パンツ脱いだら通報された   作:烈火1919

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35.最後はサッパリと

「「スーハースーハースーハースーハーくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろれろ」」

 

 浴室から出ると、自分の部下が自分の下着を犬のように嗅ぎながら時折小さい声で私の名前を呼んでいた。

 

「…………なに、やってるの?」

 

「「はっ!? なのはさんいつの間にっ!?」」

 

 オレンジ髪をツインテールにした女の子と青髪をショートカットにしている女の子。 二人はわたしの直属の部下にあたる。 オレンジのほうが、ティア、青髪のほうがスバルである。 正直、ちょっとだけこの子たちの上司を辞めたいと思い始めた。 いや、すでに結構辞めたいのだがここで辞めたらそれはそれで大変なことになるので、辞めることができないでいる。

 

「「なのはさん安心してください! 私達が嗅いでるの、使用済みの下着ですから!」」

 

「いや安心できないよっ!? むしろ使用済みだからこそ安心できないよっ!?」

 

「普通の物だと中古より新品のほうがいいですよね。 でも、パンツだとむしろはいた後のほうが価値が出てくるんですよ。 これが下着の魅力ですね!」

 

「どうでもいいから、振り回して遊んでないで返してよっ!? どこの世界に上司の下着で遊ぶ部下がいるのっ!?」

 

 近寄って下着を取り返す。 いや、なんで上目使いで服を脱ごうとしているの? ティアの中では下着を奪い返すとokのサインなの?

 

「ところで、二人ともよくきたね。 まだ呼んでないのに」

 

 お風呂に入った後に電話で呼ぼうとしていたんだけど……もしかして誰かが連絡していたとか?

 

「「あ、そろそろお食事会の誘いがあると思って勝手にきました」」

 

「うちにたかるのやめてくれないっ!?」

 

 

           ☆

 

 

 下着を身に着け、衣服をちゃんと着替え、皆が待っている大きな畳部屋へと私達はやってきた。

 

「おー、なのはちゃんたち。 もう出来とるで。 あとはこれを並べるだけや」

エプロン姿のはやてちゃんが茶わん蒸しを置いて席につく。

 

「え~っと、それじゃ私達は──」

 

 周りを見渡す。 ウーノさんやスカさん、交番のおじさんにエリオとキャロ、ヴィータちゃんにシグナムさんにシャマルさんにザフィーラさん。 みんな並んで座っており空いてなさそう。

 

「あ、スカさんだ~! わーい! スカさ~ん!」

 

「おぉ……ヴィヴィオ君。 また会うことができてうれしいよ……」

 

「ん~? スカさんどうしたの~? 元気ないよー?」

 

「いやなに……私が開発に成功した自立型移動ロボットを一管理局員に指一本で壊されるとね……。 やっぱり、科学者として心に傷が……」

 

「安心しいや。 おじさんは奇人変人が多いここらへんの担当やで? 戦闘能力もズバ抜けとるで」

 

「……なら何故、ミッドでおまわりさんなんかを……?」

 

「逆に考えるんや。 そんな戦闘能力が高い人を配置しないといけないほど、ここらへんの奴らは手強いんよ」

 

 いったい、私たちの住んでいるここらへんの近隣は魔窟か何かなんだろうか。

 

 まぁ、魔窟なんだろうけど。

 

 それはそれとして──

 

「ねぇ、フェイトちゃん。 席が彼の横しか空いてないよ? ど、どうする?」

 

「ま、まぁ、行くしかない……よね」

 

 先程自分の黒歴史を思い出したのでかなり恥ずかしかったのだが……これはしょうがない。 席が空いてないなら彼の隣に座るしかないわけで、べつに彼なんかどうでもいいけど、しょうがない彼の横に座る。

 

 ちょうど、彼を挟んで私とフェイトちゃんが座っている状態だ。 これもしょうがない。 わたしとフェイトちゃんが隣になると怪しい噂が飛び交うのでしょうがない。

 

「よっし! みんな席についたねー! それじゃ、かんぱーい!」

 

『かんぱーい!!』

 

 フェイトちゃんが乾杯の音頭を取ると、みんなもあらかじめ用意されていたグラスを手に取り隣の人なんかとカチンッと合わせていく。

 

「それじゃ、フェイトちゃんかんぱ~い!」

 

「かんぱ~い!」

 

 彼の目の前でフェイトちゃんとグラスを合わせる。 彼はずっとキョロキョロと辺りを見回していた。

 

 

           ☆

 

 

「あいつはどこのキョロちゃんなんや。 いくらなんでもキョロキョロしすぎやで」

 

「というか、あの人あんなキャラでしたっけ? キャラがブレブレじゃないですか? ナックルボール並みにブレてませんか?」

 

「あいつ真剣真面目な雰囲気だと戦闘力5のゴミになるしな。 いつもは53万くらいなのに一気に5になるしな」

 

「なるほど。 銀河の不動産屋から一気にランクダウンしますね」

 

「高校時代はヘタレキングと呼ばれていた」

 

「ヘタキンですか。 なんか霊とか呼び出せそうですね」

 

「悪霊くらいしかこんと思うけどな」

 

 三人の動向を見守りながら、ティアと二人で話す。 う~ん、自分で作ったからかもしれないけど茶わん蒸しがなかなかの美味だ。

 

「それにしても、ひょっとこさんって料理や家事とか得意なんですよね?」

 

「まぁなー。 なかなかうまいもんやで」

 

「それじゃ、その力をなのはさんとフェイトさんのために役立てたいから、仕事をしないんですか?」

 

「いや、面接で全て落とされる」

 

 ティアの顔が歪む。 あいつに限って、そんな美しい話になるわけないやろ。 第一、家事は午前中に終わらせることができる。 って豪語してたのあいつやから、ただ単に仕事先がないだけやな。

 

「まぁ、あいつは『変態的キチガイ病』やからな。 社会もそんなに甘くないで」

 

 六課の部隊長が『社会は甘くない』と語ってもそこまで説得力はないのだが。

 

「ただまぁ、なのはちゃんの実家である喫茶店翠屋ではちゃんとバイトしてたみたいやね」

 

 あれも確か士郎さんがいたからだった気がする。 なんというか……あいつは高町家の犬なのではないかと疑いたくなる。

 

「はぁ……色々と可哀そうな人なんですね」

 

「とくに頭がな」

 

 

           ☆

 

 

 隣には、なのはとフェイトが座っている。 先ほどまで風呂にいたせいだろう、ほのかに香る石鹸の香りが鼻孔をくすぐってしょうがない。

 

 けど、このままでは埒があかない。

 

「な、なぁなのはとフェイト? その……さっきのことなんだけどさ……?」

 

「「ああ、誰かさんが鼻の下伸ばしてたやつ?」」

 

 関係を修復できそうにない。

 

 ここからどうすれば、あの関係に戻れるんだ。

 

「いや、あれは……だから……アレだよ。 誤解なんだ」

 

「へー、そうなんだ。 でも、はやてちゃんみてニヤニヤしてたよね? もしかして、はやてちゃんがタイプなの?」

 

「それはねぇわ」

 

 前のほうからフォークが飛んでくる。 だが甘い! それを予測していた俺はすかさず顔をずらし──小さい魔力弾を喰らった。

 

「おぅ……おぅ……!?」

 

 たまらず顔を押さえ、土下座の体勢で痛みが引くまでまつ。 なんともんぶつけやがるんだ、あのポンポコ女!

 

「だ、大丈夫!?」

 

「だ、大丈夫……。 もう、アレだから。 全然平気だから。 べつに泣いてないよ? 俺泣かせたらたいしたもんだから。 あ、まって、タンマ。 そこ、魔力弾を展開させない」

 

 ヴォルケンやスバルやティアなどが魔力弾を展開させていたのでやめさせる。 どういう神経してたら俺に魔力弾をぶつけようと思うんだ。

 

「そういえばさ、この蕎麦1から作ったんでしょ?」

 

 なのはが聞いてくるので

 

「まあなー」

 

 明後日の方向をみながら返事を返す。

 

「ふーん」

 

 なのはも力ない返事で返した。

 

 会話終了

 

 これが恋人なんかだと、そのあとに『おいしいよ』なんて言葉があるんだろうけど、そこはほら。 あるわけないじゃん? 言ってて悲しくなるけど。

 

 ふとみると、なのはとフェイトがもじもじしだした。 ……もしかしてトイレ?

 

「あ、二人とも。 トイレなら──」

 

「「その……お蕎麦、おいしいよ」」

 

「僕の口にかけてください」

 

 また症状が発症した。 しかも今回は一人称が俺から僕に変わるというなかなかの力である。

 

 そして二人は、なんだかもう……いますぐにでも俺をぶち殺しそうなほど睨んでいた。

 

「いや、違うんだ。 違わないけど違うんだ。 確かにそういったプレイもしてみたいけど、いまは違うんだ。 もっと具体的にいうのであれば、トイレを清掃中にしておいて二人が漏らすか漏らさないかの瀬戸際を楽しみたい、なんて欲求もあったりするけど違うんだ」

 

 正直、捕まってもおかしくないと思った。

 

 二人は無言で立ち上がった後、立ち去り際にビンタを一発づつかまして、はやてたちの輪の中にはいっていく。

 

 ……まぁ、悪いのは俺だよね。

 

 


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