自由への戦火~The Liberation of World sea~   作:ずぅみん

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第10話 真の敵とは

 2101年1月5日、ゴールドマリン海軍基地戦艦ブルーエリア

 隕石落下から数日後、アルロスと千歳はあるものの分析をしていた。それは隕石を迎撃した空域の真下にあたる地域に、隕石片と一緒に降ってきたとされる機械の部品だ。アルロス曰わく、ガルーダ隊千歳機に搭載されたカメラに映っていた隕石にくっついて光っていたという。

「これが何を意味するか…分かるか?」

 アルロスは千歳に部品を差し出し、受け取った千歳は手渡された部品をいろんな角度から眺めて見た。隕石に固定する為と思われる爪がぶら下がり、本体の一部には燃え残った基盤とセンサーが付いている。

「地球軌道上の隕石を監視するマーカーとかですか?」

 答えながら千歳は部品をアルロスに渡した。

「惜しいな、マリネア連合州国海軍中央情報局が信号を実際に基盤に流して解析したところ、これはイギリスが開発した隕石軌道を操作する受信機だ。これが現在、国連の手によって地球軌道上にある隕石全てに設置されている」

「ふむ…。それじゃあその機械がくっついてる隕石が落ちてきても不思議ではないですね」

「問題は…その操作ルートだ」

「イギリスではない誰かが勝手に操作をしたと?」

 アルロスと千歳の会話を横で聞いていた砲雷長のミゼッタが割って入ってきた。その意見に千歳がすかさず反論した。

「そんな…イギリスもバカじゃないはずです!簡単に操作されないために二重三重のハッキング対策はしているはず!事実、世界トップクラスのハッカーでもハッキングされない程の堅さです!!…我がマリネア程ではないですが」

「実は千歳が迎撃に上がった際、隕石のコントロールをするイギリスの施設に何者かがハッキングした形跡があった」

 アルロスは千歳に液晶の海図台を見るよう促した。そこには千歳が隕石迎撃に向かった時刻からイギリスの施設に向けハッキング攻撃される様子が映っていた。

「この…ハッキングの発信源は!?」

「…洋上だ。GEWSの偵察衛星で見たところ戦艦を中心とした所属国の国旗を掲げていない艦隊がいた。おそらく海賊の仕業だろう」

 さっきのアルロスの説明に疑問を抱いた千歳が、GEWSの偵察衛星画面が映し出された海図台を見ながら聞き返した。

「え?海賊が戦艦を…所持?」

「そうよ。最近の大きな勢力を持つ海賊は過去の大戦で沈んだ艦艇を引き上げ、運用しているの。今回も旧型艦でしょうね」

「だったらブルーエリアで一発ですよ!」

「そうは考えない方がいい」

 ミゼッタの海賊知識に慢心の色を見せた千歳を、機関長アリアが制した。

「それは…何でです?」

「いくら旧型艦といえど、それは見た目だけだ。武器や機関の性能は世界各国が採用している戦艦と互角だ」

 聞き返した千歳にアルロスが答えた。現在の海賊は、100年前はそれこそ小型艦艇だったものの、海賊同士が衝突しあい大きな勢力を持つ海賊が現れた。その海賊が今度は海軍艦を襲撃し、海軍艦を確保。海賊は戦力を拡大し、防衛に務める小国の海軍は規模が縮小しているところもあるのだ。そこへさらにアルロスが付け足した。

「しかもマリネア連合州国海軍軍人が海賊側に数人流れてるという話だ」

「マリネアを裏切った…ってことですか?」

「そうだな。何が不満かは知らんが、一部の海賊がマリネアの技術を持ってる…。つまり、我が国の戦艦と渡り合うことも可能だ」

「うーん…」

 衝撃の事実に、千歳はただ唸るしかなかった。知らないうちに海賊がどんどん力を付けている。しかも、そのレベルが既にマリネアまで届いてるなんて…。今までマリネア連合州国海軍を最強と思っていた千歳はショックの色を隠せなかった。

 ひとまず隕石は海賊の仕業と分かった。あとは隕石迎撃中に狙われた敵性航空機だけだ。

「まぁ、とりあえず隕石の犯人はわかりました。後は国籍不明の敵性機です」

「あぁ、その部品についても中央情報局が解析した。そしたら欧州の機体にしか使われていない機構を発見した。あれは間違いなく欧州機だ」

「ってことは海賊によって落とされた隕石をマリネアが迎撃しようとしたら、欧州機が邪魔した…?」

「あぁ、そうなるな」

 ミゼッタの一連の流れをまとめた発言に、アルロスは肯定した。だが、なぜ敵同士の海賊と国家が手を結んだのか…。それは何か共通の利益があるに違いない。

 解決に行き詰まったアルロスはビデオ電話で連合州国海軍本部にいる新城姉さんに連絡を取り、今までに出た見解を説明し、海軍本部としての意見を求めた。

≪確かに…それぞれの証拠はそっちの見解通りね。一応現段階で私たちが考えてる推測を説明するわ≫

 すると画面の向こうでパソコンを操作し始め、何かをパソコン画面に表示させるとそれを要約し、アルロス達に伝え始めた。

≪そうね~…現状から説明するとまず我が国を、イギリス率いる欧州国家連合が防潮堤ごと包囲している…これは把握積みね≫

「そうだな、奴らには散々な目に合わされた」

 思い返せば千歳が海軍に入って間もない頃、海藍艦隊所属艦である戦艦シャンデローザを捜索するために防潮堤の外へ出るのを試みたが、稼働壁が開いた瞬間に既に包囲していた欧州国家連合艦隊から砲撃を受けた。しかしその時は千歳の力で無傷で済んだが…。

≪欧州国家連合とは既に交戦状態にあるわ。しかし防潮堤が邪魔で入れないのね。一部壊されたけどそこは我が連合州国海軍がすぐに埋めた為、航行は不可能。完全に行き詰ったイギリスに海賊が交渉を持ち出してきたの≫

「海賊が?なぜです」

≪海賊は自由に海を航行したい。が、マリネア連合州国が海洋治安維持国に任命されたために取締りを行っていて不自由。一方、イギリスをはじめとする国連はいきなり入ってきたのに生意気な意見しか言わないマリネア連合州国が気に食わないから消したい。けどマリネアが持つ軍事力が欲しい。そこでお互い初めて『マリネア連合州国を消す』という利益が共通したため、海賊が空からマリネアを弱らせ、海から欧州国家連合や国連が攻める…といったところかしら?≫

「国連議会では正論しか言ってないんだけどなぁ~」

 頭を掻きながらアルロスは困った顔をした。

「そんなことより、まずはどちらか一方を黙らせないと…」

「いきなり世界を相手にするのは難しい…となると、やっぱり海賊から潰すのが手っ取り早いか」

 海賊から潰す…その結論にたどり着き、アルロスが早速行動に移そうとした。

「新城姉さん、今回ハッキングを行った海賊はどの勢力か分かるか?」

≪反世界軍よ≫

 反世界軍…その単語を聞いた時、アルロスの顔から今までの威勢が消えた。あまりに聞き取れない単語に、千歳が聞き返した。

「反…世界軍…?」

≪えぇ、現在世界中のほとんどの海に勢力が及んでいる海賊の最大勢力よ。確認されている海賊戦艦も全て反世界軍の所属で、我が国の海軍軍人の流出先としても知られるわ≫

 画面の向こうで教えてくれた新城姉さんの説明に、アルロスがさらに付け足した。

「厄介なのは海賊最大勢力という理由だけではない。反世界軍は複雑な組織のように深く枝分かれしている。さらに奴らの中央拠点は艦隊で構成されており、見つけるのは困難だ…」

「最も確実なのは組織の端から辿っていく方法しかないか…」

「しかし…戦力がな~…」

 あらかた方針はまとまった。しかし海賊最大勢力の反世界軍と真正面から殴り合うとなると、戦力的に不安が残る。マリネア連合州国海軍艦艇全てで連合艦隊を編成しても、反世界軍の拠点を探し出すのに結局バラバラに行動することになるため、何も変わりはしない。

≪同盟国全てに応援を要請するわ、それであなた達も動きやすいでしょ?≫

「同盟国?」

≪えぇ。我が国に次いで世界第2位の海軍大国を誇る国…そして2代目海洋治安維持国になった国…日本よ≫

「おぉ、日本か!心強いな」

 いまいちピンとこない千歳とすぐに理解したアルロスの差があまりにも激しかったため、神城は千歳に説明した。

≪アジアの一番東にある国よ。太平洋戦争で敗北はしたものの、ユリシーズの厄災以降に大量発生した海賊対策で再軍備したの。今では当時世界一の海軍大国だったアメリカを抜いて、自分たちでしっかり自分の国を守っているわね≫

「でもそれだと…日本もこの戦争に巻き込むことになるな」

≪そこはちゃんと相手のことを配慮する。それじゃあ同盟国に要請してくるね≫

 そういって神城は通信を切った。そして通信画面から海図台に向き直ったアルロスが口を開いた。

「これから本格的な戦いになるな…各員、次の命令を待て」

「了解!」

 こうしてマリネアは本格的な反攻作戦への準備を始めた。敵は海賊最大の勢力を誇る反世界軍と、欧州国家連合含む国際連合だ。今までは1国VSマリネアしか戦争をしたことが無かったのだが、今回は大規模な勢力3つを一手に引き受けることになる。まさに前代未聞の戦いだ。その事実に軍関係者誰もが覚悟した。

 さっきまで作戦会議していた艦橋を後にし、艦内をやや早歩きで歩いていた。ある艦と会うためにブルーエリアを降りようと係留タラップへ向かっていたのだ。そして歩きながらぼそっと呟いた。

「いよいよマリネアの底力を見せるときだ!」

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