自由への戦火~The Liberation of World sea~ 作:ずぅみん
2092年8月10日 ゴールドマリン州有浜マリーナ
マリンレジャーが盛んなマリネアは全国各地に大きなマリーナが幾つも存在する。中でもゴールドマリン州に存在するマリーナで最大の有浜マリーナは600艇が停泊できる桟橋を備え、よく晴れた日曜日には海で戯れる家族で賑わっていた。
千歳も友人とその家族と一緒に訪れていた。友人の家族が所有するYAMAHAのEXULT36というクルーザーに乗る為だ。あちこちに伸びる木の枝のような係留桟橋を、迷子にならないよう友人家族に付いていく。すると、擦れ違った人々の会話が耳に入ってきた。
「今日、マリネアの近海に隕石が落下するらしいぞ?」
「まじか!破片が街に落ちなきゃいいんだが…。結構デカいのか?」
「まぁ、それなりの大きさらしいな」
心配になった千歳は空を見上げた。しかしそれは、これから大惨事を引き起こすとは考えられない空だった。
「今日の隕石落下予報か…。見てくるの忘れたなぁ…」
「今日海に出て大丈夫かしら?」
「大丈夫だろう」
千歳の少し前を歩く友人の両親が隕石について話していた。それを気にしていた千歳だが「滅多に当たることのない隕石を心配してもしょうがない…」と気にする事を止めた。
それからしばらくして友人家族が所有するクルーザーの前についた。はやる気持ちを抑え、クルーザーと桟橋の隙間から海に落ちないように乗り込む。父親の離岸作業によりゆっくり桟橋から離れたクルーザーは、2機のエンジンを唸らせ外洋に旅立った。
有浜マリーナ南方4km海域
ある程度クルーザーを走らせた父親は休憩がてら投錨し、停泊していた。
「よし、そろそろ行くか!」
程よく休憩を終えた一行はマリーナに帰るために走り出した。しかし、走り出して間もなく空から轟音が聞こえてきた。
「あれは…隕石か!」
音のする空を見上げた父親と同じ空を千歳も見た。そこには大気との摩擦で燃えながら落ちてくる隕石があった。
「しっかり捕まってろよ!」
そういうと友人父親は一気にアクセルを吹かし、スピードを上げてマリーナまで急いだ。マリーナまで行けば、隕石落下で発生した津波を防ぐための堤防があるのだ。しかしそれよりも早く津波がクルーザーを襲い、千歳は海に投げ出された。
そして気が付いたら病院のベッドで寝ていたのだった。
2097年4月 ゴールドフォレスト州キャンプ場
春の暖かい陽気が心地よい。今日はまさにキャンプ日和だと思いながら小鳥のさえずりを聞く。この日千歳は自分の家族と友人家族と一緒にキャンプに来ていた。「今日は何も起こらないでくれ…」そう思いながら…。
テントの設営を終え、そろそろ近くの河原へ遊びに行こうと準備していた矢先にそれは起こった。既に聞き覚えのある、空から聞こえる轟音。千歳は準備を止め、急いでテントの外へ出た。すると、千歳の上空2kmのところを隕石が通り過ぎ、やがて地面に落下した。大勢の人が隕石とは反対方向へ逃げたが、隕石落下時に発生した衝撃波で吹き飛ばされた。それを目の前で見てしまった千歳はよろけながらも父親、瑞帆敏永に話した。
「父さん…逃げよう…!」
「あぁ、そうだな!はぐれるんじゃないぞ!」
そして一行はキャンプ場から逃げようとした。しかし、一緒にいたはずの友人家族の姿が見当たらない。どうしたのか?千歳は恐る恐る尋ねた。
「友達は?その家族は…どこいったの?」
「それがだな…」
敏永はうつむいたまま答えなかった。それで全てを察した千歳はその場で膝をついた。
「そんな…どうして…。」
2100年11月30日 ゴールドマリン海軍基地内病院
千歳の話を静かに聞いていたアルロスはあまりにもひどい過去に衝撃を隠せなかった。全ての話を聞き終えたアルロスは千歳が寝るベッドの隣に置かれた椅子にゆっくりと腰かけた。
「そんな過去が…」
「えぇ、そうです。こんなのが起こる度に、自分はなぜ生きてるんだろう、なぜ生かされるんだろうと考えるようになりました。でも、答えは自分では見つけられなかった…」
アルロスはどんな言葉を返せばいいか分からなかった。自分がこの力を利用したいと欲したが故に千歳を海軍に誘い、そして過去の辛い経験を思い出すようなことを体験させてしまった。「もっと千歳の過去を知ってから誘うべきだった」と悔しさをにじませた。
「まぁ、とりあえず今は充分に動けない状態だ。ゆっくり休んでくれ」
「了解です」
そういうとアルロスは椅子から立ち上がり、部屋から出て行った。真っ白な病室には、ベッドに寝る千歳だけが取り残された。
「そういえばさっき何かを思い出したな…」
千歳はおもむろにそう呟いた。それは自分が海軍に入った本当の理由。当初はアルロスに誘われたからだった。でも今は違う。「それではなぜ海軍に入った?」その問いに、今は自分の言葉で解決できる気がした。
「もう隕石が落ちない世界を作ること…」
そう言葉を放った千歳は寝返りを打ち、眠ることにした。まずは動けるようにならなければ…。
投稿が遅くなってしまい、申し訳ございません
3日に1話のペースはきついので、長くても1週間以内に1話ほどのペースで進めていきたいと思います
それと…今回はちょっと内容薄めかな?
そこらへんはご勘弁願います