自由への戦火~The Liberation of World sea~   作:ずぅみん

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第18話 国内唯一の戦力

 2月19日 ソードライン防潮堤外、海藍艦隊消失海域

 日付が変わり、水平線の向こうが明るくなってきた頃にやっと大戦艦ロエルエリーザは海藍艦隊の反応が消えた海域に到着した。幸い周辺に敵艦は見当たらず、これから日も昇ってくるため探しやすくなるだろう。しかし、道中に珊瑚礁帯が横たわっていたため迂回するのに時間をかけすぎたのが悔やまれる。

 千歳はというと現場海域に着くや否や艦橋より上にある防空デッキから双眼鏡を構えて周辺海域をくまなく探していた。高いところから探せばその分捜索範囲が広くなるからだ。艦橋にいる千愛海とロエルもそれぞれ双眼鏡とレーダーを使って捜索していた。

 そんな中いち早く何かを見つけたのは千歳だった。すかさず艦橋へ連絡する。

「本艦1時の方向に艦船らしき浮遊物があります、確認を!」

《こちら艦橋、浮遊物確認しました。イージス艦リニアブルーのようです》

「了解しました。すぐに艦を近付けます!」

 操艦システムを駆使して千歳は艦を慎重にリニアブルーに近づけていった。すでに一部の甲板が海面と同じ高さになっていることから内部が相当浸水していると判断できる。艦自体は右舷へわずかに傾いてはいるが、時折大きなうねりを食らってもしっかり復元するのでちゃんと予備浮力は働いているようだ。

「これからリニアブルーへ乗り込みます」

 防空デッキから艦橋へ戻った千歳は2人に向かって言い放った。しかし2人の反応は予想通りだった。

「大半が浸水しています、許可できません」

「千愛海の言うとおりだ、危ないよ…」

「俺たちに与えられた任務は生存者の救助です。それに、できれば艦も持って帰りたい。艦を持ち帰るには排水ポンプを作動させなきゃなんないし、中にまだ生存者がいるかもしれないじゃないですか。どっちにしろ乗り込む必要があるんです」

「乗り込む必要性は分かったけど…なんで艦まで?そりゃ大出力のマーキュリーエンジンを搭載した私なら曳航できなくはないけど…」

「イージス艦リニアブルーは我が国で唯一のイージスシステムを搭載した巡洋艦です。他国の戦艦とも渡り合える火力とイージスシステムによる命中精度はこれから艦隊を組む上で必須になってきます」

「なるほどね…」

 これまでの千歳の力説にとうとう折れた千愛海は腕組みしながら渋々許可を出した。

「リニアブルーへの乗り込みを許可します」

「ありがとう!」

 千歳が艦橋の出口へ走り出そうとした時、千愛海が呼び止めたのでその場でぴたっと止まり振り返った。すると千愛海が何かを投げて千歳に渡してきた。受け取った物を見てみると黒く光る拳銃だった。しばらく千歳が理解できないまま拳銃を見つめていると千愛海が口を開いた。

「我が国の技術を盗もうと艦内に残ってる敵がいるかもしれないので…。キャプテン、お気をつけて。」

「あぁ」

 千愛海から受け取った拳銃を懐に忍ばせると艦橋を後にし、ロエルエリーザからリニアブルーに軽快に乗り移ると生存者捜索のため艦内へと入っていった。

 

 イージス艦リニアブルー電源室

 艦内の電源が落ちていたため千歳は懐中電灯で通路を照らしながら機関室の隣にある電源室へやってきた。ここで電源を入れれば艦全体の電灯が光って生存者を捜索しやすくなると共に排水ポンプも動かすことができる。ずらっと並んだブレーカーを1つずつ照らしていき、落ちている電源を片っ端から上げていく。すると艦内の電気設備が動き出し、排水ポンプも稼働可能な状態になった。

「これでよし…。ポンプのスイッチはダメコンだから…CICか?」

 排水ポンプを動かさなければ沈没の危機は回避できない。千歳は排水ポンプを動かすためにCICへ向かった。

 

 艦内通路

 CICに向かって傾いた通路を歩いている最中、突然背後から何者かに腕で首を絞められた。すぐに冷静になった千歳は自分の肘あたりに相手の腹部がある事に気付き、すかさず肘打ちをかました。相手が怯んだところですぐに距離を取り、臨戦態勢になった。

「お前…海賊か?」

 千歳の問いかけにニヤッと不気味な笑みを浮かべると体勢を低くしたまま再び千歳に襲いかかってきた。相手の頭上を飛び越えて避けた千歳は腰に下げた軍刀の柄を回してロックを解除し、相手に刀背打ちで反撃した。再び怯んだ相手に千歳が再度問いかける。

「この艦で何をしていた!技術を盗みに来たのか!!」

「あんたが知っても…意味はねぇ」

 今度は相手が拳銃を取り出し、千歳に向けて引き金を引いた。

「なんだ…持ってるなら最初からそうしろよ」

 余裕の笑みを浮かべた千歳は飛んでくる銃弾に目を凝らした。そして自分めがけて飛んでくる10mmショート弾を持っていた軍刀で全て切ってみせた。それを目の当たりにした海賊は驚愕した様子だった。

「1つお前に教えてやろう。人間がどんなことをしてもメンタルモデルにはムダだ」

 その言葉で躍起になった海賊は残っていた銃弾を全て千歳に向けて放った。しかし千歳は同じように銃弾を切り落とすと一気に距離を詰めて相手の頭部へ回し蹴りを食らわせた。派手に食らった相手は数メートル吹っ飛び、ぐったりとしていた。千歳はゆっくりと相手に歩み寄るとまだ手に持っていた拳銃を慣れた手つきでバラバラにして、また相手に尋ねた。

「お前の目的は何だ?」

「…喋るもんか」

 次の瞬間、千歳は持っていた軍刀で相手の太腿を思いっきり突き刺した。大きな叫び声が通路いっぱいに響き渡る。

「悪いがあんたに時間を割いてる暇は無いんだ。さっさと話せ」

「ぐぁ…わかった!わかったから!…目的はあんたの言う通り、技術を盗むことだ…!」

「どこの海賊組織所属だ?誰から命令された?」

「…ぐッ!」

「答えろ!!」

 千歳は先程突き刺した軍刀を今度は捻らせるように回した。再度彼の叫び声が通路に響く。

「…反世界軍所属…グランドマスターからだ!」

「グランドマスター?」

「あぁそうだ!うちらのリーダーだ!航空戦艦に乗ってる!!」

「まったく…手間かけさせんな」

 千歳は海賊からだいたいの情報を聞き出すと応急措置してから海賊の手首と通路側面に通っている配管を手錠で拘束すると再びCICに向かって歩き出した。

 

 CIC

 モニターがずらっと並んだ、どの時間帯に入ってもだいたい暗い空間に千歳はゆっくりと足を踏み入れた。床に散乱した書類や小物、ぶらさがりっぱなしの無線受話器などが被弾時の衝撃を物語っている。CICの奥へと進んでゆくと机の物陰から倒れてる人の足が見えた。発見した千歳はすぐに駆け寄った。

「おい!大丈夫か!?」

 近寄って具合を確認してみると、その人はなんとリニアブルー艦長の桜木だった。

「桜木さん?桜木さん!」

 千歳が何度も彼の名を読んでいると、呼び掛けに反応して桜木が目を覚ました。

「あぁ…よかった…」

「ありがとう千歳、助かったよ」

「いったい何があったんですか?」

「わからん…本艦の索敵圏外から迎撃可能数を大幅に上回る大量のミサイルが飛んできた。艦隊が消えるのもあっという間だった…」

「そんなことが…。ひとまず排水ポンプを稼働させます。念のためロエルエリーザに移りましょう」

「そうだな」

 千歳が排水ポンプを稼働させた後、桜木は千歳の肩を借りて歩き出し、リニアブルーからロエルエリーザへ移乗した。その他の生存者も全員移乗させると係留ロープを何往復もさせて簡単に切れないよう強度を確保してゆっくり加速しながら曳航していった。

 

 大戦艦ロエルエリーザ艦橋

「やっぱり重いか?」

「うーん…ちょっとねぇ…」

 思うように速度が上がらない様子を見た千歳はロエルと速度に関してやり取りをしていた。

「あまり速度上げなくて大丈夫だよ。あまり加速すると切れる恐れがある。この様子だとグランシャリオの回収は厳しいな」

「千歳、レーダーに反応があるぞ!」

 偶然レーダーを見ていた桜木が切羽詰まった様子で千歳に伝えた。報告を受けた千歳は急いで自分の席のレーダーで確認した。そこにはEnemyと表示された航空機の大編隊が表示されていた。

「まさか…海藍艦隊を襲った敵艦隊がまだ近くに!?」

「この状態じゃまともに戦えないですね…」

 静かに状況を見ていた副長の千愛海が呟いた。千歳ももし接敵したら…と考えてはいたが、GEWS(地球規模早期警戒システム)で近海を確認しても敵を発見できなかったためそこまで気に留めていなかった。 接敵まであと4分になるギリギリまで考えているとロエルが1つの答えを出した。

「リニアブルーを曳航したまま応戦するよ!…しかし、この雑魚どものために(ロエルエリーザ)の性能を晒す訳にもいかない。一瞬で終わらせる」

 そう言うロエルの瞳には確かな自信が宿っていた。

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