自由への戦火~The Liberation of World sea~ 作:ずぅみん
12月11日、ゴールドライン海軍基地
軍港の入り口と係留桟橋全体が望める小高い丘の上でアルロスは腕を組み、千歳はアルロスの横でそわそわしながら立っていた。
「…来たか」
アルロスがそう呟いた瞬間、軍港入り口から数隻入ってくる艦船が見えた。
「お迎えにあがるか」
そういうとアルロスは係留桟橋へ歩み始めた。「いよいよ海藍艦隊の復活か…」そう思いながら千歳もアルロスの後に付いていった。
係留桟橋
アルロス達が係留桟橋に着いた頃にはやってきた艦船から乗員たちが続々とタラップを伝って降りてきていた。そこから挨拶の為にアルロスの下に各艦船の艦長達が歩み寄ってきた。どれも皆懐かしい顔ぶればかりだった。
「アルロス~久しぶり!」
まず元気に駆け寄ってきたのは正規空母エルゼス艦長、
「変わらないな~海紗希!」
「うん、アルロスも変わってないね!」
「相変わらずだな~お前ら」
2人がイチャつくところへ
「後ろが詰まってるんだから後でやってくれよ」
「おぉ、悪かったな」
「ったく、俺も早く彼女ほしいぜ」
彼も初代海藍艦隊のメンバーである。彼を艦長とする空母グランシャリオにはマリネア連合州国海軍で最も優秀と言われるブルーフェアリィ隊がいる。初代海藍艦隊は冬神の艦載機部隊のおかげで5年連続トップの艦隊になったと言っても過言ではない。
「言っとくが、彼女じゃないからな?」
「あぁ、そうだった。単艦での航海は寂しいだろ」
「まぁな、大艦隊だったから余計さ。それも今日で終わりだけどな」
するとみんなから遅れて1人がタラップから降りてきた。アルロスは彼を見つけると声をかけた。
「おぉ!お前も来たか!」
アルロスが声をかけると彼は手を振って応えた。やがて桟橋に降り立った彼は小走りでアルロスのところへやってきた。
「悪い、少し遅れちまった」
「いや、気にすんな」
彼は初代海藍艦隊で唯一のイージスシステム搭載艦だった巡洋艦リニアブルーで艦長をしている
「やっぱり海藍艦隊は桜木がいないと話にならない。来てくれて助かるよ」
「それはお互い様さ、やっぱりこの艦隊が一番居心地がいい」
「えーアルロスおかしくない?それって私役立たずってことー?」
「誰もそんな事言ってないだろ?」
桜木との会話に不信感を抱いた今神がアルロスの腕に抱き着きながら問いかけた。もう慣れた様子のアルロスはそれに動じることなく「はいはい」といった感じで今神の頭をぽんぽん撫で回した。
「これで全員か?ここでの立ち話もアレだから、いったん中に入るか」
「お!いよいよ司令部へ突入か!中に入るのは久しぶりだ!!」
「実は俺たちも来たばかりなんだ…。まだ散らかってるが、そこは勘弁してくれ」
「ま、片づけはみんなでやろうや。せっかく集まったんだしよ」
そして各艦長達はそれぞれ他愛もない話をしながら司令部の中へ入っていった。
ゴールドライン海軍基地司令部管制塔
管制塔にやってきた一同は、主に作戦立案などに使われる海図台のそれぞれの椅子に座った。海図台の液晶画面にはゴールドライン基地を中心に描かれたマリネア連合州国の海図が映し出されていた。アルロスがそれに説明を加えた。
「みんなも知っていると思うが、現状の確認をしよう。現在全国に50ヶ所ある海軍基地のうち、我々が再び拠点を置いたゴールドライン海軍基地はここにある。今ある戦力は戦艦1、空母2、巡洋艦1、それに基地防空隊が15機とまだ少ない。なんとか艦隊は10隻まで増やしたいなぁ…」
「この戦力だと、いつやってくるか分からない軍港奇襲演習で確実に負けるな」
「その通りだ。あと基地の設備も充実させなくてはならない。両隣の基地に比べると設備が非常に劣っている。」
アルロスは液晶画面を操作し、マリネア連合州国全体からゴールドライン海軍基地とその両隣の海軍基地が映る範囲まで拡大した。海図と航空写真の合成画像であるが、空から見ただけで周囲との戦力差は明らかだった。
「海軍本部に基地復活の申請はしたんだろ?」
「あぁ、それで少なからず支援は来ると思うんだが、それでも拡張スピードが追いつかない。幸いなことに、申請をしてから1ヶ月間は準備期間として奇襲演習は規定により禁止されている。この期間は安心していいだろう」
「奇襲演習に勝てば本部からの支援が増えるんだけどねぇ…」
一同が「う~ん…」と海図と睨めっこしていると、いきなりレーダーから警告音が流れた。アルロスが急いで確認する。
「隣のゴールドネイチャー海軍基地からの奇襲を確認!総員戦闘配置!!」
「はぁ!?1ヶ月間は準備期間だろ!!」
「確かゴールドネイチャー基地所属の艦隊司令…海軍一の問題児だった気がする…」
「全くだ。お帰り願う前に礼儀を叩き込んでやろう。ついでに演習勝利の報酬も受け取ろうじゃないか」
「各員、急いで艦へ急げ!桜木は対空迎撃!空母隊は…」
「合成風力作れないから発艦できない…」
「あぁー…対空砲火で弾幕張れ!俺は一気にケリを付ける」
「了解!」
そういうと全員が桟橋に泊まってる艦を目指し、それぞれ応戦を始めた。
イージス巡洋艦リニアブルー
「総員対空戦闘用意!イージスシステム作動!全武装を使って対空迎撃だ!」
「了解!対空戦闘用意!イージスシステム、作動!!」
「全兵装、オンライン!イージスとのリンクよし!」
なんとか準備は奇襲前に間に合った。あとは敵が来るのを待つだけである。すると山の影から敵性航空機が飛び出してきた。
「航空機視認!急速接近!」
「対空迎撃始め!」
「撃ちぃ方始め!」
桜木の命令に合わせて砲雷長が引き金を引いた。するとミサイルが凄まじい勢いで放たれ、次々に航空機を落としていった。
大戦艦ブルーエリア
息を切らして勢いよく入ってきたアルロスは艦長席でなく、無線台へ真っ先に向かった。そして受話器を取り、無線バンドを合わせた。相手は演習で戦っている艦隊司令である。
「こちら海藍艦隊司令アルロスだ。どういうつもりだ?説明してもらおうか」
≪これはこれはご丁寧に…。いつも君の事を噂で聞いているよ≫
「そいつはどうも。お前、上官である俺に対してそんな態度とっていいとでも思ってるのか?それに演習規定では発足した艦隊には1ヶ月の準備期間は演習を仕掛けてはならないと明記されているぞ」
≪あぁ、君の艦隊はまだ発足したばかりだったな。だから艦隊司令としては新米…必然的に俺の部下という事になる≫
アルロスは海軍一の問題児の屁理屈が聞こえてくる受話器のマイク部分を手で押さえながらウェイク達と会話をした。
「こいつ頭大丈夫か?」
「あぁ…完全に海軍の階級序列を間違えてますね」
「とまりどういう事です?」
「うちの艦隊司令アルロスさんは、今戦っている相手の艦隊司令と一緒といえば一緒だ。しかし単に艦隊司令といえど、その中にも先輩後輩と別れる。それは艦隊司令になってからの年数で決まる。相手は艦隊司令になってからまだ数年の若造、アルロス艦隊司令は数十年の大ベテランだ。これが何を意味するか、分かってるな?」
千歳の疑問にウェイクが丁寧に説明した。つまり若造が、大先輩に盛大にケンカを売っている訳だ。たとえ大先輩の艦隊が解散しようと、大先輩の肩書はそのまま維持される…。それを若造が「艦隊を解散したから大先輩も新米になった」と勘違いしているのだ。千歳はちらっとアルロスの顔色を窺った。彼は相当頭に来ているようだった。それを知ってか知らずか、若造艦隊司令の説明は続く。
≪それに君の基地はまだ設備が不十分だ。要は弱いうちに潰しておこうという訳だ。そうすれば勝率も上がり、勝てば本部から支援が届く。そして君たちは当分の間、周りの艦隊から洗礼を受ける。新米には必要な過程ですな。≫
「…そうか、よくわかったよ。そんな汚いやり方をする奴は…消えてしまえ!!!」
受話器を勢いよく叩きつけたアルロスは艦長席につき、命令を発し始めた。
「桜木、そっちの状態は?」
≪全然余裕だ。お陰でイージスの迎撃能力を持て余してるよ≫
「了解した、もうちょっと耐えてくれ。すぐ終わらせる」
≪了解!≫
「ミゼッタ、全武装に火を入れろ。目標、ゴールドネイチャー海軍基地。基地ごと吹っ飛ばせ」
「了解でーす。目標群補足、全武装射撃用意よし」
「全武装、一斉撃ち方!」
次の瞬間、主砲砲塔内に装填されていた薬莢が点火され、凄まじい炎と煙を吐き出しながら50cmの砲弾が12発一斉に放たれた。次に船体の中央と後部にあるVLSが開き、弾頭に核並みの威力を持つ特殊弾頭が搭載されたトマホーク巡航ミサイルが発射され、目標めがけて飛んで行った。更に船体中央にある大口径単装砲が火を噴き、真っ赤に熱せられた砲弾が山の向こうへ消えていった。正に大戦艦の火力をまじまじと見せつけるかのような一斉射だった。
「あ、アルロスさん…殺しにかかってますよね」
「こうでもしないと、気が済まん」
この演習はもちろん、アルロス率いる海藍艦隊の完全勝利で幕を閉じた。そしてアルロスに失礼な態度を取ったうえ、演習規定を破った相手艦隊司令は近いうちに連合州国海軍本部による軍法会議にかけられるという。アルロスを怒らせたら怖いという事を身をもって知った千歳だった。