パンツ脱いだら通報された   作:烈火1919

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A's17.ぺろぺろ

 嬢ちゃんとスバルンの昇進試験が明日に迫った夜、俺達海鳴組は呑気にトランプをやりながら寝るまでのしばしの時間を満喫していた。 膝の上にヴィヴィオを乗せた俺は、いち早くババ抜きから上がったのでヴィヴィオの髪をブラシで梳いてツインテールにする作業に勤しんでいた。

 

「あー、ヴィヴィオの髪はスベスベだなー。 この髪をずっと触っていられるなんてなんという役得」

 

 ヴィヴィオのほっぺたをちょいちょいと触りながらヴィヴィオ成分を補給する。 ほっぺたを弄られているヴィヴィオは、何度かくすぐったそうにしながらもこちらにはにかんでいるので止めはしない。 ところでヴィヴィオ? ガーくんの体毛はツインテールに出来ないからそろそろ止めようか? ガーくんさっきからめっちゃ痛がってるから。 アタタッて言ってるから。

 

「そういえば明日が昇進試験だけど、誰が付き添いすんの?」

 

 隣でヴィヴィオにポッキーをあげていたはやてに聞く。

 

「えーっと、二人の付き添いはなのはちゃんとヴィータとシャマルやな。 後学のためにエリオとキャロも一緒に行くみたいやけど。 わたしのほうが昇進試験に受かった時ように、部隊のランク調整と本局への定例報告会でいけないんよ。 シグナムとリィンはわたしのほうについていくみたいやし。 ザフィーラはお留守番や」

 

「番犬だもんな」

 

「最近皆が犬扱いするから人間状態のときでも四足歩行しようとするんよ……。 洗脳って恐ろしいで……」

 

「ほんまかいな……」

 

「いや、ほとんど俊のせいだからね?」

 

 はやてとは逆の隣にいたフェイトが話に入ってきた。 あら、3番目に終わったのね。 じゃあどんけつシャマル先生か。 あ、ちょっと悔しそう。

 

「そういえばフェイトはどうすんの?」

 

「わたしは家にいるよ。 ヴィヴィオの面倒見ようかなって思ってさ」

 

「お? あしたはフェイトママとずっといっしょ?」

 

「そうだよーヴィヴィオ。 明日はフェイトママと何して遊ぶー?」

 

「なにしてあそぼお……。 パパはなにしてあそびたい?」

 

「んー? パパはフェイトママとプロレスごっこしたいな」

 

「じゃあヴィヴィオもそれするー! パパ、ヴィヴィオとしよ?」

 

 ダッ!(ひょっとこは逃げ出した)

 

 バチンッ!(金色のバインドが足の自由を一瞬にして奪う)

 

 ゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッ!(プロレス実践中)

 

「ええか、ヴィヴィオちゃん? ヴィヴィオちゃんとパパがプロレスをすると、パパはあんなことになってまうんよ」

 

「ヴィ、ヴィヴィオぷろれすごっこはいい……」

 

 きゅっとはやてのスカートの裾を握るヴィヴィオを、はやては優しく抱っこする。

 

 ヴィヴィオがはやての膝の上で、ガーくんにツインテール計画を再開し始めた矢先、2階からばたばたと慌てて階下に駆け降りる音が聞こえてくる。 ヴィヴィオとはやてはその音に揃って首を向けると、寝間着姿のなのはが慌てながら──

 

「俊くんわたしの万年筆──俊くんが落下させたザクロのような姿にッ!?」

 

「あ、万年筆ならなのはの机の引き出しにあるぞ。 鍵かけてある引き出しの一つ下」

 

「キモッ!? 俊くんタコみたいでキモ!」

 

「お前はよく幼馴染にキモいを連呼できるな」

 

 なのはは起き上がった俺の姿を見るなり、キモいを連呼してその場を去りまた2階へと上がった。 かと思うと、数分も立たないうちにまたばたばたとこちらに戻ってくる。

 

「お、久々のバタなのじゃん」

 

「いやいやいや好きでバタバタしてるわけじゃないから!」

 

 そういったなのははテーブルに座り、さっきから手に持っていた書類に万年筆を走らせる。

 

「ねぇフェイト、バタなのは何してるの? 一向に自分が進化しないからクレーム書いてんの?」

 

「なのはの場合、クレームというなの砲撃だから」

 

「あーなるほど」

 

「えっ!? いまなんで俊くん納得したの!? どの部分で納得する要素があったの!?」

 

 筆を走らせていたなのはがこちらに振り向く。

 

「ほんでんで、なのはは何を書いてるの?」

 

「あの子たちが六課に入ってからの訓練評価を書いてるの。 この子はどの部分が伸びてきたとか、長所はどこで短所がどこかってのをね。 明日昇進試験でしょ? だからそれを提出して評価の際の目安にしてもらうの」

 

「巷で話題の賄賂?」

 

「いやいや、そんなことしたら一発で退職に追い込まれるから」

 

「なのはは今年に入ってからおっぱいが少し大きくなったよな」

 

「えっ!? それほんと!?」

 

「うっそぴょーん」

 

「俊逃げてッ!? なのは本気だから! なのは本気だから!」

 

 ちょっとからかっただけなのに万年筆投擲するなんていまの管理局員って恐ろしい……ッ!

 

「で、俊はなんで咄嗟にわたしの後ろに隠れたんかな? そこらへんについて詳しく聞きたいんやけど」

 

 なのはがバーサーカーになった瞬間、フェイトがなのはを抑えその隙に俺ははやての後ろに隠れた。

 

 い、いかん……ヴィヴィオの髪をツインテにしてるはやての所に隠れるなんてこれじゃまるではやてを盾にしたみたいだ……。

 

 ……はやての好感度がみるみる下がっていく音が聞こえてくる……っ!

 

 男ひょっとこ、ここでカッコイイセリフと共に挽回させて頂きます。

 

「キミのおっぱいを後ろから鷲掴みしたかったからさ」(withウインク)

 

 すいません死んできます。

 

              ☆

 

「女子高生っていいよな」

 

「以上、無職の戯言(たわごと)でした」

 

「はい解散―」

 

「まって、まだ何も言ってないから。 ちょっと皆寝る準備をするのは早すぎるんじゃない!? まって! まだ本題にすら入ってないから!? あれ? なんでなのはさんは僕を犬小屋に誘導しようとしてんの?」

 

「駄犬の躾は飼い主の務めだからね。 そもそも女子高生なんて制服マジックでしょ」

 

「お前はいま全世界の女子高生好きを怒らせた……ッ!」

 

「いやいや俊くん以外に怒る人なんて──」

 

 ガラッ!

 

「私がいる! 私も女子高生が大好きだ! スカートから見える生足! 健康的な肢体! 自己主張する胸! 円光をものともしないその勇気! 私は大好きだッ!」

 

「ドクターいい子ですから黙って家に帰りましょう。 さっさと書類仕事を終わらせてください」

 

「くッ……! ひょっとこ君! 私がいる! 君は一人じゃないということを忘れ──」

 

 ピシャッ!

 

「……スカさんいつ来てたの?」

 

「いまウーノさんからメール来たけど、いきなり家を飛び出してこっちに走ってきたらしいよ」

 

「なんというニュータイプ」

 

 科学者が全力疾走するなんて普通なら一大事件なのにな。

 

 でもスカさんが乱入してきたおかげで、全員とも解散するタイミングをなくしたのか、なんかそのまま戻ってきた。 わらわらとまた円卓上に座る俺ら。 シャマル先生、いつまでトランプ持ってるんですか。

 

 トランプを持ったままイチゴキャンディにするかりんご飴にするか悩んでいるシャマル先生を眺めていると、視界に金髪ツインテールのお姫様の姿が入る。 と、思いきやそのまま俺の腹に体当たりで抱きついてきた。 的確に鳩尾に入れてくるあたりヴィヴィオは将来とんでもない女の子に成長する気がする。

 

 そんな俺の考えなど分かるはずもないヴィヴィオはにぱぁっと笑顔をこちらに見せると、

 

「みてパパ! ヴィヴィオおひめさまみたい!」

 

 そういってツインテールの髪型をこれ見よがしに見せつけてきた。

 

 体当たりをかましてきたかと思いきや俺の目の前に立ち、くるくると回って嬉しさを表現するヴィヴィオ。 長いツインテールが回るたびに俺の顔面にバシバシと当たっているのだがご褒美として受け取っておこう。

 

「可愛いなぁヴィヴィオは」

 

「でしょー」

 

 笑顔いっぱいでそう喋るヴィヴィオはまたもや体当たりで抱きつく。 頭を腹にぐりぐりと擦りつけたヴィヴィオは、ぱっと顔を跳ね上げ小首を傾げながら俺に聞く。

 

「ヴィヴィオがおひめさまならパパはおうじさま?」

 

「んー……ヴィヴィオがパパを王子様だと思ってくれるならパパは王子様になろうかな」

 

「やたー! じゃあヴィヴィオはこまったときはだっこしてくれる?」

 

「ヴィヴィオが困ってなくても抱っこしちゃう。 こんな風に──」

 

 両手をヴィヴィオの背中に回してしっかりと落とさないように固定して立ち上がる。 頭を撫でるとヴィヴィオは嬉しそうに笑った。

 

「ヴィヴィオが泣いてるときはパパがそっと抱きしめてやるよ。 パパはヴィヴィオのパパで、ヴィヴィオの王子様だからな」

 

 俺にとってはこの子の笑顔が見れないことは世界の崩壊と同等の意味を持つのだから。

 

「えへへ、パパだいすき。 でもパパはだめだめさんだからちょっとたよりないかも……」

 

 パパ死亡のお知らせ

 

「大丈夫だよヴィヴィオ。 なのはママとフェイトママもいるからね! ね、フェイトちゃん?」

 

「うん。 パパはだめだめだけど、なのはママとフェイトママがいるから大丈夫だよ、ヴィヴィオ」

 

「ほんと!? なのはママとフェイトママがいればヴィヴィオだいじょうぶ。 ヴィヴィオさいきょーになる!」

 

 娘の強さの信頼の本音を確認し一気にブルーになったが──まぁヴィヴィオが喜んでるし俺が二人に勝てないのは事実なのでよしとしよう。 だが二人にはヴィヴィオ

は渡さん! 手を広げておいでポーズしても渡さないもんねっ!

 

 ヴィヴィオをぎゅっと抱きしめたまま座り直す俺。 フェイトとなのはが手を広げてよこせポーズをしているがあえて無視する。 あ、アヒル口で拗ねた。 ちょっと可愛い。

 

「で、さっきまで何の話をしてたんだっけ?」

 

「自分で言っておいて忘れたんか……。 俊が女子高生最高ってのたまったのがそもそもの始まりなんやで? ……そんなに好きなら明日着てこよか?」

 

「え? マジで?」

 

「まぁそれで俊が満足してくるんならわたしはええけど」

 

「はやては最高のお嫁さんになるぞ」

 

「じゃあその最高のお嫁さんと結婚せえへん?」

 

「NTRは相手の男を傷つけるしなぁ……」

 

「あかん、会話のキャッチボールだとおもたらフリスビーやこれ」

 

「「セーフ! 俊(くん)がバカでセーフ!」」

 

 なんだよお前ら、いきなり審判みたいに手を両翼みたいに広げるなよ。 ビビるわ。

 

「やっぱ既成事実しかあらへんかな……」

 

「あれエロ本とかで見るけどいいよな。 なんか男の尊厳が満たされるというか、もうそこまでしてくれるなら絶対に幸せにしよう──って思えるよな」

 

「へぇ……そうなんか……」

 

 はやてが三日月状の笑みを浮かべる。

 

 何か地雷を踏んだような気がした瞬間だった。

 

      ☆

 

「あの、いつになったら本題に入るんでしょう?」

 

 きっかけはシャマル先生のその一言だった。 りんご飴を食べきったシャマル先生は歯磨きをしながらそう俺に問いかけたのだ。 勿論、さっきの俺の女子高生ネタのことだろう。 他の皆は首を傾げているようだけど。 ヴィヴィオに至っては俺の膝の上でもう寝てるけど。

 

「ああそうそうそうでした。 ほら、さっき女子高生の話したじゃん? あれって前フリだったんだよ」

 

「前フリ? 刑務所行きの?」

 

「ふっ、バカな局員共に俺を捕まえることはできねえよ」

 

「俊くんわたし達の職業思い出してからもう一度言ってみて?」

 

「え? お前らの職業ってアイドルだろ?」

 

「魔法少女だよ!」

 

「少女……?」

 

「そうだよ。 まだまだ現役の少女だよ」

 

「はい、いまから魔法少女のなのはさんが萌え萌えなセリフとポーズをとりまーす! 3 2 1 どうぞ!」

 

「はへっ!? えっとえっと……き、キミのハートを射止めるきゅんきゅん♪ なのはのミクラルラブパワー! えーい!」

 

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「真顔止めて、お願いだから」

 

 顔を真っ赤にして両手で顔面を隠しているなのはが一番萌えるわ。

 

 自分のした行動があまりにも恥ずかしかったのか、作成途中の書類を放棄してフェイトの後ろに隠れる。 頭を押し付けるようにフェイトの背中にぐりぐりするなのはを、フェイトは優しく頭を撫でる。 でもフェイトの顔も笑っているんだよな。 めっちゃにやにやしてたし。 そしておそらくはやてはいまの行動を録画していたに違いない。 そう思いはやてに視線を向けると予想通りバッチリ録画してあった。 あとで金を渡すので頼むな。

 

「よーし、なのはの萌え成分も補給出来たし、ここらでちゃんとした本題に入りたいと思います。 ズバリ、高校時代の回想という名のテコいれをしようと思って」

 

「テコ入れってのは聞かなかったことにしてあげるけど……高校時代かぁ。 懐かしいね」

 

「まぁ去年まで現役だったんだけどな、俺ら」

 

「どっちかというとバリアジャケットのほうが似合ってたからね、私達の場合」

 

「正直コスプレだったもんな。 あ、いまもか」

 

 9歳からの精鋭コスプレイヤーだったな。 お前ら。

 

「でもわたしの高校時代は俊くんのおもりしかしてなかった気がする」

 

 ひょいとフェイトの後ろから顔だけ覗かせたなのはが高校時代を思い出しながら話しかける。

 

「高校時代の思い出なぁ。 んー……あ、2年の時の球技大会とかおもろかったな! 主に俊が」

 

「いやその話はやめ──」

 

「女の子は俊を病院送りにしようって団結してたもんね」

 

「え? 俺そこまで嫌われてたの?」

 

「球技が苦手なわたしはちょっときつかったけどねー」

 

 わいわいと話し始めたなのはとフェイトとはやて。

 

 俺は膝の上にヴィヴィオを抱きながら思い出す。

 

 忘れもしない、あの球技大会。

 

 否、忘れられない球技大会だった。

 

 以下、回想

 

 


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