モンスターハンター ~漆黒の意志~   作:鷹幸

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 タンジアの港のレストラン《シー・タンジニャ》で食事を注文した一行……




第3話 行き先→? Where do you wanna go to?

 十分ほどして、注文した料理が運ばれてきた。

 

「お待たせしましたニャ。こちら、『たてがみマグロ海鮮丼』、『こんがり肉G』、『はじけイワシのアンチョビサンド』、お飲み物の『炎熟マンゴージュース』でございますニャ」

 

 料理名と共に、空腹のハンターたちの前に食事が置かれる。それらは、視覚情報だけで香ばしさが伝わってくるようなものばかりだった。

 

「それでは、ごゆっくりどうぞニャ。追加注文は大歓迎でございますニャ」

 

 そう言い残して、ウェイターアイルーは客の波に消えた。レストランは大繁盛である。

 

「よし。じゃ、いただくか」

 

「そうだねっ。いただきまーすっ」

 

「いただきます」

 

 レオンは海鮮丼を、ソラは肉を、ナナはサンドウィッチを口に運ぶ。

 

「おぉ、新鮮な海の幸が口いっぱいに広がっていいな」

 

「香ばしさと肉の弾力、それにスパイシーな味付けが相まって、これ以上ない最高級のこんがり肉だってことを演出してるみたい……」

 

「悪くないわね」

 

 そして、それぞれがコメントを残す。客を唸らせる料理を提供できるあたり、さすがは三ツ星レストラン。その名に恥じない。

 

「……このあと、どうする?」

 

 食事の途中で、レオンがそう訊いた。

 

「そうだね……」ソラは、骨付き肉を手に持ったまま考え込んだ。「ちょっと、港を回ったりしてみたいかな。珍しいもの……っていうか、目につくもの全部が珍しいんだけどね、いろいろ見て回りたい」

 

「そうか……。うん、そうだな……それがいい」

 

 せっかく来たのだから、見て回るほかに手はない。これでこそ、旅である。

 

「それで、別に、一緒じゃなくてもいいよな?」

 

「え?……あぁ、うん、大丈夫だよ。レオンは何かするの?」

 

「ちょっと、な」

 

 ソラは少し眉を上げたが、すぐに「……そっか」とだけ呟いた。

 

「じゃ、あとで落ち合う場所を決めておこう」

 

「んー、だったら、この広場でいいんじゃないかな? 一番わかりやすいと思うし」

 

「まぁ……半端なところじゃわかりにくいし、そうだな、ここにしよう」

 

 彼らは頷きあってから、食事を再開した。

 

 

 

       *

 

 

 

 腹ごしらえを済ませたあと、レオンは、ソラ・ナナの二人と別れてタンジアの港を散策することにした。

 しかし、ただ、ぶらりぶらりとするわけではない。

 

(ルーク……、あいつを捜そう)

 

 さっきすれ違った男は、ルークで間違いないのだ。雰囲気こそ変わっていたものの、顔つきや容姿はほとんど変わっていない。

 酒場エリアに行こうとしてすれ違ったので、彼は今、港エリアあたりにいるはずだ。

 レオンは、南方へと足を速めた。

 

 タンジアの港は、本当に賑わっている。今までに訪れた場所の何倍、いや何十倍もの人がいるのではないか。レオンにはそう思えた。

 数分後、タンジアの港・南部に到着した。

 

 南部は港エリアとなっていて、大小さまざまな漁船や交易船、旅客船が桟橋の側に停泊している。そのほとんどは帆船だ。ところどころに、ボートのようなものもあった。

 漁船からは、船員が箱を持って降りてきている。中身は魚だろう。離れていても、魚類特有の匂いが漂ってくる。レオンの嗅覚は鋭いので、間近で嗅いでいるかのような感覚を覚える。

 交易船には、背の高い竜人族の男性が乗っているのが見えた。胴着に袴、背中に長い太刀を背負っている。彼もハンターなのだろうか……、とレオンは考えた。そして、竜人族の彼は、隣にいるアイルーと大声で笑い合っていた。

 旅客船は帆を畳んでいて、まだ出航の気配は見せていない。いつ出航してどこへ向かうのか、レオンはあとで聞いておこうと思った。

 

 今の目的は、ルークを捜すことである。

 レオンは、港をぐるぐると回った。船の甲板も確認した。

 しかし、影すら見当たらない。もう、彼はここにいないのか……。

 

「仕方ないか……」

 

 溜め息混じりに、彼の口からそんな言葉が洩れた。

 会っていろいろ話をしたいと思っていたのだが、それは叶わなかった。もしかしたら、本当に人違いだったのかもしれない。

 レオンは、元来た道を引き返し、酒場エリアへと歩いた。

 

 少しゆっくり歩いて戻ったので、十分ちょっとで広場に着いた。

 ソラたちは、まだ買い物をしていることだろう。まだ時間がありそうだったので、今度は、広場周辺を見てみることにした。

 

 まず、クエストカウンター。一般人や王政からハンターズギルドに集められたモンスターの「狩猟」依頼を、ハンターに紹介する場所である。

 クエストカウンターには普通、ギルドガールと呼ばれる受付嬢がいる。ここタンジアの港も例外でなく、水兵の姿をしたギルドガールが三人、クエストカウンターに立っていた。それぞれ、青、赤、白を基調とした服装だ。

 地方によってギルドガールの服装は異なっており、レオンが以前訪れていたユクモ村のギルドガールは着物だった。

 タンジアの港のギルドガールは人気らしく、ハンターの男たちが彼女らの周りに集っていた。あの中に、依頼を受けようとする者が何人いるのだろうか……。

 

(どこかへ狩猟しに行ってもいいんだけどな……。次は、どこに行こう……?)

 

 そんな思案にふけていると、

 

「レオーン!」

 

 声がして、レオンは振り返った。ソラが、ナナと肩を並べて向かってきているのが見える。彼女らは、手にいろいろなものを持っていた。

 

「ただいまっ!」

 

「あぁ、おかえり」

 

「いろいろと買ってきちゃったぁ」

 

「何を買ったんだ?」

 

「んーと、食べ物がほとんど」

 

「……ソラ、なんか最近、タイガに似てきてないか?」

 

「え? そう?」

 

「食欲旺盛なところというか……、なんだか、似てきてる気がするよ」

 

「そうなのかなぁ……、全然わかんないや」ソラは首を傾げる。

 

「それで、ほかには何を?」

 

 レオンが訊くと、ナナがポーチをごそごそと探って何かを取り出した。

 

「これ。【消臭玉(しょうしゅうだま)】を買っておいたわ」

 

「おっ。そりゃありがたい」

 

 汗臭いのが強敵のレオンにとっては、消臭玉は強力なアイテムだ。そこのところ、ナナはよく理解している。よきオトモアイルーだ。なんだかんだで、ナナもレオンのことを考えている。

 

「それで、レオンはさっきまで何してたの?」今度はソラが訊いた。

 

「あぁ……。あいつを……、捜そうと思ったんだけどな、いなかったよ」

 

「ここ広いし、見逃しちゃったんじゃない?」

 

「ま……、もういいんだ」

 

 レオンが首を振ると、ソラは少し悲しそうな顔で、「そう……」と少しうつむいた。

 

「それでさ、ソラは、どこか行きたいところはある?」

 

「え? どこかって?」ソラは顔を上げる。

 

「次の目的地だよ。タンジアの港からなら、世界中どこへでも行けるからね」

 

「あ、そっか……」ソラは、少し唸った。「んー……。もうちょっとここにいてもいいかもしれないけど……」

 

 ソラは、指を唇に当てている。彼女が考えるときのポーズだ。

 少し経って、彼女の口が動いた。

 

「……じゃあ、レオンの故郷なんてどう?」

 

 

 

 

 




 タイガというのは、ユクモ村にいたときのソラのオトモアイルーです。
 若葉トラの毛並みに、食欲旺盛なアイルーでした……(過去形だからって、死んだわけではないです)。

 そういえば、前作よりも1話を短め(2000字程度)にしたんですけど、どうなのでしょうか。
 これで亀更新になったら悲惨ですが……(フラグかな?)。
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