パンツ脱いだら通報された   作:烈火1919

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09.高町なのはの憂鬱

 昼間のゲームを終えてフェイトと二人で出勤してきた高町なのははいつも通り自分の机で仕事をしていた。

 

「「なのはさん、これお願いします!」」

 

「は~い。 二人ともお疲れ様~」

 

 すると自分の部下であるスバルとティアナが二人揃って一冊のノートを持ってきた。 なのはが一番はじめに訓練のときに渡した感想を書くためのノートである。

 

 ふと隣をみるとフェイトのほうにもエリオとキャロが二人揃って提出しにいってるところであった。 もともとこの感想を企画したのには理由がある。 それは隊長陣からみた新人達の動きや様子と新人達が思っている動き方などを、このノートを通してみることによってちょっとした意見交換会の役割を果たせればと思って企画したのだ。

 

 少しでも早く新人たちとの距離が近くなればと思っていたのだが、どうやらそれはなのはの杞憂に終わった。

 

 それがなのはにとって嬉しいのかどうかは別問題だが。

 

 それはさておき、なのははふたり分のノートをめくる。 どんな小さなことでもしっかり答えてあげようと思いながら。

 

スバルノート

 

『私は小さくても大丈夫ですから気にしないでください!』

 

ティアナノート

 

『なのはさん、シグナムさんに胸で負けてますが大丈夫ですか?』

 

「余計なお世話だよっ!? なにこの嫌がらせ!?」

 

 小さなところに対する励ましと質問に叫び声を上げながらなのはは席を立つ。

 

「どうしたんだ、なのは? 隊長がそんなことじゃ新人に示しがつかないぞ?」

 

「あ、ヴィータちゃん! ちょっとこれみて! 新人に示すどころか盛大に心配されてるんですけどっ!?」

 

「どれ……。 ……大丈夫、なのはより小さい人もいるからさ。 ま、どんまい」

 

「ヴィータちゃんにだけは言われたくないんですけどッ!?」

 

 優しいほほ笑みでなのはの肩を叩くヴィータ。 ヴィータは成長することがない(ひょっとこ命名・ロヴィータ)ので永遠に10歳程度の体なのだが本人はそれをポジティブに受け取ることにしている。

 

 俗にいう諦めの境地に達しているのだ。

 

「そういえばはやてちゃんはどうしたの? 見かけないけど……」

 

 なのはは仕事場を見渡すが親友である八神はやての姿は確認することができない。 六課設立のときは、『みんなと一緒に仕事せなサボってしまう!』そう言ってここに机を置いたはずなのだが……。

 

「ああ、はやてならゲームしてるけど? なんでもボスが強くてなかなか勝てないみたいだな」

 

「いやいやいやッ! みんなとか関係なくサボってるじゃんっ!? なんで、ゲーム>仕事なのっ!?」

 

「違うぞなのは。 ゲーム>>>>[越えられない壁]>>>>仕事だろ。 はやての中では」

 

「なんのために六課を設立したのさっ!?」

 

 今更ながらまともな友人が少ないことに頭を抱えるなのは。

 

「もういや……なんで私だけこんな目に……」

 

「なのはさんが泣いてるっ!?」

 

「スバルっ! なのはさんの涙をビンに詰めて! 一滴もこぼすことは許させないわよ!」

 

「わかった!」

 

「それでなのはさん、どうしたんですか? なにか嫌なことでもあったんですか?」

 

「現在進行形で起きてるよっ!」

 

 ヴー! ヴー!

 

 そんなときなのはの携帯からバイブ音がする。 名前を確認すると彼の名が。 何事かと(いぶか)しむが、とりあえず電話に出ることに。

 

「はいもしもし?」

 

『おお、なのは。 唐突にバナナ・マンゴー・ランドを作ろうと思ったんだけど、どう思う?』

 

 携帯を床に叩きつける。

 

「うるさいよッ!!」

 

「お、落ち着いてなのはっ!? 深呼吸、深呼吸だよっ!」

 

 駆け寄ったフェイトに抱かれながら、なのははゆっくり深呼吸する。

 

「ふう……ありがとうフェイトちゃん。 フェイトちゃんだけだよ、なのはの味方でいてくれるのわ」

 

「そんな……味方なら此処にだって沢山──」

 

「スバル……なのはさんの泣き顔みてイキかけたわ」

 

「甘いね、私はイッたよ」

 

「どこにいるの? フェイトちゃん?」

 

「……ごめんね」

 

 なにかを悟ったように笑う彼女にフェイトはそう返すしかできなかった。

 

 

           ☆

 

 

 リンディ・ハラオウンは大型デパートの地下食料品売り場にきていた。 隣にはフェイトがお世話している彼がエスコートするかたちで手を取っている。

 

「それにしてもなのはちゃん怒ってたけど、大丈夫なのかしら?」

 

「はっはっは、大丈夫に決まってるじゃありませんか。 俺となのはの仲ですよ? 困難な事件に立ち向かった俺たちですよ?」

 

「ふふっ、よく覚えているわよ。 プレシア・テスタロッサにシャンパンファイトしたあげくアリシア・テスタロッサにまでかけてプレシアを本気で怒らせたのよね」

 

「あのときは死ぬかと思いましたね」

 

「いっそ死んでもよかったのよ?」

 

「え」

 

 フェイトやクロノが仕事で忙しくなってからというもの、彼はこうやってよく買い物に誘ってくる。 大半は食材の買い込みなのだが、たまに服や下着を見に行くことも。

 

 正直なところ、彼が下着売り場にいくと警備が最大級にまで上がるのでこちらとしては勘弁願いたいところなのだが。

 

「それより、クロノのほうはどうですか? 最近会ってないですけど」

 

「エイミィと絶好調よ」

 

「明日速達でBL本を送りつけてやる」

 

「まって、なんであなたが持っているのか問い詰めたいのだけど」

 

「それは聞かないお約束で」

 

 この子はまったく変わらないわよね。 初めて会ったときもいまでも、変わることはない。

 

 フェイトやなのはちゃん、はやてちゃんが変わる中でただ一人変わることなく過ごしてきた彼はある意味凄いのかもしれない。

 

「ちなみに今日の夕食はなにかしら?」

 

「そうですねー、フェイトが好きなドックフードにしようかと」

 

「人の腕とは簡単に千切れるものなのよね……」

 

「ごめんなさいリンディさんっ! 冗談ですから、冗談ですから腕を引き千切ろうとしないでくださいっ!?」

 

 やっぱり、彼に限ってそんなことはないか。


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