パンツ脱いだら通報された   作:烈火1919

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51.ヴィヴィオ! ヴィヴィオ! アプラック!

 スマブラバトルでヴィヴィオをフルボッコにし、俺がフェイトにビンタされてから一時間。 俺たち──俺とフェイトとなのはとヴィヴィオは四人仲良く、バイト中にお世話になったペットショップ、つまりは猫井さんの所にお邪魔しているのだった。

 

 どうでもいいことではあるが、一応言っておくとネコもどきも看板ネコとして存在している。 なお、なのはもフェイトもネコもどきを無意識にスルーした。 俺は意識してスルーした。

 

 現在はヴィヴィオが選んでいるのを、俺たち三人が後ろでみている形になっているのだが──

 

「このネコが可愛いくない?」

 

「いや、どう考えてもこっちのイグアナのほうが」

 

「この犬、アルフみたいでかわいい」

 

 それぞれがそれぞれ、好きなようにペットにする動物の名前を上げながら遠目で物色しているのだった。

 

 なのはは当たり前のようにネコに目がいき、俺は王の中の王のような振る舞いをカゴの中で見せているイグアナに目を奪われ、フェイトは自分のパートナーであるアルフに似た犬をずっとみていた。

 

「いや、キミのイグアナは論外でしょ」

 

「でもカッコイイぞ、あのイグアナ」

 

「えー、なんかシグナムさんみたいだよ」

 

 どうやら、なのはの中ではシグシグはイグアナらしい。 案外こいつも友達に対しての評価は厳しいものがあるかもしれない。

 

「そういえば知ってる? イグアナって自分のお尻が大好きらしいぜ。 つまり、なのは理論でいくとシグシグは自分の尻が大好きな変態になるぞ」

 

「……ごめん、さっきの話なしでお願い」

 

 なのはが青ざめた顔でそう言ってくる。 そりゃ、そうだよな。 あのシグシグが自分の尻の臭いが嗅ぎながら、『おほほほほほほほほっ! んぎもぢいいいいいいいいいい!!』とか言ってたら俺でも引くわ。

 

 いや、俺ならどさくさに紛れて突くかな。 引いたうえで突く。

 

「まあ、冗談なんだけどな。 だからメールで謝ろうとするなって」

 

「ま、また騙されたの!?」

 

 驚愕した顔でこちらをみるなのは。 可愛すぎるぜ……!

 

「くそっ……。 またしても……。 今度はわたしが、ギャフンと言わせてやるもん……!」

 

 拳を握りしめて、何かを誓うなのは。

 

 そしてなにやら考え事をしはじめた。 暇になったからフェイトと遊ぶことに。

 

 やはりペットショップときたら話題はもちろんアルフのことだよな。 こう……それとなくアルフの話題をだしてちょっとしたカップルみたいな感じでいこう。

 

 お前らみておけ! これがイケメンの行動だ!

 

「そういえばフェイト。 アルフってペットショップに売らないの?」

 

「もう近づいてこないで」

 

「まって! 選択肢ミスった! クイックセーブしたところからやり直させて!?」

 

 間違って選択肢の一番上を選んでしまった! 違う! ちょっとまっておけ! もう一度イケメンの行動をみせてやる!

 

「そういえばフェイト。 俺、ずっと前からフェイトの首に犬の首輪をつけて調教したいと思ってたんだ」

 

「本格的に近づいてこないで!? なにこの幼馴染、こんな人と一緒に暮らしてたの!? いますぐ追い出したいんだけど!? というかいますぐ出て行って!」

 

「まって口が滑っただけだから!? ワンモア! ワンモア!」

 

 いかん、さっきの失敗で動転してしまった……!? 今度こそ、今度こそ、イケメンの行動をみせてやる!

 

「あのさ、フェイト。 俺、ずっと前からフェイトに調教されたかったんだ。 そしてフェイトの犬として一生を過ごしたかったんだ」

 

「なにこのカミングアウト!? 嬉しくもなんともないよ!? むしろ気持ち悪い! というか、そんなこと考えてたの!? アルフの単語とか途中から消えてるし!」

 

「調教されたいのはほんとかな。 あとさ、アルフって誰だっけ?」

 

「いま最高に最低な人間として輝いてるよ!」

 

 フェイトが自分の持っているバックで俺を軽くたたいてくる。 それこそ、例えるならばラブラブカップルのように。 だから俺もラブラブカップルの彼氏としてそれ

相応の態度をみせることにした。 ちょっとだけ恥ずかしいけど、でもフェイトとのイチャイチャをみんなに見せてやるのもいいかもしれない。

 

「おほほほほほほほほほほっ! んぎもぢいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

 フェイトがペットショップから逃げ出した。 真・ソニックでもないのに光の速さで逃げ出した。

 

 困ったもんだぜ、俺の彼女は。

 

「おいおいハニー。 もとい、俺の嫁よ。 いったいぜんたいどうして逃げ出すんだい? 俺たちラブラブだろ?」

 

「ラブラブでもないし、付き合ってもいないでしょ! それにいきなりあんな奇声上げられたら誰だって逃げるよ!? 初めてだよ! 本気で俊とかかわりたくないと思ったのは!」

 

「あ、すいませ~ん。 ちょっと嫁とイチャイチャしてまして。 はい、あ、僕たち19歳なんです~。 はい、もう10年も付き合っていて~」

 

「なんで通りすがりのおばちゃんに私のこと紹介してるの!? いやいやいやいやいや、なんでみなさんこっち向いて『おめでとうね』みたいな目で拍手してるんですか!? ほんと私たち何もないですから!」

 

「とか言いながら、顔を赤くしてるでしょ? あれは照れてるサインなんですよ」

 

「頭に血がのぼってるサインだよ!」

 

 バリアジャケットのときのようにツインテ状態のフェイトが、フンガーって感じで地団駄を踏みながら怒る。 ……やばい、本気で調教されたい。

 

 しかしながら、いま俺とフェイトがいる場所はペットショップから少し離れた場所である。 というかフェイトさん、あの一瞬の間にここまで移動してきたのかよ。 とんだ化け物だぜ。

 

「さてフェイト。 俺たちの娘が心配だから、そろそろペットショップに行こうか」

 

「……まあ、確かにヴィヴィオは心配だしね。 でも、俊はパパって呼ばれてないからね?」

 

「それはマジで不安なんだよな。 このまま俺は『お兄さん』が定着しそうでさ。 なのはとフェイトと結婚したときどうしよっかな~、と思って」

 

「なんでキミの未来予想図では私達と結婚してるの……」

 

「愛してるから」

 

「ありがと」

 

 そのままフェイトとてくてく歩く。 もうすぐがペットショップなので、ペットショップに入る前にフェイトに言っておくことにしよう。

 

「フェイト、やっぱりフェイトはツインテがかわいいよ」

 

「……ありがと。 俊はツインテールとか好き?」

 

「大好き。 とくに、なのはとフェイトのツインテとか最高」

 

「それじゃ……日常でもたまにしようかな。 あ、あくまでたまにだからね?」

 

 何故かほっぺたを指で突かれながらであったが、自然に俺の頬を緩んでしまった。 だって、日常でも、たまにでも、フェイトのツインテが見られるとか──最高に幸せだ。

 

 

           ☆

 

 

 俺視点でのフェイトとのイチャイチャタイムを終えて二人揃ってペットショップに戻ってきたわけだが──

 

「この鳥さん……可愛すぎる……!」

 

 なのはがインコを見ながらわなわなと震えていた。 それをみて、俺の股間はムズムズと膨らんできた。

 

 落ち着け! 俺のエクスカリバー! お前はまだ本気を出しちゃいけないはずだ!

 

「…………」

 

「あの……フェイトさん? どうしたんですか?」

 

「べつに、なにも、なんでもない」

 

「いや、いま俺のほうをジト目で見ていたような……」

 

「自意識過剰だよ、俊」

 

 なんだかフェイトちゃんが冷たいです。 さっきまでラブラブカップルだったのに、とても冷たいです。 一体全体、何が起こったんだ?

 

「フェイトたん、フェイトたん。 大好きだよ」

 

「知ってるよ、ありがとう。 ところで、なのははいるけど、ヴィヴィオはどこにいるのかな? 私のほうからはペットショップが見えてたからお店を出たということはないはずだけど……」

 

 キョロキョロと店を見回すフェイト。 確かに、考えてみるとヴィヴィオがさっきから見当たらない。 なのはに訊いてみることにしよう。

 

 後ろから抱きつきながら、なのはにヴィヴィオの居場所を尋ねることに。

 

「なーのーヴァ──!?」

 

「あ、俊くんだったの? やっぱりね、俊くんの気配がしたもん」

 

「ちょっとまって。 それってさ、俺と判ったうえで顔面に裏拳叩き込んだってこと?」

 

「愛情だから仕方ないよ」

 

「愛情なら仕方ないな」

 

 

 なのはと二人、うんうんと頷く。 ところで、この鼻血止まらないんだけど。

 

「なのは、ティッシュもってる?」

 

「あ、もってるよ~。 鼻に入れてあげる」

 

「サンキュ」

 

 丁度良い大きさにちぎって丸めて、鼻にいれてくれるなのは。 ラブラブだろ? これがいまさっき、裏拳を叩き込んだ側と叩きこまれた側なんだぜ?

 

 そんなこともおかまいなく、キョロキョロとなのはは店内を見回す。 フェイト同様、ヴィヴィオを探しているのだろう。

 

「……ほんとにいないね、ヴィヴィオ」

 

「店内にはいるはずなんだけど……」

 

「まあ、落ち着け二人とも」

 

 焦り始める二人を、どうどうとなだめる。

 

「俺にはわかる。 ヴィヴィオはちゃんと伏線を回収するためにネコか犬を持ってくるはずだ。 だから今頃、猫井さんと一緒に子犬か子猫を選んでいる最中だろうよ。 ほーら、噂をすれば」

 

 猫井さんと一緒に、奥のほうからヴィヴィオが現れた。 トコトコとドタバタと、子ども特有の笑顔で、伏線を回収するために、子犬か子猫を抱えてヴィヴィオが俺たちのところにやってくる。 そしてヴィヴィオはやってきた。 笑顔を浮かべながら、やってきた。

 

 ──アヒルと一緒にやってきた

 

「「「いや、流石にダメだろ」」」

 

 異口同音に声を揃える俺たち。

 

「どうしてー? かわいいよぉー?」

 

「いや、あのな、ヴィヴィオ? いくら俺が、犬や猫はなのフェイと被るからダメだといったからといってだな、だからといって本当にネコとイヌ以外を探さなくていいんだぞ? ただでさえ、イヌやネコと触れ合っている描写をちょこっと書いてるんだから、そこはイヌかネコにしとこうぜ」

 

「でもアヒルさん、かわいいよー?」

 

「いや、うん。 まぁ、確かにアヒルも可愛いけどさ。 なんというか……最終回直前に出てくるキャラみたいじゃん、こいつ。 これいきなり出てきちゃダメだって」

 

 誰が予想できてたよ、ヴィヴィオがアヒルを連れてくるなんて。

 

「そ、そうだよヴィヴィオ! ほら、この鳥さんとか可愛いよぉ~! こう……パタパターって感じがするよ!」

 

「なのはの頭はアババババって感じだけどな」

 

「どういう意味かな!? そのアババババってどういう意味かな!?」

 

「でもまぁ……もうちょっと考えようぜ? 今度は四人で考えよう」

 

「そうだね。 今度は私達も考えようか」

 

 ヴィヴィオのペットなので、できる限りヴィヴィオの意見を尊重したいのだが──アヒルはちょっとわかんない。 これはリアルにわかんない。 なのはとフェイトの顔が一瞬引き攣ったくらいだから、相当だったんだとは思うけど。

 

「でもでも、おにいさんはヴィヴィオがおせわできるならいいっていったもん! ヴィヴィオおせわできるもん!」

 

「いや、それは言ったけど……アヒルなんてできないだろ……」

 

 俺となのはが頑ななヴィヴィオの姿勢に困惑していると、遠くのほうでフェイトが猫井さんと話している姿が視界に入った。

 

『あの……どういった状況になったら、ヴィヴィオがアヒルを選ぶんでしょうか……?』

 

『それがねぇ。 ヴィヴィオちゃんも、最初はネコやイヌを飼おうと思ったらしいのよねぇ。 けど、あのアヒルをみた途端、急に“飼う”って聞かなくて……。 こっちも困惑してるのよぉ……』

 

『はぁ……』

 

 うん、二人の会話を聞いていてもサッパリわからん。

 

「ほら、ヴィヴィオ。 とりあえずアヒルは返そう? なのはママも一緒に選ぶから」

 

「いやー!」

 

「あんまりわがままだと、なのはママ怒っちゃうよ?」

 

「おにいさんたすけて!」

 

「え!? 俺がなのはの相手すんの!?」

 

 抱きつかれ、後ろに回ってしまうヴィヴィオ。 みると、アヒルはヴィヴィオが動いた分だけ自分も動き、常にヴィヴィオのそばにいようとする。

 

 ……あれ? こいつ、結構頭いいのかな?

 

「……俊くんは、どっちの味方かな?」

 

「おにいさんたすけて!」

 

 後ろには俺の服を掴んで離さないヴィヴィオが、前には俺をじっと見つめるなのはが。

 

 くそっ……! うらやましいイベントのはずなのに、膝の震えが止まらない……!?

 

「あ~……うん、こうしよう。 それじゃ、アヒルがなにか喋ったら飼うことにしようぜ。 もちろん、グワッ! とかの鳴き声じゃなくって、ちゃんとした言葉、いわゆる人語を喋ったらなら飼おう」

 

「うん、それならわたしもいいよ。 俊くんナイスアイディアだね」

 

 我ながら卑怯な手段だと思う。 いくら世界が広くても、人語を喋るアヒルなんているはずが──

 

「アプラック!」

 

「「…………え?」」

 

 こいついま、喋った……?

 

 みると、遠くにいるフェイトと猫井さんも驚愕の視線をこちらに向けている。

 

「ヴィヴィオ! ヴィヴィオ! アプラック!」

 

「わーい! アヒルさんヴィヴィオのなまえよんだよー!」

 

『……………………は?』

 

 思わず、四人とも口をだらしなく開ける。

 

 いやいや、だって、まさか──

 

「しゃ──」

 

『シャベッタァァァァァァァァァァ!!??』

 

 アヒルが喋るなんて、非日常すぎるだろ。

 


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