モンスターハンター ~漆黒の意志~   作:鷹幸

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 村長の家から出た彼らは……




第9話 子と親、親と子 I’m Home.

「にしても、村の様子はちっとも変わらないな」

 

 アルバ村を練り歩く中で、レオンがつぶやいた。彼の右隣には緑髪のサラが、左隣には旅仲間のソラがいる。彼の後ろからは、オトモアイルーのナナがトコトコと付いてきている。

 

「そんな、すぐ変わるもんでもないやろ」レオンにぴったりとくっついているサラが言う。

 

「まぁ、そうだけど……。2年も経てば変わるところもあるだろ?」

 

「そんなんより、これからどうするん?」

 

「……」レオンは小さく鼻息を洩らす。「そうだな、家に帰るか」

 

「あれ、まだ帰ってなかったん?」

 

「さきに、村長に挨拶しておこうと思ったんだよ」

 

「レオンらしいっていうか……真面目やなぁ」

 

「そうかな。オレは普通だと思ってるんだけど」

 

「でも、そういうとこ悪くないと思うで!」

 

「なんだよ、急に……」レオンは少し照れくさそうな様子だ。「とにかく、帰るか。ソラはいいよな?」

 

「あ、うん。大丈夫」ソラはうなずいた。

 

「久々の我が家か……母さん、びっくりするかな」

 

 レオンが歩調を上げたので、女性陣も負けじと速力を上げた。

 

(レオンのお母さんって、どんな人なんだろう……)

 

 歩いている途中、ソラはそのことをずっと考えていた。

 

 

 

      *

 

 

 

「ここだ」

 

 レオンの家は、村の端の方にあった。石造りで、大きさは他の民家と大した差がない。この村では標準的な部類の家だった。

 自分の家なので、レオンはノックをせずにドアを開ける。

 蝶番(ちょうつがい)の軋む音がした。

 

「どなた?」という声が聞こえる。母の声だ。

 

「ただいま」

 

 レオンは、奥にいる母に聞こえるくらい声で言った。

 

「……レオン?」

 

 そんな呟きを洩らしながら、一人の女性が姿を現した。長い黒髪、高い身長。そして、若くて美人だった。顔立ちは、レオンやレオンの姉に似ている気がしなくもない(親子だもの)。彼女こそが、レオンの母親である。

 

「ただいま、母さん」

 

 レオンが微笑んでみせると、母の表情がぱぁっと明るくなった。

 

「まぁ。久しぶり!」

 

 母は、正面からレオンに抱き付いた。

 

「ちょっと母さん!」

 

 あまりに突然のことに、レオンは高い声を上げた。女性に抱き付かれるのは、本日二度目のことである。

 

「ごめんね、嬉しくってつい……。もう、ずっと連絡も寄越してなかったのに、急に帰ってくるから……」母は、レオンから離れた。

 

「ごめんごめん」

 

「でも、ホントに久しぶりねぇ。……あら、旅はやめたの?」

 

「いや、たまたま帰ってきただけ。いつになるかは分からないけど、また旅に出ていくつもり」

 

「あら……、そう。母さん寂しいから、いつでも顔を見せに帰ってきてもいいのよ」

 

「なら、母さんも一緒に行く?」

 

「ふふ。それは遠慮しておくわ。私は、ここでお留守番っ」

 

 母の視線が、レオンから逸れた。彼女の目に、二人の少女の姿が映る。

 

「あっ、サラちゃんも一緒なのね。……あら、そちらの子は?」

 

 母は、レオンを一瞥してから、ソラに視線を戻した。

 

「彼女は、旅仲間のソラ。ユクモ村から、ここまで一緒に来たんだ」

 

「は、初めまして。ソラです」ソラはぺこりと頭を下げる。

 

「初めまして。私はレオンの母で、ユキっていうの。よろしくね」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

 ユキが手を差し出したので、ソラは彼女と握手した。

 

「んもう、可愛い子を二人も引き連れて……」ユキは、レオンを睨むように見た。「まったく、あんたはどうしちゃったんだい?」

 

「どうもしてない。たまたまだよ、たまたま」

 

「そういえば、ナナちゃんは? 一緒じゃないの?」

 

「ここにいるみゃぁー」

 

 ナナが、ソラの足元からひょっこりと姿を見せる。

 

「あら、そんなところにいたのね。気づかなかったわ」

 

「あたしは大丈夫みゃ」

 

「そっか。うん、みんな元気そうで何より!」ユキは、何度かうなずいた。「そう、ずっとこんなところにいるのも何だし、入って入って」

 

「そうだな。ゆっくりしよう」

 

「おっじゃましまーす」

 

「……お邪魔しまーす」

 

 レオンが手招きして、サラとソラ、最後にナナが家に入る。ドアを閉めたあと、レオンは母に話しかけた。

 

「そういえば、親父は帰ってきたりしてるのか?」

 

「えぇ。たまーに、顔だけ見せに帰ってくるのよ。事前に何も言わず、ふらっとね」

 

「そうか……」

 

「なぁに? まだお父さんに会ってないの?」

 

「あぁ。まだ会えてない。姉貴には会ったけど」

 

「リザに? あー、リザには長いこと会ってないわねぇ。どうだった? 元気そうだった?」

 

「そりゃもう、元気なんて言葉じゃ表せられないほど元気だよ」

 

「ほーう。さっすが私の娘だ」

 

「おかげで、いい迷惑だよ」レオンはむくれたような口調で返す。

 

「なんでよ? 元気なのはいいじゃない?」

 

「弟の身に危害が及ぶような元気は、いい元気とは言えないと思うんだ」

 

「へぇ。あんたたちは今も仲がいいのねー」

 

「オレはあんまり好きじゃないんだけどな……」

 

「あっ。今度帰ってきたとき、そのこと言っといてあげるよ」

 

「いや、会うのが好きじゃないってことで、姉貴自体が嫌いなわけじゃない」

 

「お姉ちゃんのこと大好きなのはいいじゃない! いいわね、姉弟(きょうだい)愛って」

 

「どうしてそう拡大解釈するかなぁ……」

 

 どうも、姉と母が似ていて困る。でも、親子だから仕方ないか、とレオンは溜め息をついた。

 

 

 

 

 




 レオンの姉は、前作に登場しております(確か22話だったはず)。
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