パンツ脱いだら通報された   作:烈火1919

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A's31.ご褒美

 宴も終わり皆が就寝した時刻。俊は一人洗い物をしていた。

 

「ふぅ……ほんとに疲れてるんだなみんな」

 

 洗剤つきのスポンジで大皿をこすりながら、さきほどみた家の様子に苦笑する。

 

 なのはとフェイトの部屋には、フェイトを連れ込んだリンディと連れ込まれたフェイトが抱き合いながら寝ていた。(フェイトは必死に離れようとしていたが)

 

 桃子と士郎は自宅に帰り、はやてはザフィーラを除くヴォルケンに抱きつかれながら寝ている。はやての表情もさることながら、ヴィータの幼児のような幸せそうな表情が俊には印象的だった。

 

 そしてヴィヴィオは新人達と一緒に就寝中である。スバルとティアの二人に囲まれてガーくんを抱っこしながら客間で寝ていた。ちょっと年の離れた姉妹のようで、思わず俊の笑みがこぼれたのはいうまでもない。キャロとエリオもそれぞれスバルとティアの隣で眠っていた。

 

 そんな就寝の状況だ。

 

「なのはだけが見当たらなかったが……あいつはどこにいったんだ?」

 

 皿洗いをする前に一通りの箇所は見回り、それぞれの状況を確認した俊だがなのはだけが見当たらなかった。

 

「まぁもしかしたら桃子さんが家に連れ込んでるのかもしれないし、家を出た形跡はないから心配ないか。……いや桃子さんに連れていかれたのならそれはそれで心配になるな。リンディさんもそうだが、桃子さんも色々と危ないゾーンまでいっている可能性があるし……」

 

 桃子となのはのあられもないシーンを想像し前屈みになる俊。

 

「それはそれで……アリだな」

 

 一人納得し皿洗いを終わらせていく。

 

 それから30分後、ようやく皿洗いを終えた俊はエプロンを外し電気を消して、とある人物の場所へと足を伸ばす。抜き足差し足忍び足で到達した場所は、客間でティアたちと一緒に寝ているヴィヴィオの元である。

 

「ヴィヴィオたそー。パパがちゅっちゅしにきたよー」

 

 ただの変態である。まごうことなき変態である。

 

 ガーくんをだっこしながらすやすやと寝息をたてるヴィヴィオに俊は近づき、髪をなでる。金色の髪が闇の中で揺れ動く。ヴィヴィオの小さな手で俊の指をぎゅっと握る。

 

 俊は優しい目で自身の服を脱いでいく。

 

「まってくださいひょっとこさん。対象が誰かはわかりませんが、ここで服を脱ぐ時点で犯罪者ですよ」

 

「……なんだお前起きてたのか」

 

「なのはさんと一つ屋根の下だと思うとお豆の勃起がおさまらなくて……」

 

「顔を赤くして恥じらう乙女を演じてるつもりだろうが、喋ってる内容は下衆そのものだからな」

 

 顔を真っ赤してあわあわとするティアに冷静に突っ込みをいれる俊。しかし突っ込む男も全裸である。

 

「というかひょっとこさん。まだ起きてたんですか?もう深夜ですよ」

 

「片付けしてたんだよ」

 

「それはそれはご苦労様です」

 

「うむ」

 

 寝ている状態で頭をさげるティアに大仰に頷いてみせる。

 

「それはそうとヴィヴィオちゃんって不思議な香りがしますよね。さっきまでくんかくんかしてたんですけど、なんか……高貴な香りがしました」

 

「お前と比べたらドブネズミだって高貴だろ」

 

「中身限定だと否定できない自分がいます」

 

 そこは否定しておけよ。げんなりする俊。

 

「というか香りとかわかるのか。お前は犬だな」

 

「なのはさんの犬ですからね」

 

「残念だな、なのはの犬は俺だ」

 

「いやいや私ですから」

 

「いやいやいや俺だから」

 

 互いに自分がなのはの犬だと譲らない二人。外野としてはすごくどうでもいいことだが、当人たちにとってはすごく大事な部分らしい。

 

「うぅん……」

 

「「……」」

 言い合ってる二人の横でヴィヴィオが声を漏らしながらもぞもぞと動く。一瞬で止まる二人。俊は瞬時にパンツをはき逃げ出す構えをとる。──が、ヴィヴィオは動

いただけですぐにまた夢の中へと旅立った。

 

 ほっと一安心する二人。

 

「……とりあえずここから出るわ。もうヴィヴィオの寝顔もみたし」

 

「んじゃ私もちょっと目が覚めたんでご一緒に」

 

 服を綺麗にたたみ、エリオの横に置くと俊はヴィヴィオをもう一度撫でてたら部屋を出る。ティアもそれにならう形で部屋をでる。

 

 二人並んで歩く廊下。ティアが俊に話しかける。

 

「ひょっとこさん、何故服を綺麗にたたんで部屋においてきたんですか」

 

「パンツ一枚のほうが何かと都合がいいだろ?」

 

 なんの都合がいいんだよ、そうティアは質問したかったが色々と面倒なことになりそうなので口を開かなかった。

 

「それよりひょっとこさん。せっかく二人っきりになったんでちょっと悪戯しませんか?」

 

「いや俺もう自分の部屋で寝る予定なんだけど……。疲れたし」

 

「えー、遊びましょうよー」

 

「だから──」

 

「ヴィータさんの寝顔を写メろうと思ってたのに」

 

「よしいくぞ!ぐずぐずするな!」

 

 きらきらと輝く瞳はまるで少年のようでいて、疾駆する姿はただの変態であった。

 

        

        ☆

 

 その頃のなのはさん

 

 し、心臓がいたいほどに脈を打っているのがわかる……。ど、どうしよう?これ他の人にきこえてないよね?家が微振動で揺れてないよね?

 

 あぅ……きこえてたらどうしよう……。

 

「……これはご褒美なんだから。けっして俊くんのことが好きとかそういうのじゃないから……」

 

 自分自身にそう言い聞かせる。そう、これはご主人様としてとーぜんのことをしてるのであって、それ以外に他意はないもん!

 

「……それにしてもおそいなぁ俊くん」

 

 もう洗いもの終わってるはずなのに……。せっかく手伝ってあげようと思ったのに、手があれるからとかいって手伝わせてくれなかったし。……まぁ戦力になるかと問われたら首を横にふるしかないんだけどね。

 

「はぁ……俊くんはやくきてよー。もうねちゃうよー……」

 

 現在わたしは俊くんの部屋のベッドの上にいます。べ、べつにへんなことをしようってわけじゃないからね!?

 

 た、ただ……驚かせようとおもってるだけだもん。

 

 だからこうして──

 

「メイド服の恰好までしてあげたのに……」

 

 俊くんのコスプレ部屋からメイド服までもってきて着てあげたのに。それにしてもこのメイド服、スカートがめちゃくちゃ短いんだけど……。座ってても下着がみえるってどういうこと?

 

「それに……普段ガーターなんかつけないからこれであってるのわかんないよぉ」

 

 ニーソと下着の間をガーターベルトで連結させているわけだけど、これで本当にあってるのかな?フェイトちゃんならガーターよくしてるから詳しいんだけど……。

 

「なんかこのメイド服、全体的にえっちなんだよね……」

 

 俊くんのコスプレ部屋からもってきてやつだから、ものすごくあやしい。なんかいかがわしい雰囲気とかただよってないよね?

 

 ……魔法で作ればよかったかも。

 

「まぁでも、かけ布団でガードしとけばいいかな」

 

 どうせ俊くんならアクシデントとかあるわけないし。……すこしくらいあってもいいのに。

 

「もう俊くんのばか……。もうなんでこないの。ばかばかばか。もうしらないもん!」

 

 そもそもなんでわたしがこんな恰好までしてベッドにもぐりこんで俊くんまたなきゃいけないの!

 

 もう寝る!

 

        ☆

 

 俊とティアははやて一家が寝ている寝室への扉をそろりとあける。全員がしっかりと寝ていることを確認し、俊とティアは体を滑り込ませるようにして部屋へと侵入していく。二人とも動きが素人じゃないところが怖いところである。

 

 八神一家ははやてを中心に、右にヴィータ左にシグナム、そしてヴィータを抱っこしているシャマルという布陣を展開している。

 

「ひょっとこさん……ザフィーラさんはどこに?」

 

「外の犬小屋で番犬してくれてる。家に女が多いから見張っていようだってさ」

 

「惚れますな」

 

「まったくだ」

 

 ガチムチマッチョなザフィーラに敬礼し、二人はターゲットであるヴィータへと近づく。

 

 二人はシャッター音がしない設定にして写真を撮りまくる。物凄くいきいきとした顔でとりまくる。

 

「よし……んじゃぶっかけるか」

 

 ひとしきり撮って満足した俊はおもむろに練乳をとりだす。どこから取出したのかはきかないお約束だ。

 

 牛の絵柄が描かれた練乳のキャップをまわし、ヴィータに近づく俊。

 

「写真は頼んだ」

 

「まかせてください」

 

 真剣な表情を浮かべる二人。やっていることは最低のゲス行為だ。

 

 しぼりたての練乳をヴィータの顔にちょっちょとかける俊。口元に2滴、目元に1滴、髪の毛に量多めでぶっかける。

 

 ヴィータのみるく添えの完成だ。

 

「これはこれは……」

 

「我ながら背徳的だな」

 

 写真を撮るティアも興奮を隠しきれない様子。

 

「ひょっとこさん、今度は四つん這いで襲ってる感じを出しましょうよ」

 

「いやそれよりも事後っぽくしようぜ」

 

「お、いいですねそれ」

 

 まるでプリクラをとる女子高生のようにきゃっきゃとはしゃぎながら、ヴィータに練乳をぶっかけて遊ぶ変態共。パンツ一枚の男が、ヴィータを襲う絵を撮ったり、オレンジ髪の変態が練乳を口からヴィータの顔に垂らしたりと、あまりにも卑猥な写真がどんどんと出来上がっていく。

 

 その光景が10分ほど経過したとき、二人は恍惚とした表情を浮かべて満足していた。

 

「ふぅめっちゃ楽しかったな」

 

「同感です。明日プリントしてきますね」

 

「頼むわ」

 

 がっしりと固い握手をかわす二人。

 

「ほぉ……お前ら生きて明日を迎えることができると本気で思ってるのか……?」

 

「「ッ!?」」

 

 その声は地獄の底から響いてくるような怒気を孕ませた声であった。重力の圧によって体から崩れ落ちるティア。ティアは崩れ落ちる寸前に俊に手を伸ばすが、危険を察知した俊は足払いでティアにとどめをさす。

 

 冷や汗をかきながら、俊は目の前でのろいうさぎを抱っこしたヴィータが目を赤く光らせていた。

 

「よ、よぉ……ロヴィータちゃん。お、お子様はまだ夢の中で旅行を楽しんだほうがいいんじゃないか?」

 

「あぁ、あたしもそうしたかったんだけどな。──こんなにべたべただと寝苦しくてな」

 

 自分の髪や顔にぶっかけられた白濁液を指に絡ませつつ、睨みつけるその表情に俊はいいようもない快感をひそかに感じた。

 

 顔を近づけ、くんくんと白濁液の臭いを嗅ぐロヴィータ。

 

「……流石にイカ臭くはないか」

 

「いまからぶっかけることもできますがいかがしますか?」

 

「いかがしますかじゃねえよ。ぶっ殺すぞ」

 

 指をぽきぽきと鳴らしつつ、俊に近づくヴィータ。

 

 その頃には騒ぎで強制的に起こされたはやてやシャマルが眠い目をこすりながら、防音の障壁を張っている姿が俊の視界の隅に映された。

 

 ちなみにシグナムはいまだはやてに抱きついたまま爆睡中。はやては下着が丸見え状態のままぼーっとバナナ型のまくらを胸元で抱きしめている。

 

 俊はじりじりと後退しながら、つとめて優しい声色を意識してヴィータに話しかける。

 

「お、落ち着けロヴィータ。お前も女なら俺にぶっかけられたいと思うだろう?」

 

「お前のその自信はどこからくるんだ」

 

「俺の性奴隷だろ!?」

 

「なったこと一度もねえよ!?」

 

 驚愕する俊に驚愕するヴィータ。既にはやては夢の中へと再び旅立っていた。

 

 その間にロヴィータは俊に近づき、首根っこを掴み自分の顔に近づけさせる。

 

 至近距離で俊を睨みつけるヴィータに、俊は笑顔をみせながら言った。

 

「愛してるよ、ヴィータ」

 

 それにヴィータも、最高のロリロリしい笑顔と甘い声をこういった。

 

「あたしも愛してるよ。だーりん」

 

 直後、だーりんの視界にはアイゼンを振りかぶったヴィータの姿が、

 

「──なんていうとでも思っんのかボケナスがッ!」

 

 防音の障壁によって近所迷惑にならないヴィータの怒りは、俊だけにとどまらず俊を盾にこの場から逃げ出そうとしていたティアにも向けられることとなった。

 

「逃げるなティアッ!」

 

「おっぱい吸わせますから許してくださーい!?」

 

 それがティアの最後の言葉であった。

 

       ☆

 

 カチ……カチ……カチ……

 

「…………………ちょっと遅すぎない?」

 

 俊くんの部屋で俊くんをまつこと数時間。完璧に寝るタイミングを逃したわたしは部屋に置いてあった携帯ゲームで遊びながら帰りをまっていた──がいくらなんでも遅すぎる。

 

「……なにあったのかな?って、んなわけないよね。ここは自分の家だし、俊くんがヴィータちゃんあたりにちょっとかいでも出してない限り、そんなことはないか!」

 

 …………ちょっかい出してないよね?

 

 だんだんと不安になってきた。だってあの俊くんだよ?

 

 猥褻物陳列罪と外を歩いただけで『今日未明、ミッドで不審な人物が目撃されました』ってテロップが流れてくる俊だよ?

 

 ……あぁどうしよう、やっぱキッチンに迎えに行ったほうがいいかな!?

 

『あーしんど。これから寝ても一時間くらいしか寝れねえよ。美容に悪いよ』

 

『ひょっとこさんまだいいじゃないですか。私なんてモロ女の子ですよ?美容にダイレクトにくる女の子ですよ?管理局のアイドル枠ですよ?』

 

『お前は懐石料理の端に置いてあるつまようじみたいな存在だから美容なんて気にすんな』

 

 廊下から俊くんとティアの話し声が聞こえてくる。

 

『マジすか。ところでひょっとこさん一緒に寝ます?もう1階に行くのは怖いです』

 

『なのはにバレたら殺されそうだからやめとく。なのはの教え子に手をだすななのー!とかいいそうだし』

 

 語尾になのつけるのはやめてなの。

 

『しょうがないですねぇ。ヴィヴィオちゃんぺろぺろしながら大人しく寝ますか。おやすみなさーい』

 

『はいはい』

 

 たったったと1階におりる音が聞こえてくる。それと同時にカチャリとドアノブが回る音、そして──

 

「ふー。俺も寝よ」

 

 俊くんが疲れ切った声でベッドに侵入してくる。既に目を瞑って夢の中に旅立つ寸前。その俊くんに、わたしは声をかけた。

 

「お、おつかれさま俊くん……」

 

「ん?あぁおつかれさん。……は?」

 

 俊くんがピタリと固まる。つぶっていた目をあけて、ベッドにもぐりこんでいたわたしを凝視する。

 

 ……よくよく考えたらわたしすごい行動にでてるような気がしなくもない。というかなぜパンツ一枚?

 

「えっと……今日はここで一緒にねてもいい?あ、あのね?フェイトちゃんはリンディさんと寝てるから──」

 

「消えろ俺の煩悩ッ!」

 

「ちょっ!?塩まくのやめて!?」

 

「塩をまいてほしくなくば──いますぐここで潮を吹け!」

 

「……調子にのると怒るよ……?」

 

 無言で床に正座する俊くん。調教の賜物だね。

 

「……」スッ

 

「はい俊くん。発言を許可します」

 

「……なんでなのはがここにいるの?」

 

「……わたしとフェイトちゃんの部屋、リンディさんに奪われたから」

 

「リンディさんにフェイトを寝取られたわけか」

 

「いや、ちょっと違うと思うけど……」

 

 まぁだいたいそんな感じかな。

 

「なるほどね。んで寝るところがないから俺の部屋にきたと」

 

「そうそう」

 

「くんかくんかしていたと」

 

「するわけないでしょ」

 

「俺がなのはの立場なら下着を舐めまわしているというのに」

 

 部屋に侵入者迎撃用の魔法を設置しておくことを決めた。

 

 思わずため息をついてしまう。……あんなにどきどきしながら待っていたのに、気がつけばいつも通りになってしまうこの状況にため息を吐きたくなる。

 

 と、そう思っていると俊くんがちらちらと視線を横に動かしているのに気がついた。月の明かりに照らされてわかったことだけど、心なしか顔も赤くなっている。

 

「ん?俊くんどうしたの?」

 

 ビクッとする俊くん。視線を左右に動かした後、わたしを凝視しつつ言いよどみながら声を発した。

 

「あの……なのは?」

 

「ん?どうしたの?」

 

「……パンツまるみえなんだけど」

 

「にゃッ!?」

 

 俊くんの指を辿ると、わたしの下着に一直線。自分が丈の短いメイド服を着ていることにいまさらながら気づいたわたしは、さっきまで使っていた枕でスカートをガードする。

 

「……みた?」

 

「……なのははえろい下着よりも可愛い下着のほうが似合うと思うよ。それは……前にはやてが勝負下着とかいって見せてきたものに近いし」

 

 いったいどんな状況だったのかと問いただしたい。

 

「あれ?というかなのは。いま着てる服って俺のコスプレ部屋にあったものだよな」

 

「……まあね」

 

「それ……エロコスって言って、エロを目的としたコスチュームなんだけど……」

 

「はっ!?」

 

 こ、これが!?こんなに可愛いのに!?

 

 いやいやいやいやそうじゃない。そこじゃない。問題はそこじゃない。

 

 問題は──

 

「つ、つまりなのはは俺と──」

 

「じょ、冗談じゃない!!そんなつもりまったくないよ!」

 

 一生懸命否定するわたしに、俊くんは捨てられた子犬のような目で見つめてくる。

 

「……まぁ今日は頑張ってたご褒美……てきな」

 

 そ、そんな目で見つめられると……。

 

「ほ、ほら!ガーターだってつけてあげたし」

 

「……かわいい」

 

「ほ、ほんと!?フェイトちゃんより似合う?」

 

「それはない」

 

 素直すぎる俊くんにわたしの拳が飛んでいく。くらえ!エクセリオンバスター!

 

「でもほんとに可愛いよ。ガーターつきエロコスメイドとかもう理性が崩壊しそう。それも大好きななのはがこんなことしてくれるなんて」

 

 ほんとうに嬉しそうにする俊くん。……ほんのちょっとだけかわいい。

 

 い、いけないいけない!俊くんにかわいいなんてわたしの目もついに腐ったかと思ったよ。

 

 ……でもまぁ、今日くらいはそれでもいいか。

 

 すとん、とわたしの中の何かが底に落ちていく。体が軽くなる。心が落ち着いてくる。

 

 正座してこちらを伺うように、それでいて変態よろしく舐めまわすようにわたしをみる俊くんに、ふっと笑いかけて隣をぽんぽんと叩いた。

 

 子犬のようにしっぽを振って隣に座る俊くん。

 

 わたしはそんな俊くんの体にそっと寄り添い──そのまま押し倒すようにベッドに体を密着させた。もちろん、恥ずかしいから正面同士ってのはなしにして。

 

「え!?ちょ、なのは!?」

 

 慌てる俊くんはほんとかわいい。ぎゅっと体を抱きしめながら、両足で俊くんの足を挟み込む。

 

「今日はその……特別だから。べ、べつに俊くんのことなんて好きじゃないし、どうでもいいけど……今日は俊くんとっても頑張ってくれたからそのご褒美だもん。べつになのはがしたいからこんなことしてるわけじゃないもん」

 

 強く強く抱きしめながら、わたしは俊くんと自分に言い聞かせる。

 

「そ、そうなのか……。なのは、おっぱいが当たってるんだけど……。それにふとももの柔らかい感触が……」

 

「……変態」

 

 頭をこつんと叩く。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「まったく。ほんとにだめだめさんなんだから。……まぁそんなところも嫌いではないけど」

 

「んじゃ好きってこと?」

 

「そうはいってないでしょ。調子にのりすぎ」

 

「すいませんでした」

 

 まったくもう、ほんとに俊くんはだめだめなんだから。……やっぱりわたしが養ってあげないとダメだね。

 

「なぁなのは?お前……なんかあったのか?」

 

 ふと俊くんがわたしに声をかけてくる。その声色はどこか心配そうな表情が容易に頭に浮かんでくる。

 

「べつになにもないよ。なんで?」

 

「なんとなく。……なんとなくなのはがさびそうに思えたから」

 

「むー。人をウサギみたいにいって」

 

「バニーはあんまり似合いそうにないな」

 

 だから妄想でコスプレさせるのはやめてよ。

 

「ウサギ……か」

 

 それはどちらかというと俊くんのほうじゃないかな?なんてのは置いといて……。まぁすこしだけからかってあげようかな?

 

 魔法でウサ耳をはやすわたし。頬擦りしながら、うさぎ語を話す。

 

「うさうさ。うささささ」

 

「末期症状か?」

 

「正直自分でも頭おかしい人の行為だと自覚してた」

 

 なによ、うささささって。意味わかんない。

 

 そうこうしているうちに俊くんが反転しこちらに顔をむける。丁度正面で見つめ合う形になってしまった。

 

 じっと見つめてくる俊くんに、思わず顔をそむけてしまう。俊くんのくせに。

 

「……可愛いな、そのウサ耳。でも猫耳のほうがなのはは似合うぞ」

 

「ほんと?それじゃ猫耳にする」

 

 ウサ耳から猫耳に魔法をつかって変更する。ちゃんと本物同様に耳がぴょこぴょこと動く仕様にしてある。魔法万歳。

 

 ……それにしてもこの幼馴染。ものすごくだらしない顔になっているけど大丈夫なんだろうか?

 

「俊くん、よだれたれてる」

 

「おっと、いけね」

 

 じゅるじゅると音をたてながらよだれをふく俊くん。なにこの幼馴染きもい。

 

 ……まぁ女の子としてはちょっとだけ嬉しい気持ちもあるけど。自分にここまで萌えてくれるのは。

 

「ところでなのは。俺はいつまでこの状態になってればいいのか?」

 

「わたしが寝るまで」

 

「んじゃ寝るか。俺は黙ってるよ」

 

「もうちょっとだけお話ししよ?」

 

 抱き枕状態になっている俊くんにそう提案する。俊くんは思案したあとに肯定の意思を示した。

 

「まぁなのはがいいならそれでもいいけど……。んで、話題はなんにする?なのはのコスプレ?」

 

「いやいやいやそもそもコスプレなんてしないから」

 

「凄いなお前。メイド服はコスプレにあらずってか。流石10年間もコスプレしてる人間は違うな」

 

「だからあれはコスプレじゃないってば!?バリアジャケットなの!ったくもう……えーっと話題だっけ?それじゃぁ……俊くんの今後の将来とか」

 

「もうちょっと軽いのにしてくれよ……」

 

「だーめ」

 

 逃げようとする俊くん。だけどこっちが両足でがっちり下半身をはさんでいるし強く抱きついてるから逃げられない。観念したのか両手を万歳する。

 

「俊くんは今後やりたいこととかないの?」

 

「まぁとくにはないな。強いて言うならヴィヴィオの授業参観とか家庭訪問とか。ヴィヴィオのことに今後を使っていきたいかな。それとなのはやフェイトのためにも」

 

「他には?」

 

「あとは親に会いたいかな。それに……やっぱいいや」

 

 何かを言いかけた後、取りやめる俊くん。

 

「なになに?なにを言いかけたの?」

 

「べ、べつになんでもないから、んなことどうでもいいだろ!」

 

「だーめ。幼馴染としてちゃんと聞いておかないといけないんだから」

 

 なんだよそれ……。そういいながらも俊くんは喋ろうとしない。無理矢理口をこじあけようとしても必死に口を閉じる。むぅ……こんなときだけ強情なんだから。

 

 こんなときはじっと睨みつける。そうすると俊くんはわたしの眼力に怯えてすぐに喋り出すんだから。

 

「(ぐっ……。そんな上目使いで見つめられると、こっちが折れるしかないよな……)わかった、わかったよ。いうよ。その……結婚だよ」

 

「……へ?」

 

「だからその……結婚したいなって思って……」

 

 けっこん?血痕?……もしかして結婚?

 

 文字が思考回路とマッチした瞬間にわたしは俊くんに詰め寄っていた。

 

「だ、だれと結婚したいの!?誰としたいの!?」

 

「は!?」

 

「ほ、ほら、だって俊くんのまわりには沢山いるでしょ!?フェイトちゃんとかはやてちゃんとかヴィータちゃんとかリンディさんとか!新人二人は眼中にないだろう

けど!」

 

「ナチュラルに二人を蹴落としたな。それにロヴィータとリンディさんと結婚したら色々な意味でヤバイだろ」

 

「……はやてちゃんは?」

 

「はやては……どうかな」

 

 肩をすくめる俊くん。わたしのペットの癖になまいき。

 

「じゃぁだれなの?」

 

「それは……」

 

「それは?」

 

「……お前とフェイトだよ」

 

 俊くんのいった名前が一瞬理解できなかった。いや正確には理解できているんだけど、なんとなく信じることができなかった。

 

「わ、ワンモアプリーズ」

 

「何故英語。だから、なのはとフェイトと結婚できればいいなって思ってんの」

 

 わたしと……結婚?

 

「そ、それってその……エプロン装着して『ごはんにする?お風呂にする?それともディバインバスターする?』とかそういうことだよね?」

 

「お前の中でディバインバスターは隠語になってるのか?」

 

「その他にも俊くんがメイド服きてご奉仕したりする生活だよね?」

 

「そこはなのはがしてくれるんじゃないのか」

 

「だってメイド服なんて恥ずかしくて死にそうなんだもん」

 

 これ部屋を明るくされてマジマジと見られたら悶死する可能性が大だよ。

 

「でもまぁ……そんな感じかな。あんまりイメージはわかないんだけど、小さい頃から好きで高校生からは離れたくないと思って──そして気がつけば二人と結婚したいと思ってた。こうしてみると意外と俺って単純だな」

 

 ははと笑う俊くんに、わたしは笑顔で首を横に振る。

 

「ううん。そんなことないよ俊くん。わたしも……わたしも実はそうだったから。わたしもね、好きな人がいて──将来この人と結婚したいなって思った。小さい頃か

らずっと一緒にいてくれて、月日が流れてLikeからLoveになっていったの。世間的にいえば(俊くんは無職だし将来性がないから)止められるのはわかってる。でも──好きなものは好きなんだもん。しょうがないよね」

 

「なのは……」

 

 俊くんがわたしを見つめながら言ってくる。

 

「そこまでフェイトのことを愛していたんだな」

 

「殴り飛ばすぞこの野郎」

 

 どこからそういう話になった。いや、確かにフェイトちゃんのことは好きだし愛してるし、結婚するならフェイトちゃんがいいって公言したことは覚えているけどさ。いやけどほんとにフェイトちゃんとの結婚生活もいいかもって思うし、正直フェイトちゃんのエプロン姿とか可愛いしもう可愛いしで最高だとは思うけど。

 

 でも結婚したいのは──

 

「わたしが結婚したい相手はフェイトちゃんじゃないよ、俊くん」

 

「え?そうなの?」

 

 そこまで意外そうな顔しなくてもいいのに。

 

「わたしが結婚したいのは──キミだよ。朴念仁さん」

 

 鼻をつんと押してみせる。案の定、ぽかんと口をあけたままの状態になってしまう俊くん。

 

 視線をきょろきょろと動かし、まわりに誰もいないことを確認すると──そっと自分を指差し

 

「……おれ?」

 

 そう問いかけてきた。

 

 それに黙って肯定する。

 

 無音の静寂が部屋を満たす。誰かが下で起きた音が聞こえてくる。

 

 そして──俊くんは顔を真っ赤しながら俯いていた。乙女か貴様。

 

「あ、いや……その……マジか。マジなのか」

 

「うん、マジだよ」

 

「そっか……。マジか。──それで俺はどうしたほうがいいの?このまま体を委ねればいいの?それとも裸になって──」

 

「落ち着いて俊くん!?テンパリすぎだから!?」

 

「お、おうそうか……。そうだよな」

 

 深呼吸して気持ちを落ち着かせる俊くん。

 

「えっと……それでさ俊くん。とりあえず、返事から聞いていい?」

 

「そ、そうだな。えーっと……俺も好きでした。結婚しましょう」

 

 ……多分、というか絶対にわたしの顔は熟れたトマト以上に赤くなってる。

 

 凄く幸せな気分。

 

 やっと、やっといえたこの気持ち。ずっと胸に秘めていたこの想いが成就した。それだけでわたしの世界が幸せに満たされていくのを感じた。

 

 何も言わず、というか言えずに、わたしは俊くんを黙って抱きしめた。俊くんがうめき声をあげながら、骨らしきものがパキリといった気がしなくもないけどそんなことはどうでもいい。わたしはただただ俊くんを抱きしめる。

 

「あ、そうだ。ご褒美をあげないと」

 

「ご褒美?」

 

「うん、ご褒美」

 

 すっかり忘れていたけども、そもそもわたしがメイド服で俊くんの部屋にいたのは、今日一生懸命頑張ってくれた俊くんにご褒美をあげるためだったのだ。

 

「俊くんなにがほしい?」

 

「いや……もう十分なんだけど」

 

 わたしも俊くんに同意見なんだよね。わたしの場合、自分が一番のご褒美を手に入れちゃった……という理由もあるけど。

 

 二人で悩んでいると、ふと俊くんが小声で

 

「初夜……とかするんだよな。結婚した男女って」

 

 そう言ってきた。

 

 いきなりのことに固まるわたし。い、いや……それはそうだけど。

 

「いきなりそれ……?ド変態」

 

「い、いやべつにしたいとか思ってるわけじゃ──」

 

「……なによそれ。わたしじゃ不満だっていうの?」

 

 目が細くなるなのは。その対応に俊はビクリと肩を震わせた。

 

「そりゃはやてちゃんやフェイトちゃんみたいな雰囲気とかは出せないけど、それでもわたしだってその気になればできるんだもん」

 

 そういうと、なのはは俊に覆いかぶさるポジションへと移行した。

 

 もう完全に目がすわっている状態だ。

 

 続きの言葉を発しようとする俊に、なのはは指を口元にあてて制止させる。

 

 すっと体を沈み込ませるなのは。その先には俊の唇が。二人とも瞳を閉じる。窓から差し込む月の明かりが二人を照らしだす──そんなとき、

 

「なのはママがパパをいじめてるー……」

 

 いるはずのない声が聞こえてきた。それも眠そうな。いまにも眠りだしそうなほど浮遊した声をだしながら。

 

 覆いかぶさっていたなのはは体全体を震わせ、大急ぎで俊から飛びのき、声の主に目をやった。

 

 眠い目をこすりながら、ガーくんと手を繋いだ状態のヴィヴィオがそこにはいた。

 

「ど、どうしたのヴィヴィオ……?こんな夜遅くに」

 

 動揺のあまり声を震わせるなのは。スカートがまくれて下着が露わになっているが、そんなこと気にとめる余裕など存在しなかった。

 

 ヴィヴィオはガーくんとは逆の手で抱いていたうさぎのぬいぐるみをもふもふしながら、

 

「こわいゆめみたから、パパといっしょにねようとおもったの……」

 

 そうしゅんとしながらいってきた。

 

 丁度そのとき、ヴィヴィオとは違う存在がドアのすきまからひょっこり顔を覗かせる。

 

「すいませんひょっとこさん。ヴィヴィオちゃんが『パパがいい、パパがいい』としきりにいうものですから──ふぉッ!?エロコスメイドなのはさん!?」

 

 顔を覗かせたのはさきほど別れたばかりのティアであった。

 

 どうやらさきほど騒がしかった原因はヴィヴィオとティアのようである。怖い夢をみたヴィヴィオを寝かしつけていたティアだったが、ヴィヴィオの要望をきいて泣く泣く俊の部屋にきたということだろう。

 

 しかしなんというタイミングでの襲撃だろうか。

 

 とうの本人はすでに目的の人物の隣にいそいそともぐりこんで、ぎゅーっと抱きつきながら夢の中へと旅立った。ついでにガーくんもヴィヴィオの横で寝る体勢に移行している。

 

 残ったのは点数が悪かったテストを母親に見つかったときのようななのはと、二股がバレたときのような俊と、瞳をきらきらと輝かせたティアであった。

 

「あ、あのねティア!これはその──」

 

「……かわいい」

 

「……え?」

 

「かわいい。なのはさんほんとかわいい」

 

 瞳の中で完璧にハートマークが浮かび上がっているティア。既にこの人物にはなのはと俊が同じ部屋にいたという事実よりも、なのはがエロコスメイド服(ガーターつき)を装着しているという事実のほうが大事なようである。

 

 ポケットにいれていたカメラで写真を撮るティア。なのはが動くよりも先に行動を起こすあたり本気さがうかがえる。

 

 つぎになのはが何かを言う前にいきなり抱きついた。

 

「ちょッ!?離して──」

 

「なのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいいなのはさんかわいい」

 

「たすけて俊くん!?この子目がマジなんだけど!?」

 

 荒い息をはきつつ、舌なめずりをするティアに、なのはは戦々恐々、本能が危険だと警告をあげる。これが部下でなかったらレイジングハートを取り出すレベルだ。

 

「ふっふっふ、何故なのはさんとひょっとこさんが同じ部屋にいるのかは大体検討がつきます。おおかた、なのはさんの寝る部屋がなかったのでしょう。でも安心して

ください。ヴィヴィオちゃんがこっちに移動してきたので、私とスバルの横が空きましたから」

 

「わたしに死ねと!?」

 

「なーに、ちょっとお股から赤い血が流れるだけですから問題ありません」

 

「問題しかないよ!?」

 

 なのはのおっぱいを触りながら興奮するティア。いまにもなのはをお姫様だっこで抱えて下に連れて行きそうだ。そんなティアの暴挙を止めるべく、なのはは泣く泣

くある提案をもちかけた。

 

「そ、そうだティア!それなら、俊くんのベッドでわたしと寝ようよ!ほら、俊くんの隣にわたしが寝て、その隣にティアが寝るってことで!」

 

「でもひょっとこさんのベッド、そんなに大きくないですし」

 

「俊くんがヴィヴィオを抱っこしてきつきつまで詰めていけば問題ないから」

 

 ね!?ね!?そう説得するなのは。いつの間にか上下関係が逆転しているような気もしないでもないが、そこはあえていうまい。

 

 ちなみに俊は二人の会話の大きさでヴィヴィオが起きないかを心配していた。

 

「まぁいいでしょう。なのはさんと一緒に寝れるのならひょっとこさんのベッドも、ラブホのベッドも結果は同じです」

 

 いったいこの娘はなにをするつもりなのだろうか。

 

 交渉が成立し、ティアはなのはと手を繋ぎながらベッドにもぐりこむ。俊はヴィヴィオを抱っこし、自分が一番落ちる確率が高い端に移動する。順番でいえば、ティア・なのは・ヴィヴィオ・俊という順で寝ていることになる。

 

「う~……最悪のタイミングでやってきたよ」

 

 思わずなのはが愚痴る。プロポーズ後のこの状況でいきなりの襲撃。色々と準備が整っていたなのはとしても複雑な感情だろう。

 

「(でも──大きく前進できたしいいかな。いまはこれくらいで)」

 

 ヴィヴィオをあやしながら、ティアに高速デコピンをかましていく俊を横目になのははくすりと笑った。

 

 10年以上もまったのだ。一日くらいの我慢など簡単なこと。

 

 そう自分に言い聞かせ、なのははティアにバレないように布団越しに俊の手を握り、ゆっくりと目を閉じた。

 

        ☆

 

 その翌日、何故かなのはがティアを俊の部屋に連れ込み俊に見せつけながらプレイしたという噂が家中に流れていた。




ゲーセンでGGや電撃のUNIの格ゲーをしていたら、なのはのスロット的なものを発見。友人がやったら?みたいな感じでいってくれたけど断腸の思いでやめることに。

理由は簡単です。私が画面をぺろんぺろんのよだれまみれにしてしまうからです

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