モンスターハンター ~漆黒の意志~   作:鷹幸

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 村長の家にいたところ、現れたのはレオンの知り合いである「サラ」と「ルーク」。
 しばらくぶりの再会にも関わらず、その場には陰険なムードが漂っていた……






第8話 そんなこと Two Boys

「さてと……。ルークよ、おかえり」

 

 重苦しい空気の中、村長がそう告げた。それに答えるように、ルークはとても小さくうなずいた。彼の視線は、さきほどからずっと床板に張り付いている。

 

「……して、何の話をしておったかの。そうそう、旅の話じゃの……」

 

 村長は、不可視の重圧を払拭(ふっしょく)しようと躍起(やっき)になっているようだ。

 

 しかし、誰も話さない。

 気まずい空気が流れている。

 

 この中で一番つらいのはソラだろう。何せ、彼女がこの中で唯一の部外者だからだ。

 

(何だろう、この空気……)

 

 なぜ、こうなったのか。

 まず彼女は、状況を整理しようと試みる。

 アルバ村へ到着し、村長の家を訪れる。すると、レオンの知り合いであるサラとルークが立て続けに現れる……。

 状況は、ごく単純なもの。

 でも、レオンとルークの間にある不穏な関係が、事態を深刻なものへと塗り替えてしまっている。

 いったい、何があったというのか……。できることなら、今ここで、その問題を解決してほしい。

 

「何も話すことがないなら、僕はこれで」

 

 ルークは、もたれかけていた壁から離れる。そして素早く、レオンたちに背を背けた。

 

「待て、ルーク」

 

 レオンが再び呼び止める。

 ルークは足を止めた。

 

「……なんだ? レオン」

 

 ルークが、初めてレオンの名を呼んだ。会話をしようとする意思がある、ということだ。

 

「どうして……オレを無視しようとしたんだ」

 

「そんなこと、君には関係ない」ルークは即答する。

 

「なぁ……怒ってるのか?」

 

「……怒っているわけじゃない」

 

「じゃあ、何だよ。喋れるんなら、言葉で伝えてくれよ」

 

 ルークは大きく息を吐く。連動して、肩も大きく動いた。

 

「……無視をしたのは悪かったよ、謝る」

 

「答えになってないぞ」

 

「ふ……君は変わらないな」

 

 ルークは振り返った。口元には、微かに笑みが滲んでいる。だが、目は笑っていなかった。

 

「別に、無視をしたくて無視をしたわけじゃない。僕はね、君と関わりたくなかっただけなんだ」

 

「?」レオンは眉をひそめた。

 

「ま、君には関係ないことだから。これ以上は聞かないでくれ」

 

「……どういうことなんだよ」

 

 レオンが訊くと、ルークは黙り込んだ。

 

「ルーク……どないしたん?」サラが口を開いた。

 

「どうもしてないさ」ルークは鼻を鳴らした。「さてと。これ以上、話すことはないよね」

 

 そう言い残して、彼は家から出ていった。

 ドアが閉まる音がしてから、レオンは倒れた椅子を元に戻した。

 

「あいつ……。どういう意味なんだ……」

 

「ううむ……、孫が迷惑をかけてすまんの」村長は、申し訳なさそうに頭を掻いた。

 

「あ、いえ。……また詳しく聞いてみます」レオンは、愛想笑いのような笑みを返した。

 

「あの……」ソラが手を挙げた。「ルーク……さんは、村長のお孫さんだったんですか?」

 

「いかにも」

 

 なるほど。だから、彼がこの家に入ってきたときに、「じいちゃん」と言いかけたのか。と、ソラは納得する。

 

「まったく、旅に出て久々に帰ってきたというのに、困った奴だの」

 

「ルークも旅に?」レオンが反応する。

 

「む、レオンが旅に出たあと、ルークの奴も旅に出おったのだ。……いや、正確には家出をしたというべきか」

 

「家出?」

 

「あ、いや。最初、ちょっと家出をしての。すぐに戻ってきたんだが、そのあと急に、『旅に出る』といってどこかへ行ってしまったのだ」

 

「……そんなことがあったんですね」

 

「理由は知らんがの」そう言って、村長はグラスの水を飲んだ。

 

「……じゃあ、村長。そろそろお(いとま)します」

 

「む、そうか。なら、またいつでも来なさい。私は待っとるよ」村長はうんうんとうなずく。

 

「じゃ、ソラ。行こうか」

 

「あ、うん」ソラはソファから腰を上げる。「村長、お邪魔しました」

 

「ウチも付いてっていい?」サラが、レオンの手を握った。

 

「まぁ、別に問題ないけど」

 

「いぇい!」

 

「では、村長」レオンは村長に深く一礼をした。そして、ソラ、サラと共に、入ってきたドアへ向かって歩く。

 

「――ちょっと、あたしのこと忘れてない?」

 

「あれ?」レオンは、はっとしたように振り向いた。「ナナいたのか?」

 

「失礼ね。ずっといたわよ」ナナは牙を剥き出してレオンを睨んだ。

 

「ごめん。会話に入ってきてなかったから……」

 

「……ま、あたしが会話に入ったところで話すことなんてなかったからいいんだけど」ナナは肩をすくめてから、大欠伸をした。

 

 そして、レオン、ソラ、サラ、ナナは村長の家から出た。

 

 

 

 

       *

 

 

 

「――」

 

 村長は、グラスの水を飲み干して、それをテーブルに置いた。

 

「ルーク。そこにいるのであろう?」

 

「ふふ……。バレてたか」

 

 ルークが、村長の前に姿を現す。その動作は、波を立てずに水面を滑るように静かだった。

 

「裏口から、物音も立てずに入ってくるとはの」

 

「〝隠密〟行動のスキルは十分に身に付けたからね」

 

「……む。とりあえず、お前からはいろいろと話を聞かねばならんの」

 

 

 

 

 

 

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