パンツ脱いだら通報された   作:烈火1919

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80.夜の騒ぎ

 トントンと誰かに肩を叩かれた感覚を覚え、ゆっくりと瞼を開く。

 

「おはよ、俊くん。 ぐっすり眠ってたね!」

 

 そこには、大好きな幼馴染のなのはが笑顔で俺をみていた。 肩には手が乗っていることからして、どうやら起こしてくれたらしい。

 

「んっ……。 んー、おはよ。 あれ? そういえばはやては?」

 

「主はやてならベットでぐっすりと眠っているぞ」

 

 そういったのはヴォルケンのリーダーであるおっぱい魔人ことシグシグ。 パイ○リしたら気持ちいいんだろうなぁ……。 搾乳器とか使ったらどんなことが起きるんだろうか……。 母乳でてきたりして。

 

 ベットのほうをみる。 そこには、はやてがなんとも幸せそうな表情でぐっすりと眠っていた。 この様子だと、風邪の具合はもういいようだ。 ほっと一安心する。

 

「それでさ、俊くん。 ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」

 

 笑顔で俺の肩を掴むなのは。 ギシ……ギシ……と骨の軋むような音が聞こえてくる。

 

「はやてちゃんと──なにしてたのかな?」

 

 その瞬間──複数人の殺気が全身に襲い掛かってくる。

 

 小さい体躯に大人な精神を持ち合わせたロヴィータちゃんが、その体系に似合わないほどのデバイス、アイゼンを大きく振りかぶっていた。

 

 そして俺に声をかけてくれた搾乳器ことシグシグは、なんかレバ剣を研ぎ始めた。 こんな状況なのにシグシグの頭を心配してしまう。 おま、デバイスってそんなこ

とで切れ味よくなるのか?

 

「楽しかった……? 気持ちよかった……? はやてを膝に乗せて寝るのは?」

 

 後ろから聞こえてくる冷たい声。 俺はその声を以前にも聞いたことがある。 後のPT事件と呼ばれる事件の重要人物──フェイト・テスタロッサとはじめて会ったときの冷たい声だ。 抑揚もなく、まるで氷柱が胸に刺さるような──そんな声。

 

「ちょっ、な、なんのこといってんの!? お前らさっきから罪のない市民に手をあげたら──」

 

 どうなってもしらねえぞ!

 

 そう大声をあげようとした瞬間、なのはがレイジングハートを口に突っこんできた。

 

 そしてそのまま笑顔で喋る。

 

「ねぇ、俊くん? わたしいったよね? はやてちゃんに手を出したらただじゃおかないって。 それに、ヴィータちゃん達は俊くんなら大丈夫って信じてたのに、その信頼まで裏切っちゃったよね?」

 

「ひや……ひょの……ふぉっとひひゅが──」

 

「ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ──説明、してくれるよねぇ?」

 

『してくれるよねー?』

 

「──!?」

 

「だーいじょーぶ! 説明をお願いしてるだけだから!」

 

 笑顔を絶やさないなのは。 後ろからフェイトが冷たい声が追撃してくる。

 

「俊のことだから、何もできてないと思うけど──なんではやてがあんな状態で寝てたのか知りたいな。 はやては私達の大事な親友なんだから」

 

 だから──教えてくれるよね?

 

 二人の言っている言葉がまったくもって理解できなかった。 いったいこいつらはなにをいっているんだ? 何を怒っているんだ? はやての看病は了承してくれたじゃ

ねえか。

 

 良心の中の良心であるロヴィータをチラリと見る。

 

「いつでも首折ってやるから安心しろ」

 

 どう安心していいのかわからない。

 

 搾乳器のほうをみる。

 

「古代ベルカでは敵の生首を台座に設置して野晒しのしておくという風習があってだな……」

 

 嘘つくなお前。 それ俺専用にお前が考えた風習だろ。

 

 どうやら今回に限っていえば、ロヴィータも搾乳器も俺のことを敵と見なしているらしい。 俺が何をしたというんだ。

 

 極力、視界にいれないように努力していたなのはの顔を見る。

 

「どうしたの?」

 

 いまでさえ限界なレイハさんをもっと押し込もうとするなのは。

 

 俺の口は既に限界である。

 

 俺の目から水滴がたまり始めた頃に──部屋の扉が少し開き、そこから愛しの娘──ヴィヴィオが顔を覗かせた。

 

 そんなヴィヴィオの登場に、一同ヴィヴィオのほうを振り返る。

 

「ひぃっ!?」

 

「ヴィヴィオー、先にご飯食べててねー? ママ達はちょっとパパと危険な遊びをするから」

 

「う、うん……」

 

「ん゛―――っ!? ん゛――――っ!?」

 

「もう俊くん。 ヴィヴィオがきたからってそんなに興奮しないのっ! めっ!」

 

 教師が生徒を叱るように軽くデコピンをするなのは。

 

 ヴィヴィオはなのは達から何かを感じ取ったのか、恐る恐る、扉を閉めて行った。 去り際に小さく俺に向かってバイバイしてくれたのが印象的だ。 ……地上からバイバイなんてことにはならないよね……?

 

 ヴィヴィオが一階に降りる音が聞こえてくる。 それをみて俺の中の何かが語りかけてきた。

 

 (俊、ここはなのは達に断固抗議するべきだよ、俊は悪くないんだから!)

 

 これはまさか……俺の心の中に住む天使……!

 

 (おいおい、お前なにいってるんだよ。 こんな可愛い女の子、しかも大好きな幼馴染とこんな状況になってるんだぜ? もっと楽しむべきだろ?)

 

 (でたな悪魔! そうやってキミが俊を甘やかすから、俊はいまだに無職でゴミでクズで下種でもういっそ死んでいいんじゃないかな? とか思われちゃうんだよ!)

 

 キミは天使を装った堕天使だね?

 

 (おいおい俊。 忘れたのか? 天使なら目の前にいるだろ? 高町なのはがいるじゃないか)

 

 (やめるんだ! 高町なのはなんて一歩間違えたら部下をバインドで縛ったあげく魔力弾で攻撃しそうな女の子じゃないか!)

 

 俺の脳内天使、キミには金輪際会わないことにした。

 

 もう一度、なのはを見つめる。 なのはは変わらない笑顔で、

 

「永続的に痛いのと、永久的に痛いの、どっちがいい?」

 

 そうレイハさんを俺の口から取り出しながら聞いてくる。

 

 だからこそ俺は真剣に答える。 天使に懇願する。

 

「悶絶失禁コースでお願いします。 できれば言葉責めしながらバインドでチンコを縛って射精できないようにして、永遠に手コキとかしてくれませんか。 ロヴィータ

ちゃん辺りはつるつるマムコを俺の顔面に押し当てて顔面騎乗みたいな感じで──」

 

「タイム!!」

 

 なのはが唐突に叫ぶ。 そして四人とも俺の位置から遠い場所に移動する。

 

『おいどうすんだよ、脅すつもりがこっちが脅されてるぞ……。 あたしなんて名指しまでされたぞ……。 どうすんだよ、なのは。 お前の予想じゃあいつが泣いて謝る予定だったんだろ?』

 

『ちょっとまって、あの返答はわたしにも予想外だったから。 みて、この鳥肌。 闇の書なんかよりよっぽど怖いんだけど……』

 

『謝らせてからゆっくり洗脳するつもりだったのに……』

 

『リンディ・ハラオウンが何故あいつを警戒するのかがわかったな……』

 

 四人が俺のほうをチラチラとみながらこそこそと話す。 いったい何を話しているんだろうか。

 

 お前ら習わなかったの? こしょこしょ話は相手が傷つくからやめなさいって。

 

 グー

 

「そういえば……昼食いそびれたんだよな……」

 

 はやてといれたからいいけど。 どう考えても はやて>昼飯 だし。

 

 しかしそれでもやはり食欲というものは厄介で、そろそろ限界が近づいているような気がする。 なんだか若干体が重いような気もするし。

 

 もぞもぞ

 

「おっ、はやて。 おはよー」

 

「んー……。 あれ? 結婚式は……?」

 

「それ夢だと思うぞ?」

 

「まぁ、あと数か月したら正夢になるし……ええか」

 

 もぞもぞとベットの中で動きがあったので、そちらを振り向くとはやてがぽけ~とした顔で変なことをいっていた。 欠伸を一つして、背伸びをしながら立ち上がるはやて。

 

 ……それにしても、はやてに結婚を考えている相手がいるのか……? いや、べつにそれは自由だからいいんだけど……ちょっと胸のあたりがもやもやするような……。

 

「ん~~! よく寝た! せやけど、どうしてベットで寝てるんやろ?」

 

「いや、ベットで寝てるのが普通じゃないか? 俺が確認したときもベットで寝てたし」

 

「まぁ……安眠できるベットであることは確かなんやけど。 ところで俊。 アレ、なんなん?」

 

 はやてが指さすのは勿論、団子大家族のように固まって秘密の打ち合わせをするなのは達。

 

『こうしようよ。 俊くんの視界にわたし以外の人が見えないようにする魔法をかけるってことで──』

 

『なのは、それなんの解決にもなってないよ』

 

「さっきまでは怖かったんだけどなー。 いまはあいつらがめちゃくちゃ可愛く見える不思議」

 

 いや、マジでなのはに説明求められたときはチビるかと思ったよ。 俺なにも悪くないのにさ。 むしろ俺が説明してほしいのに。

 

 それから30分、痺れを切らした桃子さんが呼びに来る間、俺たち6人は──細かくいうならば俺とはやては四人の秘密会議を黙ってみていた。

 

『わかった。 責任をもってわたしの部屋で俊くんを──』

 

『なのは、だからそれ解決になってないって』

 

             ☆

 

 ──自室

 

 楽しい夕食の時間も終わり、風呂にも入り既に就寝にはいったこの時間。 きっとエリオとキャロ辺りはフェイトが寝静まるまでついているんだろうな~、なんて思ってしまうこの時間。 ヴィヴィオとガーくんは桃子さんと一緒に寝てるな~、なんてことを考えるこの時間。

 

「い、いいっ! ご、ご主人さまとペットは、す、スキンシップとかそういうのが大事なわけで、それをわたし達に当てはめると、ご主人様がなのはで俊くんがペットだから、こ、これは当然の行動だから! ほ、他に他意はないから! ちょっと膝の上に座りたいな~、とか全然思ってないから!」

 

 現在、俺の膝の上にはネコの絵が描かれているパジャマ姿のなのはが座っていた。

 

「あ、あ……うん。 えっと……」

 

「な、なにっ!?」

 

「その……、ちょっとだけ恥ずかしいかな~、なんて……」

 

 頬を掻きながら、わざと軽く笑ってなのはに言う。 実際、意地でも笑ってないとこの雰囲気に気が狂ってしまいそうだ。 というか──ドキドキの心拍音、なのはに聞こえないよね?

 

「ふ、ふ~ん……。 べ、べつにわたしは恥ずかしいなんて思ってないけどね?」

 

「けど、どうしてこの時間に?」

 

「そ、それは……スキンシップって二人でやるから意味があるんだし……夜じゃないと、邪魔とかされちゃうかもしれないし……。 それとも──俊くんはなのはと二人は……嫌?」

 

「それは絶対にありえない。 なのはさえいれば、なにもいらない」

 

 ……いや、流石にそれはもう無理かもしれない。 会ったばっかりならまだしも、俺にはもう大切なものが沢山できてしまったわけだし。

 

 けど──それでも、ちょっとだけ思う。

 

 なのはがいれば、それだけで十分なんじゃないかな。

 

 まぁ、あくまで思うだけなんだけどね。

 

「ほ、ほんとに……わたしがいれば、あとはいらない……?」

 

「……へ?」

 

「ちゃんと答えて。 わたしがいれば、あとはいらない?」

 

「まぁ……うん。 そうなってみないとなんともいえないけど」

 

 実際問題として、そんなことできないわけだし。

 

「そ、それじゃぁ……、いま魔法で俊くんの視界を弄って、わたし以外の人物を見えなくしたらどうする……?」

 

 なのはが俺の服のつまみながら試すように見てくる。

 

 これは、魔法が凄いのか、高町なのはという女の子が凄いのか……。

 

 それにしても……なのは以外の人が視界から消えるのか……。

 

 俺はそれを一度小さい頃に経験して体験してるんだけどなぁ、そういうことを。 化け物が視界に入るんじゃなくて、なのはしか見えなくなるんだろ?

 

 それならあの時に比べて天国だろ。 いや、天国なんてもんじゃねえよ。 そんなもんじゃ表せないほどの喜びだろ。

 

「えっと……せめて他の人と話せるようにはしてくれないかな? じゃないと色々と不便だし」

 

「……まぁ、それくらいならいいけど」

 

「んじゃ、いいよ」

 

「……え? いいの?」

 

「どうぞ。 好きなように弄ってくれ」

 

 両手をバンザイの形にして、なのはを見る。 一瞬だけ、目が点になるなのは。 そして少しだけ唇を動かした後──

 

「もう、冗談だよ、冗談。 そんなことするわけないでしょ?」

 

「あれ? そうなの?」

 

「そうだよ。 それに、そんなことしたら色々と今後の生活で支障が出そうだし」

 

「支障どころの騒ぎじゃないと思うよ。 まずヴィヴィオとフェイトに病院に連れて行かれる」

 

「まぁ、それもそれで面白そうだけどね」

 

 うふふふ、そう口元に手を置いて可愛らしく笑うなのは。

 

 経験してみたかったのでちょっとだけ──残念かも。

 

 そんなことを考えてしまうあたり、俺が異常者と呼ばれるのも的を射ていると思う。

 

 ごほんっ、なのははそう咳払いして俺に人差し指を突き付ける。

 

「そういえば、ここに来た目的を忘れるところだった。 今日きた目的は、俊くんとわたし。 つまり主従での決まり事を決めようと思ってきたんだ。 とりあえず、わたしと俊くんの約束その1、“私以外の女の子をみない” はい、復唱」

 

「無理ゲーにもほどがあります」

 

 首を傾げるなのは。 何故あなたはそこで首を傾げることができるんだ……?

 

「うーん、それじゃぁ──“わたし以外の女の子にちょっかいかけない” これは守れるよね?」

 

 黙ったまま首を縦に振る。

 

 ……ちょっかいって、どこまでがちょっかいなんだろうか……? というか、ちょっかいってなに?

 

「約束その2、“わたしのそばから離れないこと”」

 

「それは絶対に守れる! むしろ誓うことができる!」

 

 今度は力強く答えることができた。

 

 俺の返答を聞いて、嬉しそうにうんうんと頷くなのは。

 

「俊くん良い子良い子。 えーっと、約束その3、“できるだけ二人きりの時間を作ること”」

 

「むしろ俺が言いたい。 俺と二人っきりの時間をもっと作ってくれ」

 

「……作ろうとするといつも逃げ出す癖に……」

 

 なのはから弱パンチが胸に飛んでくる。

 

 けど、そうはいってもなのはにはティアとかいるし……無理だよな。

 

 考え込む俊の頬を、なのはが現実世界に戻そうと引っ張る。

 

「いひゃいですなのしゃさん」

 

 俊の顔を掴んでいた手を離し、そのまま膝の上で説教──ではなく愚痴をいいはじめる。

 

「考え事禁止。 そもそもわたしがこんな苦労してるのは俊くんの所為なんだからね? わたしだけのはずなのに、いつの間にか俊くんの周りには女の子ばっかりできて、俊くんも俊くんで何を勘違いしてるのか、調子に乗って、バカみたい──」

 

 それを黙って聞く俊。 なのはは俊の顔を自分のほうに引き寄せて言い放つ。

 

「俊くんには、わたしがいればいいの」

 

 有無を言わさない、極上の笑みを浮かべるなのは。 俊もまた、それにつられて首を縦に動かした。

 

 そしてそのまま、なのはが何かを言おうとした瞬間、ドアが盛大に大きな音をたてて開き、俊となのはの娘であるヴィヴィオと、そのペットであるガーくんが姿を現した。 後ろには困った顔の桃子がいる。

 

「ヴィヴィオちゃんが俊ちゃんとなのはと寝るって聞かなくて……。 ごめんなさいね、二人っきりの時間を……」

 

「パパー、なのはママー、いっしょにねよー!」

 

「ネヨー!」

 

 助走をつけて、なのはの背中に抱きつくヴィヴィオ。 ヴィヴィオにタックルされる形となったなのははバランスを崩し、そのまま俊を巻き込んでベットに倒れる。

 

「あれー? フェイトママはー?」

 

「ドコー?」

 

 そんなことお構いなしに、もう一人のママであるフェイトをガーくんと探すヴィヴィオ。

 

「あれー? なのはママ大丈夫?」

 

「ダイジョウブー?」

 

 フェイトがいないことを悟ったヴィヴィオは、今度は自分がタックルをかました相手、なのはを心配そうに呼びかける。

 

「な、なのは……?」

 

 巻き込まれなのはの下敷きとなった俊は、自分の首に腕を巻きつけて布団にキスをしている最中のなのはを呼ぶ。

 

「……起き上がれない」

 

「へ?」

 

「魔力切れで起き上がれないから……このまま寝よ?」

 

 耳元でそういってくるなのは。

 

 ヴィヴィオはそんななのはをみて、自分のパパである俊に抱きつく。

 

「ヴィヴィオもするー!」

 

「あっ、こらヴィヴィオ! だーめ!」

 

「いやー!」

 

 横から割り込んでくるヴィヴィオに、なのははすかさず注意するが、そんなことでは止まらないのがヴィヴィオである。 そのままなのはの位置を奪って抱きつく。 俊はそれに苦笑しながらも、ヴィヴィオを抱き返す。

 

「なによ……わたしのときは抱き返してくれなかったくせに……」

 

 そんな二人をみて、なのはは一人そう呟いた。

 

 コンコン

 

 なのはが呟くのと同時に、桃子が気をきかせて閉めていたドアがノックされる。 そして数秒してドアノブは回され自分の枕をもった八神はやてが部屋にはいってきた。

 

「俊―、一緒に寝ようやー。 って、なんや先客がいたんかいな。 ふーん……」

 

 既に部屋にいたなのはとヴィヴィオとガーくんを一瞥したはやてはそのまま自分の枕をもったまんま、俊の隣に寝転がる。 そしてそのまま寝息をたてながら夢の中へと旅立つ。

 

 一瞬の早業で、俊が何かをいう暇すら与えなかった。

 

 ふと、俊は自分の服に湿った感触を覚える。

 

「……さっきまで元気にはしゃいでたってのに……子どもってすげー」

 

 そうヴィヴィオをみて俊は一人呟く。 俊の目の前には、よだれを垂らしながらも、俊の服をしっかりと掴んで離さないヴィヴィオの姿があった。 そしてその横で待機するかのように眠るガーくん。 思わずそんなヴィヴィオの頭を撫でる俊。 その顔はとても優しそうであった。

 

「俊くんだって、小さい頃は一人で騒いで満足して寝てたじゃん。 あれとってもうるさかったよ?」

 

「うぅ……面目ない。 って、起き上がれないんじゃなかったの?」

 

「魔力回復した」

 

 魔法少女に不可能などありはしないのである。

 

 なのはは申し訳なさそうな顔をする俊をみながら、自身も隣に寝転がる。

 

 そして俊を見つめながら何かを言おうとした口を開いたそのとき

 

 コンコン

 

 そう二度目のノックが聞こえてきた。

 

 そして開かれるドアの前には、枕をもったエリオとキャロ、そしてフェイトが姿を現した。 フェイトは俊の状況をみて、それでも何事もなかったかのように話しかける。

 

「エリオとキャロが一緒に寝たいらしいんだけど……四人で一緒に寝ない?」

 

 フェイトの問いへの答えを待たずにエリオとキャロは俊に駆け、近い位置に枕を置く。 それをみたフェイトが少し困ったような顔をしながらも、自身の枕をもってベット内に侵入してくる。

 

 コンコン

 

「おいひょっとこ。 お前の所にはやてきてないか? 手出ししたらお前の局部粉砕してやるけど──」

 

 そういいながら部屋にやってきたのは、ロリの代表ヴィータであった。 そしてその後ろにはシャマルとシグナムとザフィーラ。 全員とも、いなくなった主を探して此処へ辿り着いたようだ。

 

 バン!

 

「なのはさーーーーん!! あなたの嫁のティアがやってきましたよーーー! 今日も私とスバルとなのはさんで3pしましょーーー!!」

 

「ぎゃあああああああああ!? なんかきた!? 面倒な部下が卑猥な物もってやってきた!?」

 

「あ、ちょっと租チンさんそこどいてください。 なのはさんの隣は私と決まって──」

 

「誰が租チンじゃてめえ!! お前の子宮ぶち抜くぞ!」

 

 ドアを壊しながらやってきたティアとスバルは、なのはの隣にいたひょっとこをどかす。 租チンといわれ切れるひょっとこ。 部屋は一気にカオスへと変貌していく。

 

「なのは……やっぱりそういう趣味が……」

 

「いや違うから!? 一度もそんなことになってないから! フェイトちゃん一緒に寝てるから知ってるよね!?」

 

「パパー、だっこー」

 

「んー、あんま暴れるとあかんでー俊。 ちゃんと枕にならんと」

 

「お前ら二人は呑気だなぁおい!?」

 

 ヴォルケンを巻き込みながら大枕投げ合戦へと部屋は変わり、騒ぎを聞きつけて下からやってきたアリサとすずかを交えながらひょっとこたちは夜を楽しんだ。

 

「あらあら……楽しそうねみんな」

 

 それを扉の向こう側でみていた桃子は、盗撮用に用意していたカメラが室内を一枚だけ撮る。

 

 笑い合いながら遊ぶ皆を撮るのであった。


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