六課の初出動が終わり、ほとんどなにもしていない新人達や一方的に犯罪者をフルボッコにしたはやてたちがにこやかな笑顔を浮かばせながら職場で菓子を食っていた。
「いや~、初出動もちゃんとできて六課も幸先がええな~」
「お前が一方的にボコって、新人たちはそれをみていただけだけどな」
「そういう俊くんは自滅して、シャマルさんに泣きついてただけだけどね」
……出動から帰ってきてからというもの、どうもなのはからキツイ言動が飛んでくる。 あれか? りゅうのまいで攻撃力でも上がったのだろうか?
俺がシャマル先生に泣きついたことはかわらないのでここは黙って受け取っておくけど。
「にしてもあれだよな。 魔力弾ってやっぱ痛いわ。 19歳になったからもう大丈夫だろうと思ってたけど……これは成長するとかの問題じゃないよな」
「俊くんの頭は成長しないけどね」
……俺にはサッパリ理由がわからない。 しかし……しかしだな。 こう……好感度が下がっているような気がするのは確かなんだよな。
そっぽを向くなのはにどうしたもんかと頭を悩ませていると、トッポを独り占めしていたはやてが急に顔を上げた。
「そや! みんなで祝賀会やらへん!? 初出動達成おめでとう祝賀会や!」
『おぉーーーー! 部隊長がはじめて真面目なこと言った気がする!』
「ちょっとまちいな。 わたしはいつだって真面目やったで?」
『……』
「なんで黙るっ!?」
それはまあ、普段のお前がおかしいからに決まってるだろ。
「でも、祝賀会ってどこでやるの? 私たちは19歳だからまだ大丈夫だけどキャロやエリオはまだ子どもなわけだし……お店を貸し切ってやるのは反対だよ?」
「大丈夫や、フェイトちゃん。 場所はなのはちゃんとフェイトちゃんの家でやる! 二人のペットが一匹おるけど大丈夫やろ」
「おい、誰がペット。 もっとこう……愛玩動物とか別の言い方があるだろ」
「いや……そういう問題じゃないよね? 遠まわしに俊は人間じゃないって言われてるんだよ?」
フェイトが可哀相な目で俺を見てくる。
「はっは、君と一緒にいられるのなら俺は人間なんてやめてやるさ」
「でも人間じゃないなら結婚とかできへんで?」
「やっぱいまのナシでお願いします」
それは困る。 めちゃくちゃ困る。 どれぐらい困るかというと俺の息子が勃たたないくらい困る。 この頃使ってないから最近スネてるんだよな、こいつ。
「というか、okを出すのは俺じゃないからなんともな~。 フェイトとなのはがok出すのなら俺は何もいわないよ」
あくまで俺は居候の身。 色々部屋を改造したり至る所に盗撮カメラを仕込ませたりしてるけど家長はフェイトとなのはだ。
「う~ん、私は別にいいよ。 キャロとエリオも行きたかっただろうし。 なのはは?」
「そうだね、わたしも別に──」
『なのはさんの部屋に侵入できるなんて!! やば、私この場で絶頂しそう!!』
『落ち着くのよ、スバル!! まだ早いわ! なのはさんが使っている枕やベット、小物用品で絶頂したほうが遥かにイけるわよ!!』
『流石だよ、ティア!』
「……わたしとフェイトちゃんの部屋に行くのは禁止でお願い。 というか一階だけ開放ということで」
「……妥当なところやね」
狂喜乱舞中の新人二人を見ながらはやては溜息をついた。
☆
「え~っと、なのはとフェイトとはやてとシャマル先生とロヴィータとシグシグとザッフィーと新人4人にスカさんとウーノさん。 うひゃ~……結構な量を作らないといけないのではないか」
場所は移動して我が家の台所で、俺は人数を確認して悲鳴を上げていた。
家に帰るまでの間にも色々と問題が起こったのだが面倒なので省略することに。
後ろのほうではパーティーゲームで盛り上がっている女の子たちの声が聞こえてくる。
『なのはちゃん、負けたら脱衣やで!』
『えっ!? そんなこと聞いてないよ! あ、ダメ負けちゃう!? あ~~~~!』
『ぐふふふ……さあ、脱ぐんや!』
「その役目、俺が受け持とう────おい、なんで部屋に結界張ってんだよ!! これじゃ見れねえじゃねえか!!」
鍋とか皮抜きとか千切りとか料理のこと全てを投げ出してエプロンを投げ出しズボンを脱ぎパンツを脱ぎ捨てながら部屋に突撃したところ、はやてがそれを先読みしていたかのように結界を張っていた。
「うおおおおおおおおおおおおおおお! 燃えろ、俺の
力いっぱい殴るが結界はビクともしない
『さあさあ、フェイトちゃんも脱衣の時間やで~~!』
『ちょ、ダメええええええ!』
「なんで俺には魔導師としての力がなかったんだ!! なのはとフェイトが裸で俺のことをまっているというのに……! こんなことじゃ、男失格じゃないか!」
「その前に人間失格じゃないのかね」
「服を着ろ」
「ひょっとこさん……」
結界の前で全裸になったまま膝から崩れ落ちていると、傍で呆れ声と悲しそうな声が聞こえてきた。 前者はスカさんとザッフィー。 後者はエリオである。
「ああ、結界張る前に追い出したんか。 そこらへんはぬかりないんだな」
「まて、全裸のままこちらにくるな。 ぶら下がっているモノが左右に揺れて気持ち悪い。 まず人間として最低限の誇りを取り戻してからこちらにこい」
「そういえばザッフィーの毛でオナニーしたらどうなんだろ?」
「話を聞け馬鹿者っ!?」
ワンコ姿のザッフィーに怒られた。 あとザッフィーの毛でオナニーしたらチンコが絡まって大変なことになるかもしれない。 こう……飲み物を飲んだときに対外に出す所からスルリと毛がはいってきそうだよな。
脱ぎ捨てたものを拾い履く。 流石衣服。 聖母マリア様に包まれているような気がして落ち着くぜ。
「にしても久しぶりだな、エリオ。 元気にしてた?」
「あ、はい!」
赤髪のエリオは子ども特有の笑顔で俺の質問に答える。 うんうん、この笑顔を見る限り大丈夫そうだな。
「ところでエリオはなに食いたい? 夕食作るの俺だし、特別に食べたいもの作ってあげるよ」
「えっ? いいんですかっ!?」
「うむうむ、可愛いエリオのためならお兄さん頑張っちゃうよ」
「あの……それじゃ……」
少し恥ずかしいそうに顔を赤くするエリオ。 ごめん、エリオ。 俺、そっちの気ないんだ。
やがてエリオは何かを決断したように言う。
「僕、お肉がいっぱい食べたいです!」
「そっかー、肉かー。 俺も好きだよ、肉。 うまいもんな」
もしかして肉を沢山食べたいことを言うのが恥ずかしかったのかな?
「うーん、それじゃ手羽先とトンカツにでもするか。 おっし、お兄さんに任せなさい!」
ドンと胸を叩く。 それを聞いてエリオが嬉しそうな声を上げる。
まあ、流石にそれだけでは健康に悪いので洋風パスタやカルパッチョとかも作ってみようかな。
「ところでエリオ。 ここにゴスロリ服とウィッグがあるんだけど……ちょっと着てみない?」
一瞬にしてエリオの顔が戸惑いの表情に変わる。
「いや、ちょっとだけちょっとだけ。 ほんと数秒でいいから、ね?」
「あの……ひょっとこさん、顔が怖いんですけど……」
右手にゴスロリ服、左手にウィッグをもってハァハァ言いながらエリオに迫るさまは立派な犯罪者である。
「いやさ、なのはやフェイトに着てもらおうとわざわざ買ったのにあいつら俺の前ではきてくれないしさ。 このさい、エリオに着てもらおうかと」
「ザフィーラさん、助けてください!」
ザフィーラの助けもあえなく、ひょっとこに捕まったエリオはゴスロリ服を着せられたのだった。