パンツ脱いだら通報された   作:烈火1919

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47.ありがとう

「プレゼント代貯まったから、プレセント買いにきた」

 

「勝手にいけばよかったやん。 なんでわたしがアンタの買い物に付き合わないといけないの?」

 

「俺たち幼馴染だろ?」

 

「幼馴染やめるわ」

 

「幼馴染ってやめれる仕組みだっけ!?」

 

 土曜日の午後、 なのはとフェイトがヴィヴィオをつれてスカさんの家に遊びにいったので、その隙にはやてを呼び出し二人でデパートに買い物にきた。 ウーノさんたちとケーキ作るんだって。

 

「それで、なに買うか決めてんの?」

 

「ネックレスを買おうかな……と。 まあ、レイハやバルがあるし、本当はもうちょっと違うのがいいんだろうけど──これがどうしても思い浮かばなくってさ。 とりあえず自分なりに調べて、ネックレスにしてみました」

 

「プレゼントが思い浮かばないとかアホちゃうか。 というか、モテモテやったんだろ? 自称イケメン」

 

「モテたのは確かだけど、付き合ったことはないかな。 ほら、嫉妬とか起こりそうじゃん?」

 

「アンタのことが大好きだった男性体育教師(26)とかか……」

 

「やめて! 俺の過去のトラウマが蘇ってくる!」

 

 あの人ガチな方だったからな。 もう色々と頭おかしかったからな。 軽くヤンデレただからな。

 

「まあ、それはともかくとして──とりあえず店に行こうか」

 かくして俺とはやては、ネックレスを買いに行くのであった。 蛇足であるが、はやての水色のキャミソールと白のフレアスカート姿がちょっと可愛いです。

 

 

           ☆

 

 

 1階の案内図を見る限り、貴金属店は5階にあるみたいだ。

 

 エスカレーターを使って上がることにする。

 

 はやてを一段上にしてエスカレーターで上がっていく。 はやては俺がスカートを覗くのではないかと疑ったのか、体を横にした。 あまいぞはやて。 既に絶妙な角度

で、お前のパンツなど盗撮しとるわ。 ほぅ……黒とはなかなかアダルティーな色で──

 

「なぁ、記憶がなくなるのと、メモリーがなくなるのは、どっちが身体的苦痛を味わうと思う?」

 

 すぐに盗撮写真を消した。

 

「さ、さぁ……! 僕わかんない! それより、今日のはやてちゃんは可愛いね! ちょっと化粧してるみたいだしさ!」

 

「そ、そう? ま、まぁ元がええからな。 あまり化粧とかせんでもいいんやけど──」

 

「それについては同意するわ。 お前ら三人娘は最高に可愛いよな。 なのはとフェイトは究極的に可愛いけど」

 

「…………」

 

「いだだだだっ!? 腕間接がメシメシいってる腕間接がメシメシいってる!?」

 

「逝ってもええんよ?」

 

「イ、イくうぅぅうううううぅうううッ!!」

 

 警備員呼ばれて怒られた。

 

 

           ☆

 

 

「アンタのせいで怒られたわ。 どうしてくれんねん」

 

「お前のせいで変態カップルみたいになったじゃねえか。 どう責任取ってくれるんだよ」

 

「付き合う?」

 

「……………………いや、お断りします」

 

 一瞬何言ってるかわからなかった。 平然とトラップ仕掛けてくるあたり、こいつはなのはとフェイトよりもよっぽど怖い。

 

「あれ~? いまの“間”はなにかなー? 俊」

 

 はやてが意地悪そうな笑みを浮かべて、こちらに近づき、腕に抱きついてくる。

 

「はやて、当たってるのか当たってないのか微妙だから、お前にはその技は無理だよ」

 

「歯というのはな、壊れれば壊れるだけ、新しいのが生えてきて、その歯自体はその前の歯よりも強靭になるんよ」

 

「それアーロン! 魚人族だから! 人間の俺はそんなにしょっちゅうは生えてこないから!」

 

「でも知り合いにいるんやろ?」

 

「知り合いにいるからって俺の種族まで変わるわけないだろ!? お前なにいってんの!?」

 

 これがエリート捜査官なのか!? お前家宅捜査のときに証拠そっちのけでエロ本とか探す人種だろ! あ、魚人族の知り合いはいるけどアーロンはいないよ?

 

 でもまあ──ちょっとだけ当たったし……

 

「ごちそうさまでした」

 

 と、小さく聞こえない程度に呟くのであった。

 

 閑話休題

 

「うーん、どれがいいと思う? というか、腕に抱きつくなってば」

 

「まあまあええやん。 嫌なら引きはがせばいいだけなんやし。 それはそれとして……やっぱりネックレスなら二人のイメージカラーとか、二人をイメージできるものがええんとちゃう?」

 

「なるほど。 なのはならギャラドスやコイキングというわけか」

 

「そろそろ対戦のときになのはちゃん(コイキング)使うのやめてくれへん? 笑って勝負ができないんや」

 

「お前最低だな。 幼馴染の姿みて笑うなんて!」

 

「アンタの行いのほうがよっぽど最低やで!?」

 

 愛情故、仕方なし

 

「うーん、やっぱりなのはは星かな? スターライトブレイカーというネタ技もあるし」

 

「次元世界広しといえど、なのはちゃんのスターライトブレイカーをネタ技といえるのはアンタだけやと思うで」

 

「そんでもってフェイトは雷とか?」

 

「いや~、雷はちょっとダメちゃう? もう少し可愛くしたほうが」

 

「ん~。 ──おっぱいとか?」

 

「普段からどこを見ているのかがわかるセリフやな」

 

 いや~、それは男ですもん。

 

 店員さんが俺とはやての会話を困ったような顔で聞いている。 きっと声をかけづらいんだろうな。 俺が店員なら無視確定だけど。

 

 しかしイメージか。

 

 二人のことをイメージする。

 

 様々な表情と、これまでの記憶がよみがえる。

 

 

 14年前のあの日のこと

 

 10年前のあの日のこと

 

 そして、俺が彼女達に対する感情と、彼女たちをみた感想

 

「ああ、調べておいてよかった」

 

 やっぱgoogleさん最強だったわ

 

 

           ☆

 

 

 プレゼントを買った、(正確に言うと頼んだ)俺たちは、そのまま最上階でお昼を食べることにした。

 

「ひょっとこはお子様ランチが大好きやったっけ?」

 

「一言もいってねえだろ。 あの旗が大好きだって言ったんだよ」

 

「小さい子どもの気を引くために使用してんのに、大きい子どもが引っかかるとは夢にも思ってないだろうなぁ」

 

「ちなみになのはも注文しようとしてたぞ」

 

「あの娘は大丈夫なんか!?」

 

 たぶん、きっと、おそらく、大丈夫じゃない。

 

「それで、なに食べる? お金もないやろうし、お姉さんがおごってあげるよ。 好きなもの注文してどーぞ」

 

「え? まじで!? それじゃはやてのアワビ──」

 

 ドンッ!

 

「ごめんなさい、調子にのりました」

 

「よろしい」

 

 テーブルが陥没するほどの破壊力とか勘弁願いたいのですが。

 

「ん~っと、それじゃウニトロ丼にしようかな」

 

「はいはい。 わたしは……生パスタモッツァレラチーズとトマトソースにしようかな」

 

「ちょっとまってはやて。 俺のサイフにゴムがあるから」

 

 はやてはスルーして店員に注文した。 一人でゴム掲げてる俺がバカみたいだ。

 

 注文した品がくるまでの間、はやてと軽く世間話することに。

 

「六課は順調? 喧嘩とかしてないか?」

 

「いや、みんな楽しくやってるで。 喧嘩とかは全くないけど、強いてあげるなら……ティアの暴走が止まらないってとこやろか」

 

「嬢ちゃんはいつも通りだよ。 まぁ嬢ちゃんにとって、なのははお姉ちゃんみたいな感覚だしな」

 

「お兄ちゃんのほうがダメダメやからな」

 

「うるっさいな……。 嬢ちゃんにはバレてないんだから教えるなよ? どこから聞きだしかについては目を瞑るから」

 

「はいはい。 それじゃ今度はこっちが質問や。 バイトはどうだった?」

 

 

 はやての質問と同時に、食前に頼んだ飲み物がくる。 はやて側にはアイスティー。 俺のほうにはコーラだ。

 

 ストローを入れ、コーラを飲み答える。

 

「聖王教会はそれなりに楽しめたよ。 教会の人達も優しかったし、面白い人ばかりだった。 カリムさんやマッパさんも俺とヴィヴィオの面倒をよくみてくれていたし」

 

「結局辞めたわけやけどな」

 

 アメリカンよろしく肩を軽く上下に動かし首を振りながら答える。

 

「なのは神とフェイト神を崇めてたから、天罰が喰らったのかもな。 でもまあ、カリムさんはその後も携帯で連絡を取り合えるくらいには修復したし、問題ないと思うよ」

 

「ふ~ん……おもろな」

 

「ん?」

 

「え? わたし何かいった?」

 

 小首を傾げるはやて。

 

「え? なにかいま言わなかった?」

 

「べつに?」

 

「あ、まじか。 いま声が聞こえたような気がするけど──」

 

「気のせいやな」

 

 なんだ、気のせいか。

 

 その時丁度よく料理が運ばれてくる。

 

 

 俺の前にはウニトロ丼、はやての前には生パスタモッツァレラチーズとトマトソース。

 

 食べながらも、俺とはやての会話は尽きない。

 

「久しぶりに家に泊まってええ? 今度の土日あたり」

 

「いいけど、仕事は?」

 

「終わってるとおもうで。 だから八神ファミリー全員でいけるやろ」

 

「ま~た大所帯になるんか。 飯の時間が大変そうだな。 主に作る側が」

 

「手伝ってあげようか?」

 

「まさか。 客人は客人らしく遊んどけ。 女同士、積る話もあるだろうからさ。 期待には応えてやるさ」

 

 ロヴィータあたりにはキャットフードでもあげよう。 いや、あいつウサギ好きだし、ニンジン1本あげとこう。 『お前、これで野菜オ○ニーしてみろよ』とか言った

らしてくれるかもしれないし。

 

「まあ、なのは達も予定はないだろうから土日はお泊りということで」

 

「そうやね。 あ~、楽しみやなー!」

 

 早くも泊まりのスケジュールを立てるはやてであった。

 

 

           ☆

 

 

「それじゃ、ちょっとネックレス取ってくるからまっててくれ」

 

「はいよー」

 

 はやてをエスカレーター付近に残し、俺は先ほどプレゼントを注文した店に足早に駆ける。

 

「すいません、先程注文をお願いしたものなんですけど……」

 

「あ、注文の品できてますよ! すぐにもってきますね」

 

 若い姉ちゃん店員が元気な声で奥に引っ込む。

 

 少し手持ち無沙汰になり、レジの横に目をやる。 ──そこには俺が注文したものよりも少しだけ小さいサイズではあるがネックレスがあった。

 

 その中の一つに目をやる。

 

 目をやって、そのまま手に取る。

 

 そのとき、奥へと引っ込んでいた姉ちゃんが注文品をもってきて清算を開始したので、

 

「あ、すいません。 これも一緒にいいですか?」

 

「いいですよー。 それじゃ、これも合わせまして合計で10万2千円になります」

 

「たりないねぇ……。 すいません、ちょっとまけてくれませんか?」

 

 そういうと、姉ちゃんは困ったような顔で首を横に振った。

 

「こちらも商売なので、それはちょっと……」

 

「そこをなんとか頼みます! 地球の花を模したアクセサリーが売ってるのなんてここらへんだけなんですよ! ここじゃないと手に入らないっていうか」

 

「ええ、確かにそれがお店の自慢ですし……。 でも、お店としては──」

 

 渋る姉ちゃん。 しょうがない──使いたくはないが

 

 俺は姉ちゃんに耳打ちする。 姉ちゃんは顔を赤くしながら頷き、本当にこっそりと2千円の文字を消してくれた。

 

「いまの約束、守ってくださいよ?」

 

「当たり前ですよ。 ここに俺の電話番号を記しておきますね」

 

 サラサラと白い紙に携帯番号を書く。 もちろん、おっさんの携帯番号だ。 おっさん便利すぎ。

 

 手を振って別れ、急いではやての所に戻る。

 

「おまたせ! それじゃ、帰るか」

 

 手を差し出すが、はやてはその手を掴まず、スネを無言でコツコツとガツガツと蹴ってきた。

 

「いたッ!? え、ちょっ え!?」

 

「…………ばーか」

 

 はやてはそれだけ言って、俺を残してさっさと帰って行った。

 

 

           ☆

 

 

 その夜、シャマル先生に電話したところ、はやては俺との電話に出たくないといっているらしい。 どうやら俺は嫌われたらしい。

 

「あのー……俺ってなにかしたんですかね?」

 

『う~ん。 なにかしたからはやてちゃんは怒ってるんじゃないですか?』

 

「でも、覚えがないんですけど……」

 

『だからはやてちゃんに乙女心がわからないと言われてるんですよ。 屑男』

 

 心なしかシャマル先生の言葉に棘を感じる。 なんか心が痛くなってきた。

 

「えーっと……俺、はやてに渡したい物があるんですけど」

 

『ふむふむ。 あ、はやてちゃんからの伝言です。 “トラックに轢かれて転生でもしてろ、バカ”とのことです』

 

「転生者になるつもりはないんですけど」

 

 

『まあ、そういうことですから今日はもうこないでください』

 

 ガチャリと切られる電話。 ……シャマル先生、かなり怒ってたよな。

 

 溜息を吐きながら、手のひらにもっていたものをポケットにいれる。

 

『ただいまー!』

 

 丁度いいタイミングで我が家の姫君たちが帰ってくる。 玄関までお出迎えする俺。

「おかえりー。 どうだった?」

 

「すんごくたのしかったよ!! スカさんがなまクリームをぜんしんにぬりぬりしてあそんでたの!」

 

「スカさんブレねえな」

 

 ウーノさんがストレスで倒れないといいけど。

 

「俊くんは今日なにしてたの?」

 

「ん~っと、デパートにいってきた」

 

「ふ~ん。 アニメ○トは行かなかったんだ」

 

「今回はね」

 

 カリムさんと行く予定だし。

 

「それで二人はどうだった? ケーキ作り」

 

 そう聞く俺に二人はとってもにこやかな笑みで、女の子のようにはしゃぎながら

 

「「たのしかったよ!!」」

 

 そう答えた。 二人がこんなに嬉しそうにしていると、俺まで笑顔になってくる。

 

 三人の話を聞きながら、リビングへ。 なんでもウーノさんには、どMの妹のほかにも沢山妹がいるらしく、とっても賑やかなものになったらしい。 う~ん、ちょっと会ってみたい。

 

 ふとソファーをみると、ヴィヴィオが半分夢の中へと旅立っていた。 夕食食べてないし起こしたほうがいいかな? でも寝顔もかわいいし……。

 

「あ、そうだ。 二人に渡すものがあったんだ」

 

 そう、今にも思い出したかのように言いながら、部屋に用意していたプレゼントを取ってくる。

 

「え~っとさ、二人とも」

 

「「どうしたの?」」

 

 改まる俺に二人も席を立つ。 そして向かう会う俺となのは&フェイト。

 

 うぅ……緊張する……。

 

「そ、その……これ!」

 

 背中に隠していたプレゼントを渡す。 赤い包み紙に可愛いピンクのリボンがなのは。 赤い包み紙に可愛い黄色がフェイト。

 

「へ? なにこれ?」

 

「ま、まあ開けてみろよ」

 

 二人は疑問符を浮かべながらも丁寧に剥がし──

 

「わぁ! これ、ネックレス!?」

 

「すごい……! これもしかして日本の花を模してるの!?」

 

「う、うん……。 デパートのお店で売ってあるんだ。 レジには花言葉辞典とかも置いてあって、それをみながら店員に注文できるんだよ」

 

「つけてもいい!?」

 

「お、おう」

 

 なのはとフェイトがつけ、くるくると一回転し、互いに褒める。

 

 と、こちらを二人して見つけ──

 

「に、似合う……?」

 

 ちょっと上目使いで聞いてきた。

 

「ぐはっ……!」

 

 萌え死んだ。 これは萌え死んだ。

 

「ちょっ!? いま吐血したよね!? 大丈夫なの!?」

 

「なのは、フェイト……かわいすぎ……」

 

 それを呟くのが精いっぱいだった。

 

 二人は一通りしゃいでから、

 

「──あれ? もしかして、これを買うためにコソコソとしてたの?」

 

 と、核心をついてきた。

 

 もういまさら隠す必要もないので頷く。

 

「まあ、はやてにバイト紹介してもらったり。 ミッドの人達の力を借りてバイトしたり」

 

「俊くんバイトしたの!? 迷惑かけなかった!? 挨拶できた!? 泣かなかった!?」

 

「お前は俺の母さんか!? そんなことあるわけないだろ!?」

 

「で、でも……社会不適合者の俊がバイトだなんて……」

 

 二人の俺に対する評価がわかった瞬間だった。

 

「でも……喜んでもらえてよかったよ」

 

 こんな笑顔が見れたんだ。 頑張ったかいがあった。

 

 アワアワと慌てながら、先方にどうやって謝ろうか相談している二人を強引にこっちに向けさせる。 ──勢いが大事だぞ! 俺!

 

 二人を見つめる俺。

 

 俺を見つめる二人。

 

 見つけていたら何を言おうとしたか忘れてしまった。

 

「「あの……どうしたの?」」

 

「いや……その……。 ごほんっ! ──俺と一緒にいてくれてありがとう。 二人を好きになってよかったです。 その──これからも、俺と一緒にいてくれますか?」

 

 俺の言葉にフェイトとなのはは顔を見合わせ、ふふっと笑った。

 

 

 するりと俺から離れるなのは。 フェイトはおもむろに俺の顔を覆う。

 

「あの……フェイトさん……?」

 

「黙ってて」

 

「はい……」

 

 なにがなにやらわからなかったが、言うとおりにする。

 

 ガサガサ、ゴソゴソと何かを漁る音と、台所に向かう足音。 そして、

 

「フェイトちゃん。 もういいよ」

 

「うん」

 

 フェイトの目隠しから解放された俺を待っていたのは──

 

「「あ~ん」」

 

 フォークにケーキを突き刺し、差し出すなのはとフェイトがいた。

 

「……へ?」

 

「もう! あ~ん、ってば! ほら、口あけて!」

 

「あ、うん」

 

 操り人形のように口を開けると、そこに二人がケーキを運ぶ。

 

 咀嚼する俺。

 

 ふんわりとした生クリームと柔らかいスポンジケーキ、甘酸っぱいイチゴが口の中に広がって──

 

「うまい……。 うまいよこれ!」

 

 思わず声を大にして叫んだ。

 

「「イエーイ!!」」

 

 ハイタッチする二人。 こんなにうまいケーキ作れたんだ!

 

「えへへ……。 そういえば、さっき俊くんが言っていた答えだけど──」

 

「あ、それはもう──」

 

「これが答えだよ、俊」

 

 言い終わる前に、両頬に柔らかいものが触れる。

 

「「私達以外に、キミを受け入れる所なんてあるとは思えないしね。 あってもまぁ……手におえないと思うけど」」

 

 そういって笑顔を魅せる二人に、俺の心臓が爆発した。

 

 

           ☆

 

 

 深夜11時。

 

 幸せ気分でそのまま寝たかったが、どうしてもいかなければならない場所があった。

 

「はぁ……気後れしてしまう」

 

 玄関を軽くノックする。 インターホンは使わない。

 

『ひょっとこなら首が飛ぶが……貴様は誰だ』

 

「残念でした、ひょっとこちゃんでした!」

 

 シュッ! ←玄関からいきなり伸びてくる剣

 

「あぶな!? いま完全に心臓狙いにきてただろ!?」

 

「主はやてからお前を家に入れるなと言われたのでな」

 

「うぐッ……!? そもそも、なんであいつは怒ってんだよ……」

 

「わからん。 ただまあ帰れ。 お前を切りたくて切りたくてしょうがないんだ」

 

「お前古代ベルカでは暴れん坊爆乳シグシグと言われてただろ」

 

「斬刑に処す──」

 

「ごめんなさい!?」

 

 シグシグが本気になってきたので、慌てて逃げる。 結局、はやてには会えずじまいか──。

 

「あれ? ひょっとこやん。 なにしてるん?」

 

 と、思っていたら家の前でバッタリあった。

 

「いや、お前こそなにしてんだ?」

 

「わたしは、夜の散歩や」

 

「はぁ!? はやて一人でか!? 危ないにもほどがあるだろ!? ここらはミッドの変人たちの巣窟なんだから、お前一人で夜歩きは危険だぞ」

 

「でもなぁ~……。 夜の散歩は気持ちええし」

 

「心配だから俺を呼べ。 いや、呼んでくれ。 呼んでください。 一緒に歩くから。 いっただろ? お前が呼ぶなら俺はすぐに駆けつけるって」

 

「……まぁ、考えとくわ。 ……歩くときは携帯に電話いれるから」

 

 はやての言葉に大きく頷く。 実際は変人は多いけど、皆紳士で安全なんだけどな。 俺より危険人物はいないのかもしれない。

 

 はやては伸びをして、大きく息を吸い込んだ後、俺に話しかけてきた。

 

「それで? なんのようなん?」

 

「いや……これを渡そうと思ってな」

 

 ポケットにいれていたものをはやてに渡す。

 

「……え? これ、わたしに?」

 

「まあな。 そのー、──ずっと俺のこと助けてくれてありがとう。 はやてがいなかったら、俺はダメだったと思う。 はやてに会えて──ほんとうによかったよ」

 

 作り笑顔じゃない、飾らない笑顔じゃない、素直な笑顔ではやてに言った。

 

 はやては周囲をキョロキョロと見回したあと──

 

「そ、そうなんか……。 ま、まぁ頑張ったのはアンタやからな! お疲れ様! あ、それじゃお風呂入らんといけんし、もう帰るで!」

 

 と、マシンガンよろしく早口で家の中へとはいっていった。

 

「あいつ……早口言葉はやそうだな……」

 

 幼馴染に新たな発見を見出しながら、俺は帰るのであった。

 

 

           ☆

 

 

「いやー、久しぶりのお泊り会やけど、こう話しているとやっぱ濃い生活を送ってるやな~、って実感するで」

 

「うん、濃すぎる毎日だよね。 ずっと喋りっぱなしだったから飲み物ほしいかも」

 

「あ、私も」

 

 今日ははやてちゃんたちがお泊り会にきた。 夕食を食べて、お風呂にはいって、パジャマに着替えて、女の子特有のパジャマパーティーと洒落込んだのはいいけど、六課設立から一昨日までのことを皆で振り返ったのが悪かった。 濃すぎて濃すぎて……。

 

 コンコンとノックする音、私が返事すると彼が飲み物をもってはいってきた。

 

「おまえらもう月曜日に変わったぞ? 仕事は?」

 

「中止!!」

 

『さんせーい!!』

 

「いやはやてちゃん仕事はちゃんとしようよ!? なんでみんなして賛成してるの!?」

 

 堂々と中止と言い切るはやてちゃんはある意味すごい。

 

「あ、フェイト。 エリオとキャロは客室に寝かせたけど、それでいい? ザッフィーついてるし大丈夫だと思うけど」

 

「うん、ありがとう」

 

 彼とフェイトちゃんが話してる間に、皆はグラスを取り、飲み物を飲む。

 

「おっ、なかなかいけるやん」

 

「だろ? 色々なフルーツミキサーにかけて、フレッシュジュースにしてみた」

 

「おいひょっとこ。 あたしのだけ何か白い液体が浮いてるんだが」

 

「俺の精液──もとい、コンデンスミルクをいれておいた、冗談ですから!? 冗談ですからスイングはやめてください!?」

 

「ったく、責任もってお前のと代えろ」

 

「へいへい。 うっさいババアだ……」

 

「久々に切れちまったよ……。 ちょっとついてこい……」

 

 ヴィータちゃんが、彼の首根っこを掴んで引きずる。 抵抗する彼だけど、シグナムさんが華麗にミゾをヒジ打ち動きを止める。

 

 ……相変わらず、ヴォルケンの皆は彼に容赦ないなぁ……。

 

 ドナドナよろしく白目むきながら連行される彼。

 

「ねえ、俊くん。 ちょっと聞きたかったんだけどさ。 俊くんがくれた、ネックレスの花ってなんなの? その言葉は?」

 

 ずっと聞きたかったこの質問。 土日とも、彼は忙しそうに動き回っていたので聞くタイミングが見当たらなかったのだ。

 

 ドアに頭をぶつけながらも、強引にヴィータちゃんによって外へと連行されそうになる彼だが、律儀に答えてくれた。

 

「あーっと、あんまり恥ずかしいから花言葉は言わない。 なのははサルトリイバラ、フェイトは(クズ)、はやてはコマツナギ。 あとは個人で調べること!」

 

「おい、ゴミクズ。 誰が喋っていいと許可したんだ?」

 

「ええ!? いつの間にか俺の人権がなくなってるんだけど!?」

 

「お前そもそも人間だっけ?」

 

「……生物の観点からみると、人間だと思う」

 

 そんな二人のやり取りを聞きながら、携帯で何気なく調べる。 そして出てきた花言葉に思わず顔がほころんだ。

 

 まったく……恥ずかしいってば。

 

「あ! 俺も考えたんだけどさ、これまでの俺たちの生活をちょっとフィクション混ぜながら本を書いてみようぜ!」

 

 まーた、バカなこといいだした。

 

「それで、タイトルは?」

 

「“俺の愛玩ペット”とか」

 

『ボツ』

 

 私達の生活もそうだけど、そのタイトルがミッドに出回るとか恐ろしすぎる。

 

 これから本格的に夏になりだすけど──ずっと皆でいられますように。

 

 おやすみなさい


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