パンツ脱いだら通報された   作:烈火1919

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52.新しい家族が増えました!

「まさか……ペットとしてアヒルを飼うことになるなんて……」

 

「なんで俺の小遣いでアヒル飼うんだよ……。 犬やネコならいいけどさ、アヒルに小遣いが飛ぶと思うと……。 買いたい参考書や参考書ゲームだってあるのに、マンガやアニメだって買う予定だったのに……」

 

「今回はわたしが出してあげるよ……。 あと、お小遣いであまりエッチなもの買いすぎると、お小遣い自体を減らすからね?」

 

 なのはと二人、レジの前で会話する。 おいおい……エッチなものじゃねえよ、参考書と呼べ。

 

 後ろでは、フェイトがヴィヴィオとアヒルの相手をしている。

 

「みてみてー! アヒルさんバクてんするよー!」

 

「バクテン、スル!」

 

「……アヒルってバク転できたっけ?」

 

 フェイトの困惑した声が聞こえてくる。 いや、俺の記憶だとアヒルはバク転できないと思うよ。

 

「すいません、あのアヒルお会計を……」

 

「あ、べつに無料でいいわよ。 むしろ、貰ってくれてありがとうねぇ」

 

 バックからサイフを出しながら、レジ会計を済ませようとするなのはを、猫井さんの手が制止しながらそう言った。

 

「それって、どういう意味ですか?」

 

「言葉通りの意味よ、ひょっとこくん。 ここだけの話、あのアヒルは貰い手がなかなか現れなくてねぇ。 知ってる? 貰い手がいないと最終的には──処分するしかないのよね」

 

「「え? ……処分ですか?」」

 

「そ、処分。 まあ、私は処分なんてするつもりなかったから、貰い手がいないのであれば私が貰い手になろうと思ってたけども、ヴィヴィオちゃんなら大丈夫そうね」

 

 思わず、なのはと二人、ヴィヴィオたちのいる方向を振り向く。 アヒルに抱きつきながら笑顔でフェイトと楽しくお喋りしているヴィヴィオ。 ヴィヴィオに抱かれながらも、ちょっと周囲を警戒するように首を左右に動かすアヒル。 それはなんだか──姫を守る騎士を彷彿とさせていた。

 

「なんだかなぁ……。 なのは、もしかしたら好きな動物ランキング、アヒルが1位になる日もそう遠くないかもしれない」

 

「キミの浮気癖は動物にまで作用するんだね」

 

 そう言うなのはも、笑顔じゃないか。

 

 レジから離れてフェイトとヴィヴィオとアヒルと合流し、四人と一匹で店を出る。

 

 しかしながら、このアヒル、じつはちょっとだけ気になっていたりする。 こう……具体的にどこがどう気になるのかは言えないのだが……とにかく気になる。 なんか、こんな奴をどこかで見たような気がするんだよな。

 

 

           ☆

 

 

 家に帰るまでの間に、何人の通行人に見られただろうか。 ただでさえ目立つ俺たちに加え、今日はアヒルが凛としてヴィヴィオの横を歩いているのだから、そりゃ通行人もこちらに目を向けるものだ。 そして俺の顔をなにか得心のいったように歩いていくのも納得がいく。 みんなの言葉を代弁してやろう。

 

『ああ、またこいつか』

 

 たぶんこんなところだと思う。 いや、まじでみんなの俺を見る目がこんな感じだった。

 

 そして現在なのだが、俺たちはリビングでアヒルの名前を決めていた。

 

「第一回! ペットの名前を決めちゃいましょー大会―!」

 

『いえーーい!!』

 

「さあさあ始まりました。 ペットの名前を決めちゃいましょう大会。 本日は私、ひょっとこが司会進行役を務めさせていただきます。 そして隣には実況・解説のフェイト・T・ハラオウンさん。 やあやあ、フェイトさん。 本日はどうなると思いますか?」

 

「あの……家族四人しかいないのに、私と俊抜けてもいいの?」

 

「ベットいく?」

 

「行きません。 って、そうじゃなく、なのはとヴィヴィオの二人で考えることになるよ? って言いたいわけ」

 

「ふっふっふ、巨乳ちゃんはわかってないな。 俺がそんなヘマをするわけないだろ? ちゃんと手は打ってあるさ。 ──文明の利器を使わせてもらおうじゃないか。 ちなみに、愛するなのはちゃんは最初から戦力外さ」

 

「あぁ……そういえばチコリータに“ゴメス”ってニックネームつけたのはなのはだったね……」

 

 取り出したるは携帯電話。 まあ、携帯電話とかいいながら地球にもなんなく電話やメールができる超便利アイテムなんだけどな。

 

 そんな携帯電話を操作していく。 メール画面を開き一斉送信の画面に。

 

 そしてリストから相手を順々に選んでいく。

 

「え~っと、クロノとユーノは仕事だから抜かして」

 

「あれ? その二人抜かしていいの?」

 

「うん、今回は素早い返信が命だからな。 今回は二人とも除外にしよう」

 

 いまだにツインテ状態のフェイトが俺の携帯画面を覗き込む。

 

「へ~、俊って知り合いやっぱり多いね。 電話帳の整理も大変じゃない?」

 

「まあ、結構大変かな。 だけどまあ、連絡を取り合うやつなんてあんまりいないしな~」

 

「ふ~ん。 ──ところで、この女の子だれ?」

 

 フェイトが俺の携帯を指さしながら、カルピスを飲んでいるミニスカメイド服の女の子を指さす。 ……ごめん、それ俺なんだ。

 

「え~っと……俺……かな」

 

「は?」

 

「だから、女装した俺だよ」

 

「……そう……なんだ。 その……私は俊の趣味ならいいと思うよ。 うん。 できれば、普通に女の子を好きになってほしいけど……」

 

「いや、誤解だから!? べつに女装野郎として生きていこうなんて固い決意してないから! ちょっとした出来心でやっただけだから!?」

 

「でも……よく考えれば、たまに俊は女装してたもんね。 ごめんね……私気付けなくて……」

 

「涙をためながら俺の手を握らないで!? 罪悪感で死にたくなってくる!」

 

 フェイトが俺の手をとり、自分の胸に合わせようとしたとき、ちょうどよく携帯からメールを受信したアナウンスが聞こえてきた。

 

『メールが届いたお? はやくみようよー!』

 

「相変わらずの受信音だね」

 

「ミクちゃん可愛いじゃん」

 

 フェイトが手を離してきたので、携帯を取ることに。

 

「そういえば、皆にどんな内容のメール送ったの?」

 

「え~っとね。 『家でアヒルを飼うことになったので、名前つけようぜ!』って内容かな」

 

 ちなみに送った人物は、はやてにヴォルケン、おっさんに嬢ちゃんにスバルとエリオとキャロ。 カリムさんとマッパさんに高町家と怖いけどリンディさんにも出して

みた。 あと安定のスカさん。

 

 さてさて、まずは誰のメールかな?

 

「おっ! おっさんじゃねえか。 あいつ早いな。 もしかして暇だな。 え~っと、メールの中身は……」

 

『昨夜、交番にロケット花火が投げ入れられたんだが、お前じゃないよな?』

 

「しらねーよ!! このタイミングで関係ない話してくんな! ボケ!」

 

 まったく……俺なら交番にロケット花火なんてしねえよ。 お前の顔面にロケット花火ぶつけるに決まってんだろ。

 

「えっと……あの人も大変だね。 ロケット花火だなんて……」

 

「どうせ、遊んでたら暴発でもしたんじゃねえの? よくあることだよ。 あー、次々。 え~っと、カリムさんとマッパさんか」

 

 ふむ……あの二人ならいい名前を考えてくれそうだな。

 

 カリムさん 『いつになったらDVDを貸してくれるのでしょうか?』

 

 マッパさん 『この頃、私も卍解できるようになりました!』

 

「やべえよ……カリムさんにDVD貸すの忘れてた……。 近いうちに聖王教会行かないと……」

 

「いや、それよりも問題はマッパとかいう人だよね。 これ突っこんだほうがいいのかな?」

 

「まあ、お前らだって卍解まがいのことできるんだからいいじゃないか。 とりあえず俺のメール読む気がないということだけはわかった」

 

 この人たち絶対読んでない。 俺からメールきたから丁度報告でもしとくか、的なノリなんだと思う。

 

「あ、次は高町家だな。 まあ、高町家というか桃子さんなんだけど。 桃子さんなら俺のメール読んでるだろうしな。 現段階で、ペット以上に重要な話もないはずだし──」

 

 桃子さん 『なのはとフェイトちゃんとどこまでいったのかしら?』

 

「『もう3pとかしまくりで、淫らな性活を送っています』と。 送信──」

 

「させないよ!? そんなデタラメな返信絶対にさせないから!!」

 

「ちょっ!? 俺の携帯!」

 

 

 横でみていたフェイトが俺の携帯をぶんどる。 なんて奴だ。 人の携帯盗むなんて最低な奴だな!

 

「返せ! ミルタンク! この返信に俺の全てがかかってるんだよ!」

 

「私となのはの人生もかかってるよ!? 100%デタラメな返信内容送らないで!」

 

「ふっ……それはどうかな。 知ってるんだぜ? フェイトが夜な夜な、『んっ……あっ……ダメ……! ダメだよ俊……! なのはが隣にいるのに、そんな激しく突いたら……! イ、イっちゃう!』とかやってることも知ってるんだぜ? 一人でオナニーしてることも知ってるんだぜ?」

 

「あ? いまなんつった? 風穴開けられたいの?」

 

「すいません、調子にのりすぎました」

 

 フェイトがバルさん取り出して本気でキレたので素直に謝る。 フェイトさんガチで怖いっす。 もろ死神じゃないですか。

 

「まったく……とりあえず、桃子さんには私が返信するから」

 

「はーい」

 

 それから3分

 

「あの……まだ?」

 

「う、うるさい! ちょっと文面に不備がないかとか、ちゃんと言いたいことを正確に伝えることができているかを確認してるの!」

 

 それもう電話で話せばすむんじゃね? とか思ったけど、またバルさん取り出されたらたまったもんじゃないので口は出さないことに。

 

 どうでもいいことだけで、バルさんってゴキブリ駆除するあのジェットみたいだな。

 

 ということは、フェイトがゴキブリになんの? ちょうどツインテだし。

 

「だめだフェイト! お前はゴキブリになんかなっちゃいけない!!」

 

「意味わかんないこと言いながら抱きついてこないで!? あの会話からどうやったら私がゴキブリになるの!?」

 

「いや……でも……バルディッシュがバルさんなんだよ!」

 

「ごめん、日本語喋ってくれる?」

 

 フェイトが呆れた目で俺のほうをみていた。 うん、俺もかなり混乱してたと思う。

 

「ごめんなフェイト。 ちょっと混乱してたみたいだ」

 

「あ、うん。 直ってくれたならそれでいいけど……」

 

「俺──フェイトがゴキブリでも愛してるよ!!」

 

「直ってない!?」

 

 

           ☆

 

 

「メダパニから回復しました」

 

「お疲れさま」

 

「うす」

 

 フェイトのゴキブリ疑惑から回復した俺は、早速メールを見ることに。 それとなのはさん? アヒルは空を飛ばないので空を飛ばせようとしないでください。

 

「さて、アババババな、なのはちゃんはほっておいて、次のメールにいこうと思います。 え~っと、次はリンディさんですな」

 

「お義母さん、よく俊に返信してくれたね。 無視するかと思ってたのに」

 

「うん、それは俺も思った。 まあ、アレだよ。 リンディさんも、なんだかんだ言いつつ俺のことが大好きなんだよ。 じゃないと、返信なんてしないしさ」

 

「確かにね」

 

 フェイトと二人、顔を見合わせて笑いながらリンディさんの文面を読む

 

 リンディ『お黙りなさい、この鳥頭』

 

「「罵倒するために返信したの!?」」

 

 リンディさんブレなすぎる……! しかも自分の娘の結婚相手に向かって平然と鳥頭呼ばわりとは……! なんちゅーババアだ……!

 

「いや、べつにキミの結婚相手にはなってないけど」

 

「え!? それじゃ他に誰かいるの!?」

 

「それもいないけど。 ……まあ、候補くらいならいるかもしれないし、いないかもしれない」

 

「あやふやすぎる!? 認めん! うちのフェイトは嫁にはやらんぞ!」

 

「キミはいったい誰目線なの……。 あ、お義母さんから追加でメールがきてるよ?」

 

「あ? いいよ、もうしらねえよ。 リンディさんが攻略不可能なキャラだってことはわかったからいいよ。 もうあんなババアなんて必要な──」

 

 リンディ『いますぐ家こいや』

 

「……フェイト、謝ったら許してくれるかな……?」

 

「……こればっかりはなんとも言えないかも」

 

 それから恐る恐る電話をかけました。

 

 とっても怖くて、ずっとフェイトの手を握ってました、まる

 

 

           ☆

 

 

「よーし! トイレで軽く泣いてきたことだし、気を取り直してメールを読むぞー!」

 

「ヴィヴィオに心配されるくらいにはトイレで泣いてたね。 大丈夫?」

 

「うん、なんとか廃人にはならなかったよ」

 

 いやー……リンディさん洒落になんねえわ。 それとなのはさん? アヒルにお手をして、くちばしで突かれたからといってペキンダックにしようとしないでください。 ヴィヴィオが本気で泣きそうです。 もう、必死に止めてるヴィヴィオの姿だけでこちらは目頭が熱くなってきます。

 

「なのはー、なのはもこっちきてメール読もうぜー」

 

「ん? ちょっとまってー。 このアヒルを丸焼きにしたらいくよ~!」

 

「アヒルはペットとして飼うために家にやってきたんだよ! お前の非常食じゃないの!」

 

 なのはを羽交い絞めにして、強引に椅子に座らせる。

 

「だってだって! アヒルがわたしの手を突いたんだよ!?」

 

「まあ、そりゃいきなり握りこぶしを作りながら“キミなら空を飛べるよ!”なんてことをのたまいながら、飛ばせようとする奴は突かれて当然だと思うけど」

 

「でもでも! アヒルだって空を飛べるかもしれないじゃん! 頑張ればなんだってできるよ!」

 

「お前の根性論とアヒルが空を飛べないという不変の事実を一緒にするな!」

 

 というか、どうしてそこまでしてこいつはアヒルに空を飛ばせたいんだ?

 

「いまはアヒルの名前を募集してるとこなんだよ。 一応、なのはにも聞いておこうと思うけど……なにか名前ある?」

 

「ゴルメッチョ」

 

「却下に決まってんだろ。 なのメッチョが」

 

 どっからきた。 お前のゴルメッチョはどこからきたんだ。

 

「あ、俊。 メールがきてるよ? 新人たちからだ」

 

「ほんとだ。 え~っと」

 

 嬢ちゃん&スバル 『なのはさんをペットで欲しいのですが、ダメですか?』

 

 返信 『俺の性的な意味でペットだから無理です』

 

「削除っと」

 

「あぁぁああああああああああああああああ!? 俺の返信内容があああああああああああああああああ!? なにしてくれんだよ、なのはたん!」

 

「それわたしのセリフだよ! なんで事実無根の内容を平気で打つことができるの!?」

 

「いつか真実に変わるかもしれないからね。 それの予行練習として僕は何万回とこの内容を打ってきた。 もちろん、送る相手はいなかったけど(キリ)」

 

「(キリ) じゃないよ!? そんなことしてて虚しくないの!?」

 

「僕の虚しく乾いた心に、キミのぬくもりだけが潤いを与えてくれる」

 

「そういいながら抱きつくな!! 気持ち悪いにもほどがある!!?」

 

 抱きつく俺を引きはがし、突き飛ばすなのは。

 

「はっはっは、つれないなぁ、なのはたん。 僕はキミの性奴隷みたいなもんじゃないか」

 

「いや、それもそれで問題あるけどね」

 

 というか、キミは望んでそんなものになってどうするの?

 

 そう聞いてくるなのは。

 

「無論、二人とイチャイチャするためかな」

 

「手段を択ばないところがアレだよね……。 べつにそんなことしなくても、いくらでも方法はあると思うんだけどな~……」

 

 呆れたようなジト目でこちらをみてくるなのは。 すごく……ゾクゾクしていいです……!

 

「あ、それよりエリオとキャロのメールもみないと」

 

 嬢ちゃんとスバルのメールは、なのはに消されてしまったので仕方ない。 いつか口頭で説明するとしよう。

 

 右になのは、左にフェイトで、三人仲良くメールの文面を見る。

 

 エリオ&キャロ 『あの……いつかどこかおいしいお店にいきませんか?』

 

「「「この子たちの将来は安泰だな」」」

 

 三人仲良くハモリながら、頷く。

 

 内容の返信にはなってないけど、こう──なんか安心する。

 

 さっそく、近いうちに食べに行こうとの約束をすることに。

 

 するとちょうどいいタイミングでスカさんからもメールがきた。

 

 

 スカさん 『昨夜、一人花火をやっていたら間違ってロケット花火を交番に打ち込んでしまったのだが……どうすればよいかな?』

 

「いや謝ってこいよ!? なんでアンタはちょっと余裕ある態度なんだよ!? おっさんに殺されるぞ!?」

 

 とりあえず、すぐさまおっさんに謝るように指示する。 いまなら許してくれるかもしれないしな。 最悪、半殺しで済むはずだ。

 

「って、そういえばヴィヴィオは?」

 

「あ、ヴィヴィオならアヒルと一緒に寝てるよ?」

 

 なのはの声と指さした方向に目を向ければ、アヒルを枕にしたヴィヴィオがソファーの上でスヤスヤと眠っていた。

 

「あー……俺たちだけではしゃぎすぎたかな?」

 

「たぶんそうかも」

 

 ソファーに近づいて、しゃがみ込む。

 

 しゃがみ込んで、スヤスヤと眠る小さくて、可愛らしい女の子の髪を優しく撫でる。

 

「ごめんな、ヴィヴィオ。 退屈だったよな」

 

 そういいながら撫でる。

 

 振り向くと、なのはとフェイトも後ろにきていた。 二人ともしゃがみ込む。

 

「可愛いね、ヴィヴィオの寝顔」

 

「ほんとだね」

 

「子どもは宝で、ヴィヴィオは天使だからな」

 

「それじゃ、このアヒルは天使を守る守護騎士ってところかな?」

 

「かもしれないな」

 

 ほんと、ヴィヴィオにべったりだな。

 

「そういえば俊。 肝心なヴィヴィオに聞いてなかったね、アヒルの名前」

 

「ふむ、言われてみればそうだったな」

 

 まあ、聞こえてないと思うけど……一応、聞いておくべきかな?

 

「後日改めて聞くとして。 ヴィヴィオー、アヒルさんの名前は何がいいかな~?」

 

 って、何言ってるんだか。 これで答えれるわけないのにな。

 

 そう思っていると、ヴィヴィオの口がほんの小さく動いた。 それは、本当に小さい声で、ともすれば外の喧騒に掻き消えそうな──それほどの声量でか細い声だったが、確かに聞こえた。 小さな女の子が、呟いた名前が聞こえた。

 

 ガーくん

 

 そういったヴィヴィオは、アヒルを強く抱きしめた。 決して離さないように、決して手放さないように──強く強く抱きしめた。

 

「ガーくんか。 可愛い名前だね」

 

「うん。 なのはのゴルメッチョなんかよりよっぽど可愛いね」

 

「うぐッ……!」

 

 後ろの二人のやり取りを聞きながら──俺はあることに気が付いた。

 

「あぁ、そういうことか」

 

 なんで俺がこのアヒルを気になるのかがわかった。

 

「なんつーか……似た者同士だな、ガーくん」

 

 そっとガーくんの頭を撫でながら、似た者同士のこの動物に優しく語りかける。

 

 いらっしゃい──今日からお前は新しい家族だよ

 




アヒルは喋る生き物だと思ってた

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