたいだし、ネギ君のお父さん、ナギの知り合いだったのもね。 彼のことは知ってるけど、それは全て人伝で聞いたもの。 だから話しようが無いんだ」

 

 唇をきゅっと結んで俯く明日菜ちゃん、何故にそこまで深く考えてるの? ポチ、不安になっちゃう。

 

 「なんだ神楽坂明日菜。 貴様ぼーやが気になるのか? それでは雪広あやかのことを悪く言えんなぁ」

 

  ニヤニヤ楽しそうですね。 エヴァンジェリン、最近の明日菜ちゃんに苦手意識あったし、明日菜ちゃんはエヴァンジェリン大好きなんだけど、この幼女はツンデレだからな。

 

 「違うわよ! エヴァちゃんだって知ってるじゃん、わ、私も昔のことよく覚えてなくてカラッポみたいな人間だったの…」

 

 自分と同じ境遇を持つ俺に何かしらのシンパシーを感じているのだろうか。 今では当たり前だが、こうして思い返すと一緒に過ごしている間にメキメキとこの娘は元気ッ子になったからかなり驚きである。

 

 「だからさ、私もポチになんかしてあげられないかなって…」

 

 「いや、イイッス」

 

 「軽っ!?」

 

 「いやいや、明日菜ちゃんも人のこと言えないよ? あまり昔のこととか気にしてないし、俺達もそんなの気にしないで遊んでいたからさ」

 

 まぁ、あやかちゃんとは喧嘩ばかりだったけど、きっとそうだと思うな。 俺もそうだし、黙って茶を啜るエヴァンジェリンも…ね?

 

 「余計だった?」

 

 「そんなことないよ、ありがと。 ポチ、明日菜ちゃんのそんなとこ好きよ」

 

 「…あんま嬉しくない“好き”ね」

 

 えええええ!? いや、おかしいでしょ!

 今メッチャ良い雰囲気だったじゃん! 俺メッチャかっこ良かったじゃん!

 なのにいきなり態度コロッと変えすぎだよ!

 

 「え、もしかして今の告白のつもり? …ゴメン、私には高畑先生がいるし、ていうか無理だわ」

 

 告白してないよ!? そもそもなんで俺がフラれてんだよ!

 慰めようとして逆に傷つけられるとか斬新すぎる! 記憶喪失よかよっぽどキッツいわ!

 

 「それよりさ、そろそろネギの歓迎会が始まるから一緒に行こう?」

 

 「えー、なんで俺から人気を奪った人の歓迎会にいかなきゃならないのー」

 

 「アンタに人気なんて元々無いわよ! 人間が小さいわね!」

 

 「私も却下だ。 面倒くさい」

 

 「エヴァちゃんまで! そんなんだからみんなと仲良く出来ないんだよ? ほらほら!」

 

 明日菜ちゃんに無理矢理立たされる二人とも。 ポチは単純にパワーで負けているせいだが、エヴァンジェリンはわざわざ投げ飛ばさないで渋々立つあたり、実は満更でもないのだろう。

 

 「茶々丸さんも一緒に。 よーし、出発ー!」

 

 ま、他でもない明日菜ちゃんの頼みなら、聞いても良いや。

 

 




Q・エヴァンジェリンとポチが喧嘩してるけど、障壁どうなってるの?

A・ポチと二人の時は障壁を外してます。 明日菜からチョップを受けたエヴァンジェリンですが、実はこの時も外したままで、ポチは明日菜の謎パワーで破壊されたと思っていますが、実際は違います。

Q・昔に出会っている四人だけど、あやかと明日菜はエヴァンジェリンの存在におかしいと思わないの?

A・登校地獄のおかげみたいです。 因みに明日菜には効かないけど、おバカだから気付いていない。

Q・明日菜の運命の人。 出逢うタイミング、その人の秘密…うっ、頭が…!

A・まだ因子が足りない。







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