―西暦2105年―
ある大学の医学部の授業を覗いてみる。
22世紀になってから、ほとんどの学部では、オンデマンド授業やバーチャル授業といった方式を取っている中、医学部だけは従来の方式で授業を行っている。
……キーンコーンカーンコーン……
……キーンコーンカーンコーン……
一人の教授が教壇に立つ。
「…………皆さん、おはようございます。
今日は、前回予告した通り、ある期間世界中で流行したものの、原因がまったく分からなかった病気について話しましょう。」
スクリーンに映し出される。
“植物病”―plantize disease―
「皆さんの中に“植物病”という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれないでしょう。
英語では、“plantize disease”、直訳すると“植物化病”となるが、日本では慣例的に“植物病”と呼ばれています。
21世紀に大流行したこの病気について、数回に分けて、お話ししましょう。
この病気によって、世界人口のおよそ3分の1が犠牲になったと言われています。
しかし現在でも、その原因…………ウィルス性なのか、細菌によるものなのか、微生物によるものなのか…………明らかになっていません。」
「……すいません」
一人の学生が手を挙げる。
「質問ですか?」
「はい」
「なんでしょうか?」
「原因が判明していなくとも、症状や薬の効果から推測できるはずですが…………。」
「よい質問ですね。」
満足そうに微笑む教授。
「…………ですが、推測もできないのです。
この病気は、他の病気とは明らかに違う症状を呈し、
当時存在していた薬も効果なく、
そして、ぱったりと患者がいなくなったために、
原因がわからないまま
スライドが変わった。
「では、“植物病”の治療に当たった医師の報告書を見てみましょう。」
一人の医師の写真が映し出された。
「エドウィン・ウッズ、初めて“植物病”に関する報告書を書いた医師です。
彼によると、初の“植物病”患者はアフリカ・アルザラオアシスに住む、たった12歳の少女だったそうです。
この少女の症例は、彼の手記・報告書に詳しく書かれています。
では、これから手記・報告書を読みといていきましょう。
彼が少女に出逢ったのは、20××年のことでした。
その時の写真が今でも残っています。」
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次第に講義は、過去の時間とシンクロしていく……。