パンツ脱いだら通報された   作:烈火1919

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23.恐怖するヴィヴィオ! ギャラドスなのはの黒い影っ!?

 携帯の通話終了ボタンを押しながら、私はたったいままで会話していた人物を思い浮かべる。 真面目な話だから帰ってきてほしい……そう言っていたがいったいどうしたんだろう? もしかしてついに就職する気になったのだろうか? いやいや、彼に限ってそんなことはない。 だとしたらなんだろうか?

 

「う~ん……大事なお話しか~。 もしかして私達に関係することかな?」

 

 私達に関係することならば大分絞られてくる。 夕食のこととか、月1で開催される大掃除とか、実家に帰ってゆっくり過ごすとか。

 

 でも……声色からしてそれはないと思う。 それにそれらのことなら家に帰ってきたときに言えばいいのだし。

 

「うむむ……余計にわからなくなっちゃったよ」

 

「ね~、なのはちゃん。 カービーのエ○ライドせえへん? 丁度いい暇つぶしになると思うんやけど」

 

「わ~! やるやる! ──って、違うよねっ!? ついつい流されそうになったけど、仕事場にゲーム機持ってくるなんておかしいよねっ!? 」

 

「ぼ~っと携帯のディスプレイ眺めてたなのはちゃんに言われたくないで」

 

「眺めてないもんっ! 誤解を招くような言い方やめてくれるっ!」

 

 ゲーム機をセットしながらからかうはやてに、なのはは思わず席を立ちながら否定する。

 

『な、なのはさん……困りますよ。 お仕事の最中に私が写ってる待ち受け画像をみるなんて……』

 

「顔を赤くしながらこっちにこないでよっ!? 私そっちの趣味がないっていってるでしょっ!?」

 

「大丈夫です。 私が教導してあげます! 愛の共同作業で教導しましょう!」

 

 書類を投げ捨てて迫ってくるスバルに、なのはは全力で逃げる。 ドタバタと慌ただしい音が仕事場に響く

 

「ただいまー、いま帰ったよ」

 

「フェイトちゃん助けてっ!」

 

 

 

 執務官の仕事から帰ってきたフェイトに勢いよく飛びつくなのは。 フェイトは全身の体のバネを使いながら必死に受け止める。 顔を上げたなのはには若干ながら涙

を流した痕跡が残っている。 エースオブエースに涙を流させるほどの部下の迫力と真剣度。 なぜこれを訓練で発揮しないのか甚だ疑問を覚えるフェイトである。

 

「ど、どうしたのなのはっ!?」

 

「もういやだよぉ~! おうち帰りたいよぉ~!」

 

「なのはさんの泣き顔カワユス……。 ぺろぺろしていいですかっ!?」

 

「落ち着いてスバル!? それもう犯罪者の域に達しようとしてるから!」

 

「フェイトちゃん、おうちかえろうよ~!」

 

 フェイトの胸に顔を押し付けるなのは。 ふとみると、はやては面白そうに自前のカメラでこの様子を撮っている。 ここにその他の者がいなかったことだけがなのは

にとっての救いだったかもしれない。 もしこんな姿をみられたら──べつに見られてもいままでと変わらないかもしれない。

 

 幼子のようにフェイトに抱きつくなのはに、フェイトはトドメの一撃を食らわせた。

 

「でも、家に帰ったら俊がいるよ……?」

 

 フェイトの かいしんの いちげき

 

 エースオブエース 高町なのはは たおれた

 

「さすがフェイトちゃんや。 なのはちゃんに向かって効果抜群の一撃をためらいなく与えるなんて……恐ろしい娘やっ!」

 

 倒れたなのはを必死に介抱するフェイトをみながら、はやてはそう呟いた。

 

 

           ☆

 

 

 なんとか管理局員に見つかることなくヴィヴィオを家に迎えることができた。 いや、ほんとうはダメなことだと思うんだけど。

 

「わぁ~! おうちおっきいね!」

 

「だろ~? なのはとフェイトが頑張ってくれてるからな!」

 

「それじゃぁ、おにいさんはなにしてるのぉ?」

 

「おにいさんは夢を追っかけているんだよ」

 

 いまだたどり着かないどころか、見えてこない夢だけど。

 

 それでもヴィヴィオはこのフレーズが気に入ったらしく、手を叩いて喜んでくれた。

 

「ヴィヴィオもゆめをおいかける~!」

 

「ヴィヴィオ、夢ってのは追いかけるものじゃないんだよ。 叶えるためのものなんだよ」

 

「でもおにいさんはおいかけてるんでしょ?」

 

「俺の夢はツンデレだからな」

 

 いまだにデレを魅せてくれたことはないのだけど。

 

「まあ、夢はいいじゃないか。 それよりビスコ食べるか? うまいぞ、ビスコ」

 

「たべるたべる! ヴィヴィオ、ビスコだいすき!」

 

「そうかそうか。 ビスコを食べるとなのはみたいになれるからな。 頑張るんだぞ!」

 

「ん~? なのはってだ~れ?」

 

 ビスコを口に含んだまま、ヴィヴィオが首をかしげてくる。 こういった仕草が似合うのもこの娘のすごいところだな。 しかし、なのはがダレなのか、か。 これは難しい。 なんといっても自慢の幼馴染である。 下手に貶してイメージをそこねたくないし、夕方には会うことになるのだからここはヴィヴィオが喜ぶような内容に脚色しないと……!

 

 俺はゲームを取り出しポ○モン図鑑を選択し調べる。 幼馴染のイメージを貶すわけにはいかない……!

 

「え~っと、タイプは水・ひこうで入手方法はすごいつりざおかコイキングから地道に育てるのもアリかな。 ものすご~く凶暴でヴィヴィオみたいな娘が悪いことをすると、どこからともなくやってきて全身を引き裂いて帰っていくんだよ。 口からはビームが出てきて、そのビームはミッドを破壊するほどの力をもっているんだ」

 なのはのイメージを貶すことなく、どちらかというと持ち上げる形でヴィヴィオの目線に合わせて話したのだが──話し終えた瞬間にヴィヴィオに泣かれてしまった。

 

ごめん、なのは。 ヴィヴィオが求めてたのはギャラドスなのはじゃなくて、高町なのはだったみたい。


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