畜生先生ポチま!   作:お話下手
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ゼクトとの出逢い

 

 【1977年】

 

 魔法世界。

 

 「どうしてこうなる…」

 

 ナギの自分探しの旅の途中、TABRUNA飲食店で束の間の休息に入ったとあとナギだが、御主人様はスキンヘッドの顔が厳つい少年と睨みあっており、店内の雰囲気はピリピリしたものとなっていた。

 

 「あぁん! 殺るってのか、ハゲ?」

 

 「あぁん! それはてめぇだろ、赤毛?」

 

 血の気の多い人間というのは、嬌声をあげないと気がすまないのだろうか。 仮面に丸々覆われた頭部で静かに溜め息を吐く。 カウンターの向かい側に立つ、この店のマスターだろうか。 そんな“とあ”に怪しげな目線を送っている。

 

 「お兄さん、そんな兜脱いだらどうだい? 暑苦しいだろう」

 

 「気にするな」

 

 「連れが喧嘩しそうなんだが…」

 

 「気にするな」

 

 「後ろから魔法が飛んできたよ」

 

 「それはいかん」

 

 振り替えれば砂属性の魔法の射手がひとつ、此方へ寸前まで迫っている。 聞き耳はたてていたが詠唱は聞こえなかった。 恐らくスキンヘッドが無詠唱で放ったのか。 右手で掴みとり、握り潰す。

 

 「だ、大丈夫かい?」

 

 「関節の隙間に砂が…」

 

 ジャリジャリして気持ち悪い。 これは掃除が大変そうだ。

 

 「お兄さん凄いじゃないか、死角からの魔法を受け止めるなんて。しかも片手間でなんて、相当な実力者と見た」

 

 店のマスターが探る顔つきに変えている。こういうのは知っていた。実力を計りかねている様子だ。下手に出てそのような態度を取る場合、何かしら厄介ごとを任されそうな流れである。横目で確認すれば、ナギがハゲ頭を負かしていた。しかし、周りの取り巻き達がお返しと言わんばかりに次々と襲いかかる。

 アイツが負けるとは全く思わないが、もう少しかかりそうだ。このまま黙って退散とはいかないだろう。店内もかなり破砕されていた。

 

 「頼みを聞いてくれたら、弁償はあっちから取るよ?」

 

 「…内容によるな」

 

 「何、そう複雑な話しじゃない」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 「で、その仙人とやらをぶっ倒せば良いのか?」

 

 「別段、倒さずとも良い。ただ此処から追い払えば良いと言った」

 

 ほの暗い洞窟を悠々と進む、1人の少年と1体の機械生命体。松明すら立て掛けられていない此処は、打ち捨てられた廃坑。まだ整備された後が真新しく、とても堀尽くされた鉱山とは思えない。無論、それには理由がある。

 ここ最近、この魔力石が取れる鉱山にて1人の魔法使いがある日突然現れ、瞬く間に乗っ取ったらしい。マスターの知り合いが経営している採掘場、此処で取れる魔力石は小粒ばかりだが、その小ささに似合わず非常に濃厚な魔力が込められており、質の良い魔法発動体によく用いられている。

 近接戦闘を得意とするナギにピッタリかもしれない。

 

 話を戻そう。採掘場を乗っ取った人物、仙人と呼ばれているが、その素顔をハッキリと見た者は実のところいない。しかしながらそう呼ばれる訳として、長い白髪、小柄、年寄りめいた喋り方、そして圧倒的な魔法使いとしての実力があったからそう呼ばれているようである。

 これまでに様々な実力者を採掘場へ送り出したが、全て返り討ちされたらしい。それも全員が軽傷でギリギリまで疲労させ、撤退を余儀無くさせたあたり、かなりの力があるとわかる。手加減出来る程の余裕があるということなのだろう。

 

 「どっちにしろ、めんどくせぇなぁ」

 

 「お前のせいだろう。依頼を果たせば報酬もくれる話しだ、丁度路銀も必要だった。悪くないと思うが」

 

 「てめぇは機械のくせにバクバク食いすぎなんだよ」

 

 燃費が悪いのは認めるが、移動に疲れたとおんぶをせがんだ奴に言われてもな。待機モードになればエネルギーなど必要無いというのに。

 歩みを進める度に、洞窟内に眠る魔石の欠片がそこら辺りに転がっていることに気付く。力が抜け、灰色であるそれらは、奥へ徐々に入り込むほど光輝き、内壁には原石が剥き出しで表れていることさえある。暗闇は幻想的な世界へ変貌。

 不意に背中越しからナギは息を飲んだ。

 

 「近ぇな」

 

 「…わかるか?」

 

 「あぁ。やべぇのを感じるぜ」

 

 その声は愉しげだった。新しい競争相手を見つけたようで。

 そいつは現れた。ゆらりと霧を払うかのように。

 

 「ふむ、また懲りずに来たか。いい加減、雑魚相手に飽きるの」

 

 古びた口調。老人のような物腰。無造作に伸びきった白髪に小柄な体型はまさしく情報通り。ただひとつを除いて。

 

 「──子供だと?」

 

 「おっと、顔を隠すのを忘れておったわい」

 

 仙人の正体は10才に届くかどうかの容姿をした、少年だった。砕けた口調のわりに、抑揚の無い言葉。老人だと思っていた少年は、爆発的な魔力を右腕に込めている。

 

 「ガキかよ!?」

 

 「なに、お前さんより年寄りじゃ。気にせんでよい」

 

 ナギの言うこともごもっともだが、相手が言うこともまた納得いく。このプレッシャー、まず普通の人間程度が凡そ出せるものでもあるまい。強いな。

 

 「ん? そこの人形は───」

 

 少年が。此方を見る。その目を大きく歪ませて。苦々しく。

 

 「なるほど。お前さんが式か…。奴も本気で儂を潰しに来たな」

 

 「なんのことだ」

 

 一瞬、依頼人のことかと思ったが何かその語りに違和感を覚える。自分達とは違う、何かを見ているかのように。

 

 「心を持たぬ兵器に語ったとこでの」

 

 少年は飛び込んでくる。憐れみを含まれた言葉と共に。

 これが彼との出会い。

 

 造物主に造り上げられた、完全なる世界の元メンバー。産みの親に敵対し、対抗しゆる力を蓄えるため魔石からマジックアイテムを制作し続けていた老人。不老で、俺と同じ人形。

 そしての後にナギの師匠となる人物。ゼクト。

 

 彼はどこまでも真実を語らない男だった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 【2003年】

 

 あれ? ここどこだろう。

 気がついたら遺跡みたいなとこで、ひとりポツーン。

 

 俺がいれるとこだから、学園の何処かだと思うけど見覚えない場所だ。確か、今度のテストでクラスがビリになるとネギ君がクビになるから、バカレンジャーと一緒に図書館島にある頭が良くなる本を取りに来たとこだったような…。

 なんて名前だったか。メルちゃんのセーキミルクの本とかそんな名前の。絶対間違ってるな、この名前…。

 本は見つけたけど変なゴーレムに落とされて、みんなが死ぬ死ぬ騒いでいる最中に明日菜ちゃんに抱きつこうとしたらファングスラッシャー喰らったんだ。あの子、空中で捻り技出せるとか、どんだけ器用なんだよ。かっこよすぎて一緒にダブルエクストリームしたいわ。

 

 その後、みんなとは違うとこに落ちたみたいで挽き肉になっていると、だーれも落ちてこないし。顔面で受け止めようとしたのに。AとかBとかCとか味わおうとしたのに。ポチはラッキースケベを切に願う。

 だが、ポチにやってきたのはアルファベットじゃねぇ、ドラゴンだった。レベル100くらいのエンシェントとか位が付きそうな。ナウシカばりに恐くないわよウフフ、みたいな感じでなつかせようとしたけど、美味しく喰われた。

 彼奴絶対、一片の迷いなくだったわ。わーい、お菓子だぁ、みたいな軽いノリで。パックリ。

 ポチが銀髪オッドアイだったらなついていたに違いない。あれ装備したら無敵だからな、負ける気しねぇもん。最高に厨二出来るし、明日菜ちゃんのハートもゲット出来るに決まってる。

 

 よし、帰ったら銀髪に染めよう、カラコン買おう。ポチは明日から転生者(笑)になるわ。

 …しかし、その前にウンチまみれの身体を洗わないとなっ! あとパンツ!

 

 「おっ。彼処にでっかい扉が」

 

 出口ぽいな。Yahoo!おじゃマップ!

 

 「───って、なんだここ」

 

 円柱の建物に庭園みたいな広場が屋上に備え付けられた、オサレなテラス。あかん、来ちゃいけないとこ来ちゃったみたい。完全に部外者じゃねぇか。白いキャンバスに汚物を落っこちた感じで。うひぃ。

 

 「ようこそ」

 

 物静かな声が聞こえる。そこにいたのは、くすんだ紺色をした髪、中性的な容姿で分厚い本を片手に挨拶をするローブの若者。…コイツ、どっかで見たような。

 

 「どうしました、このような場所へ」

 

 お兄さん…お姉さん…かなぁ? 下手に訪ねるわけにもいかんし、取り敢えず。

 

 「お風呂場貸してくんない?」

 

 「ええ、構いませんよ」

 

 即答ですね。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 「いやー、すんませんねー! お風呂借りたうえに、お茶もご馳走してくれて!」

 

 「おかわりはありますから、遠慮しないでください」

 

 この親切な人、名はクウネル・サンダースというらしい。さっきから適当な会話ばかりしているが、終始ニコニコ。楽しそうに俺の話を聞いている。珍しい人がいたもんだ、大体俺が語りだすとみんな、うるせぇ!って怒るのに、クウネルさんは本当に嬉しそうに聞き入っている。

 前にエヴァンジェリンと一緒に禁酒宣言した話題とか、どうでもいい内容だったんだが…。

 

 「エヴァンジェリンも随分貴方に似てきましたね」

 

 「あれ? エヴァンジェリンのこと知ってるの?」

 

 ええ、勿論と頷くクウネルさん。

 

 「エヴァンジェリン、そして貴方のことはよく知っていますよ」

 

 「……」

 

 おや、この展開はもしかすると、まさかクウネルさんって。

 

 「ポチのファンなの?」

 

 「   」

 

 おや、クウネルさんの様子が。笑顔のまま引きつっている。

 

 「時々、貴方は本気なのか冗談なのかわからなくなります…」

 

 「え、ファンじゃないの? もしかして紅き翼の関係者?」

 

 「もしかしてもなにも、その通りです。寧ろ何故それが一番始めに出ないのか疑問なのですが」

 

 ほっほう。確かに見たことある人なんだよなぁ。でも、アルビレオ・イマはもう少し髪に艶があった。クウネルさんのは明らかにくすんでいるし、双子か何かか?

 

 「ポチの知り合い、アルビレオにそっくりだけど。なんか髪の毛、変じゃない?」

 

 「あぁ、これですか。前に無理をしてしまいまして、その影響です。ほら、言うじゃないですか、本は陽に当たると色褪せると。あとクウネルです」

 

 そういや、ポチも漫画を日光浴させて色が落ちたことあったなぁ。それとついでみたいに否定されても。

 

 「紅き翼の関係者なら、色々知ってそうだねー」

 

 「はい、詠春よりも知ってます。ナギがどこにいるのか。敵の存在。目的。エヴァンジェリンの真実。貴方の正体さえも。学園から出られないのも私のせいですからね」

 

 お前だったんかい! なんとなく仲間が絡んでいる察していたけど、お前だったんかい! 委員会、ここでいいんかい!

 

 「出して! 今すぐポチを出して!」

 

 外の世界ではポチのドリームワールドが広がっているんだ!

 

 「いいですよ」

 

 「いいんかい!?」

 

 あっさりしすぎる! ポチのために閉じ込めていたと思っていたのに、実は嫌がらせのためだったんじゃないんだろうな!

 

 「ふふっ、まさか、とんでもない」

 

 人が慌てふためく様子を見て笑うなんて嫌な奴。子犬にモフられて死ね!

 

 「勿論、条件はあります」

 

 そういって、何処からともなく取り出したのは、一枚の薄くて小さな板。見たことがある。所謂、仮契約カードってやつだ。

 

 「これは、貴方とナギの仮契約カードです」

 

 そこに描かれているのは、最高にイカしてかっこいい式王神───ではなく……むちゃくれた二頭身のポチがスッポンポンで載っていた。おい、これハズレカードじゃん。しかもチンコまで描かれている犯罪仕様。

 何気に野郎とキスした事実も合わせて、精神力が削られている。

 

 「ハズレカードですが、アーティファクトは出てくるようです」

 

 「そうなの?」

 

 確かハズレカードはアーティファクト出なかったはず。

 

 「契約者が元の姿を失ったせいか、このように変化しました。おそらくアーティファクトも本来の力を失っています」

 

 失っていても、あることはあるんだな。どんなアイテムだろ。

 

 「なんでも、貴方が昔使っていた武器のレプリカが収められていると」

 

 レプリカ、ということは本物じゃないってことか。しかし、むふふ…ポチのパワーアップフラグが見える…!

 

 「私の条件はこれを使いこなすこと。身の安全を守るために。そして、外へ出たのならば、絶対に接触してはいけない人物に気を付けることです」

 

 クウネルさんは笑っていなかった。

 

 「その人物って、誰? そんなやばい? フロム的におねがいします」

 

 「ヤバイですね。コジマキャノンとグライドブレード装備した熔鉄デーモンくらいでしょうか」

 

 駄目だ、勝てる気がしない! ガチタンやハベルでも蒸発してまう!

 

 クウネルさんは更に懐から一枚の写真を取り出す。かなり撮影した物の状態が良くないのか、ノイズが入り込み、ピンぼけが激しい。しかしながらすぐにわかった、そこに写っていたのは長身の女性であると。

 右半身が炎そのものとなり、右頭部から炎の角が生え、所々鋼鉄の鎧を纏っていてもすぐにわかった。ブロンドの長髪、エヴァンジェリンと明日菜ちゃんを丁度合わせた容姿を持つ、美しい女性であると。

 

 「…アリカ姫に似てる」

 

 「安心してください、本人ではありません」

 

 それは良かった。俺としても、親友だったナギの嫁がこんな…レイプ目の歪んだ笑顔を向ける相手だとちょい困るわ。お、おぅ…ってなる。

 

 「彼女はかつて貴方を封印した、始祖アマテルです」

 

 「このお姉さんが…」

 

 おやおや、ちょいとシリアスな流れなんじゃないの? エヴァンジェリンと明日菜ちゃんに似た女性が俺を封印したとは、なんとも不思議な縁を感じますねぇ、ドドリアさん。

 

 「なんか…メッチャ身体燃えてるね、アマテルちゃん。変な武器持ってるし」

 

 ビームサーベルみたいなのと、ビームライフルみたいなの。熱くないのかな? 冷え性系女子?

 

 「これは貴方の力、彼女がその一部を使っているのです。炎は強化系の能力でしょう。そして手にしている武器こそ貴方のアーティファクトです」

 

 「おお、なんか強そうだ!」

 

 「強すぎました。私は破れ、貴方も一撃で破壊され「俺、弱っ!?」…そうですね、瞬殺で負けました。あの時、ナギ…そしてゼクトが助けてくれなければ全滅だったんでしょう」

 

 ほへー、ナギってのは本当に強いんだねぇ。それにくらべ相棒弱すぎィ!

 

 「フフ。因みにこの写真は、あっという間でバラバラに破壊された貴方の身体から抜き出した、データを現像したものです」

 

 なるほど、だから写りが悪いのか。でも傷口に塩塗るのやめて。

 

 「そもそもなんでこの人俺達を襲うの? 完全なる世界の仲間?」

 

 昔、偉い人だったんでしょ。話が通じそうだが。

 

 「残念ながら詳細はわかりません。何せ狙いは貴方ですから」

 

 「え」

 

 「おや、知らなかったのですか? 彼女は貴方の元主ですよ、昔…何かあったようで」

 

 原因、俺かよぉ…。もう記憶喪失なんだから、またそういうのやめてよぉ…。

 

 




アマテル「主人公? バフデバフに遠距離からのガン逃げで余裕」

一応ポチにも武器があったのですが、既に消滅しており、アマテルが情報を元に改めて造り上げたのが仮契約のアーティファクトの正体。全部で三つ存在し、そしてその全ては彼女が持っている。アマツの力も。

ナギはビームライフル。
アマテルはビームソード。
あとは誰との仮契約か。






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