自由への戦火~The Liberation of World sea~   作:ずぅみん

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第4話 たった一人の生存者

 11月30日 ゴールドマリン海軍基地大戦艦ブルーエリア艦橋

 大戦艦ブルーエリアに到着したアルロスはすぐに指揮を取り始めた。

「緊急出航用意!侵入したイギリス艦の迎撃とスリザリー乗員の救助に向かうぞ!機関始動、抜錨、係留策を解け!」

「そういえば、今回沈められたイージス艦スリザリーって千歳が配属された艦のような気が…」

 ミゼッタがそれを言った瞬間、みんなが「そういえば!」と驚きを焦りの表情をした。アルロスもまた例外ではなかった。

「そう言えばそうだったな!急いで現場海域へ向かうぞ!残ってる艦種はわかるか?」

「いえ…たぶんそれを伝える瞬間に弾薬庫に誘爆して沈んだと思われます。鉢合わせしてみないと何とも言えません」

「そうか…総員、対艦戦闘を厳となせ!」

「了解!対艦戦闘を厳となせ!!」

「出港します。機関最大速力!」

 桟橋からゆっくりと離れた大戦艦ブルーエリアは、ウェイクの手により艦首を軍港出口へ回頭。最大速力で水平線の向こうのスリザリーが沈んだ海域へと向かった。

 

 数時間後

 波が全くない鏡のような海を、艦首から水しぶきを巻き上げながら進むブルーエリア。敵艦隊どころか、漁船すらもレーダーに映らない。

「アリア、なんか反応はあるか?」

 この艦の機関長でもあり、メンタルモデル(?)でもあるアリアにアルロスが話しかけたが、首を横に振って異常ないことを伝えた。

「…この方角であってるよな?GEWS使ってみるか」

 GEWS…それはマリネア連合州国海軍が開発した偵察衛星リンクシステムで『Global Early Warning System』の頭文字を取ったものである。使っている衛星は普通のGPS衛星なのだが、オマケ程度に高解像度の偵察カメラが付いているので偵察衛星にもなる。さらに地球全体を囲むように4機配置されているので、地球上ならどこでもリアルタイムで偵察が可能だ。しかもGEWSで得られた情報は艦船のレーダーにもリンク可能で、艦船からGEWSを使って目標地点への精密攻撃も出来るのだ。

 自らレーダーを操作し始めたアルロスはブルーエリアの位置に合わせ、そこからズームアウトしていった。すると、ブルーエリアの前方1時方向から北上する2隻を発見した。アルロスがミゼッタに伝える。

「砲雷長、本艦1時方向300km先に北上する2隻を見つけた」

「ちょうど今レーダーに映りました。本艦の索敵範囲ギリギリだったんですね。戦艦1、重巡1、30ノットで北上中です」

「よし、大口径単装砲を久々に使ってみよう。1隻1発で決めろよ」

「りょーかいです!」

 そういうとミゼッタは自分の席のパネルを操作し、大口径単装砲にデータ入力していった。すると艦中央の煙突の後ろにある、天文台に置いてそうな大きさのスナイパーライフルがモーターを唸らせて旋回し、敵艦を捉える位置で停止した。あとは引き金を引くだけなのだが…。

「…艦長?砲撃の号令は…」

 ミゼッタが自分の席の引き金に手を掛けながら後ろを振り向いた。しかし、アルロスは大口径単装砲を見たまま動かない。

「艦長?」

「あ、いや…。今の位置だと衝撃波が艦橋を直撃するなーと思って…」

「なら艦の針路を変えましょうか。取舵15度、転進します」

アルロスの懸念に配慮したウェイクがブルーエリアの針路を左に15度変え、ミゼッタが転進した分の誤差を修正した。

「誤差修正完了、いつでも撃てます」

「大口径単装砲、第1射、撃て!」

「了解!第1射、撃てぇ!!」

 次の瞬間、ミゼッタの手で引き金が引かれ、直径100cmの砲弾が空気との摩擦と抵抗で真っ赤に熱せられ変形しながら飛んでいった。先端が鋭く変形した砲弾は敵戦艦の奥深くに突き刺さり爆発、敵戦艦は真っ二つに折れた。

「第1射命中、敵戦艦撃沈」

「次弾装填、急げ!」

「次弾装填、急げ!!」

 ミゼッタの操作により空の薬莢が砲身から排出され、次の新たな砲弾が装填される。しかし今度は敵重巡がミサイルを発射した。

「敵重巡トマホーク発射!距離280km!!」

「この野郎、大人しくしてりゃいいものを!主砲射撃用意、拡散弾装填!」

「主砲射撃用意!拡散弾装填よし!ターゲットロックオン完了、射撃用意よし!」

 ミゼッタはデータ入力完了後、大口径単装砲とは別の引き金を握り号令を待った。自分の席のレーダーで静かにタイミングを計っていたアルロスが怒鳴った。

「第1射、撃ち方始め!」

「第1射、撃ちぃ方始めぇ!!」

 号令が発せられ、素早く復唱したミゼッタが引き金を引き、三連装50cm砲が凄まじい爆発音と共に火を噴き、レーダーに砲弾を示す光点が新たに追加された。トマホークの直前にまで迫った拡散弾がレーダーから消滅、つられる様にトマホークも消滅した。それをレーダーで確認していたミゼッタが喜んだ。

「やったぁ!!」

「喜ぶのはまだ早いぞ、ミゼッタ。大口径単装砲、第2射撃て!」

「了解!第2射、撃てぇ!」

 放たれた100cmの砲弾に敵重巡は迎撃しようと必死になっていた。しかし変形しながら飛んでくる砲弾は一発も当たることなく命中。内部誘爆を起こして真っ二つに折れ、燃えながらゆっくり沈んでいった。

「敵重巡、完全に沈黙。当海域に敵影なし」

「よし、スリザリー沈没海域に急ぐぞ。ウェイク、全速前進だ」

「了解、機関最大出力、全速前進!スリザリー沈没海域へ向かいます」

 

 スリザリー沈没海域

 スリザリーの無数の残骸の一つに、ぐったりしながらもなんとかしがみつく千歳がいた。朦朧とする意識の中で、なんとか現状を把握しようとしていた。

「ここは…みんな、どこに…!助けは…」

そう呟いて水平線を見回したが、船のマストすら見えない。強いて言えば、微かに聞こえた砲撃音の後に立ち上った黒煙が見えただけだろうか。自分が何すべきか迷ってるうちにだんだんと意識が遠のき始めた。まずい、何かしなければ…。最後に出来たことと言えば、自分に近づいてきた戦艦らしき船に向かって手を伸ばしたくらいだった。精一杯の助けを求めた千歳はとうとう力尽きてしまった。

 

 ゴールドマリン海軍基地内病院

 最初に目に飛び込んできたのは真っ白でいかにも清潔感漂う病室の天井だった。周囲を見回すとアルロスが窓辺に立ち、外を見ていた。千歳が見ていると、それに気付いたアルロスが千歳に話しかけた。

「起きたか、体調はどうだ?」

「お陰様で…。他の乗員は…?」

 相部屋のはずなのに他のベッドが空っぽなのを気にした千歳が問いかけた。暗い顔をしながらもゆっくりとアルロスは答えた。

「我々が駆けつけた時、発見できたのは…千歳だけだった」

「また…ですか」

「…というのは?」

 千歳はゆっくりと自分の過去を話し始めた。誰も知ることのなかった、壮絶な過去を。

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