「つまりさぁ、ロリと猫耳は最強の組み合わせだと僕は思うんだよねぇ! いや、別に犬耳をディズってる訳じゃないよ? ただ猫って年中発情しているイメージがあるじゃん? 犬はむしろ隷属している感じだし。だから僕は猫耳ロリ属性がいたら真っ先に告白する自信があるね! 寧ろ全裸でルパンダイブするね!!」
「……いや、何でそれを俺に言うんだよ」
訓練後。ラスロが何とか死に物狂いで襲って来る英雄達を全員倒して部屋で休んでいると、真っ先に気絶させておいたレオナルドが部屋に遊びに来た。見たところ既に完治しているらしく、どうやらレイが頑張ったらしい。
しかし、なぜそんな話を俺にしてくるのかと、正直身体を酷使して限界なんで休ませてくれと椅子を反対向きにして背もたれに組んだ腕を置いて枕代わりにしながら腰掛けてレオナルドの話を聞いていると、そんなラスロの心情が伝わったのか、レオナルドはやれやれと首を振って解説する。
「考えれば分かるでしょ? 曹操は基本肯定しかしてこないし、ゲオルクは何言ってるのか理解不能だし、ヘラクレスは『そうだな、筋肉だな!』しか言わない筋肉馬鹿だし、ジャンヌは僕と誰かが絡んでいる作品を読ませて感想求めてくるし、ジークに至っては変な薬盛って襲わせようとしてくるし、消極的にこんな話できるのはラスロしかいないんだよ」
「改めて思うがまともなのがいないなこの派閥」
曹操は基本他人の夢を否定せず全てを受け入れ肯定する。『諦めなければ、誰でもいつかきっと夢は叶う』というのが彼の信条であるため、そういう馬鹿話には向いていない。
ゲオルクは基本研究室に引き篭もっており、彼と会話をすると異次元の言語を話しているのではないかと錯覚するほど理解不能なことを話すため、まず会話が成立しない。
ヘラクレスは筋トレしかしておらず、会話するときも筋トレを止めないので横で「フンフンフンっ!」と息を荒げながら暑っ苦しい汗が飛んできて、更に返事も「そうだな、筋肉だな!」「そうだな、プロテインだな!」「そうだな、MUSCLEだな!」と筋肉語しか喋らないため、碌な会話が出来ない。
ジャンヌは普段部屋に引き篭もって聖典を作成しているらしく、彼女の部屋からは只ならぬ瘴気を発している。以前ラスロが集合時間になっても来ないジャンヌを呼びに部屋に入った時、そこには大量の英雄派のメンバー(男)が絡み合っている漫画が並べられており、異様な恐怖に襲われたが時既に遅く、ジャンヌに捕まり自分と誰かが絡んでいる作品を無理やり読まされた過去がある。以来誰もジャンヌの部屋に入ってはならないと暗黙の掟が英雄派(男)の中に在る。
ジークに至っては男一人で彼の部屋に行くなど自殺行為だ。原に彼の部屋に行き変な薬を飲まされジークと肉体関係を持ってしまった者(男)が英雄派の中でも何人も存在する。しかもジークの場合襲うのではなく襲わせる状況を作り出すという業が深いプレイなのだから更に質が悪い。一度ラスロも薬を飲まされ極限状況に陥った過去を持つが、その時には自分の腹にアロンダイトと突き立ててでも正気を保って何とか逃亡した。
改めて英雄派の人材の酷さに嘆くラスロだったが、そんな彼を蔑むように半眼でレオナルドは睨む。
「いま、まともなのがいないって言ったけどラスロだって充分変態じゃんか」
「はぁ? 何言ってんだ俺はお前らと違って至って普通の常識人だぞ?」
「今僕の中で普通という概念が歪んできたよ……」
「失礼だなおい」
肩を竦めるレオナルドに憤りを覚えるラスロだが、所詮この程度で一々反応していれば身体が幾つ在っても足りない。なので話を変えようと普段から思っていることを口にした。
「そういや、レオナルドって何で自分の神器でハーレム作らねえんだ? おまえのそれが有れば幾らでもけものハーレム作れるだろうに」
レオナルドの持つ神器『
そう思いラスロが尋ねると、レオナルドは嘗て無いほど真剣な表情を浮かべ、ラスロの言葉を否定するように首を振った。
「……あのね、ラスロ。君は何か物語や創造物を作ってみたことはあるかい?」
「え? ああ、まあ多少なら」
「ならさ、その物語に出てくるキャラクターが現実世界に出てきたらどうする? その人は大変魅力で、とても素晴らしくて、自分の理想の彼女。きっとその人は現実世界の誰よりも理想的な人なのかもしれない」
だけど、とレオナルドは少し悲しそうに一旦間を開けて、
「――それでも、思っちゃうんだ。
それは、普段けものハーレムと叫んだりしている馬鹿面ではなく、子供を見守る親のような難しい表情だった。
「我も人、彼も人、故に平等。同じ立場に存在する生き物だと認め合う事で人は分かり合える。けれどね、僕の力は――『魔獣創造』は、イメージを形にした物を生み出す能力だ。だから作り上げた物をどうしても全て理解した気になって見下してしまうんだ」
それが創造主の傲慢さゆえなのかもしれないね、とレオナルドは薄く笑う。おまえはこういう存在なんだという先入観。だからこそそういう存在なのだと理解した気になってその人のことを詳しくも知ろうとしない、それがレオナルドにとって許せないものだった。
「そんなのは一人でお人形ごっこしているのと同じだよ。自分のことを愛してくれるハーレムの皆にそんな失礼なことは出来ないさ。だから僕は自分の意思で好きな人を見つけ、その人を惚れさせて……けものハーレム王になってやる!!」
うおおおぉぉオオオオ待ってろ仔猫ちゃァァあああああああん!! と雄叫びを上げていつも通りの馬鹿面に戻るレオナルド。それを見て釣られるようにラスロも苦笑するが、ようやく疑問が一つ解けて少し満足していた。
だからだろうか、その存在に気が付かないほどラスロは気が緩んでいた。
「(…………ん?)」
ふと感じる背中の違和感。まるで後ろに誰かが要るような、というか背中に何かが刺さっているような、ていうか完全に刃物が突き刺さっている気配が――
「(――振り返らないで下さい。もしバレるような仕草をすれば、その時は首を落とします)」
「…………ッ!」
ラスロのみ聞こえるような絶妙な音量で聞こえる声。声帯的に女性のもので、というかそもそもこんな事をする輩は一人しか思い当たらない。
「(……レイ、か?)」
「(その通りですゴミ虫。なぜ私の声を聞いただけで分かるのですか? 変態ですか、ストーカーなのですか? 気持ち悪いです今直ぐ死んでください息を吹きかけないで下さい生理的に無理です)」
「それはどういう意味だァ!?」
「へ? いきなりどうしたのラスロ?」
「え、あ、いや、別に何でもない。ただ無性に叫びたくなったというか……」
「ふーん……まあラスロが変なのは元々か」
それでさー、それでさーっと再びけものハーレムについて熱く語りだしたレオナルドに適当に相槌を打ちながら聞いたふりをして、ラスロは背後で刃物を突き刺しているレイに意識を向ける。ちなみに先ほどより今の動作で三ミリ皮膚に食い込んだ。
「(貴方はバレないようにと忠告したはずですが? 馬鹿なのですか、貴方の頭は飾りですかウジ虫以下ですかゴミ虫)」
「(……それで、これはいったい何の真似だ。いつからおまえは
「(知らないのですか? 女はいつだって愛する人の為なら
「(女って怖ッ!?)」
「(まあ本当はゴミ虫の部屋に行く主様の姿を見て美の神すら素足で逃げ出すほどの美しさを持つ我が主様に欲情して襲い掛かるのではないかとはせ参じた訳ですが)」
「(それなら俺よりジークの奴を暗殺してこいよ。あっちの方が明らかに危険だろ)」
「(あの変態が刺された程度で死ぬとでも?)」
「(あ、凄く納得)」
寧ろもっと刺してこい! とでも言いそうである。なにせあの曹操の聖槍を喜んで受け止めに行く人智を超えた変態なのだから。
「(そもそも、そんな無駄話をするつもりで貴方の後ろに潜んでいるのではありません。ゴミ虫の後ろなど近くにいるだけで孕む危険性があるのに誰が寄りますか。出来ることなら貴方を殺して一秒でも早く離れたいというのに)」
「(人を種馬や性獣みたいに言うんじゃねえ! というかナチュラルに殺すなッ!?)」
「(シャラップ。私が屈辱に塗れるながらも貴方の後ろに要るのは主様に貴方から聞いて欲しい事があるからです)」
「(聞いて欲しい事だぁ?)」
「(ええ。先ほどつい話を盗み聴きしてしまい、『魔獣創造』で生み出した私のことをどう思っているか知りたいのです。私が聞いてもはぐらかされてしまうでしょうし、貴方なら聞き出すことが出来るでしょう)」
「(ふ、ふん。それが人に頼む態度か? 言うことを聞いてほしけりゃそれなりの態度で――)」
「(ちなみに断ればこのナイフが貴方の背中から前へ貫通します)」
「(了解しました! だからマジで抜いて下さい先ほどより深く食い込んでんだけど!?)」
ナイフの食い込み具合が先ほどよりも深くなった事に戦慄しながらラスロは必死に普段通りを装いながら何気ない仕草でレオナルドに尋ねた。
「あ、ああ~そういやレオナルド、一つ気になったんだけどいいか?」
「ん? なにさ……っていうか大丈夫? 何か物凄い汗かいてるけど」
「んん!? だ、大丈夫ですよ? 問題ナッシングだぜ!?」
「言葉使いが滅茶苦茶になってるけど……ホントに大丈夫?」
「(主様に上目遣いで心配されるなんて……パルパルパルパル……!)」
「(だから刺し込んで来るな!? おまえはどっちの味方だッ!?)」
「えっ、ラスロなんか言った?」
「へぇ? いや、別になんでもないぞ? そ、それよりもさっきの話だけど、レオナルドはレイのことどう思ってるんだ? あいつも『魔獣創造』で生み出された存在だけど、どう思ってるんだ? 愛していないのか?」
レイとラスロが水面上で死闘を繰り広げている中、レオナルドがその問いにきょとんとした顏で反応する。それから腕を組んで複雑な顔つきで悩み始めた。
「う~ん、レイの事かぁ……本当の事を話すとね、レイは僕にとって特別なんだ」
「(…………ドキドキ)」
「(俺は死にそうでドキドキだよ……)」
「(わ、私だって死にそうでドキドキですよ! 主様が私のことを特別だと仰って下さったのですよ!? 胸が張り裂けそうです!!)」
「(俺は物理的な意味で張り裂けそうでドキドキだよ!?)」
「レイは初めて人格情報を入力せずに作り出した存在だからね。彼女は僕にとって娘的存在だからね」
「(む、娘……)」
「(落ち込むのはいいからナイフを締まってからにしてくれませんかねェェえええええ!!)」
その回答に落ち込んで俯くレイに、バレないよう小声で励ますラスロ。ちなみにナイフは更に三ミリ食い込んだ。
そんな事はつゆ知らず、レオナルドは色々考えて結論が出たのか、一度頷いてから満面の笑みを浮かべて告げた。
「それと、愛しているかだっけ? ――無論、愛しているさ。家族だからね」
我が子を愛さない親はいないでしょ? と天使の微笑みを浮かべる中、
「((恋愛的な意味で)来たああああああああああァァ――――!!)」
「((物理的な意味で)来たああああああああああァァ――――!!)」
興奮してテンションマックスになったレイがハグする勢いでナイフを突き立て、心臓を貫かんとするそれをラスロが筋肉で白刃取りするという奇妙奇天烈な事態が発生していたが、レオナルドは未だ気づかず話を続ける。
「勿論、レイだけじゃない。この城も、僕が生み出してきた魔獣全て、僕は愛している。彼らは僕の能力であり、僕の一部であり、家族だ。愛しているに決まってるじゃないか」
それはある種、曹操とは違った”王”の姿だった。
彼は生み出した魔獣を道具と認識し、その上で家族とも認識している。自分が生み出したからこそ無責任に関係ないと言わず、自分と同じ存在なのだと肯定している。それはまさしく王としての器の大きさを表しており、だからこそ彼によって生み出された魔獣も彼を愛し、彼を守護せんとしようとしているのだろう。
そして、レオナルドは少し恥ずかしげに頬を掻きながら、
「そ、それにさ……ラスロや皆の事だって好きだよ? ――
「くっ、ナイフがもう心臓まですぐ傍に……! って、何か言ったか?」
「な、何でもないよ! うん、こんなの僕のキャラじゃないしね! 話を聞いてくれてありがとう! 僕も部屋に帰ってけものハーレム計画を考えるよ!!」
またねー! と早々と立ち去るレオナルドの後ろ姿を疑問げに眺めて、姿が見えなくなったのを確認してラスロはようやく後ろを振り返った。
そこには先程のレオナルドの言葉でテンションが上がりすぎて気絶したレイが鼻血を流しながらぶっ倒れている。
「ぐへへへへ……主様~~」
「……これって、俺が後始末しなきゃいけないのかよ……」
背中に刺さっているナイフを抜きながら、ラスロはやれやれと嘆息するのであった。
これ書いてる時は頭空っぽにして書いてます。つまり何も考えていない……!