禍の団は今日も平和です   作:宇佐木時麻

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やはり旧魔王は変態である

 塔城小猫は困惑していた。主であるリアス。グレモリーに引き攣られ先日のコカビエルによる襲撃から開かれた三大勢力による停戦協定、いや和平同盟を結ぶべく会談を行っていたところ突如出現したテロ組織『禍の団(カオス・ブリゲード)』の襲撃。魔法使い達に襲われどうするかと皆で対策していたところ、

 

「―――あなたに恋をした。あなたに跪かせていただきたい、花よ」

 

 禍の団団員と同じく突如出現した少年が彼らリアス・グレモリー眷属の一人である恐らく利用されていただろう『停止世界の邪眼《フォービトゥン・バロール・ビュー》』所持者であるギャスパー・ヴラディを引き連れて小猫の前に跪きそう告げたのだから、小猫が困惑するのも無理はないだろう。

 

 しかもそう言いながら背後では彼の影から今もなお無数の魔獣が生み出され敵対していた魔法使い達を食い殺し捻り潰し蹴散らし続けている。ひと目見ただけで先日死闘を繰り広げたケルベロスとは比べ物にならないほど強力な覇気を纏う魔獣達。戦えば今の己では為す術もなく無様に喰われて終わるだろう。

 

 それほどの相手にも関わらず、少年は跪く小猫に跪く。というかそもそもいきなり初対面でプロポーズのような告白をされて平然とする方が無理だろう。

 

「あ、あの……」

 

「具体的に言えば僕と結婚を前提とした肉欲溢れるお突き合いを―――グぺッ!?」

 

「落ち着けバカ。というかおまえは初対面の相手になにはっちゃけてんだ」

 

 ゴツンッ! と跪いていた少年の頭部に拳骨が落ち、悶絶する少年を呆れるようにその背後で嘆息する男性の姿が。その様子にきょとんと目をさせる小猫だが、二人は周りの視線など一切気にせず騒ぎ始める。

 

「いたたたた……いきなり何するのさラスロ! 僕の渾身の告白を邪魔するなんていくらラスロでも許さないよ!」

 

「あれがおまえにとっての渾身の告白なら全部忘れて考え直せ。つーかおまえあれで逆にOKして貰えると本気で思ってるのか? 頭湧いてんじゃね?」

 

「僕は自分の欲望には素直でいると決めてるからね!」

 

「ああ、悪い。俺が悪かったわ。そもそもこいつ初めから頭のネジぶっ飛んでたわ」

 

 いきなり現れ漫才のような会話を繰り広げる二人に一同は唖然とするが、そこでようやく自分達が注目されている事に気づいたのか青年の方が面倒臭げに頭を掻きながら三大勢力トップ陣に話しかける。

 

「あー、悪いなこいつのせいで迷惑かけて。いきなり現れて不審に思うのは無理はないが此方は今回はあんたらとやり合うつもりはないんだわ。だから出来ればその敵愾心は沈めてくれると助かる」

 

「えー! 僕のせいかよラスロー! むしろ僕は襲われてるこいつらを庇ってたんだよ? 感謝される謂れはあれど恨まれる事をした覚えはないよー」

 

「いきなり現れて虐殺したら誰だって警戒するに決まってんだろ馬鹿が。第一俺らは今回様子見のはずなのに何でおまえはいきなり面倒事を増やしてんだコラ」

 

「だってさー。魔法使い(あいつら)そこの吸血鬼くんを利用して襲撃してたんだよ? 挙句にその吸血鬼くんを洗脳するのが当たり前とか、人質にしてそれに対して罪悪感無しとか―――そんなの、僕達(・・)が見過ごせる訳ないじゃん?」

 

『――――ッ!?』

 

 瞬間―――まるでギャスパーの時間停止の神器が発動したかのように周りの空気が凍り付く。少年は相変わらず笑顔のまま、しかし放つオーラは先ほどまでとは比べ物にならないほど溢れ出し、周囲にいた者達に緊張が走る。

 

 その目に潜むのは、途方も無い憎悪、嫌悪、軽蔑。目的の為ならば手段を選ばない? ああ、大いに結構。だがそれに対し何の感慨も持たず嬉々とするならばそれはただの屑だ。死ぬべき塵だ。生きていても誰かの迷惑となる害虫でしかない。

 

 憎悪が抑えきれず身体の外へ滲み出る。神器使いは精神と神器が繋がっており、その精神状態によって大きく戦力が変化する。ゆえに今の少年は最悪といってもいいほど不快な気分だった。

 

 ああ、もういっそこいつら全部跡形もなく潰してやるか―――と、少年の脳裏に不安な考えが横切り、

 

「とう」

 

「ふぎゃあアッ!?」

 

 突如青年の放たれたチョップによって跡形もなく消えていった。それと共に彼が放っていた不穏な気配も霧散する。

 

「いたたた……だーかーらー! なんで叩くのさぁ!?」

 

「おまえが善からぬ事を考えてるからだ。気持ちは分からんでもないが、一先ず落ち着け。ここで暴れたりしたらあとで全裸に縛ってジークフリートの部屋にぶち込むぞ」

 

「それだけはマジで勘弁して下さい!!」

 

 余程嫌なのか見事な土下座を決める少年。……いい加減、我慢の限界だった。

 

「……それで? 突然現れて漫才しだした貴方達はいったい何者なのかしら。そろそろ答えて欲しいのだけど」

 

「むっ。それもそうだな。ったくレオナルドに付き合ってたら本題からどんどん離れていくもんなー」

 

「ちょっとそれは心外だね。だいたい話を逸らしてきたのはラスロの方じゃんか」

 

 最初に話しかけられたのが小猫だった為か、主であるリアス・グレモリーが彼女を庇うように最前列に立ち乱入者達に代表として話しかけた。それでようやく此処にきた本題を思い出したのか二人は互いに愚痴りながらも自己紹介を行う。

 

「ではお決まりながら初めに自己紹介をさせて貰うとしますか。俺は『禍の団』英雄派、ラスロだ。以後よろしく」

 

「同じく! 『禍の団』英雄派、レオナルドだよ。有象無象とそこの麗しのレディ、これからよろしくねー」

 

「『禍の団』だと……!?」

 

 二人の自己紹介に挨拶された一同は一気に敵愾心を高める。今襲撃してきている『禍の団』と同じ所属派閥。警戒するなという方が無理だろう。しかしラスロと名乗った青年はそんな反応を面倒がるようにやれやれと嘆息する。

 

「あのな、人の話聞いてたか? 今回あんたらとはやり合うつもりはないってさっき言っただろうが。第一本気でやり合うならこんな敵陣ド真ん中に現れるわけないだろ」

 

「今回はどうなるか様子見しろって言うのが僕らのリーダーの命令だからねー? そんな一々怯えないでよ傷つくなー」

 

「へえ、なら敵陣に堂々と現れたんだ。お縄について貰っても文句は言えねえよなァ?」

 

 乱入者二人の前に堕天使の総督であるアザゼルが不敵な笑みを浮かべながら近づいていく。そもそも『禍の団』の存在をいち早く察していたのは彼だ。確かにレオナルドと名乗る少年の神器―――恐らく想像の魔獣を生み出す『魔獣創造』だと予測するが―――は厄介だが、未だその構成が謎に包まれている組織の実態を知るにはこれといってないほどのチャンスだろう。決して神滅具に心を惹かれた訳ではない。

 

 手には試用段階の人口神器を片手で弄びながら不敵に笑うアザゼルに対し、乱入者二人は対極に驚愕に満ちていた。

 

「まさか……おまえが……!」

 

「へえ? どうやら俺もそっちじゃちょっとは有名人のようだな。今更後悔しても遅いぜ。『禍の団』の情報をたっぷり吐いて貰うからな」

 

 余裕綽々のアザゼル。しかしそんな彼の態度を嘲笑うかのように二人は彼の忌むべき過去の異名を口叫んだ。

 

「「―――『閃光と暗黒の龍絶剣』総督……!!」」

 

「ブホォッ!?」

 

 転けた。先ほどのドヤ顔が嘘みたいに見えるほど盛大に転けた。しかし流石は『閃光と暗黒の龍絶剣』もとい堕天使の総督と言うべきか、すぐさま起き上がると震える指を突き立てながら絶叫する。

 

「て、てててめえら何でそれを知ってやがる!?」

 

「え、どうしたんですが『閃光と暗黒の龍絶剣』総督、顔色が悪いですよ。何かあったんですか『閃光と暗黒の龍絶剣』総督。ひょっとして何か嫌なトラウマでも思い出したんですか『閃光と暗黒の龍絶剣』総督。大丈夫ですか『閃光と暗黒の龍絶剣』総督! 元気だしてください『閃光と暗黒の龍絶剣』総督! 誰にだって人には言えない恥ずかしい過去がありますよ『閃光と暗黒の龍絶剣』総督!! ところで『閃光と暗黒の龍絶剣』ってどういう意味なんですか『閃光と暗黒の龍絶剣』総督? 光と闇が合わさって最強に見えるとか思っちゃったんですか『閃光と暗黒の龍絶剣』総督! そこんとこどうなんですか『閃光と暗黒の龍絶剣』総督!!」

 

「やめろおおおおおおおおおおおォォッ!?」

 

 過去のトラウマをほじくり返されたせいか、アザゼルは蹲りながら耳を塞いで絶叫する。ちなみに『閃光と暗黒の龍絶剣』は英雄派の中でも結構子供達の間で流行るほど人気のある名前だ。その際に斬られる対象が何故か『NTR騎士』なので深く傷ついたのは未だラスロにとって忌むべき記憶だ。

 

精神崩壊するアザゼル。そんな彼に対し、天使のトップであるミカエルが嘗て無いほどの慈愛の籠もった微笑みでアザゼルの肩を叩き、

 

「心配……ブフッ! ……ないですよ……ククッ……そんな昔の事……フヒ……皆さん覚えてませんから……ハハッ……『閃光と暗黒の龍絶剣』総督……ッ!!」

 

「おっし分かったテメェ喧嘩売ってんだろいいぜ買ってやらあここでハルマゲドンの再来だミカエルウウウウウウゥゥッ!!」

 

「おい、和平の言い出しっぺそれでいいのか」

 

 片www腹www痛wwwいwww!! と声にならないほど爆笑しているミカエルをガチ切れしたアザゼルが胸蔵掴んでメンチを切るが、ふと魔力の流れを感じ全員がそちらの方向を向く。

 

「ま、俺らが此処に来たのは魔法使い派じゃなくて、彼らが来るのを様子見に来たんだよ」

 

 その中で来る事が分かっていたラスロはそう呟きながら皆と同じく視線を魔力の流れが集中する場所に向ける。おそらく術式は転移型。それを使うのは―――

 

「……あれ、なんだろう。僕なんだかとてつもなく嫌な予感がさっきから敏敏伝わってくるんだけど。なんだか僕の貞操の危機がこれ以上にない大ピンチな予感がするんだけど」

 

 一人、何故か途方も無い悪寒に襲われていたレオナルドだけは何となくこれから現れる人物に察しが付いていた。そして全速力で逃げ出したかった。

 

 宙に浮かぶは旧型のレヴィアタンの魔法陣。それは即ち―――

 

「ごきげんよう、現魔王のサーゼクス殿」

 

 現れたのは旧魔王一族の血を引く者、旧魔王派のカトレア・レヴィアタンだった。その人物に一同は目を見開くが、カトレアの視線は真っ直ぐ一人を射抜いた。

 

「そして、まさかこんなところで会えるだなんて思っていませんでしたが、これも運命ということでしょう。―――レオナルドきゅん」

 

 ………………………。

 

 ………………。

 

 …………。

 

「……ねえ、ラスロ」

 

「……どうした?」

 

「……多分、というか絶対僕の空耳だと思うんだけど。今僕のことを“レオナルドきゅん”って呼ばなかった?」

 

「……俺にもそう聞こえたな」

 

「……あ、やっぱり空耳じゃなかったんだーあははははは」

 

 ………………………。

 

 ………………。

 

 …………。

 

「ラスロオオオオオオオォォッ!! ヘルプミイイイイイイイイイイィィッ!!」

 

「うるせえ抱きついてくんじゃねえええええ!!」

 

 突然現れた旧魔王派のカトレアに対しレオナルドは尋常ではない怯えを見せる。だが恍惚の笑みを浮かべながら捕食者のような獰猛な目付きで睨まれれば誰であろうと怯えるだろう。しかも性的な目で見られればなおさら。

 

「大丈夫ですよレオナルドきゅん。何も怯える必要はありません。直ぐにあなたの前と後ろの初めてを奪って差し上げますからねふふふふふふ……」

 

「どうしようラスロ! 僕の前後のTEISOUの大ピンチだ! というか何僕掘られるの!?」

 

「前にヤった時は偽物でしたが実に良い反応でした。あの絶望に染まりながらも絶唱に達した時のあの表情は今思い出しただけで私もふふふふふ……!」

 

「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……!!」

 

(あー、今からでも帰っていいだろうか)

 

 もはや人前には晒してはならない恍惚な笑みを浮かべるカトレアと壊れたラジオの様に同じことを呟くレオナルド。正直抱き締められているラスロにとって関わりたくないの一言だった。

 

「しかし……そのためには、やはりあなたが立ち塞がるのですね、ラスロォッ!」

 

「……はい?」

 

 もうぶっちゃけ他所でやってくんねーかなと他人事と思っていたため唐突に己も巻き込まれたためラスロは訝しげる。その様子を余裕と受け取ったのかカトレアは魔法陣に腕を突っ込み中から何かを取り出す。

 

「よもや、私が知らないとでも思っているのですか。既に私は知っているんですよ。あなた達が……」

 

 取り出されたそれは英雄派にとって忌むべき物。できれば二度と視界に入れたくなかった産物。それは、

 

「―――付き合っているということを!!」

 

 即ち、ジャンヌが書いたBL同人誌である。

 

 表紙にはラスロとレオナルドらしき人物が綺麗に描かれており、裸Yシャツ同士で抱き合っている。タイトルは『ラス×レオ ~僕をあなたの魔獣(ペット)にして!~』を書かれており、これほど自分の英傑スペックの無駄使いを恨んだ覚えはなかった。

 

 とりあえず、あとでジャンヌをしばこう。

 

「覚えておきなさい、レオナルドきゅんのハートを掴むのは私だと言うことを! 彼らを倒した暁にはあなたの番です! それまで待ってて下さいねレオナルドきゅん!」

 

「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……!!」

 

「謹んで遠慮しておきます」

 

 やはり旧魔王は変態だった。

 




ぶっちゃけ深夜のノリで書いたからかなり適当。地の文って難しいよね!
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