モンスターハンター ~漆黒の意志~   作:鷹幸

4 / 10
 タンジアの港から、彼らはどこへ向かうのか……。


第4話 そして、海へ Let’s Go!

「……オレの? 故郷?」

 

 レオンは、少し驚いた様子で訊き返した。

 

「うん。レオンの故郷のこと、ちょっと気になってたし……」上目遣いでレオンを見つめながら、ソラは続ける。「それに、レオンだって、たまには帰ってみるのもいいんじゃないかな?」

 

「……そうだな」

 

 旅に出て2年。レオンは一度も、故郷へ帰っていない。

 帰る気が無いといえば、そうではない。帰りたくない気持ちや、目的を達成するまで帰らないといった理由も無い。

 つまり、故郷に帰ることも選択肢の一つなのだ。

 

(これも、旅の一環ってことでいいかな)

 

 彼はそう結論づけ、「じゃあ、帰ってみるか」と呟いた。

 

「決まりだね!」ソラは、親指を立てた右手をレオンに向けた。「えっと、たしか……、火山地方? だっけ?」

 

「あぁ。火山峡谷地帯の『アルバ村』だ」

 

「へぇ……。レオンの故郷、アルバ村っていうんだ?」

 

「あれ、言ってなかった?」

 

「うん。言ってなかったと思うよ」

 

「……そうだったかな」レオンはこめかみに指を当てて唸ったが、「ま、それはいいや」と息をついた。

 

「それで? いつ、ここを出発するのかしら?」ナナが問う。

 

「あぁ、うん……。早ければ今日でもいいけど……」レオンは、ソラに言葉を向けた。「どうする?」

 

「んー、思い立ったが吉日、だよね? まえにレオンが言ってたの」

 

「……そんなこと言ったっけな」

 

「うん。そんな感じのことは言ってた」

 

「そ、そうか……」

 

 ソラの記憶力に、レオンは目を見張った。よく憶えているものだ。彼自身、そんなことを言った記憶は残っていない。

 

「それじゃ……、早速行ってみるか?」

 

「行こう!」

 

「よし……。さっきの港から火山地方行きの旅客船が出てるはずだから、それに乗って行こうか」

 

 

        *

 

 

 十分して、彼らは港エリアに到着した。たくさんの船が、穏やかな波に揺られている。

 

「どれに乗るの?」ソラが訊く。

 

「たしか、これだ。この帆船」

 

 30メートルほどの木製の帆船を、レオンは指差した。高く立ち並んだ3本のマストには、畳まれた白い布が取り付けられている。

 

「出航は今日の夕方で、明日の昼頃に、火山地方の港に到着するらしい。そこからは荷車で移動だな」

 

「まだ、ちょっと時間はあるんだね」

 

「でも、早いに越したことはないさ」

 

 彼らは、桟橋と船との間に掛けられた渡り板の上を歩く。歩くたび、板がギシギシという音を立てていたが、とくに問題なく渡り終えた。

 

「わたし、こんな大きな船に乗るのは初めてだよ」甲板に足を踏み入れてすぐ、ソラが言った。

 

「船酔いはしないか?」ソラの後ろからついてきていたレオンが訊く。

 

「わかんないけど……、たぶん、大丈夫かな」

 

「ま……、嵐の中でも進まない限りは心配ないだろう」

 

 言ってからレオンは、甲板の上を見回した。人の数はまばらだ。乗客たちは船の中に入っているのかもしれないが、そもそも、火山地方へ向かおうという人は少ない。地質学者やモンスターの生態研究家などが行くくらいだろう。

 

 ゆっくりと見回していると、レオンの視点が一つに定まった。

 漆黒の装備を纏ったルークが、手すりに腕を掛けて海を見ている。防具の色にそぐわないブロンドの髪の毛が、風に靡いていた。

 

「あ。あの人って、さっきレオンが捜してた人じゃない?」ソラが口を開く。

 

「あぁ……。あいつ……、この船に乗ってたのか」

 

「もっかい話しかけるチャンスだよ」

 

「だな」

 

 レオンはうなずくと、ルークの元へ歩いてゆく。

 

「ルーク――」

 

 そして、背後から声を掛けた。だが、彼は反応しない。じっと、遠くの海を見つめている。

 

「この船に乗ってるってことはさ、お前も、村に帰るのか?」

 

「……」

 

「お前、いったいどうしたんだよ」

 

 レオンがルークの肩に手を掛ける。と、その瞬間、その手はルークに弾かれてしまった。

 

「……キミには関係のないことだ。ほっといてくれ」

 

「ルーク……」

 

 レオンは、宙に止まったままだった腕を下げて、「ふぅ」と息をつくと、踵を返してソラとナナのもとへ帰った。

 

「何、あいつ……。本当にレオンの友達なの?」

 

 少し悲しげにうつむくレオンに、ソラはそう言葉を掛けた。

 

「……あぁ。まぁ、ルークにもいろいろあるんだろう」

 

 背後のルークを、レオンは一瞥(いちべつ)する。向けられた背中は、「話しかけてくるな」と言わんばかりの威圧感を放っているようだった。

 

「とりあえず、船の中に入ろう」

 

 甲板の中央に設けられたドアを開けると、下へと続く階段があった。それを降りると、長い廊下が続いていて、その両側に部屋への扉がたくさんあった。

 

「ニャニャッ。船室をご利用でございますかニャ?」

 

 階段を降りてすぐの場所に、白い服を着たアイルーがいた。船員アイルーなのだろう。

 

「あぁ」レオンはうなずく。

 

「お三方は、同じ部屋でよろしいでございますかニャ?」

 

「いいよな?」ソラとナナに向かって、レオンが訊いた。

 

「うん。別に気にしないよ」

 

「あたしも」

 

「では、こちらへどうぞですニャ」

 

 アイルーは、木の廊下を歩いていく。三人は、彼の後についていった。

 少し歩いてから、アイルーは右手側の部屋のドアを開けた。

 

「こちらですニャ」

 

 案内された船室は、寝泊りするには十分な広さがあった。大きなベッドが二つ。アイルー用のベッドも二つ用意されていた。つまり、ここはハンターのための部屋だろう。

 

「目的地はどちらでございますかニャ?」

 

「火山地方の……グリース港だな」

 

「それでは、そちらに到着次第、お伝えに参りますニャ。宿泊代は、降りるときに頂ますニャ。では、ごゆっくりどうぞ」

 

 船員アイルーはそう告げると、部屋のドアを閉めた。

 レオンたちは、荷物を床に置くと、それぞれのベッドの上に腰を下ろした。ベッドが揺れている。ここは既に海の上なのだ。

 

「あっ、ここから外が見えるんだ」

 

 ソラは、部屋の海側にある小さな窓を覗いている。碧い海に太陽光が反射して、まぶしく輝いていた。

 

「海を見るんなら、上の甲板のほうがいいかもしれないな」とレオン。

 

「それもそうだね……。うん、そうしよう! 風も気持ちいいだろうし!」

 

「じゃ、決まりだな」

 

 跳ねるように立ち上がると、彼らは船室を出て、甲板へ出た。ルークの姿は、既にない。

 船は未だに動いてないが、船員がマストの上に登っているので、出航の兆しは確認できる。

 爽やかな潮風を感じて、ソラは両腕を大きく伸ばした。

 

「うーん……、気持ちいいなぁー……」

 

 軽く目を細めると、彼女は一言、「泳ぎたいなぁ」と呟いた。

 

「……ソラは、泳げるのか?」

 

 レオンが訊くと、ソラは「うん」とうなずく。

 

「ユクモ農場の側に大きな河があったよね? よく泳いでたんだ、あそこで。……裸になってリクと泳いでたなぁー……なつかしいや」

 

 リクというのは、彼女の弟の名前だ。

 

「それで、レオンは? 泳げるの?」

 

「あぁ。泳げるよ、姉貴に鍛えられたからな」そう言ってから、レオンの顔に陰りが現れた。

 

「……あの極寒の海での修行は、本当に身が凍りつくような思いをした……」

 

「え……。極寒の海でって……す、すごいね」

 

「今思えば、とんでもないことだったよ」

 

「でも、そのおかげで、レオンは躰が丈夫なんだよね」

 

「……まぁな」

 

 鼻息を軽く洩らして、彼はそう答える。

 そして、夕刻になり、帆を下ろした船は、橙に染まった海へと進んでいった。

 

 

 

 

 





ソラ「よく泳いでたんだ、あそこで。……裸になってリクと泳いでたなぁー……なつかしいや」

レオン(裸だと!?)

 彼は脳内でそれを想像したに違いありません。だって、男だもの。

 というわけで次回、レオンの故郷へ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。